ケイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイブは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、モバイルオンラインゲームの開発運営や動画配信者のサポート事業を展開しています。直近の業績は、主要タイトルの減損処理や子会社の譲渡など事業ポートフォリオの再構築を進めた結果、売上高は減少傾向にあり、各段階利益において赤字へ転落する厳しい状況にあります。


※本記事は、株式会社ケイブの有価証券報告書(第32期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケイブってどんな会社?


モバイルオンラインゲームの開発運営と動画配信者のサポート事業を展開するエンターテインメント企業です。

(1) 会社概要


ケイブは、1994年、ゲームソフト受託開発を目的に設立されました。2002年のシューティングゲーム発売等を経て、2004年にジャスダックへ上場しました。2015年にスマートフォンゲーム「ゴシックは魔法乙女」をリリースし、2021年にはでらゲーと資本提携、2023年に「東方幻想エクリプス」の配信を開始しました。

従業員数は連結で209名、単体で46名です。筆頭株主は取締役会長の吉成夏子氏で、第2位は376、第3位は金融機関であるSBI証券となっています。

氏名 持株比率
吉成夏子 20.18%
376 5.39%
SBI証券 5.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは高橋祐希氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
高橋祐希 代表取締役社長CEO 2007年大和建物入社。2019年にAKS(現Vernalossom)入社後、ケイブ取締役就任。capable代表取締役等を経て、2025年8月より現職。
吉成夏子 取締役会長 2007年サクセス取締役就任。2014年AKS(現Vernalossom)代表取締役就任。2025年8月より現職。
伊藤裕章 取締役CFO 2009年税理士法人総合会計事務所入社。capable代表取締役等を経て、2022年に経営企画部長および取締役CFOに就任。2025年8月より現職。
岡本吉起 取締役(非常勤) 1983年カプコン入社、同社専務取締役等を歴任。2003年ゲームリパブリック代表取締役就任。でらゲー入社等を経て、2019年4月より現職。
小尾敏仁 取締役(監査等委員) 1984年SFCG入社、同社常務取締役等を歴任。2006年ケイブ顧問を経て取締役に就任。内部監査室長等を経て、2019年8月より現職。


社外取締役は、金子浩明(グロービス経営大学院大学教授)、濵田剛知(Japan Global Association代表取締役)、菅原貴与志(元ANAホールディングス上席執行役員)、野口仁(スタンダード会計事務所所長)、竹村滋幸(元ANAホールディングス取締役副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」および「動画配信関連事業」を展開しています。

(1) ゲーム事業


スマートフォン向けオンラインゲームの開発、運営、受託開発および二次的著作物の企画販売を行っています。自社タイトル「ゴシックは魔法乙女」や「東方幻想エクリプス」のほか、他社タイトル「モンスターストライク」「キングダム 乱」などの運営を手掛けています。

ユーザーがゲーム内で課金し、アイテムやキャラクター等を取得する際の利用料を収益源としています。また、他社からの受託開発業務等の役務提供による収入も得ています。運営はケイブ、でらゲー、DELUXE GAMESなどのグループ各社が行っています。

(2) 動画配信関連事業


インターネット広告を含む動画配信者のマネジメントやサポート、および映像コンテンツなどの制作受託業務を提供しています。エンターテインメント領域におけるクリエイターの活動を支援し、海外マーケットにおける収益の獲得なども目指しています。

顧客企業からの映像コンテンツ等の制作受託や、配信プラットフォームを通じた事業活動から収益を得ています。本事業は主にサクセスプラスが運営しています。なお、以前本事業を担っていたcapableは事業ポートフォリオ見直しにより株式譲渡されました。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、2024年5月期まではM&A等の効果もあり売上高が拡大し黒字転換を果たしましたが、2026年5月期は主要タイトルの減損処理や子会社譲渡など事業ポートフォリオ再構築を実施した影響で減収となり、経常利益および当期利益が赤字に転落しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 14億円 70億円 123億円 140億円 120億円
経常利益 -8億円 2億円 19億円 11億円 -5億円
利益率(%) -57.7% 3.1% 15.8% 8.1% -4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 26億円 15億円 2億円 -28億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に加え、新作ゲームのリリースに伴うゲーム事業関連原価が増加した影響により、売上総利益は前期比で減少しました。また、プロモーション活動や研究開発等への投資を継続したことで、営業利益は赤字に転じています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 140億円 120億円
売上総利益 52億円 35億円
売上総利益率(%) 37.4% 28.9%
営業利益 11億円 -6億円
営業利益率(%) 8.1% -5.1%


