ケミプロ化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケミプロ化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケミプロ化成は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、紫外線吸収剤等の化学品事業と木材保存薬剤等のホーム産業事業を展開しています。2026年3月期の業績は、主力製品の需要低迷等により売上高89億円、経常利益1.3億円と減収減益でしたが、特別利益の計上により当期純利益は2.9億円と最終増益でした。


※本記事は、ケミプロ化成の有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケミプロ化成ってどんな会社?


同社は化学のプロ集団として、技術開発を通じて高付加価値製品を創出する開発型化学メーカーです。

(1) 会社概要


1982年に有機化学工業薬品の製造販売を目的に設立されました。1995年に日本証券業協会に店頭登録し、1997年に東洋木材防腐を吸収合併して現在のホーム産業事業の基盤を築きました。1998年に大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2015年には有機EL材料等を扱う福島工場を竣工しています。

同社は連結子会社を持たない単体経営を行っており、2026年3月期末時点の従業員数は222名です。筆頭株主はケアシステムズで、第2位は福岡直彦記念財団、第3位は個人株主の福岡靖介氏となっています。

氏名 持株比率
ケアシステムズ 20.86%
福岡直彦記念財団 16.79%
福岡靖介 7.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼管理本部長は兼俊寿志氏が務めており、取締役8名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
兼俊寿志 代表取締役社長兼管理本部長 1985年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。亀戸支店長等を経て、2013年同社へ出向し財務経理部長。2014年常務取締役等を歴任し、2019年4月より現職。
河井典生 常務取締役営業本部長兼購買部長兼コンプライアンス担当役員 1989年同社入社。化学品事業部営業本部長、営業本部長兼営業部長等を経て、2018年常務取締役。2024年7月より現職。
赤瀬寿 常務取締役生産本部長兼福島工場長 1984年ISC化学(現同社明石工場)入社。1997年同社転籍。生産本部副本部長等を経て、2020年常務取締役。2023年2月より現職。
箱崎竜也 取締役生産技術部統括本部長兼姫路工場生産技術部長兼営業本部新規ビジネス推進部技術担当役員 1995年同社入社。相生工場生産技術部長等を経て、2019年執行役員。2024年6月より取締役。2024年7月より現職。
大學隆行 取締役営業本部副本部長兼営業部長兼営業管理部長 1995年同社入社。営業本部営業部長等を経て、2019年執行役員。2021年執行役員営業本部営業部長兼営業管理部長。2024年6月より現職。


社外取締役は、柳雅二(元野村證券常務執行役員)、寶田健太郎(宝田・寿原会計事務所代表)、田中耕司(資本政策研究所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」および「ホーム産業事業」を展開しています。

(1) 化学品事業


紫外線吸収剤、写真薬中間体、電子材料、製紙用薬剤、酸化防止剤などの製造および販売を行っています。特に主力の紫外線吸収剤は世界各国で使用されており、プラスチック添加剤や有機EL材料などの新製品開発にも注力しています。

製品の販売やOEM販売、受託製造などから収益を得ています。製造と同社製品の販売は同社が主体となって行い、製造の一部は関連会社であるハリマトランジットが担っています。

(2) ホーム産業事業


環境にやさしい水性の木材保存薬剤などの製造および販売を行っています。ホームセンター向け塗料や室内用、業務用塗料などの新規開発も進め、受託加工品の取り込みを含めた事業展開をしています。

各種製品の販売を通じて顧客から対価を得ています。当事業の運営と同社製品の販売は、同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は90億円台で推移していましたが、直近は主力製品の需要低迷などにより89億円に減少しました。経常利益も1億円台で推移しており、原材料やエネルギーコストの高騰が影響しています。一方、当期純利益は投資有価証券売却益などの特別利益計上により大幅な増益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 97億円 98億円 92億円 97億円 89億円
経常利益 2.6億円 1.2億円 1.3億円 1.7億円 1.3億円
利益率(%) 2.7% 1.2% 1.4% 1.8% 1.4%
当期純利益 1.8億円 0.7億円 1.3億円 1.3億円 2.9億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益は横ばいながらも営業利益は減少しました。売上総利益率は15.1%から16.2%へ改善しましたが、営業利益率は4.1%から3.8%へ低下しており、利益面では厳しい状況が続いています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 97億円 89億円
売上総利益 15億円 15億円
売上総利益率(%) 15.1% 16.2%
営業利益 4.0億円 3.4億円
営業利益率(%) 4.1% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.2億円(構成比20%)、研究開発費が2.2億円(同19%)を占めています。売上原価のうち、材料費が44億円(構成比57%)、経費が23億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品事業は、製紙用薬剤や酸化防止剤が増収となったものの、主力製品である紫外線吸収剤の需要低迷や一部受託製造製品の受注減少により大幅な減収となりました。ホーム産業事業も工事受注の減少に伴い減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
化学品事業 88億円 80億円
ホーム産業事業 10億円 9億円
連結(合計) 97億円 89億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

企業の収益力を測るROEは6.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.0%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業以来、社会に貢献する開発型企業としての役割を強く認識し、時代に求められる企業を標榜しています。化学のプロ集団として技術開発にチャレンジし、独自の新しい発想や技術力をもとに高付加価値製品を創出し、社会の繁栄に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Flexible for Sustainability(しなやかな企業となり、持続可能性を追求する)」を基本コンセプトとしています。社会から必要とされ、顧客から頼りにされ、社員と家族が誇らしく思う会社を目指し、変化に柔軟に対応する意識や企業風土の醸成を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画「ケミプロ化成経営革新プランⅢ」を策定し、以下の目標を掲げています。

* 経常利益率 5%以上
* 自己資本利益率(ROE) 7%以上
* 自己資本比率 39%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「稼ぐ力の向上」「収益体質の強化」「持続可能性の追求」を3大方針としています。新規事業の展開や受託製品の拡充、安定・安価な原材料購入による収益力強化に取り組むほか、同一製品製造可能ラインの複数化や廃棄物高度処理法の確立など環境負荷低減に向けた技術開発を継続しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業の持続可能性を維持・向上させるためには、重要な資産である人材自体の持続可能性を維持・向上させることが不可欠と考えています。人材獲得、育成、処遇などの人事施策において長期雇用に立脚し、計画的な育成ローテーションを通じて個々のレベルアップを図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 15.8年 5,482,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 83.1%
男女賃金差異(全労働者) 83.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均所定外労働時間(6.7時間/月)、平均有給休暇取得日数(14.8日/年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定販売先への依存と市場リスク


化学品事業の販売はOEMが主流であり、主要顧客への依存度が高くなっています。特定販売先の販売戦略に業績が重要な影響を受ける可能性があるため、新規製品の拡大や受託製造製品の充実により販売チャネルの多様化を図っています。

(2) 原材料の価格変動と調達リスク


原材料価格は原油価格の国際的な動向や資源輸出国の経済情勢の影響を受けて変動します。さらに、地政学的な要因等によりナフサ由来の原材料等の調達が不安定になる可能性があり、これらが収益性に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 電子材料関連製品の開発競争


将来の成長事業として有機ELなどの電子材料関連事業に注力していますが、最先端分野であり競合他社も新規開発に取り組んでいます。今後の製品の採用状況や条件によっては十分な収益を獲得できず、固定資産の減損損失を計上するリスクが含まれています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。