※本記事は、株式会社ADEKA の有価証券報告書(第163期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ADEKAってどんな会社?
化学品、食品、ライフサイエンスの3事業を柱に、独自の技術で中間素材を提供するBtoBメーカーです。
■(1) 会社概要
1917年に電解ソーダの製造を目的に旭電化工業として創立し、翌年尾久工場の操業を開始しました。1949年に東京証券取引所に上場しています。2006年には創立90周年を機に、通称であったADEKAへ社名を変更しました。2018年には日本農薬を子会社化し、ライフサイエンス事業を強化するなど、事業領域を拡大しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は5,453名、単体では1,810名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には生命保険会社が名を連ねています。また、第5位には取引先持株会が入っており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.84% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.75% |
| 朝日生命保険相互会社 | 3.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は城詰秀尊氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 城詰 秀尊 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1985年同社入社。化学品企画部長、大阪支社長、経営企画部長兼設備投資委員長などを経て、2018年6月より現職。 |
| 冨安 治彦 | 代表取締役兼専務執行役員 | 1979年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。同行管理部長を経て2007年同社入社。人事部担当、購買・物流部担当などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 志賀 洋二 | 取締役兼執行役員 | 1985年同社入社。財務・経理部長を経て、2018年6月取締役兼執行役員就任。財務・経理部担当、情報システム部担当、デジタル化業務改革推進部担当を兼務し現職。 |
| 正宗 潔 | 取締役兼執行役員 | 1988年同社入社。経営企画部長を経て、2024年6月より現職。法務・広報部担当、経営企画部担当、コンプライアンス推進委員長、設備投資委員長を兼務。 |
| 田谷 浩一 | 取締役監査等委員(常勤) | 1986年同社入社。購買・物流部長、大阪支社長を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、遠藤茂(元サウジアラビア特命全権大使)、堀口誠(元岩谷産業取締役副社長執行役員)、髙橋直也(元日立システムズ代表取締役社長)、奥山章雄(公認会計士)、平沢郁子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学品事業」「食品事業」「ライフサイエンス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 化学品事業
樹脂添加剤、電子材料、環境材料の3分野で製品を製造・販売しています。ポリオレフィン用添加剤や半導体材料、エポキシ樹脂などが主力製品で、自動車、家電、ICT機器など幅広い産業に素材を提供しています。
収益は、国内外のメーカー等の顧客へ製品を販売することで得ています。運営は、同社を中心に、海外ではADEKA KOREAやADEKA Europeなどのグループ会社が製造・販売を担っています。
■(2) 食品事業
マーガリン、ショートニング、ホイップクリームなどの加工油脂製品や、プラントベースフード等を製造・販売しています。製パン・製菓業界や外食産業向けに、機能性の高い業務用食品素材を提供しています。
収益は、製パン・製菓メーカーやコンビニエンスストア、スーパー等の顧客への製品販売により得ています。運営は、同社およびADEKAファインフーズ、海外ではADEKA(SINGAPORE)などが担っています。
■(3) ライフサイエンス事業
農薬、医薬品、動物用医薬品等の製造・販売を行っています。独自の創薬技術を活かし、農作物の保護や人々の健康に貢献する製品を提供しています。
収益は、国内外の農業協同組合や商社、製薬会社等への製品販売から得ています。運営は、主に子会社の日本農薬およびそのグループ会社が行っています。
■(4) その他
設備プラントの設計・工事管理、設備メンテナンス、物流、倉庫、不動産、保険代理業などを行っています。グループ内のインフラを支えるとともに、外部顧客へのサービス提供も行っています。
収益は、プラント工事やメンテナンス、物流サービスの提供、不動産賃貸等による対価として得ています。運営は、ADEKA総合設備、ADEKA物流、ADEKAライフクリエイトなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、2025年3月期には4,000億円を超えました。利益面でも変動はあるものの、直近では増益基調にあり、2025年3月期は過去最高益を記録しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,271億円 | 3,612億円 | 4,033億円 | 3,998億円 | 4,071億円 |
| 経常利益 | 293億円 | 357億円 | 326億円 | 358億円 | 393億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 9.9% | 8.1% | 8.9% | 9.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 164億円 | 237億円 | 168億円 | 230億円 | 250億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益率は改善傾向にあります。原価率の改善や高付加価値製品の販売拡大が寄与していると考えられます。営業利益率も上昇しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,998億円 | 4,071億円 |
