※本記事は、株式会社ジェイエスピー の有価証券報告書(第68期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイエスピーってどんな会社?
発泡技術を主体としたプラスチック製品の製造販売をグローバルに展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1962年に日本瓦斯化学工業(現 三菱瓦斯化学)の出資により日本スチレンペーパーとして設立されました。1989年にジェイエスピーに社名変更し、1990年に東証二部上場、2005年に東証一部へ指定替えされました。北米、欧州、アジア、南米など海外にも広く製造・販売拠点を拡大しグローバルに事業を展開しています。
現在の従業員数は連結3,096名、単体751名です。筆頭株主は事業会社の三菱瓦斯化学で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱瓦斯化学 | 47.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.63% |
| JSP取引先持株会 | 4.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大久保知彦氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大久保知彦 | 代表取締役社長 | 三菱瓦斯化学入社。同社天然ガス系化学品カンパニー化成品事業部長等を経て、2021年より現職。 |
| 小森康 | 代表取締役専務執行役員経理財務本部長 | 同社入社。経理財務本部経理部長などを経て、2026年より現職。 |
| 竹村洋介 | 取締役専務執行役員総務人事本部長 | 同社入社。総務人事本部総務部長などを経て、2026年より現職。 |
| 島義和 | 取締役常務執行役員サプライチェーン統括本部長 | 三菱瓦斯化学入社。同社天然ガス系化学品カンパニー新潟研究所長などを経て、2026年より現職。 |
| 木浦智之 | 取締役常務執行役員情報システム部担当、内部監査部担当 | 三菱瓦斯化学入社。同社天然ガス系化学品カンパニー有機化学品事業部長などを経て、2025年より現職。 |
| 半根隆巳 | 取締役常務執行役員押出事業本部長 | 同社入社。建築土木資材事業部長などを経て、2026年より現職。 |
| 矢挽忠雄 | 取締役 | 同社入社。物流資材本部長、研究開発本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 佐々木一敏 | 取締役 | 同社入社。高機能材事業部長、ビーズ事業本部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、池田隆之(元東芝テック社長)、伊藤潔(元栗田工業代表取締役専務)、杉山涼子(杉山・栗原環境事務所代表取締役)、倉島薫(元味の素取締役執行役専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「押出事業」および「ビーズ事業」を展開しています。
■押出事業
食品容器用の発泡ポリスチレンシート(スチレンペーパー)や、産業用包装材・フラットパネルディスプレイ向け発泡ポリエチレンシート、建築・土木分野向けの押出発泡ボードなどの製造販売を行っています。幅広い生活資材から産業・建築向けの各種製品を提供し、環境対応型製品の展開も進めています。
収益は主に製品の販売対価として顧客から受け取っています。事業の運営は同社が行い、シートの成形加工品などの販売や委託生産をJSPパッケージング、ケイピー、ミラックスなどの国内子会社が担っています。海外では中国の現地法人が一般包装資材の仕入販売を行っています。
■ビーズ事業
発泡ポリオレフィンビーズ(ARPRO)や発泡性ポリスチレン(スチロダイア)などの製造販売を行っています。自動車部品をはじめとする高機能材製品や、水産・農業分野で利用される発泡性ビーズ製品などを幅広く展開しており、次世代製品としてリサイクル材の活用や軽量化にも取り組んでいます。
収益は各市場での製品販売によって顧客から受け取っています。事業の運営は同社が行うほか、JSPモールディング、北菱イーピーエス、本州油化、NK化成といった国内子会社が成型品の製造や委託加工を担っています。海外では米欧やアジア各国の現地法人が製造販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。利益面では一時的な落ち込みは見られるものの、コスト削減や高付加価値製品の販売好調により、直近では利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,141億円 | 1,317億円 | 1,351億円 | 1,423億円 | 1,455億円 |
| 経常利益 | 49億円 | 34億円 | 81億円 | 73億円 | 81億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 2.6% | 6.0% | 5.1% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 15億円 | 39億円 | 29億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回っています。原材料価格やエネルギーコストの上昇が見込まれる中、適切な製品価格の改定や高付加価値製品へのシフトを推進したことが増益に寄寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,423億円 | 1,455億円 |
