※本記事は、株式会社ジェイエスピー の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイエスピーってどんな会社?
発泡プラスチック製品のパイオニアとして、産業資材から生活資材まで幅広い分野に製品を提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1962年に設立され、発泡ポリスチレンペーパーの製造を開始しました。1982年には現在の主力製品の一つであるARPRO(発泡ポリオレフィンビーズ)の製造を開始し、自動車部材等への展開を進めました。2003年に三菱化学フォームプラスティックと合併し、事業基盤を拡大しました。2005年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ指定替えを行っています。2015年には三菱瓦斯化学が親会社となりましたが、2023年の株式異動により、現在はその他の関係会社となっています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は3,053名、単体では762名が在籍しています。大株主構成を見ると、筆頭株主は化学メーカーの三菱瓦斯化学で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱瓦斯化学 | 47.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.49% |
| JSP取引先持株会 | 4.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大久保知彦氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大久保知彦 | 代表取締役社長 | 三菱瓦斯化学常務執行役員などを経て2021年6月より現職。 |
| 小森康 | 代表取締役常務執行役員 | 同社経理財務本部経理部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 島義和 | 取締役常務執行役員 | 三菱瓦斯化学執行役員などを経て2024年4月より現職。 |
| 木浦智之 | 取締役常務執行役員 | 三菱瓦斯化学執行役員などを経て2025年4月より現職。 |
| 矢挽忠雄 | 取締役常務執行役員 | 同社執行役員研究開発本部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 佐々木一敏 | 取締役常務執行役員 | 同社執行役員高機能材事業部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 竹村洋介 | 取締役常務執行役員 | 同社執行役員総務人事本部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 半根隆巳 | 取締役執行役員 | 同社執行役員建築土木資材事業部長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、池田隆之(元東芝テック社長)、伊藤潔(元栗田工業代表取締役専務)、杉山涼子(杉山・栗原環境事務所代表取締役)、倉島薫(元味の素専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「押出事業」および「ビーズ事業」を展開しています。
■押出事業
ポリスチレンやポリエチレンなどの樹脂を押出発泡技術を用いてシートやボード状に加工し、食品容器用シート、産業用包装材、建築用断熱材などを製造販売しています。主要製品には「スチレンペーパー」「ミラマット」「ミラフォーム」などがあり、食品包装から住宅建築まで幅広い顧客に提供されています。
製品の販売対価として顧客から収益を受け取っています。運営は主に同社が行い、加工品の製造販売等をジェイエスピーパッケージング、ケイピー、ミラックス、セイホクパッケージ、三昌フォームテックなどが担っています。
■ビーズ事業
ビーズ発泡技術をベースに、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡性ポリスチレンなどを製造販売しています。主力製品の「ARPRO」は自動車部品や緩衝材としてグローバルに使用されており、軽量化や衝撃吸収性に優れています。
製品の販売対価として顧客から収益を受け取っています。運営は同社に加え、ジェイエスピーモールディング、北菱イーピーエス、本州油化、NK化成などの国内子会社や、欧米・アジアの海外子会社が現地での製造販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では原材料価格の変動などの影響を受け、増減が見られます。特に2024年3月期には利益率が回復しましたが、2025年3月期は再びやや低下しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,027億円 | 1,141億円 | 1,317億円 | 1,351億円 | 1,423億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 49億円 | 34億円 | 81億円 | 73億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 4.3% | 2.6% | 6.0% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 21億円 | 15億円 | 39億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回り、売上総利益率は若干低下しました。営業利益についても、販管費の増加などにより減益となっています。全体として、増収ながらもコスト増により利益率が圧迫される傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,351億円 | 1,423億円 |
| 売上総利益 | 352億円 | 365億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.1% | 25.7% |
| 営業利益 | 76億円 | 69億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が83億円(構成比28%)、販売運賃が76億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
押出事業は、製品価格改定が進んだことや建築・住宅分野の高付加価値製品が好調だったため増収となりましたが、産業資材製品の販売減により減益となりました。ビーズ事業は、価格改定効果で増収となったものの、人件費高騰などの影響で減益となりました。両事業とも増収減益の傾向となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 押出事業 | 478億円 | 494億円 | 22億円 | 16億円 | 3.3% |
| ビーズ事業 | 873億円 | 929億円 | 65億円 | 64億円 | 6.9% |
| 調整額 | -10億円 | -9億円 | -11億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 1,351億円 | 1,423億円 | 76億円 | 69億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 157億円 | 89億円 |
| 投資CF | -81億円 | -86億円 |
| 財務CF | -84億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造的行動力による社会への貢献」を企業理念として掲げています。コア事業である発泡樹脂製品や新しい素材を活用し、省資源・省エネルギーを通じて社会生活の利便性向上に寄与する価値を提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
長期ビジョンにおいて「Deliver with WOW!」という経営方針を掲げ、顧客、消費者、株主、地域社会、そして社員を含むすべてのステークホルダーに感動と満足を届けることを目指しています。また、サステナビリティ経営を重視し、環境対応力の高さを成長の源泉と位置づけるとともに、働きがいのある企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Change for Growth 2026」および長期ビジョン「VISION2027」において、以下の数値目標を掲げています。
* 2027年3月期 売上高:1,600億円
* 2027年3月期 営業利益:100億円
* 2027年3月期 営業利益率:6.3%
■(4) 成長戦略と重点施策
「真のグローバルサプライヤー」を目指し、以下の4つの成長エンジンを進むべき事業領域と位置づけています。
1. ARPRO事業(グローバル展開とリサイクル材活用)
2. 建築住宅断熱材(高付加価値製品の拡販)
3. フラットパネルディスプレイ表面保護材(新規用途開拓)
4. 新たな事業領域(M&Aおよび新規事業創出)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を経済的・社会的価値創出の源泉と位置づけ、社員一人ひとりの成長を重視しています。階層別研修の充実による人材育成の強化や、職責・役割に基づく新人事制度への移行を進めています。また、多様なキャリアパスへの対応、育児休業取得推進などを通じて、働きがいのある企業風土の醸成とエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 15.1年 | 7,539,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.5% |
| 男性育児休業取得率 | 45.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者比率(67.3%)、障がい者雇用率(4.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原燃料価格等の変動リスク
同社グループの製品製造には原油やナフサ由来の原料・燃料が使用されており、これらの価格変動の影響を強く受けます。原燃料価格が上昇した際に製品価格への転嫁が遅れると業績が悪化するリスクがあります。また、価格下落局面では製品販売価格の値下げ要請が生じる可能性があります。
■(2) 主要市場環境の変化
中期経営計画において、ARPRO事業や建築住宅断熱材などを成長の柱としていますが、経済情勢や需要動向、技術革新、法規制の変更などにより計画通りに進まない可能性があります。特に米国の通商政策や中国経済の動向などが、需要や事業環境に不透明感をもたらすリスクがあります。
■(3) 海外事業展開リスク
北米、欧州、アジアなどグローバルに事業を展開しているため、各地域の政治・経済情勢、法規制、為替変動などの影響を受けるリスクがあります。各国の社会情勢の変化や労働争議、貿易摩擦などが事業活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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