※本記事は、日本精化の有価証券報告書(第157期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本精化ってどんな会社?
機能性製品と環境衛生製品の製造販売を主力とし、サステナブル素材の開発に注力する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1918年に日本樟脳として設立され、1971年に現在の日本精化に商号変更しました。1997年に東京証券取引所市場第一部に上場し、現在はプライム市場に移行しています。近年は中国や台湾に合弁会社を設立するなど海外展開を進めるほか、化粧品・医薬品原料の製造プラントを相次いで新設し、事業基盤を強化しています。
従業員数は連結で719名、単体で419名です。大株主の筆頭は事業会社の太陽鉱工で、第2位は日本精化企業持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太陽鉱工 | 17.04% |
| 日本精化企業持株会 | 10.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役執行役員社長は矢野浩史氏が務めています。取締役5名のうち、社外取締役は2名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢野浩史 | 代表取締役執行役員社長 | 1989年同社入社。企画室長、執行役員、経営企画室長、取締役精密化学品事業本部長、リピッド事業部長を経て、2020年6月より現職。 |
| 川林正信 | 取締役常務執行役員グループ生産統括兼プラントエンジニアリング部管掌 | 1974年同社入社。高砂工場長、執行役員、生産技術本部長などを経て、2015年6月常務執行役員、2017年6月グループ生産統括に就任し現職。 |
| 大橋幸浩 | 取締役常務執行役員グループ研究開発統括兼研究開発本部長 | 2000年同社入社。香粧品研究室長、執行役員、香粧品事業本部長、研究所長などを経て、2024年6月より常務執行役員グループ研究開発統括ならびに現職。 |
社外取締役は、太田進(元東レエンジニアリング社長)、松若恵理子(Stand by C Woman社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機能性製品」「環境衛生製品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 機能性製品
化粧品用原料、医薬品用リン脂質、ウールグリース誘導体、機能性コーティング剤などの製造販売や、薬理・安全性試験の受託を行っています。国内外の化粧品メーカーや医薬品メーカー、各種産業分野の企業を主な顧客として事業を展開しています。
製品の販売代金や試験受託料が主な収益源です。運営は同社のほか、海外合弁会社の四川日普精化や日隆精化國際などが製品の製造販売を担い、子会社の日精バイリスが薬理・安全性試験の受託事業を行っています。
■(2) 環境衛生製品
業務用洗剤、薬用石けん液、除菌・殺菌剤、手指衛生関連製品などの製造販売を行っています。食品工場や給食施設、医療・介護施設、および一般のオフィスビルなどを主な顧客として事業を展開しています。
各種衛生対策製品の販売代金が主な収益源です。当事業の運営は主に子会社のアルボースが担っており、サステナブル対応製品の開発やグループ内のシナジーを活かした事業推進を行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業などを展開しています。大阪府や兵庫県を中心に賃貸オフィスビルや賃貸住宅などを所有し、テナント企業や一般の入居者を顧客としています。
テナント等からの不動産賃料が主な収益源です。不動産の管理業務は同社から委託を受けた子会社の日精バイリスが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一時的な増減はあるものの概ね300億円台で堅調に推移しています。経常利益は40億円から50億円台で安定して推移しており、利益率も13%から15%程度の高水準を維持しています。直近の決算でも増収増益を達成しており、安定した収益基盤と高い収益性を兼ね備えた業績トレンドがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 305億円 | 334億円 | 368億円 | 335億円 | 357億円 |
| 経常利益 | 42億円 | 51億円 | 54億円 | 45億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 13.6% | 15.3% | 14.6% | 13.3% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 30億円 | 34億円 | 29億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益状況を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益および営業利益ともに拡大しています。売上総利益率および営業利益率も前年度から改善しており、原価低減や販売価格の適正化などの取り組みが収益性の向上に寄与していることが確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 335億円 | 357億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 109億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 30.5% |
