ADEKA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ADEKA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するADEKAは、化学品、食品、ライフサイエンス事業を主軸に展開するメーカーです。直近の業績では、ライフサイエンス事業や環境材料製品の販売が国内外で好調に推移し、全社として増収増益を達成、売上高および経常利益などの各段階利益で過去最高を更新しています。


※本記事は、株式会社ADEKAの有価証券報告書(第164期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ADEKAってどんな会社?


化学品、食品、ライフサイエンス分野で多様な製品群をグローバルに展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1917年に旭電化工業として設立され、1928年に農業薬品部門を分離して日本農薬を設立しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2006年に現在のADEKAへ社名変更を行っています。近年では、2018年に日本農薬を子会社化し、2023年にはインキュベーション・アライアンスを子会社化するなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で5,434名、単体で1,827名です。筆頭株主および第2位株主は資産管理業務等を行う信託銀行であり、第3位株主には朝日生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.41%
日本カストディ銀行(信託口) 7.07%
朝日生命保険相互会社(常任代理人)日本カストディ銀行 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は城詰秀尊氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
城詰 秀尊 代表取締役社長兼社長執行役員 1985年同社入社。化学品企画部長、大阪支社長等を経て、2017年経営企画部長兼設備投資委員長に就任。2018年より現職。
冨安 治彦 代表取締役兼専務執行役員社長補佐秘書室担当人事部担当購買・物流部担当内部統制推進委員長 1979年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2007年同社常勤監査役、2009年取締役。日本農薬監査役等を経て、2020年より現職。
志賀 洋二 取締役兼常務執行役員財務・経理部担当情報システム部担当 1985年同社入社。財務・経理部長等を経て2018年取締役。2022年財務・経理部担当兼情報システム部担当となり、2025年より現職。
正宗 潔 取締役兼執行役員法務・広報部担当経営企画部担当コンプライアンス推進委員長設備投資委員長 1988年同社入社。2018年執行役員経営企画部長等を経て、2024年より現職。
田谷 浩一 取締役監査等委員(常勤) 1986年同社入社。2018年執行役員購買・物流部長、2020年執行役員大阪支社長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、遠藤茂(元在サウジアラビア特命全権大使)、堀口誠(元岩谷産業副社長)、髙橋直也(元日立製作所副社長)、平沢郁子(元東京弁護士会副会長・監査等委員)、藤川裕紀子(藤川裕紀子公認会計士事務所所長・監査等委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」「食品事業」「ライフサイエンス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 化学品事業


樹脂添加剤(ポリオレフィン用添加剤や塩ビ用安定剤など)、半導体材料(高純度半導体材料など)、環境材料(エポキシ樹脂や水系樹脂など)の製造・販売を行っています。製品は家電、自動車、半導体、建築などの幅広い産業分野で利用されています。

顧客である各産業のメーカーに対する製品の販売代金を収益としています。事業の運営は同社のほか、ADEKAケミカルサプライ、オキシラン化学、AMFINE CHEMICAL等の国内外の子会社および関連会社が担っています。

(2) 食品事業


マーガリン類、ショートニング、チョコレート用油脂などの加工油脂製品や、プラントベースフード、ホイップクリームなどの加工食品製品の製造および販売を行っています。主に製パンや製菓業界などに製品を提供しています。

食品メーカー等への油脂製品および加工食品の販売による代金を収益源としています。同社をはじめ、ADEKAファインフーズやADEKA食品販売などのグループ会社が事業の運営を行っています。

(3) ライフサイエンス事業


農薬、医薬品、医薬部外品、動物用医薬品、木材薬品、医療材料などの製造および販売を展開しています。主に農業従事者や医療関連機関などが対象顧客となっています。

農薬や医薬品などの製品の販売を通じた代金を収益源としています。この事業は主に連結子会社である日本農薬およびその関連会社(ニチノー緑化、日本エコテック等)によって運営されています。

