日本カーバイド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本カーバイド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本カーバイド工業は、東京証券取引所プライム市場に上場する企業です。電子・機能製品やフィルム・シート製品、建材関連、エンジニアリングなどの事業を展開しています。直近の業績は、売上高や経常利益などが増加しており、増収増益のトレンドにあります。ファインケミカルや電子素材等のコア技術を強みとしています。


※本記事は、日本カーバイド工業株式会社の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本カーバイド工業ってどんな会社?


電子・機能製品やフィルム・シート製品などの製造販売を展開する企業です。

(1) 会社概要


1935年10月に設立され、1936年に現在の魚津工場が操業を開始しました。1949年には東京証券取引所に上場しています。1980年代以降は電子材料事業へ進出し、タイや米国、中国などへの海外展開を推進しました。現在に至るまで、コア技術を軸に電子素材やフィルム製品などを幅広く展開しています。

従業員数は連結で3,400名、単体で533名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には外資系金融機関が名を連ねており、国内外の機関投資家が上位を占める構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.99%
日本カストディ銀行(信託口) 4.21%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 3.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は杉山孝久が務めており、取締役における社外取締役の比率は約33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
杉山孝久 代表取締役取締役社長社長執行役員CEO 1982年旭硝子(現AGC)入社。同社電子カンパニー電子部材事業本部長などを経て、2020年3月に同社顧問に就任。同年6月に代表取締役社長、2022年6月より現職。
井口吉忠 代表取締役副社長執行役員社長付 1982年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。金融法人部長などを経て、2019年4月に同社常務執行役員に就任。2022年6月に代表取締役専務執行役員CFOなどを歴任し、2026年4月より現職。
長谷川幸伸 取締役常務執行役員研究開発センター長 1985年に同社入社。魚津・早月工場製造部長、フィルム・シート事業本部長、技術担当役員などを経て、2024年4月に取締役常務執行役員CTOに就任。2026年4月より現職。
横田祐一 取締役常務執行役員CFO管理部門担当安全・品質・環境管理部担当 1985年に同社入社。電子・光学製品事業本部電子部材事業部長、経営企画部長などを歴任。2025年4月に取締役常務執行役員電子・機能製品事業本部長などを経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、吉岡早月(弁護士)、門向裕三(元日立オートモティブシステムズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子・機能製品」「フィルム・シート製品」「建材関連」「エンジニアリング」などの事業を展開しています。

(1) 電子・機能製品


ファインケミカル製品、医薬品原薬、医農薬中間体、粘・接着剤などの機能化学品から、半導体用金型クリーニング材やセラミック基板といった電子素材まで幅広い製品を提供しています。主な顧客は、医薬・農薬分野やエレクトロニクス関連分野の企業です。

収益源は、これらの化学製品や電子素材の製造・販売に伴う対価です。運営は同社のほか、子会社の三和ケミカルやタイの海外子会社などが主体となって行っており、国内外の市場に向けて製品を供給しています。

(2) フィルム・シート製品


各種フィルムやステッカー、再帰反射シートなどを製造・販売しています。自動二輪車や自動車向けの機能性フィルムや加飾成形フィルムのほか、車両用ナンバープレートや道路標識などに使用される再帰反射シートを提供しています。

収益源は、これらのフィルムやシート製品の販売代金です。運営は同社に加えて、中国やインド、タイ、インドネシア、ベトナム、ブラジルなどに展開する多数の海外子会社が担っており、グローバルな生産・販売体制を構築しています。

(3) 建材関連


住設用樹脂押出成形品や戸建住宅用アルミ手すり、マンション向けの高強度高機能アルミ手すりなどのアルミ建材を製造・販売しています。豊富なデザインを取り揃え、商業・公共施設向けの外装ルーバーなども提供しています。

収益源は、これら住宅設備用およびビル・マンション向け建材製品の販売代金です。本事業の運営は主に子会社のビニフレーム工業が中心となって行っており、同社の製品の一部も同子会社を通じて販売されています。

(4) エンジニアリング


鉄鋼、化学、電力、環境分野における産業プラントの設計や施工、設備機器の製作を行っています。近年は、カーボンニュートラルトランジション設備の開発や、高圧下での微粉炭吹込技術の開発などにも注力しています。