| 売上総利益 | 1,047億円 | 1,149億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.2% | 28.2% |
| 営業利益 | 354億円 | 410億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が179億円(構成比24.2%)、販売運賃が113億円(同15.3%)、開発研究費が102億円(同13.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
化学品事業と環境材料事業が好調で、特に樹脂添加剤は大幅な増益となりました。ライフサイエンス事業は減収ながらも収益性の改善により増益を確保しています。一方、その他事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 化学品事業 | 2,041億円 | 2,184億円 | 237億円 | 280億円 | 12.8% |
| 食品事業 | 840億円 | 825億円 | 41億円 | 44億円 | 5.3% |
| ライフサイエンス事業 | 1,030億円 | 1,000億円 | 59億円 | 78億円 | 7.8% |
| その他 | 86億円 | 62億円 | 18億円 | 7億円 | 11.3% |
| 調整額 | - | - | -1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 3,998億円 | 4,071億円 | 354億円 | 410億円 | 10.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスで、本業で得た資金を借入返済に充てつつ、手元資金で投資を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 420億円 | 462億円 |
| 投資CF | -231億円 | -126億円 |
| 財務CF | -46億円 | -223億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「新しい潮流の変化に鋭敏であり続けるアグレッシブな先進企業を目指す」「世界とともに生きる」を経営理念としています。独自性のある優れた技術で、時代の先端をいく製品と顧客ニーズに合った製品を提供し、社会との調和を図りながら持続的に発展し、企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「ADEKAグループ行動憲章」を定め、グローバルでの理解・浸透を図っています。また、サステナビリティ基本方針として「ADEKAグループは、公正・透明な企業活動を通じて、技術と信頼でステークホルダーの期待に応え、持続可能な社会に貢献します。」を掲げ、本業を通じた社会課題解決を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年のありたい姿『ADEKA VISION 2030』を掲げ、その実現に向けた中期経営計画『ADX 2026』を推進しています。
* 透明化剤全体の連結売上高:2030年までに300億円超
* 環境貢献製品売上高:2019年度比3倍(KPI)
■(4) 成長戦略と重点施策
「稼ぐ力の強化、高収益構造への転換」を掲げ、半導体材料や環境貢献製品の拡大に注力しています。半導体材料本部では市場成長を見据えた積極投資を行い、環境材料本部では電池材料の事業化を推進しています。また、樹脂添加剤の新ブランド「トランスパレックス」の市場投入により世界シェアNo.1を目指すなど、高付加価値製品による成長を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員の人間性と個性の尊重」を人事理念とし、多様な価値観を持つ人材の採用と育成を進めています。フレックスタイム制度やテレワーク等の柔軟な働き方を導入し、タレントマネジメントシステムを活用した適材適所の配置や個別育成を行っています。また、DE&I推進プロジェクトを通じて女性活躍や風土醸成に取り組むとともに、健康経営を推進し、社員のパフォーマンス向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 17.1年 | 7,814,537円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 86.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 70.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイにおける「総合的満足度」でのポジティブ回答率(68%)、管理職に占める経験者採用者の比率(11%)、3年間の平均経験者採用比率(28%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況、地政学リスク等
グローバル展開に伴い、各国の経済状況や地政学リスク、為替変動の影響を受ける可能性があります。特に台湾有事やロシア・ウクライナ情勢、米国の関税政策などがサプライチェーンや市場動向に影響し、業績が悪化する恐れがあります。
■(2) 感染症防止対策について
新たな感染症の蔓延により、事業活動が制限されるリスクがあります。同社はリモートワークやデジタル化を推進し、事業継続計画(BCP)を整備していますが、世界的なパンデミックが発生した場合、製品供給に支障が出る可能性があります。
■(3) 原材料の調達について
主要原材料であるナフサや油脂原料の価格は、原油価格や天候、地政学リスクにより変動します。販売価格への転嫁やヘッジを行っていますが、予期せぬ急激な価格変動や供給不足が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。