| 営業利益 | 42億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 12.5% | 13.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が13億円(構成比22%)、技術研究費が10億円(同16%)、運送費が8億円(同13%)を占めています。売上原価は248億円であり、売上原価合計に対する大部分が製造や仕入れにかかる費用となっています。
■(3) セグメント収益
主力事業である機能性製品が全体の収益を牽引しています。化粧品用機能性油剤などの海外向け販売が増加し、増収ならびに大幅な増益を達成しました。環境衛生製品は、原価低減や販売価格の改定に取り組んだことで利益率が改善し、堅調な利益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能性製品 | 262億円 | 284億円 | 36億円 | 43億円 | 15.1% |
| 環境衛生製品 | 71億円 | 70億円 | 5億円 | 5億円 | 7.1% |
| その他 | 3億円 | 2億円 | 1億円 | 0.6億円 | 30.0% |
| 連結(合計) | 335億円 | 357億円 | 42億円 | 49億円 | 13.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 63億円 | 41億円 |
| 投資CF | -6億円 | -18億円 |
| 財務CF | -25億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「日本精化は化学を通じて社会に貢献する」「日本精化は我社をとりまく全ての人に貢献する」「日本精化は社員の自己実現に貢献する」という3つの経営理念を最上位の価値観として掲げています。また、現在の存在意義を明確にしたパーパスとして「「カガク」と「キレイ」のチカラで笑顔あふれるサステナブル社会創造に貢献し続ける」を定めています。
■(2) 企業文化
同社は基本的な価値観や倫理観を共有し、日々の業務に反映させていくために「社員行動指針」と「倫理綱領」を制定しています。また、多様性を活かしたイノベーションを重視し、性別・年齢・経験・価値観などさまざまな多様性を活かすことができる組織の実現や、従業員一人ひとりが成長を実感しチャレンジを続けるカルチャーの醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年という未来における同社のありたい姿を表現した「NFC VISION 2030」を掲げ、これを達成するための第14次中期経営計画を推進しています。同計画では資本政策の目安としてDOE(連結純資産配当率)の目標値を定めているほか、以下の経営目標数値を掲げています。
* 売上高:380億円(2026年度見直し後目標)
* 営業利益:58億円
* EBITDA:75.1億円
* ROIC:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンの達成に向けて「成長基盤強化」「サステナビリティ」「ガバナンス強化」の3つを事業活動の基本方針としています。機能性製品では欧米ブランドによるサステナブル素材の需要拡大を見据えたグローバル市場への販売拡大や、ペロブスカイト型太陽電池用素材の量産化技術の確立に注力します。環境衛生製品では濃縮タイプなどのサステナブル製品開発を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は経営資本の1つである「人」の重要性を認識し、人的資本の最大化に向けて「人財育成」と「社内環境整備」の2つの側面から取り組んでいます。事業戦略の実現に貢献できる人財ポートフォリオを描き、階層別集合研修などによりキャリア形成を支援するとともに、多様な価値観に寄り添いワークライフバランスの向上を図る柔軟な働き方の推進に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 14.4年 | 7,663,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 97.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める中途採用者の割合(74.1%)、正社員の有給休暇取得率(85.2%)、障がい者雇用率(2.73%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大口顧客への依存に関するリスク
同社グループには継続的な販売先となっている大口顧客が存在します。顧客との取引条件の変更や契約解除、顧客製品の需要減退などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規顧客の開拓を進め、特定顧客の動向に左右されない事業基盤の確立に取り組んでいます。
■(2) 原材料の購入価格・調達に関するリスク
主な原材料として動植物系油脂を使用しており、急激な価格変動が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。コスト低減や販売価格への転嫁に努めるとともに、購入先での自然災害や物流停滞に備え、複数の購買先から調達するなど安定供給の確保を図っています。
■(3) 競合との競争に関するリスク
類似した製品やサービスを供給する競合企業の存在により、市場ニーズに対応した製品の導入遅れや価格競争が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、独自技術を活かした事業領域の拡大やコスト低減を進める一方、将来性の乏しい事業からの撤退を図り競争力を維持しています。



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