※本記事は、アトミクス株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アトミクスってどんな会社?
道路の白線や標示に使われる道路用塗料をはじめ、建築・家庭用塗料で社会インフラを支える化学メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1937年2月に創業した「西川商会」を起源とし、1948年に法人化されました。1964年には粉体溶融型道路用塗料の製造を開始し、現在の主力事業の基盤を築きました。1994年に現社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2022年4月の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。
同グループの従業員数は連結283名、単体221名です。筆頭株主は取引先で構成される持株会で、第2位は公的性格を持つ投資育成会社です。第3位には従業員向けの信託口が入っており、安定した株主構成となっています。なお、第4位には創業家出身と思われる個人株主が含まれています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アトミクス取引先持株会 | 17.14% |
| 東京中小企業投資育成 | 12.22% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口) | 7.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は宮里勝之氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮里 勝之 | 代表取締役社長 | 1985年に入社し、道路事業部営業部長などを歴任。執行役員道路事業部長、久喜工場長、岡山工場長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 花形 裕透 | 取締役執行役員レイズ事業部長 | 1991年に入社。道路事業部副事業部長や事業本部長、塗料事業部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 冨士田 学 | 取締役執行役員管理統括部長兼経理部長 | 1992年に入社。管理統括部長、情報管理部長などを経て、2023年12月より現職。 |
| 鈴木 太亮 | 取締役執行役員技術本部長 | 1996年に入社。技術本部第二技術部長、塗料事業部長などを経て、2021年4月より現職。 |
社外取締役は、田中滋子(株式会社リクルートキャリアコンサルティング現任)です。
2. 事業内容
同社グループは、「塗料販売事業」および「施工事業」を展開しています。
■(1) 塗料販売事業
道路用塗料、床・屋根・防水などの建築用塗料、家庭用塗料、コンクリート構造物の保護・補修材を製造販売しています。また、交通安全や生活環境インフラの維持管理に関わるソフトウェアの開発・販売や、道路用塗料の施工機の製造も行っています。
主な収益は、国内の得意先に対する製品の販売代金です。同社が製造・販売を行うほか、家庭用塗料については子会社のアトムサポート株式会社が販売を担っています。また、アトム機械サービス株式会社が施工機の製造を、株式会社アブスが物流業務を担当しています。
■(2) 施工事業
同社グループの製品である道路用塗料やコンクリート構造物の保護・補修材、床用塗料を使用した工事を請け負っています。製品を使用した工事を行うことで、新製品開発や改良に必要な情報を入手する役割も担っています。
工事の発注者からの請負代金が収益となります。運営は主に子会社のアトムテクノス株式会社が行い、道路用塗料やコンクリート補修材を使用する工事を担当しています。同社は主に床用塗料を使用する工事を請け負っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は111億円から123億円へと緩やかに拡大傾向にあります。一方、利益面では経常利益率が1%台から5%台の間で変動しており、原材料価格の影響等を受けやすい構造が見て取れます。直近の当期純利益は前期比でやや増加し、一定の収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 111億円 | 111億円 | 114億円 | 121億円 | 123億円 |
| 経常利益 | 6.3億円 | 4.5億円 | 1.8億円 | 3.8億円 | 3.7億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 4.0% | 1.6% | 3.2% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.5億円 | 3.7億円 | 0.7億円 | 1.6億円 | 1.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益率は2%台後半から3%弱で推移しており、原材料コストや販管費のコントロールが課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 121億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 33億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.0% | 26.7% |
| 営業利益 | 3.6億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が6.4億円(構成比22%)、給料及び手当が6.3億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
塗料販売事業は、道路用塗料の公共工事需要や水性系製品の伸長により増収増益となり、全社業績を牽引しました。一方、施工事業は床材工事の受注減少などにより減収減益となりました。全体としては塗料販売事業の成長が業績を支える構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗料販売事業 | 113億円 | 115億円 | 6.6億円 | 6.7億円 | 5.9% |
| 施工事業 | 8.6億円 | 8.5億円 | 1.1億円 | 0.5億円 | 6.5% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.3億円 | -4.1億円 | -3.8億円 | - |
| 連結(合計) | 121億円 | 123億円 | 3.6億円 | 3.5億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を進めつつ、投資も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.9億円 | 10.2億円 |
| 投資CF | -6.5億円 | -6.5億円 |
| 財務CF | -1.8億円 | -1.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、製品・サービスを通じて社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。独創的な発想と複合化技術で市場を絞り込み、その市場で「ナンバーワン、オンリーワン」になることを掲げています。また、会社の成長を通じて社員の幸福を追求し、自己実現を支援することも重要な理念としています。
■(2) 企業文化
「人と環境にやさしい思いやり」を持つ企業として、「地球及び人の安全・安心と快適さの確保」を経営基盤と考えています。この価値観のもと、主に「環境対応型製品」および「交通安全」をコンセプトに製品開発を行い、社会貢献を目指す姿勢を重視しています。また、変化を続ける環境下で変革の機会を捉え、グループ総合力を発揮することを志向しています。
■(3) 経営計画・目標
第14次3ヶ年計画(2023-2025年度)を推進しており、収益を伴った着実な成長を目指すため、「売上高」と「営業利益」を基本的な経営指標としています。2030年度に向けては、スコープ1・2におけるCO2排出量の50%削減を目指す方針も掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「安全・安心・快適な社会を創る」を価値基準とし、事業を通じた社会課題解決に取り組んでいます。具体的には、市場を絞り込んだナンバーワン・オンリーワン戦略と顧客志向の徹底を継続します。また、気候変動への対応を強化し、水性系塗料の開発による環境負荷物質の抑制や、自社および顧客のCO2排出量削減を機会と捉えた事業戦略を展開します。
* 事業ポートフォリオ最適化による収益基盤の再構築
* 人材の強化(採用、育成、多様化への対応)
* 工場の生産性向上、リニューアル
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長に向けて人的資本経営を推進しており、「自ら考え行動する社員・チャレンジする社員」の育成を目指しています。階層別基礎教育やeラーニングなどの教育体制を整備するとともに、2023年度からはワークライフバランス向上や65歳定年制度の導入など、働きやすい環境づくりにも注力しています。社員の自己実現が企業の成長につながるという考えのもと、キャリア形成支援も強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 20.7年 | 5,471,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は女性管理職比率を明記していますが、その他の指標については公表義務の対象外のため記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
※同社および連結子会社は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率及び男女賃金差異については有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の価格及び調達について
同社の主要原材料の多くは石油関連製品であり、原油・ナフサ価格の変動が経営成績に影響を与える可能性があります。また、一部の特殊な原材料は限られたサプライヤーに依存する場合があり、災害や事故による供給中断や需要急増による不足が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制について
事業に関連して、環境、化学物質、安全衛生などの法規制強化が進んでいます。同社はコンプライアンス徹底を図っていますが、法令の大幅な変更や規制強化が行われた場合、対応コストの増加や製品仕様の変更などにより、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事業継続について
危険物や化学薬品を取り扱っているため、工場での火災や爆発事故が発生した場合、操業停止等により業績に影響を与えるリスクがあります。また、大規模な自然災害による工場の被災やサプライチェーンの寸断が発生した場合も、正常な事業活動の継続が困難となる可能性があります。
■(4) ITリスク
事業運営において多くの情報システムを活用しており、情報セキュリティの強化を図っています。しかし、サイバー攻撃やシステム障害、人為的な過失などにより、情報の漏洩や消失、システムの停止が発生した場合、事業活動の中断や社会的信用の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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