東邦化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する化学メーカーです。界面活性剤、樹脂、化成品、スペシャリティーケミカル等の製造販売を主な事業としています。当期は、半導体市況の回復に伴う電子情報材料向け樹脂の伸長や海外拠点での収益改善等により、増収増益となりました。(133文字)


本記事は、東邦化学工業株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東邦化学工業ってどんな会社?


界面活性剤や樹脂、電子情報材料など多岐にわたる化学製品を製造販売し、技術重視の経営を行う化学メーカーです。

(1) 会社概要


1938年に設立され金属油剤の製造を開始し、1962年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。1994年には中国広東省に合弁会社を設立して海外展開を進め、1999年には千葉工場に電子情報材料製造設備を新設しました。2010年には中国上海市に子会社を設立し、生産体制を強化しています。

連結従業員数は866名、単体従業員数は672名です。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会で、第2位は代表取締役社長の中崎龍雄氏です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
東邦化学工業取引会社持株会 16.64%
中崎 龍雄 12.02%
株式会社日本カストディ銀行 5.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中崎龍雄氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は2名で、比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中崎 龍雄 代表取締役社長内部監査室担当経営企画本部長 旧日本興業銀行入行、同行金融商品開発部長を経て、1996年同社代表取締役社長に就任。内部監査室担当、経営企画本部長を兼務し、現在に至る。
永岡 幹人 常務取締役事業本部長兼香粧原料事業部長兼大阪支店長 1988年同社入社。精密化学品事業部部長、大阪支店長、事業本部香粧原料事業部長などを歴任。2020年常務取締役に就任し、事業本部長等を務める。
脇田 雅元 常務取締役購買部門担当生産本部長 1976年同社入社。追浜工場長、千葉工場長、生産本部副本部長などを経て、2024年常務取締役に就任。購買部門担当、生産本部長を務める。
中野 憲一 取締役研究開発本部副本部長兼追浜研究所長 1992年同社入社。追浜研究所電子情報産業薬剤研究室長、同副所長を経て、2015年追浜研究所長に就任。2016年より取締役研究開発本部副本部長を兼務。
下田 晴久 取締役事業本部副本部長兼スペシャリティーケミカルズ事業部長 1985年同社入社。電子情報産業事業部長、研究開発本部新製品開発推進グループ長などを経て、2016年事業本部スペシャリティーケミカルズ事業部長に就任。2020年より取締役。
池田 亮 取締役研究開発本部副本部長兼千葉研究所長 1996年同社入社。千葉研究所高分子土建用薬剤研究室長、同副所長を経て、2015年千葉研究所長に就任。2020年より取締役研究開発本部副本部長を兼務。
川崎 正一 取締役 IR部門担当経理本部長兼情報管理本部長 旧太陽神戸三井銀行入行。三井住友銀行本店営業第四部次長等を経て、2018年同社入社。経理本部副本部長等を歴任し、2022年より取締役経理本部長を務める。
越坂 誠一 取締役生産本部副本部長兼千葉工場長 2000年同社入社。千葉工場生産技術部長、東邦化学(上海)有限公司総経理などを経て、2024年より取締役生産本部副本部長兼千葉工場長を務める。


社外取締役は、綾部収治(元みずほファクター社長)、川越弘三(元住友三井オートサービス副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「界面活性剤」「樹脂」「化成品」「スペシャリティーケミカル」および「その他」事業を展開しています。

(1) 界面活性剤


香粧原料、プラスチック用添加剤、土木建築用薬剤、紙パルプ用薬剤、農薬助剤、繊維助剤などの製造販売を行っています。これらは家庭用洗剤や化粧品、建設材料、農薬製剤など幅広い分野で使用されています。

主な収益源は、顧客への製品販売による対価です。運営は主に東邦化学工業が行うほか、連結子会社の近代化学工業、東邦化学(上海)有限公司が製造を行い、東邦化貿易(上海)有限公司が販売を行っています。

(2) 樹脂


合成樹脂、石油樹脂、樹脂エマルション、アクリレート等の製造販売を行っています。これらはウレタンフォーム断熱材原料や接着剤、コーティング剤などの用途で使用されています。

主な収益源は、顧客への製品販売による対価です。運営は主に東邦化学工業が行うほか、連結子会社の東邦化学(上海)有限公司が製造を行い、東邦化貿易(上海)有限公司が販売を行っています。

(3) 化成品


ロジン系乳化重合剤、石油添加剤、金属加工油剤等の製造販売を行っています。これらは合成ゴムやABS樹脂の製造プロセス、原油の採掘・輸送、金属加工などの産業分野で利用されています。

主な収益源は、顧客への製品販売による対価です。運営は主に東邦化学工業が行うほか、連結子会社の懐集東邦化学有限公司、恵州市東邦化学有限公司が製造販売を行い、東邦化貿易(上海)有限公司も販売を行っています。

(4) スペシャリティーケミカル


溶剤、電子情報産業用の微細加工用樹脂等の製造販売を行っています。特に電子情報産業用樹脂は半導体製造プロセス等で使用される高機能材料です。

主な収益源は、顧客への製品販売による対価です。運営は主に東邦化学工業が行うほか、連結子会社の東邦化学(上海)有限公司が製造を行い、東邦化貿易(上海)有限公司が販売を行っています。