収益源は、EPC事業(設計・調達・建設を一貫して請け負う事業)などのプラント工事請負代金や設備販売代金です。運営は主に子会社のダイヤモンドエンジニアリングが担当しており、同社グループの設備建設や補修工事も担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は緩やかな成長基調にあります。売上高は430億円台から490億円台へと増加傾向を示しており、それに伴い経常利益も回復し、直近では46億円規模へと成長しています。利益率も上昇傾向にあり、収益性の改善が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 470億円 440億円 432億円 487億円 499億円
経常利益 41億円 19億円 16億円 38億円 46億円
利益率(%) 8.6% 4.3% 3.6% 7.7% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 5億円 6億円 18億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は30%台を維持しており、営業利益率も前期の7.2%から当期は8.2%へと改善しています。全体として堅調な事業運営が利益成長に貢献しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 487億円 499億円
売上総利益 156億円 165億円
売上総利益率(%) 32.0% 33.1%
営業利益 35億円 41億円
営業利益率(%) 7.2% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が37億円(構成比30%)、研究開発費が19億円(同15%)、支払運賃が14億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて売上高が概ね堅調に推移しています。特にフィルム・シート製品事業が売上構成の大きな割合を占めており、成長を牽引しています。建材関連事業やエンジニアリング事業などの分野においても安定的な収益基盤を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電子・機能製品 174億円 168億円
フィルム・シート製品 210億円 224億円
建材関連 70億円 71億円
エンジニアリング 34億円 36億円
連結(合計) 487億円 499億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 41億円 56億円
投資CF -12億円 -13億円
財務CF -25億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループのミッションは「技術力で価値を創造し、より豊かな社会の発展に貢献する。」であり、この精神をベースに「キラリと光る、価値ある企業グループ」となることを目指しています。培ってきた技術を究め、融合させることで、持続可能な社会の実現を目指し、価値ある製品を広く提供する経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、ビジョンを実現するために「私たちが大切にする価値観」を掲げています。具体的には、「誠実であること(Sincerity)」「奉仕すること(Service)」「協力すること(One-NCI)」「創造すること(Innovation)」の4つを重視し、組織横断で能力を発揮できる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「NCIキラリ 2nd STAGE 2030」を策定し、2030年のありたい姿として「サステナブルな社会に貢献する、キラリと光る企業グループ」の実現を目指しています。持続的な成長を実現するステージへと移行し、資本コストや株価を意識した企業価値の向上を図っています。

* 売上高620億円
* 営業利益70億円

(4) 成長戦略と重点施策


エレクトロニクス分野とセーフティ分野を注力領域とし、独自の製品と技術を軸に高付加価値化や新規ビジネスの創出を進めます。また、研究開発の加速やSDGs経営の推進、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を通じて成長基盤を強化し、積極的な戦略投資と株主還元の拡充を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を全ての事業活動の基盤と位置づけ、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。事業リーダーやグローバル人材の計画的な育成を進めるとともに、社員が能力を発揮できるよう、フレックスタイム制度や在宅勤務制度を導入するなど、自律的かつ効率的に働ける職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 17.1年 6,389,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 79.2%
労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) 66.8%
労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) 69.8%
労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) 29.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(16%)、外国人管理職比率(34%)、中途採用管理職比率(34%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 注力領域における市場環境の急変


同社の注力領域であるエレクトロニクス分野やセーフティ分野において、関連市場での販売数量の減少や製品価格の下落が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、製品の高付加価値化や事業環境の変化に強い収益体質の構築を進めています。

(2) 原材料価格の変動


主力製品の原材料であるナフサ価格やアルミ地金価格などが変動し、そのコスト上昇分をタイムリーに製品価格へ転嫁できなかった場合、収益性が低下するリスクがあります。国内外の新たな調達先の開拓やグループ内での購買情報の共有により、コスト変動への対応に努めています。

(3) 地政学に係るリスク


同社グループは世界各地で生産・販売を展開しており、海外拠点のある国や地域での予期せぬ法令変更、輸出入規制、経済制裁、社会的・政治的混乱が発生した場合、グローバルな事業活動に支障をきたし、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 環境規制・気候変動対応


環境関連規制の強化に伴い、製造や保管に関連する費用が発生するリスクがあります。また、炭素税の導入やエネルギーコストの増加などが想定されますが、省エネ活動の推進や再生可能エネルギーへの転換を進め、環境負荷の低減とコスト抑制を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。