※本記事は、日本精化株式会社の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本精化ってどんな会社?
機能性製品や環境衛生製品の開発・製造を手がけ、化学の力でサステナブルな社会の実現に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1918年に日本樟脳として設立され、1971年に現在の日本精化へと社名変更しました。1979年に大阪証券取引所第二部へ上場し、1997年には東京証券取引所第一部へ上場を果たしました。その後も積極的な事業展開を進め、現在は東京証券取引所プライム市場にて事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で713名、単体で415名体制となっています。大株主の構成をみると、筆頭株主は事業会社である太陽鉱工で、第2位は従業員の資産形成を支援する日本精化企業持株会、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、安定した株主基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太陽鉱工 | 17.68% |
| 日本精化企業持株会 | 9.77% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役執行役員社長は矢野浩史氏が務めています。全取締役5名のうち、社外取締役の比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢野浩史 | 代表取締役執行役員社長 | 1989年同社入社。経営企画室長、精密化学品事業本部長、リピッド事業部長などを経て、2020年より現職。 |
| 川林正信 | 取締役常務執行役員グループ生産統括兼プラントエンジニアリング部管掌 | 1974年同社入社。高砂工場長、生産技術本部長などを経て、2015年より現職。 |
| 大橋幸浩 | 取締役常務執行役員グループ研究開発統括兼研究開発本部長 | 2000年同社入社。香粧品研究開発部長、香粧品事業本部長、研究所長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、太田進(元東レエンジニアリング代表取締役社長)、松若恵理子(Stand by C Woman代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機能性製品」「環境衛生製品」および「その他」事業を展開しています。
■機能性製品
化粧品用原料、医薬品用リン脂質、ウールグリース誘導体、機能性コーティング剤などの機能性素材を幅広く製造・販売しています。また、薬理・安全性試験の受託サービスなども提供し、多様な業界のニーズに応える高付加価値な製品群を展開しています。
収益は、国内外の顧客に対する製品の販売代金や受託サービスの手数料などから得ています。運営は主に日本精化が行うほか、販売や調達等を日精バイリスや日精プラステックなどの子会社と連携し、海外向けには四川日普精化有限公司や日隆精化國際股份有限公司が展開しています。
■環境衛生製品
フードビジネスや医療・介護施設等に向けた業務用洗剤、薬用石けん液、除菌・殺菌剤などの感染予防対策製品や環境衛生製品を開発・製造・販売しています。サステナビリティに配慮した製品の開発にも注力し、濃縮化製品の普及などを進めています。
主な収益源は、食品工場や医療・介護施設などの顧客に販売する製品代金です。当事業の運営は、子会社であるアルボースが専門的に担い、社会の衛生環境の向上に貢献しています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループが保有するオフィスビルや賃貸住宅などの不動産賃貸事業を展開しています。
収益は、テナントや入居者から受け取る不動産の賃貸収入が中心となっています。当該事業は子会社である日精バイリスが運営し、日本精化が同社に不動産の管理業務を委託する体制をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は330億円から360億円台で安定して推移しています。一方、利益面では収益性の改善等により経常利益および当期利益が拡大基調にあり、利益率も13%台から16%台へと大きく向上し、底堅い事業成長と高収益化を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 334億円 | 368億円 | 335億円 | 357億円 | 338億円 |
| 経常利益 | 51億円 | 54億円 | 45億円 | 52億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 15.3% | 14.6% | 13.3% | 14.6% | 16.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 35億円 | 41億円 | 33億円 | 39億円 | 44億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率は30.5%から32.9%へと改善しました。これに伴い、営業利益も増加し、営業利益率は13.7%から15.8%へと向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 338億円 |
| 売上総利益 | 109億円 | 111億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.5% | 32.9% |
| 営業利益 | 49億円 | 53億円 |
| 営業利益率(%) | 13.7% | 15.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比24%)、技術研究費が9億円(同16%)、運送費が8億円(同13%)を占めています。売上原価は227億円であり、売上原価合計に対する各項目の構成は材料費などの製造原価が中心となっています。
■(3) セグメント収益
機能性製品は一部製品の販売減少により減収でしたが、コストダウン等による収益性改善で増益となりました。環境衛生製品は新製品の拡販や価格改定により増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能性製品 | 284億円 | 264億円 | 43億円 | 47億円 | 17.8% |
| 環境衛生製品 | 70億円 | 72億円 | 5億円 | 6億円 | 7.9% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0.6億円 | 0.8億円 | 34.3% |
| 調整額 | - | - | 0.6億円 | 0.8億円 | - |
| 連結(合計) | 357億円 | 338億円 | 49億円 | 53億円 | 15.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で得た資金で借入の返済や事業投資をまかなう「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 68億円 |
| 投資CF | -18億円 | -22億円 |
| 財務CF | -6億円 | -40億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「化学を通じて社会に貢献する」「我社をとりまく全ての人に貢献する」「社員の自己実現に貢献する」という経営理念を掲げています。また、「カガク」と「キレイ」のチカラで笑顔あふれるサステナブル社会創造に貢献し続けることをパーパス(存在意義)とし、2030年のありたい姿「NFC VISION 2030」を描いています。
■(2) 企業文化
同社は、普遍的なミッションである経営理念を最上位の価値観・倫理観とし、それを業務に反映させていくために「社員行動指針」と「倫理綱領」を制定しています。性別や年齢、価値観などの多様性を競争力の源泉と捉え、互いの多様性を尊重しながら、従業員一人ひとりが安心して活躍できる職場づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、第14次中期経営計画において、2030年度のありたい姿の達成に向けた定量目標を設定しています。2026年度の目標として以下の数値を掲げています。
・売上高 380億円
・営業利益 58億円
・EBITDA 75.1億円
・ROIC 8.0%
・売上高研究開発費比率 2.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「成長基盤強化」「サステナビリティ」「ガバナンス強化」を基本方針として事業活動を推進しています。機能性製品ではグローバル市場への販売拡大やオープンイノベーションを推進し、環境衛生製品では新規顧客開拓とサステナビリティ対応製品の研究開発強化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、組織の活性化を促し従業員が能力を発揮できる環境を整備するとともに、一人ひとりの能力向上に取り組んでいます。階層別研修や自発的な学びの機会を提供し、キャリア形成を支援しています。また、従業員の多様な価値観に寄り添い、柔軟な働き方の推進や健康で安心して働ける職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 14.6年 | 8,187,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 104.0% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性の割合(21.1%)、正社員採用者に占める中途採用者の割合(77.8%)、正社員の有給休暇取得率(86.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済の動向に関するリスク
同社グループの事業活動は、マクロ経済や市場の動向、国内外の景気変動等の影響を受けるおそれがあります。景気後退により個人消費や設備投資が低下した場合、提供する製品やサービスに対する需要が減少し、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合との競争に関するリスク
同社の事業領域において、類似した製品やサービスを供給する競合の影響を受ける可能性があります。市場ニーズに対応した製品の導入遅れや、競合と対等な価格設定ができない場合などに、収益性が低下し業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 大口顧客への依存に関するリスク
同社グループには継続的な販売先となる大口顧客が存在します。これらの顧客との取引条件の変更や契約解除、顧客の製品需要の減退、あるいは経営状況の悪化が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、新規顧客開拓により事業基盤の確立に取り組んでいます。
■(4) 原材料の購入価格と調達に関するリスク
同社グループは主な原材料として動植物系油脂を使用しています。急激な価格変動が生じた場合や、社会的混乱や需要急増により原材料の供給不足や物流停滞が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。複数の購買先から調達するなど、安定調達とリスク低減に努めています。



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