(4) その他


各報告セグメントに含まれない事業として、プラントの設計、施工管理、設備メンテナンス、物流業、倉庫業、車輌等リース、不動産業、保険代理業などを展開しています。

グループ内および外部顧客に対する設備メンテナンス料金や物流・不動産賃貸等の各種サービス提供による手数料を収益としています。ADEKA総合設備やADEKA物流などが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は堅調な拡大傾向にあり、2022年3月期の3,612億円から2026年3月期には4,166億円へと成長しています。経常利益も上昇基調を辿り、直近では利益率10.3%に達するなど収益性の向上が見られます。当期利益についても右肩上がりで推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,612億円 4,033億円 3,998億円 4,071億円 4,166億円
経常利益 357億円 326億円 358億円 393億円 428億円
利益率(%) 9.9% 8.1% 8.9% 9.7% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 166億円 127億円 189億円 215億円 253億円

(2) 損益計算書


売上高が順調に伸びる中で、売上総利益も連動して増加しており、売上総利益率は28%台で安定的に推移しています。営業利益についても着実に積み上がっており、約10%という堅調な営業利益率を維持し、安定した収益基盤を構築していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,071億円 4,166億円
売上総利益 1,149億円 1,187億円
売上総利益率(%) 28.2% 28.5%
営業利益 410億円 416億円
営業利益率(%) 10.1% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が188億円(構成比24%)、開発研究費が118億円(同15%)、販売運賃が107億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である化学品事業は、半導体材料などが好調だったものの難燃剤などの販売が低調で減収となりました。食品事業はプラントベースフードなどの戦略製品が堅調で微増収となっています。ライフサイエンス事業は、国内外で農薬の販売が好調に推移し大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
化学品事業 2,184億円 2,148億円
食品事業 825億円 830億円
ライフサイエンス事業 1,000億円 1,118億円
その他 62億円 70億円
連結(合計) 4,071億円 4,166億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 462億円 406億円
投資CF -126億円 -301億円
財務CF -223億円 -353億円


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「新しい潮流の変化に鋭敏であり続けるアグレッシブな先進企業を目指す」「世界とともに生きる」を経営理念として掲げています。独自性のある優れた技術で、時代の先端をいく製品と顧客ニーズに合った製品を提供し、社会の一員として持続的に発展しながら企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


顧客、取引先、従業員、地域社会など、あらゆるステークホルダーの期待に積極的に応える姿勢を重視しています。幅広い事業分野で培った得意技術を融合し、環境保全や人々の豊かな生活に役立つ先駆的な製品を持続的に開発・提供するなど、新しい価値を創造し続ける企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な方向性として『ADEKA VISION 2030』を掲げ、持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する「Innovative Company」を目指しています。その実現に向けた中期経営計画『ADX 2026』では、以下のサステナビリティ指標を目標として掲げています。

* 環境貢献製品売上高の拡大
* GHG排出量の削減
* 女性管理職比率の向上

(4) 成長戦略と重点施策


社会価値と利益の共創による企業価値の向上を成長戦略の軸としています。収益の柱である半導体材料への積極的な経営資源の投下や将来を見据えた事業の再構築を通じて稼ぐ力を強化します。また、環境貢献製品の拡大による成長機会の創出とGHG削減を推進するとともに、サプライチェーンの強化や人的資本基盤の整備といった経営基盤の強靭化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材は『人財』」という基本思想のもと、「適時・適所・適材の実現」「グローバル人財育成システムの強化」「人財への投資とエンゲージメントの向上」を人材戦略の柱に据えています。採用、配置、育成、評価の各プロセスを有機的に連動させることで、従業員一人ひとりの能力発揮とエンゲージメント向上による企業価値の最大化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 17.1年 7,952,220円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 96.2%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用) 76.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の比率(約17%)、経験者採用者の比率(17%)、一人当たりの研修費用(75,000円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスクと経済状況の変動
海外に多数の拠点を有しており、各国の経済状況や地政学リスクの影響を受けます。紛争の長期化による原燃料価格の高止まりや物流停滞、サプライチェーンの寸断などが生じた場合、同社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料調達価格の変動リスク
主要原材料である石油化学原料や油脂原料などは、原油価格や天候、産油国の地政学リスク等の影響を強く受けます。予期せぬ異常な価格変動が生じ、販売価格への転嫁に時間的ギャップが生じた場合、収益性に悪影響を与える可能性があります。

(3) 新製品開発と技術の陳腐化
技術進歩が著しい業界において、競合他社による追随や新技術の普及により既存製品が陳腐化するリスクがあります。市場の変化を的確に予測できず、顧客ニーズに合った魅力的な新製品を持続的に開発・提供できない場合、将来の成長や収益性に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。