日本カーバイド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本カーバイド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本カーバイド工業は、東京証券取引所プライム市場に上場する化学メーカーです。電子・機能製品、フィルム・シート製品、建材、エンジニアリングの4事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で増加し、経常利益も38億円と前期の16億円から大幅な増益を達成しています。


※本記事は、日本カーバイド工業株式会社 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本カーバイド工業ってどんな会社?


電子素材や機能樹脂、フィルム製品、建材などを手掛ける化学メーカーで、海外展開も積極的に進めています。

(1) 会社概要


1935年に設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。タイ、米国、ベトナム、インドネシア、ブラジルなどに現地法人を設立し、グローバルに事業を展開しています。2014年にはニッセツを吸収合併し京都製造所を設置するなど、事業基盤の強化を進めてきました。

連結従業員数は3,312名、単体では522名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には個人株主の榊原三郎氏が名を連ねています。また、第2位も信託銀行が占めており、機関投資家による保有比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 15.33%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.38%
榊原 三郎 2.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長 社長執行役員 CEOは杉山孝久氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
杉山 孝 久 代表取締役取締役社長社長執行役員CEO 旭硝子(現AGC)執行役員電子カンパニー電子部材事業本部長などを経て、2020年6月より現職。
井口 吉 忠 代表取締役副社長執行役員CFO管理部門担当 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)金融法人部長、三菱UFJリサーチ&コンサルティング常務執行役員を経て、2024年4月より現職。
長谷川 幸 伸 取締役常務執行役員CTO研究開発センター長安全・品質・環境管理部担当 同社入社後、機能製品事業本部機能樹脂事業部長、フィルム・シート事業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。
横田 祐 一 取締役常務執行役員電子・機能製品事業本部長兼経営企画部 同社入社後、電子部材事業部長、経営企画部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、吉岡早月(弁護士法人小野総合法律事務所弁護士)、門向裕三(元日立オートモティブシステムズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子・機能製品」「フィルム・シート製品」「建材関連」「エンジニアリング」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) 電子・機能製品


ファインケミカル製品、医薬品原薬・中間体、機能樹脂(粘・接着剤等)、電子素材(セラミック基板、半導体用金型クリーニング材等)を製造・販売しています。エレクトロニクス産業や医療分野など、高度な機能が求められる市場を顧客としています。

製品販売による収益が主たる収益源です。運営は主に同社が行っていますが、セラミック基板等はタイの子会社ELECTRO CERAMICS (THAILAND) CO.,LTD.が、一部の製品は子会社の三和ケミカルが製造を担当しています。

(2) フィルム・シート製品


再帰反射シート、フィルム、ステッカーなどを製造・販売しています。交通安全標識やナンバープレート、自動車用ステッカーなど、安全性や識別性が求められる分野で広く利用されています。

製品販売による収益を得ています。運営は同社のほか、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、ブラジル等の海外製造子会社や、中国の恩希愛(杭州)薄膜有限公司などが製造・販売を担っており、グローバルに展開しています。

