※本記事は、株式会社ケイブ の有価証券報告書(第31期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケイブってどんな会社?
シューティングゲームの老舗として知られ、現在はモバイルゲーム開発運営と動画配信関連事業を両輪とする企業です。
■(1) 会社概要
1994年にゲームソフトの受託開発を目的として設立され、2004年に株式を上場しました。2015年にはスマートフォンゲーム「ゴシックは魔法乙女」をリリースし、主力事業へと成長させました。近年はM&Aを推進しており、2019年に動画配信関連のcapableを設立、2022年にゲーム開発のでらゲーを完全子会社化、2024年にはサクセスプラスを連結子会社化するなど、事業ポートフォリオの拡大を進めています。
2025年5月31日現在、連結従業員数は221名、単体従業員数は42名です。大株主構成については、筆頭株主は取締役会長の吉成夏子氏で、第2位は376、第3位は著名ゲームクリエイターであり同社取締役を務める岡本吉起氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 吉成夏子 | 18.25% |
| 376 | 5.52% |
| 岡本吉起 | 4.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは高橋祐希氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋祐希 | 代表取締役社長CEO | 大和建物、玄武を経て、2019年AKS(現Vernalossom)入社。同社取締役、capable代表取締役等を歴任し、2025年8月より現職。 |
| 吉成夏子 | 取締役会長 | サクセス取締役、AKS(現Vernalossom)代表取締役等を歴任。2025年8月より現職。 |
| 伊藤裕章 | 取締役CFO | 税理士法人総合会計事務所を経て、capable代表取締役等を歴任。2022年同社取締役CFO就任、2025年8月より現職。 |
| 岡本吉起 | 取締役(非常勤) | カプコン専務取締役、ゲームリパブリック代表取締役、オカキチ代表取締役等を歴任。2019年4月より現職。 |
| 小尾敏仁 | 取締役(監査等委員) | SFCG常務取締役等を経て、同社顧問、取締役内部監査室長等を歴任。2019年8月より現職。 |
社外取締役は、金子浩明(グロービス経営大学院大学教授)、濵田剛知(Japan Global Association代表取締役)、菅原貴与志(元ANAホールディングス上席執行役員)、野口仁(スタンダード会計事務所所長)、竹村滋幸(元全日本空輸取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ゲーム事業」および「動画配信関連事業」を展開しています。
■(1) ゲーム事業
モバイルオンラインゲームの企画・開発・運営を行っています。自社タイトルの「ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~」や「東方幻想エクリプス」に加え、子会社のでらゲーが開発に関わる「モンスターストライク」や「キングダム 乱 -天下統一への道-」などの有力タイトルを有しています。
収益は主にユーザーからのゲーム内アイテム課金による利用料収入や、他社からの受託開発・運営業務に伴う手数料収入等から構成されています。運営は親会社のケイブに加え、連結子会社の株式会社でらゲーやDELUXE GAMES SDN.BHD.、スマートフォンゲーム「メテオアリーナ」製作委員会が行っています。
■(2) 動画配信関連事業
動画配信者のマネジメントやサポート、インターネット広告事業、映像コンテンツ制作等を行っています。YouTubeやライブ配信プラットフォームでの活動支援に加え、店舗事業なども展開しています。また、2024年にグループ入りしたサクセスプラスによるアミューズメント機器開発なども含まれます。
収益は動画配信に伴う広告収入やマネジメント手数料、受託制作費等が中心となります。運営は連結子会社の株式会社capableおよび株式会社サクセスプラスが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第29期に売上高が急拡大し黒字転換を果たした後、第30期には売上高123億円、経常利益19億円とさらに業績を伸ばしました。第31期は売上高140億円と増収を維持したものの、開発費や減損損失等の計上により利益面では減少しており、成長投資と収益確保のバランス調整局面にあることがうかがえます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 17億円 | 14億円 | 70億円 | 123億円 | 140億円 |
| 経常利益 | -2.3億円 | -8.1億円 | 2.1億円 | 19億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | -13.7% | -57.7% | 3.1% | 15.8% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.1億円 | -9.4億円 | -13.3億円 | 3.0億円 | 1.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により各段階利益は減少しました。特に売上原価の増加率が売上高の伸びを上回っており、利益率の低下要因となっています。一方で、売上総利益率は30%台後半を維持しており、一定の収益性は保たれています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 123億円 | 140億円 |
| 売上総利益 | 54億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.4% | 37.4% |
