※本記事は、ケミプロ化成株式会社 の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケミプロ化成ってどんな会社?
同社は、紫外線吸収剤等のプラスチック添加剤や木材保存薬剤などを製造・販売する開発型化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1982年に有機化学工業薬品の製造・販売を目的として設立されました。1995年に日本証券業協会に店頭登録し、1998年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、子会社の吸収合併や福島研究所・工場の開設を経て事業基盤を強化しています。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
同社の従業員数は単体で216名です(連結子会社なし)。筆頭株主は株式会社ケアシステムズ、第2位は公益財団法人福岡直彦記念財団となっており、法人や財団が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ケアシステムズ | 20.86% |
| 公益財団法人 福岡直彦記念財団 | 16.79% |
| 福岡 靖介 | 10.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼管理本部長は兼俊 寿志氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 兼俊 寿志 | 代表取締役社長兼管理本部長 | 第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身。2013年に同社へ出向し、財務経理部長、管理本部長などを歴任。2019年4月より現職。 |
| 河井 典生 | 常務取締役営業本部長兼購買部長兼コンプライアンス担当役員 | 1989年同社入社。営業本部長、購買部長などを歴任。2024年7月より現職。 |
| 赤瀬 寿 | 常務取締役生産本部長兼福島工場長 | 1984年ISC化学(現明石工場)入社。相生工場長、生産本部長などを経て、2023年2月より現職。 |
| 箱崎 竜也 | 取締役生産技術部統括本部長兼姫路工場生産技術部長兼営業本部新規ビジネス推進部技術担当役員 | 1995年同社入社。各工場の生産技術部長を歴任し、2024年7月より現職。 |
| 大學 隆行 | 取締役営業本部 副本部長兼営業部長兼営業管理部長 | 1995年同社入社。営業部長、営業管理部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、柳 雅二(元高木証券専務執行役員)、寶田 健太郎(スターライトコンサルティング代表取締役)、田中 耕司(資本政策研究所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学品事業」および「ホーム産業事業」を展開しています。
■化学品事業
紫外線吸収剤、写真薬中間体、電子材料、製紙用薬剤、酸化防止剤などの製造販売を行っています。主な顧客は化学メーカー等の企業です。特に紫外線吸収剤は主力製品であり、大手化学メーカーへのOEM供給なども行っています。
収益は、主に製品の販売対価として顧客から受け取ります。一部、受託製造製品については、顧客から原材料の有償支給を受け、加工後に販売する形態をとっています。運営は主に同社が行っていますが、関連会社のハリマトランジットも一部製造に関与しています。
■ホーム産業事業
木材保存薬剤の製造販売を行っています。住宅や木材を使用する建築物の耐久性を高めるための薬剤を提供しており、主な顧客は木材加工業者や関連商社等です。
収益は、木材保存薬剤等の製品販売対価として顧客から受け取ります。近年は環境配慮型製品の開発や、ホームセンター向け塗料、受託加工品の取り込みなどにより販売網の拡充を図っています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は90億円台で推移しており、概ね横ばいから微増傾向にあります。利益面では、経常利益が1億円台から2億円台の間で変動していますが、黒字を維持しています。直近の2025年3月期は前期比で増収増益となり、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 97億円 | 98億円 | 92億円 | 97億円 |
| 経常利益 | 1.1億円 | 2.6億円 | 1.2億円 | 1.3億円 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 2.7% | 1.2% | 1.4% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.8億円 | 1.8億円 | 0.7億円 | 1.3億円 | 1.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率は若干低下したものの、利益額としては安定しています。営業利益については、前期と比較して減益となりましたが、一定の水準を確保しています。コスト高騰の影響を受けつつも、売上の増加でカバーしようとする傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 97億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.2% | 15.1% |
| 営業利益 | 4.8億円 | 4.0億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.1億円(構成比20%)、研究開発費が2.1億円(同20%)を占めています。また、売上原価については、材料費が44億円(構成比57%)、経費が23億円(同30%)を占めています。
■(3) セグメント収益