| 売上総利益 | 365億円 | 384億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 26.4% |
| 営業利益 | 69億円 | 78億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が84億円(構成比27.3%)、販売運賃が79億円(同25.7%)を占めています。売上原価は1,070億円で、売上原価合計に対する構成比は73.6%となっています。
■(3) セグメント収益
押出事業は、建築・住宅分野向けの付加価値の高い製品や一般包材が好調に推移し増益となりました。ビーズ事業では、中国や台湾での包装材需要が好調だったことに加え、高機能材製品の販売増と固定費削減の取り組みにより増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 押出事業 | 494億円 | 496億円 | 16億円 | 21億円 | 4.2% |
| ビーズ事業 | 929億円 | 959億円 | 64億円 | 66億円 | 6.9% |
| 連結(合計) | 1,423億円 | 1,455億円 | 69億円 | 78億円 | 5.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 89億円 | 163億円 |
| 投資CF | -86億円 | -86億円 |
| 財務CF | -38億円 | -37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造的行動力による社会への貢献」を企業理念に掲げています。コア事業である発泡樹脂製品および新しい素材を用い、省資源・省エネルギーで社会生活の利便性向上に寄与する価値を社会に提供することを使命としており、すべてのステークホルダーから信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
長期的な方向性として、「顧客と消費者に感動を届ける」「株主と地域社会に満足を届ける」「社員一人ひとりがワクワク感を持って仕事をする」という思いを込めた「Deliver with WOW!」を経営方針としています。社会的要請への適応を徹底し、環境・社会・企業統治における企業責任を強く意識した文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Change for Growth 2026」において、「グループ全体の収益力強化」を基本コンセプトの第一に掲げ、資本効率を意識した経営を実施しています。長期ビジョン『VISION2027』の定量的目標も掲げています。
* 売上高 1,600億円
* 営業利益 100億円
* 営業利益率 6.3%
■(4) 成長戦略と重点施策
「ARPRO事業」「建築住宅断熱材」「FPD(フラットパネルディスプレイ)表面保護材」「新たな事業領域」の4つを成長エンジンに位置付けています。海外市場に向けた地理的拡大や新規需要の掘り起こしを推進するとともに、リサイクル材の活用や省エネ性能へのニーズに応える環境対応型製品の展開に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員一人ひとりがワクワク感を持って仕事をする」ことを人材戦略の軸としています。役割や能力を重視した新人事制度の導入や、育児と仕事の両立を支援する社内環境整備を進めています。また、階層別研修による人材育成の強化や、多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティの推進により、働きがいのある企業風土の醸成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 14.8年 | 7,692,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 78.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.8% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 48.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者比率(52.0%)、障がい者雇用率(4.5%)、休業災害件数(34件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要市場環境の変化と価格競争
製品需要や経済情勢、技術動向の変化が事業に影響を及ぼす可能性があります。また、多くがライフサイクルの長い製品であるため厳しい価格競争に晒されており、特にアジア地域での現地企業の台頭により競争が激化するリスクがあります。
■(2) 原燃料価格等の変動と海外展開リスク
主な原材料となる原油・ナフサ価格の変動が製造コストに直接影響し、製品価格への転嫁が遅れると業績悪化につながる恐れがあります。さらに、海外事業における各地域の政治経済情勢、為替変動、法規制の変更なども事業活動の支障となるリスクをはらんでいます。
■(3) 情報セキュリティと自然災害リスク
サイバー攻撃や情報システムの重大な障害、情報漏えいによるリスクが想定されます。また、多発する自然災害や事故により、工場等の生産設備が被害を受けることで生産・物流網が停止し、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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