| 営業利益 | 19億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 15.2% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、回収費が15億円(構成比36%)、役員報酬が7億円(同17%)を占めています。売上原価については内訳の記載がありませんが、ゲーム事業関連の費用が増加傾向にあります。
■(3) セグメント収益
ゲーム事業は「ゴシックは魔法乙女」の10周年施策や「モンスターストライク」等の寄与で増収となりましたが、新作開発や「メテオアリーナ」の減損損失計上等が響き減益となりました。動画配信関連事業はサクセスプラスの連結化や既存事業の成長により売上が大幅に増加し、セグメント損益も黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 120億円 | 128億円 | 19億円 | 11億円 | 8.7% |
| 動画配信関連事業 | 2億円 | 11億円 | -0.7億円 | 0.2億円 | 1.6% |
| 連結(合計) | 123億円 | 140億円 | 19億円 | 11億円 | 8.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達を行っています。営業活動では、主に法人税等の支払いがあったものの、未収入金の減少や還付金などにより、資金が増加しました。投資活動では、無形固定資産や子会社株式の取得による支出が大きかったものの、保険積立金の解約や出資金の払戻しにより、一部資金を回収しました。財務活動では、長期借入れや非支配株主からの払込みにより資金が増加しましたが、借入金の返済や配当金の支払いもありました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 9億円 |
| 投資CF | -7億円 | -13億円 |
| 財務CF | 0.3億円 | 3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「身近な社員を幸せにすることでエンドユーザーも幸せにする」を企業理念として掲げています。ゲーム、ライブ配信、エンターテインメント領域において様々な社会的問題を解決し、社員とエンドユーザーの幸福、ひいては持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
常に新しいクリエイティブな発想を追求し続けることを重視しています。そのために、多様な思考を持った人材の確保・維持と、良好なコミュニケーション環境の提供が重要であると認識しています。年齢・性別・国籍を問わない多様性の確保や、働きやすい労働環境の整備に努める方針を持っています。
■(3) 経営計画・目標
継続的な事業創出のための仕組化を進め、新規サービスを順次リリースできる体制を構築することを目指しています。また、グループ全体の成長確実性を高めるため、M&Aの推進などにより事業ポートフォリオの改善と収益性の高い事業への参入を検討しています。具体的な数値目標は記載されていません。
■(4) 成長戦略と重点施策
ゲーム事業では「東方Project」のIP許諾を受けたタイトルの運営や海外展開、製作委員会の組成によるリスク分散を進めています。また、動画配信関連事業では配信者マネジメントやSNS広告事業とのシナジー創出を図っています。さらに、M&Aや安定的な利益が得られる事業への参入を通じて事業ポートフォリオの強化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
クリエイティブな発想を生み出すため、年齢・性別・国籍を問わない多様な人材の確保と育成を方針としています。具体的には、年次有給休暇の取得促進、適正な労働時間の管理、公正公平な評価・処遇、福利厚生の拡充、各種研修の実施などを通じて、働きやすい労働環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 40.4歳 | 11.5年 | 4,925,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率は同社および連結子会社の一部を対象とした数値です。女性管理職比率および男女賃金差異については、同社および連結子会社の一部を対象とした開示において該当数値の記載がなく、また従業員規模等の理由により法定開示義務の対象外である可能性があります。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(20.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術・サービスの陳腐化について
スマートフォンやタブレット端末等の機能進化に伴い、提供されるコンテンツ形態やサービスも変化します。ビジネス環境の変化に適切に対応できない場合、将来の業績に影響を与える可能性があります。
■(2) システムダウンについて
事業はインターネット接続に依存しており、自然災害や事故、アクセス集中によるサーバー負荷等によりシステム障害が発生する可能性があります。また、外部からの不正アクセス等による障害も含め、これらが発生した場合、直接的な損害や信頼低下を招く恐れがあります。
■(3) 個人情報の管理について
事業において個人情報を保有しており、厳重な管理を行っていますが、外部からの不正アクセス等により情報が流出する可能性は完全には排除できません。万一流出した場合、損害賠償請求や社会的信用の喪失により、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 競合について
類似サービスを提供する事業者が多数存在し、参入障壁も低いため競争が激化しています。また、主要なアプリマーケットでの提供環境も同一であるため、提供するゲームの人気動向が業績を大きく左右する性質があります。



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