(5) その他


環境調査測定・分析業務や市場調査等の業務を行っています。

主な収益源は、環境調査や分析業務の提供による対価です。運営は連結子会社の株式会社横須賀環境技術センターが行っています。また、東邦化貿易(上海)有限公司が市場調査等の業務を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台から500億円台へと拡大傾向にあります。利益面では変動が見られますが、当期は大幅な増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も高い水準を記録しました。全体として事業規模は拡大し、利益率も回復基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 406億円 499億円 554億円 506億円 536億円
経常利益 14億円 19億円 12億円 7億円 18億円
利益率(%) 3.5% 3.9% 2.1% 1.5% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 11億円 12億円 5億円 12億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して増収増益となりました。売上高の増加に加え、売上原価率の改善により売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益は前期の2倍以上に拡大しています。営業利益率も改善し、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 506億円 536億円
売上総利益 68億円 82億円
売上総利益率(%) 13.5% 15.2%
営業利益 8億円 18億円
営業利益率(%) 1.5% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が16億円(構成比25%)、従業員給料及び手当が11億円(同17%)、研究開発費が10億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


界面活性剤セグメントは香粧原料の販売減により減収となりましたが、利益は改善しました。一方、樹脂、化成品、スペシャリティーケミカルの各セグメントは増収増益となりました。特にスペシャリティーケミカルは電子情報材料用樹脂の販売拡大により大幅な増益となり、全体の利益成長を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
界面活性剤 276億円 263億円 4億円 7億円 2.8%
樹脂 40億円 48億円 0.0億円 0.9億円 2.0%
化成品 59億円 66億円 0.1億円 0.8億円 1.2%
スペシャリティーケミカル 130億円 158億円 4億円 10億円 6.1%
その他 1.3億円 1.4億円 0.1億円 0.1億円 3.7%
調整額 - - -0.8億円 -0.6億円 -
連結(合計) 506億円 536億円 8億円 18億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東邦化学工業のキャッシュ・フローは、営業活動で収入を生み出し、投資活動で設備投資を行い、財務活動で資金調達と返済を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費、売上債権の減少などが主な収入要因となり、プラスとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、マイナスとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加やセール・アンド・リースバックによる収入があったものの、短期借入金の返済や社債・リース債務の償還、配当金の支払いなどにより、マイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 34億円 33億円
投資CF -19億円 -26億円
財務CF -9億円 -19億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、多岐にわたる技術と多様な製品群を擁し、小粒でも光る、ファインケミカル中心の中堅優良化学メーカーを目指しています。創業以来の「技術重視」の経営姿勢を堅持し、技術の向上を通じ、広く時代のニーズに応える製品を開発・提供することにより、豊かな社会づくりに貢献するよう努めています。

(2) 企業文化


同社は「技術重視」の姿勢に加え、「社員と共に歩む企業作り」を掲げ、人的資本重視の経営、風通しの良い職場づくり、チャレンジを促す経営を推進しています。また、「利益性、生産性、効率(設備・人材)、スピード」に高い意識を持つ人材の育成を目指し、企業の成長と従業員の幸福の両立を図る文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「TOHO Step Up Plan 2027」において、持続可能な成長と価値創造のための変革期と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:600億円
* 営業利益:30億円
* 売上高営業利益率:5.0%
* 純資産額:230億円
* 自己資本比率:32.0%
* ROE:8.0%
* 1株当たり配当額:30円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、電子情報材料事業を中核事業として拡大させ、経営資源を集中投入することで事業拡大スピードを加速させます。また、上海拠点を成長軌道に乗せ、海外市場開拓を強化するとともに、国内工場からの生産移管を推進します。さらに、高機能・高付加価値製品の開発加速や最適生産体制の構築による生産性改善にも取り組みます。

* スペシャリティーケミカルセグメントの営業利益15億円の達成
* 上海拠点の営業利益5億円の達成

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


採算意識とスピードに対する意識を持ち、国内外の職場で活躍できる人材の育成を目指しています。公平な業績評価や適所適材の人員配置に努め、ダイバーシティやワーク・ライフ・バランスの向上を図っています。また、人的資本重視の経営や風通しの良い職場づくりを推進し、チャレンジを促すとともに、社員のエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.6歳 16.8年 6,719,310円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 70.8%
男女賃金差異(正規) 74.4%
男女賃金差異(非正規) 71.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇義務日数(5日)消化率(99.9%)、障がい者法定雇用率 達成率(122%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動および調達に関するリスク


製品の主な原料である石油化学製品等の価格は原油価格の影響を強く受け、価格高騰時に製品価格への転嫁が困難な場合、利益が減少する可能性があります。また、サプライチェーンの混乱等により原材料の入手が困難になった場合、生産活動の停滞やコスト増により経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外での事業活動および中国におけるカントリーリスク


同社は中国を中心に海外事業を展開しており、特に東邦化学(上海)有限公司等の中国拠点の業績動向がグループ全体の業績に影響を与える可能性があります。また、中国における政治・経済情勢の変化、法規制の変更、地政学的リスク等が顕在化した場合、生産・販売活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


2023年2月にサーバーへの不正アクセスによるデータ流出が発生しました。今後、システム障害や情報の漏洩等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任の発生等により、経営成績に影響を与える可能性があります。同社は再発防止に向け情報セキュリティの強化に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。