新日本理化 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本理化 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本理化は、東京証券取引所 スタンダード市場に上場する化学メーカーです。天然油脂や石油化学製品を原料とした脂肪酸、可塑剤などの製造販売を主要事業としています。直近の業績は、売上高が横ばいで推移する一方、生産ロスの低減等により営業利益は前期比で大幅な増益となりました。


※本記事は、新日本理化株式会社 の有価証券報告書(第153期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新日本理化ってどんな会社?


天然油脂と石油化学製品を原料に、独自の化学技術で脂肪酸や可塑剤等の素材を提供する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1919年に大阪酸水素として設立され、酸素・水素の製造を開始しました。1949年に大阪証券取引所に上場し、1967年に現社名の新日本理化へ商号を変更しています。2013年には東証一部へ指定替えを行い、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は413名、単体では301名です。筆頭株主は京都に所在する株式会社ワイエムシィで、第2位も同様に所在地の同じ投資会社である株式会社YMCインベストメントです。第3位には主要取引銀行である株式会社りそな銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
ワイエムシィ 9.48%
YMCインベストメント 5.68%
りそな銀行 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長執行役員は三浦芳樹氏、代表取締役社長執行役員は盛田賀容子氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
三浦 芳樹 代表取締役会長執行役員 1978年豊田通商入社。同社専務取締役を経て、2019年新日本理化取締役常務執行役員に就任。2020年代表取締役社長執行役員を経て、2025年4月より現職。
盛田 賀容子 代表取締役社長執行役員 1990年新日本理化入社。経理部長、管理本部長、執行役員企画管理本部長、取締役常務執行役員営業本部長などを歴任し、2025年4月より現職。
藤本 万太郎 取締役 1975年新日本理化入社。経営企画部長、取締役管理本部長などを経て2004年代表取締役社長に就任。2020年代表取締役会長執行役員を経て、2025年4月より現職。
中川 真二 取締役執行役員社長補佐兼企画管理本部長 1984年大和銀行(現りそな銀行)入行。同行京都滋賀営業本部長、第一生命保険大阪法人営業部部長などを経て、2020年新日本理化取締役就任。2024年4月より現職。


社外取締役は、松本惠司(元ハウス食品グループ本社代表取締役専務)、柳瀬英喜(元豊田通商代表取締役副社長)、織田貴昭(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、竹林満浩(プロアクティブ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 天然油脂由来製品(オレオケミカル)


天然油脂を主原料とする脂肪酸、高級アルコール、不飽和アルコール、界面活性剤などを提供しています。これらの製品は、シャンプーや洗剤の原料、工業用添加剤など、生活用品から産業用途まで幅広く利用されています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に新日本理化が行い、製造の一部を連結子会社の日新理化、日東化成工業が担っています。また、関連会社であるEdenor Oleochemicals Rika (M) Sdn.Bhd.等で製造された製品の一部を仕入れて販売しています。

(2) 石油化学製品由来製品


石油化学製品を主原料とする可塑剤、機能製品、樹脂添加剤などを提供しています。可塑剤はプラスチックを柔らかくする添加剤として、樹脂添加剤はプラスチックの性能を向上させる素材として使用されます。

収益は、製品の販売による売上です。運営は新日本理化が主体となり、製造の一部を連結子会社の日新理化が行っています。一部製品については市場から仕入れて販売も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は320億〜330億円前後で横ばいに推移しています。利益面では、2023年3月期に赤字を計上しましたが、その後は回復傾向にあります。特に直近の2025年3月期は、経常利益が前期比で増加し、当期純利益も大きく伸長するなど、収益性の改善が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 244億円 324億円 331億円 329億円 327億円
経常利益 7億円 16億円 1億円 8億円 12億円
利益率(%) 2.9% 4.9% 0.3% 2.4% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 -4億円 1億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の低減等により売上総利益が増加しています。さらに、販売費及び一般管理費の抑制も寄与し、営業利益率は前期の1.1%から2.5%へと改善しました。全体として、コストコントロールによる利益率の向上が確認できます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 329億円 327億円
売上総利益 53億円 55億円
売上総利益率(%) 16.2% 16.7%
営業利益 4億円 8億円
営業利益率(%) 1.1% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、運送保管費が11億円(構成比23%)、研究開発費が9億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは単一セグメントですが、製品群ごとの動向を見ると、高耐候性可塑剤や医薬品原料などの高機能製品が販売数量を伸ばしました。一方で、汎用可塑剤などの汎用品は、海外品との価格競争激化や国内需要の低迷により苦戦しました。全体として売上高は微減となりましたが、生産ロスの低減等により利益は確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
連結(合計) 329億円 327億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

新日本理化のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少や棚卸資産の増加、売上債権の減少が主な要因となり、資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却による収入もあり、資金は減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減と長期借入金の純増が主な要因となり、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 -2億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -26億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「もの創りを通して広く社会の発展に貢献します」という経営理念を掲げています。創業以来の技術力を基盤に、社会の様々なシーンを支える素材を提供し続けることで、持続的な事業継続と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


2030年のありたい姿として、ビジョン2030「Be the best SPICE!~心躍る極上のスパイスになる~」を策定しています。独自の特性を持つ素材を生み出すため、社員一人ひとりがスパイスのようにお互いを引き立て合い、多様な価値観を活かす精鋭集団となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


ビジョン2030の達成に向けた中期経営計画(2021年度~2025年度)を推進しています。最終年度となる2025年度の経営目標については、2024年6月に修正を行い、以下の数値を掲げています。

* 売上高:340億円
* 営業利益:8億円
* ROE:6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「稼ぐ力の再構築」「技術革新による競争優位の獲得」「CSRの推進」「組織再編と人材育成の強化」を骨子としています。特に、不採算製品の整理や拠点の最適化を進める一方、環境・社会課題に対応する新製品開発にリソースを集中しています。また、DX推進による生産性向上や知財戦略の強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「誰もがやりがいを持って働ける組織の実現」と「自ら考え行動する挑戦型人材の育成」を主眼に置いています。年功要素を減らし役割を明確化した人事制度の導入や、多様な研修機会の提供、1on1によるコミュニケーション強化などを通じて、従業員の挑戦意欲を引き出し、エンゲージメントを高める施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 15.5年 702万8000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 9.9%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 89.8%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 88.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 96.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減率(約51.9%)、従業員満足度調査ポジティブ回答率(65.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の価格変動リスク


主要原材料である油脂原料や石化原料の価格は、気候変動や原油市況、国際情勢等の影響を受けやすく、価格が高騰した場合に業績へ影響を及ぼす可能性があります。これに対し、製品価格への転嫁等の対策を講じています。

(2) 原材料の調達リスク


自然災害や事故等により原材料の供給停止や遅延、品質不良が発生した場合、製品の安定生産が困難となり、業績に影響を与える可能性があります。調達先の多様化等により、安定調達に努めています。

(3) 物流の確保リスク


人手不足等を背景とした物流費用の増加や、最適な物流手段の確保が困難になるリスクがあります。国内外の海運や陸送など幅広い物流手段を活用し、コスト・時間・品質面での最適化を図ることでリスク低減に努めています。

(4) 人材の確保リスク


労働人口の減少や価値観の変化により、優秀な人材の採用・維持が困難となった場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。採用手法や雇用形態の多様化、働きやすい環境整備、DXによる技能伝承などを進め、人材確保に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。