#記事タイトル:細谷火工転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、細谷火工株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 細谷火工ってどんな会社?
防衛省向けの火工品製造を主力とする化学メーカーです。火工品の技術を活かし、安全・防衛分野に貢献しています。
■(1) 会社概要
明治39年に創業者が煙火の製造販売を開始し、昭和24年に産業用火工品等の製造販売を行う細谷煙火工業へ商号変更しました。昭和29年に現在の細谷火工へ商号変更し、平成16年にJASDAQ市場へ上場しました。令和4年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
同社(単体)の従業員数は87名です。筆頭株主は一般社団法人日本文化伝承会館で、第2位は従業員持株会である細谷火工共栄会、第3位には個人株主が名を連ねています。創業者一族や関連団体が主要株主として安定的な持株比率を有していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般社団法人日本文化伝承会館 | 10.50% |
| 細谷火工共栄会 | 6.40% |
| 志村 実 | 4.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名、計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は細谷 穰志氏です。取締役4名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細谷 穰志 | 代表取締役社長 | 昭和52年航空自衛隊入隊を経て昭和58年に入社。ホソヤエンタープライズ代表取締役、専務取締役東京営業所長などを歴任し、平成25年より現職。 |
| 細谷 亮旗 | 代表取締役副社長 | 平成23年入社。取締役草花工場長などを経て、令和6年4月より現職。ホソヤエンタープライズ社外取締役も兼任。 |
| 齋藤 尚志 | 取締役 | 日本カーリット入社後、同社赤城工場長などを歴任。令和6年6月に細谷火工に入社し工場付技師長を経て、令和7年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤 誠(公認会計士・税理士、あすなろ監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「火工品事業」および「賃貸事業」を展開しています。
■(1) 火工品事業
防衛省向けの発煙筒、照明弾、信号弾などの火工品を中心に製造・販売しています。また、民間向けにがん具煙火や産業用火工品の製造販売を行うほか、火工品の評価試験などの受託業務も手掛けています。
収益は、主に防衛省や民間企業への製品販売および試験受託等による対価から得ています。運営は主に同社が行っていますが、一部の原材料供給や外注加工において関連会社の株式会社ホソヤエンタープライズと取引を行っています。
■(2) 賃貸事業
同社が所有する大型商業店舗、大型実験棟、火薬庫などの施設を外部顧客に賃貸しています。安定的な収益源として、火工品事業の変動を補完する役割を担っています。
収益は、テナントや施設利用者からの賃貸料収入から得ています。運営は同社が行っており、火薬庫の一部については関連会社の株式会社ホソヤエンタープライズにも賃貸しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は15億円台から20億円台へと拡大傾向にあります。特に第74期は売上高20億円を超え、利益面でも経常利益が3億円に迫るなど、好調な推移を示しています。利益率は10%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 15.6億円 | 17.9億円 | 17.6億円 | 18.3億円 | 20.4億円 |
| 経常利益 | 2.0億円 | 1.9億円 | 1.8億円 | 2.0億円 | 3.0億円 |
| 利益率(%) | 12.9% | 10.4% | 10.4% | 11.0% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | 1.3億円 | 1.3億円 | 1.4億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は29.2%から32.4%へと改善しており、原価低減活動や高付加価値業務の増加が寄与しています。営業利益率も10.6%から14.3%へ上昇し、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 18.3億円 | 20.4億円 |
| 売上総利益 | 5.4億円 | 6.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.2% | 32.4% |
| 営業利益 | 1.9億円 | 2.9億円 |
| 営業利益率(%) | 10.6% | 14.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が0.7億円(構成比19%)、役員報酬が0.7億円(同18%)、賞与引当金繰入額が0.7億円(同18%)を占めています。人件費関連の割合が高く、人的資源への投資が経費の主要部分を構成しています。
■(3) セグメント収益
火工品事業は、防衛装備品の一部需要縮小があったものの、代替製品の提案や燃焼処分需要の取り込み、民間向けの評価試験の増加等により増収増益となりました。賃貸事業は微増収ながら、利益は横ばい圏内で安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 火工品事業 | 16.6億円 | 18.6億円 | 1.1億円 | 2.1億円 | 11.4% |
| 賃貸事業 | 1.7億円 | 1.7億円 | 1.2億円 | 1.2億円 | 67.6% |
| 連結(合計) | 18.3億円 | 20.4億円 | 1.9億円 | 2.9億円 | 14.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなっており、手元資金を取り崩して活動している状態です。営業CFのマイナスは主に棚卸資産の増加(2.3億円)と法人税等の支払(1.0億円)によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.2億円 | -0.3億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -1.0億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | -0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均(スタンダード市場7.2%)をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.3%で市場平均(同57.5%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「高エネルギー物質利用で広く社会に貢献し 従業員の物心両面の充実を追求する」を経営理念として掲げています。この理念に基づき、社会への貢献と従業員の幸福を両立させる経営を目指しています。
■(2) 企業文化
社訓に掲げる「多くの人のお役に立てるモノ作り」を全従業員で実践し、関わる全ての人々が「誇り」を持てる企業を目指しています。安全と信頼を最優先とし、良品の提供に努める姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
経営目標の達成状況を判断する客観的な指標として、自己資本比率、総資産経常利益率(ROA)、株主資本利益率(ROE)を重視しています。全てのステークホルダーへの利益還元を目指し、持続的な成長に取り組んでいます。
- 総資産経常利益率(ROA):5%以上
- 株主資本利益率(ROE):5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長のため、収益力の強化と経営基盤の安定化を目指しています。具体的には、多様な人材の確保と育成による人的資本の強化、産学官連携による航空宇宙分野などの新たな市場開拓を通じた化成品事業の拡大、および原価低減活動による既存製品の収益力向上を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保と育成を企業の成長に不可欠な要素と位置づけ、多様な採用活動を展開しています。職務に応じた教育と自己研鑽を重視し、チャレンジ精神や創意工夫を育む組織風土づくりに努めています。また、国家資格である「火薬類取扱保安責任者」の全員取得を目標に掲げ、受験支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.6歳 | 9.2年 | 6,514,470円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性従業員の割合(20%)、火薬類取扱保安責任者有資格者(87%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取扱製品の特殊性(火薬事故のリスク)
同社の製品には火薬や爆薬が使用されており、火薬類取締法による厳格な管理下で製造されています。万一、工場で火薬事故が発生した場合、工場の稼働停止など経営に重大な影響を及ぼす可能性があるため、品質および安全管理の徹底を最重要視しています。
■(2) 特定取引先への依存
主要な取引先は防衛省であり、売上の多くを依存しています。そのため、防衛予算の増減が同社の収益に多大な影響を与えるリスクがあります。これに対し、高エネルギー物質の評価試験や火工品燃焼処分などの事業を通じて新たな取引先を開拓し、売上の安定化を図っています。
■(3) 製品納期の偏重
主要顧客が官公庁であるため、製品納期が第4四半期に集中し、業績が期末に偏重する傾向があります。生産の非効率化につながるこの傾向を緩和するため、民間向け製品の販売努力により上期の受注を増やし、売上の平準化を目指しています。



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