販売費及び一般管理費のうち、利用料金回収代行に係る回収費が10億円(構成比25%)、広告宣伝費及び販売促進費が8億円(同21%)、役員報酬が7億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


ゲーム事業は、既存タイトルの安定運営に努めたものの減収となり、セグメント損失を計上しました。動画配信関連事業は、事業ポートフォリオ改善を目的とした子会社の株式譲渡などにより減収となりましたが、受託事業を中心に安定的な収益を確保し、黒字を維持しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
ゲーム事業 128億円 110億円 11億円 -6億円 -5.7%
動画配信関連事業 11億円 10億円 0.2億円 0.2億円 1.8%
連結(合計) 140億円 120億円 11億円 -6億円 -5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長を見据えて借入等により資金を調達し、投資活動を継続している勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 9億円 -6億円
投資CF -13億円 -11億円
財務CF 3億円 6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-72.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.3%といずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「身近な社員を幸せにすることでエンドユーザーも幸せにする」です。ゲーム、ライブ配信、エンターテインメント領域において、様々な社会的問題を解決することを企業の存在意義と定めており、持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすことで、永続的な成長および企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


多様な思考を持った人材の確保・維持と良好なコミュニケーション環境の提供を重視しています。常に新しいクリエイティブな発想を追求し続けることが持続的な成長に不可欠であるとの認識のもと、性別、年齢、国籍にとらわれないダイバーシティを推進し、多様な文化的背景や価値観からの発想を重んじています。

(3) 経営計画・目標


「継続的な事業創出のための仕組化」として、強固なIPの保有・育成やAI技術の積極的活用により、新規サービスを順次リリースできる体制の構築を進めています。また、グローバル展開を強化し、成長が見込まれる海外市場でのサービス開発に取り組むことで、中長期的な収益獲得の拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


多様化する市場やニーズに対し、最適なユーザー獲得手法を選択実行する方針です。スマートフォンの高機能化に伴うコンテンツのリッチ化に対しては、複数社でコストや時間のリスクをシェアする体制で対応します。さらに、AI技術をサービスの開発や運用に活用することで、業務効率化や利益率の改善を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


クリエイティブな発想の源泉は人材であるとの考えから、権限移譲を通じた実践的なOJTによる人材育成を行っています。また、AI活用を推進するための専門部署を設置し、業務改善を牽引するリーダー育成にも取り組んでいます。公正公平な人事評価や健康経営の推進により、働きがいの向上と人材定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 39.9歳 9.9年 4,944,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は一部指標について公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術やサービスの陳腐化


オンラインエンターテインメント市場はスマートフォン等の機能が急速に進化しており、提供されるコンテンツ形態やサービスも変化しています。ハードウェアやブラウザの進化等によるビジネス環境の変化に適切に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ネットワーク障害とシステムダウン


インターネット接続に依存する事業特性上、自然災害や事故、急激なアクセス増加によるサーバー負荷上昇等でサービス停止を招くリスクがあります。不正アクセス等のサイバー犯罪や人為的ミスも含め、システム障害が発生した場合は社会的信用の低下や業績悪化に繋がる恐れがあります。

(3) オンラインゲーム市場の競合激化


類似サービスを提供する事業者が多数存在し、新規参入も相次ぐ厳しい競争環境にあります。主要なアプリマーケットでは全てのゲームが同じ環境で提供されるため、自社コンテンツの人気度合いや競合の状況によっては、顧客獲得や収益の確保に大きく影響を与える可能性があります。

(4) 著作権や協業先との重要な契約


コンテンツ情報の提供に関する著作物の許諾や業務協力会社との契約に依存する部分があります。各相手先の事業戦略変更による契約の打ち切りや内容変更、版権元が独自に類似展開を行った場合などには、今後の事業展開や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ケイブの転職研究 2026年5月期3Q決算に見るキャリア機会

ケイブの2026年5月期3Q決算は、不採算事業の整理と大幅な減損処理を完了。4Qからの営業黒字化を見込む「再構築期」にあります。安定収益源のでらゲーと成長中のサクセスプラスを擁し、攻めに転じる同社で「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。