(3) 建材関連


住設用押出成形品や住宅用アルミ建材、ビル・マンション向けの高強度・高機能手すりなどを製造・販売しています。住宅メーカーや建設業界などが主な顧客となります。

製品の製造・販売および施工による収益を得ています。この事業の運営は、主に子会社のビニフレーム工業が担っています。

(4) エンジニアリング


鉄鋼・化学・電力・環境分野における産業プラントの設計・施工・設備機器製作や、カーボンニュートラルトランジション設備などを手掛けています。

工事契約に基づく設計・施工・設備納入による対価を収益としています。運営は、主に子会社のダイヤモンドエンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台で推移しています。2025年3月期は売上高が487億円と過去5期で最高水準となり、経常利益も38億円と前期の16億円から大きく回復しました。利益率も7.7%まで改善しており、業績は回復基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 422億円 470億円 440億円 432億円 487億円
経常利益 29億円 41億円 19億円 16億円 38億円
利益率(%) 6.8% 8.6% 4.3% 3.6% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 19億円 5億円 10億円 22億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が34億円増加しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益は前期の8億円から35億円へと大幅に増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 432億円 487億円
売上総利益 122億円 156億円
売上総利益率(%) 28.2% 32.0%
営業利益 8億円 35億円
営業利益率(%) 2.0% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が35億円(構成比29%)、研究開発費が19億円(同15%)を占めています。売上原価に関しては、原材料費や労務費などが含まれますが、詳細な内訳の記載はありません。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで黒字を確保しました。特にフィルム・シート製品は売上が大きく伸長し、利益も前期比で約4倍の26億円となりました。エンジニアリング事業も増収により黒字転換しています。建材関連は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電子・機能製品 165億円 174億円 6億円 9億円 5.4%
フィルム・シート製品 175億円 210億円 7億円 26億円 12.3%
建材関連 71億円 70億円 3億円 1億円 1.1%
エンジニアリング 21億円 36億円 -1億円 4億円 12.0%
連結(合計) 432億円 487億円 8億円 35億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本カーバイド工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、増収に伴う売上債権の増加などにより、前連結会計年度比で収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の減少により、支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入の減少などにより、支出が増加しました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 54億円 41億円
投資CF -24億円 -12億円
財務CF -13億円 -25億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「技術力で価値を創造し、より豊かな社会の発展に貢献する。」をミッションとして掲げています。この精神をベースに、「キラリと光る、価値ある企業グループ」となることを目指しています。

(2) 企業文化


ビジョンを実現するために大切にする価値観として、「誠実であること(Sincerity)」「奉仕すること(Service)」「協力すること(One-NCI)」「創造すること(Innovation)」の4つを掲げており、これらを日々の行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


長期的な視点から2030年のありたい姿を「サステナブルな社会に貢献する、キラリと光る企業グループ」と定め、中期経営計画「NCIキラリ2025」を推進しています。「キラリ=One&Only」の技術と製品を追求し、以下の数値目標を掲げています。

* 2025年度 戦略市場全体での売上高:164億円
* 2025年度 戦略市場分野新製品売上高比率:31%
* 2025年度 営業利益:33億円

(4) 成長戦略と重点施策


「エレクトロニクス」と「セーフティ」を戦略市場と位置づけ、新製品開発と市場開拓に注力しています。また、SDGs経営を推進し、カーボンニュートラルの実現やDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化・競争力強化に取り組んでいます。

* エレクトロニクス市場:半導体・電子部品向け製品の拡販
* セーフティ市場:環境、医薬・化粧品、自動車向け製品の展開
* DX推進:マネジメント、セールス、プロダクション、R&D、バックオフィスの各領域でのデジタル活用

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を全事業活動の礎と捉え、多様な人材の確保と育成に注力しています。「事業リーダーやグローバルリーダーの計画的な育成」「優秀な人材確保と確実な人材育成」「OneNCIでやり遂げる組織風土の醸成」を掲げ、次世代経営者育成プログラムやグローバル人材育成制度などを実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.1歳 17.7年 6,157,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 69.2%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規) 69.7%
男女賃金差異(非正規) 31.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(15%)、中途採用者の管理職比率(29%)、新卒入社3年後在籍率(2022年入社69%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 注力領域における市場環境の急変


同社グループは「エレクトロニクス」および「セーフティ」を注力領域としていますが、これらは半導体や自動車市場等の動向に影響を受けます。関連市場での需要減少や価格下落が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動


製品の主要原材料であるナフサやアルミ地金などの価格変動の影響を受けます。特に粘・接着剤や建材関連事業において、原材料価格の高騰を製品価格に転嫁できない場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 地政学に係るリスク


連結子会社の過半が海外にあり、グローバルに事業を展開しています。進出先での法令変更、政治的混乱、関税措置、テロ・戦争等の地政学的リスクが顕在化した場合、事業活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。