化学品事業は、酸化防止剤や受託製造製品の伸長により増収となりましたが、利益面では減益となりました。ホーム産業事業は、木材保存薬剤の販売が増加し、増収増益を達成しました。全体として売上規模は拡大していますが、化学品事業の利益率低下が全体の利益率に影響を与えています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 化学品事業 | 83億円 | 88億円 | 8.7億円 | 8.0億円 | 9.1% |
| ホーム産業事業 | 9.4億円 | 9.5億円 | 0.5億円 | 0.5億円 | 5.4% |
| 連結(合計) | 92億円 | 97億円 | 4.8億円 | 4.0億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ケミプロ化成は、営業活動で資金を獲得し、投資活動で設備更新等を行い、財務活動で借入金の返済等を実施しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前当期純利益の計上や売上債権・棚卸資産の減少、仕入債務の増加などにより、前事業年度に引き続き資金を獲得しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、老朽設備や基幹システムの更新を目的とした設備投資により、資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期・長期借入金の返済やリース債務の返済により、資金を使用しました。これらの結果、当事業年度末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 13億円 |
| 投資CF | -2.1億円 | -2.9億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | -7.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来「社会に貢献する開発型企業」としての役割を認識し、化学のプロ集団として常に技術開発に挑戦することを基本方針としています。独自の新しい発想や技術力をもとに高付加価値製品を創出し、人々の生活を豊かにすることに存在価値を見出しています。また、株主への利益還元、従業員が意欲的に働ける環境整備、地域社会との共存、コンプライアンス推進を通じて企業価値を高めることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、第3期中期経営計画において「Flexible for Sustainability(しなやかな企業となり、持続可能性を追求する)」をコンセプトとしています。「Flexible(しなやかな)」には、消費者目線(社会性)、なくてはならない(永続性)、役割分担が上手い(応用力)、環境順応性が高い(柔軟性)、永く稼げる安定収益モデルを持つ(強靭)という意味が込められています。変化に柔軟に対応する意識や企業風土の醸成を進めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 経常利益率:5%以上
* 自己資本利益率(ROE):7%以上
* 自己資本比率:39%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「稼ぐ力の向上」「収益体質の強化」「持続可能性の追求」を重点方針としています。具体的には、マーケットに訴求できる新製品や低環境負荷製品の開発、受託製品の展開強化、パートナービジネスの拡大などに取り組んでいます。また、生産性向上やコスト削減のためのIT化推進、工場美化、働き方改革なども進めています。
* NEWフロンティアR&D:マーケットに訴求できる製品開発、新規事業展開
* パートナービジネス拡大:受託製品の展開強化
* メインビジネス強化:既存事業の販売強化、低環境負荷製品の開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本をサステナブルな企業活動の源泉と位置づけ、採用、育成、社内環境整備を一体的に推進しています。特にワークライフ・バランスを重視し、長時間労働の撲滅や有給休暇取得促進により、仕事に意欲的に取り組める風土づくりを行っています。また、65歳までの定年延長や多様な人材採用、IT活用による柔軟な働き方、育児支援などを通じて従業員満足度の向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.6歳 | 15.5年 | 5,257,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均所定外労働時間(6.1時間/月)、平均有給休暇取得日数(14.5日/年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定販売先への依存について
化学品事業における販売はOEM販売が主流であり、主要顧客であるBASF社への売上高依存度が約3割と高くなっています。供給基本契約は締結されていますが、同社の販売戦略によっては業績に重要な影響を受ける可能性があります。これに対応するため、新規製品の拡大や受託製造ラインナップの充実による顧客分散を図っています。
■(2) 原材料の市況変動について
原材料の多くは原油の国際的な動向や資源輸出国の経済情勢の影響を受けて価格が変動します。急激な原材料価格の高騰はコスト増となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動も原材料価格や販売価格を通じて業績に影響を与える要因となります。
■(3) 有機EL等電子材料関連製品の動向について
同社は有機EL等の電子材料関連事業を成長分野として注力していますが、最先端分野であり競合他社との開発競争が激化しています。福島工場などの設備投資を行っていますが、今後の採用状況によっては十分な収益を獲得できず、固定資産の減損損失を計上するリスクがあります。これに対し、官学連携の強化や受託製造の取り込みによる稼働率向上に努めています。



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