細谷火工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

細谷火工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

細谷火工は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、防衛省向け等を中心とした火工品事業と、施設等の賃貸事業を展開する企業です。直近の業績は、防衛分野での需要増や火工品燃焼処分の受託増加が牽引し、売上高21億円、経常利益3億円と増収増益を達成しました。堅固な財務基盤と安定した事業運営が特徴です。


※本記事は、細谷火工株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 細谷火工ってどんな会社?


同社は防衛省向けの火工品製造を主力とする火工品事業と、施設等の賃貸事業を展開する老舗メーカーです。

(1) 会社概要


同社は明治39年に創業者が警視庁の許可を受け、煙火の製造販売を開始したことが原点です。昭和24年に産業用火工品等の製造販売を開始し、昭和38年に店頭登録を果たしました。平成16年にジャスダック証券取引所へ上場し、市場再編を経た令和4年には東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は単体で94名体制です。筆頭株主は日本文化伝承会館で、第2位は従業員関係の団体、第3位は金融機関が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本文化伝承会館 10.40%
細谷火工共栄会 6.40%
西武信用金庫 5.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は細谷穰志氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
細谷 穰志 代表取締役社長 防衛庁航空自衛隊入隊を経て同社に入社。専務取締役東京営業所長などを歴任し、平成25年6月より現職。
細谷 亮旗 代表取締役副社長 大学院修士課程修了後に同社入社。営業課長、取締役草花工場長、取締役副社長を経て、令和6年4月より現職。
齋藤 尚志 取締役 日本カーリットに入社し赤城工場長などを歴任後、同社に入社。工場付技師長を経て令和7年6月より現職。


社外取締役は、佐藤誠氏(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社は、「火工品事業」および「賃貸事業」を展開しています。

(1) 火工品事業


防衛省向けの救命、救難、訓練等に用いられる火工品の製造・販売や、航空宇宙分野向けの評価試験・燃焼処分などを行っています。専門性の高い高エネルギー物質を扱うため、品質と安全管理を最重要視したモノづくりを提供しています。

主に防衛省をはじめとする官公庁や民間企業(ミネベアミツミ等)からの受注による製品販売から収益を得ています。事業の運営は同社が行っています。

(2) 賃貸事業


東京都あきる野市などにおいて、大型商業店舗、大型実験棟、火薬庫の施設を顧客向けに賃貸するサービスを提供しています。

施設の利用者からの不動産賃貸料として定常的な収益を得ています。事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定的に推移し、特に直近2年間は防衛分野での需要増や火工品燃焼処分の受託増が寄与して拡大基調にあります。経常利益率も10%台前半から14%台へと向上し、高収益体質を維持しています。原材料費高騰の影響を受けつつも、収益性の確保に成功しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 18億円 18億円 18億円 20億円 21億円
経常利益 2億円 2億円 2億円 3億円 3億円
利益率(%) 10.4% 10.4% 11.0% 14.6% 14.3%
当期利益 1億円 1億円 1億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに安定した水準を確保しています。徹底したQCD管理により、原価高騰圧力を吸収し、堅実な利益創出を継続していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 20億円 21億円
売上総利益 7億円 7億円
売上総利益率(%) 32.4% 31.1%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 14.3% 14.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が0.7億円(構成比19%)、役員報酬が0.7億円(同18%)を占めています。また、当期総製造費用においては材料費が6億円(同41%)、労務費が6億円(同40%)となっています。

(3) セグメント収益


売上高の大半を占める火工品事業は、防衛分野での一部製品の受注増加と火工品類の処分需要の高まりにより増収増益を牽引しました。賃貸事業も堅調に推移し、全社的な利益底上げに貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
火工品事業 19億円 20億円 2億円 2億円 11.2%
賃貸事業 2億円 2億円 1億円 1億円 69.8%
連結(合計) 20億円 21億円 3億円 3億円 14.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.3億円 3億円
投資CF -1億円 -0.7億円
財務CF -0.6億円 -2億円


企業の収益力を測るROEは6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「高エネルギー物質利用で広く社会に貢献し 従業員の物心両面の充実を追求する」を経営理念としています。安全と信頼を第一に良品を提供するとともに、新製品の開発や新たな市場開拓を積極的に推進し、すべてのステークホルダーに利益を還元することを使命としています。

(2) 企業文化


社訓に「多くの人のお役に立てるモノ作り」を掲げ、全従業員がこれを全うし、同社に関わる全ての方が誇りを持てる企業を目指しています。多様な人材に公平な機会を提供し、個人の力を最大限に引き出すとともに、組織として活かすことで企業と個人が共に成長する風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長を実現するため、資産効率の向上と株主資本の有効利用を重視しています。経営上の客観的な指標として、総資産経常利益率(ROA)および株主資本利益率(ROE)をいずれも5%以上と設定し、自己資本比率の向上も目標として掲げています。

* 総資産経常利益率(ROA):5%以上
* 株主資本利益率(ROE):5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益力の強化と経営基盤の安定化に向け、人財の活躍推進と事業領域の拡大を図ります。航空宇宙分野など高エネルギー物質の新たな需要を取り込むため、産学官連携による共同研究を進めています。また、防衛分野の需要増加に対しては、徹底したQCD管理と部門間連携の強化により既存製品の収益力向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


会社の成長を牽引する人材の採用と育成を重視し、新卒一括採用に限定しない多様な人材や専門人材のキャリア採用を積極的に進めています。階層別研修や資格取得支援で成長を促すとともに、マネジメント能力と技能職の役割に応じた公正な賃金体系を構築し、働きやすい環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.3歳 9.3年 6,060,572円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理的地位にある労働者に占める女性従業員の割合(20%)、火薬類取扱保安責任者有資格者(87%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取扱製品の特殊性に伴う事故リスク


救命、救難、防衛向けの製品には火薬・爆薬が原料として使用されています。火薬事故が発生した場合、工場の一時稼働停止など経営に多大な影響を及ぼす可能性があるため、同社は品質管理と保安対策の徹底を経営上の最大のリスク管理課題として位置づけています。

(2) 特定取引先(防衛省等)への依存リスク


同社の主要顧客は防衛省であり、取引額の多くを占めています。国家予算の変動により受注が増減し、収益に多大な影響を与える可能性があるため、高エネルギー物質の評価試験や燃焼処分の受託など、新たな取引先の開拓に努め安定的な売上の確保を図っています。

(3) 製品納期の第4四半期への集中リスク


官公庁向けの販売が中心であるため、製品の納期が第4四半期に集中し、業績が期末偏重となる傾向があります。これにより生産計画に偏りが生じ、収益性低下の要因となるため、民間向け製品の受注を上期に増やすことで売上と生産の平準化を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。