※本記事は、住友ファーマ株式会社 の有価証券報告書(第206期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 住友ファーマってどんな会社?
日本、北米、アジアで医療用医薬品の研究開発・製造・販売を展開するグローバル製薬企業です。
■(1) 会社概要
1897年に大阪製薬として設立され、1898年に大日本製薬へ改称しました。2005年に住友製薬と合併して大日本住友製薬に変更し、2009年に米国の製薬企業を買収して北米展開を加速させました。2022年に現在の住友ファーマへ商号変更し、近年は再生・細胞医薬分野やアジア事業の再編を進めています。
現在の従業員数は連結で3,123名、単体で1,747名です。筆頭株主は事業会社である住友化学で、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 住友化学 | 51.76% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.30% |
| SMBC信託銀行(三井住友銀行退職給付信託口) | 1.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は木村徹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村徹 | 代表取締役社長 | 1989年住友化学工業入社。2016年住友ファーマ取締役兼執行役員、2021年代表取締役兼専務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 酒井基行 | 代表取締役副社長執行役員(経営企画、経理統括、渉外、コーポレートガバナンス、コーポレートコミュニケーション、IT&データアナリティクス担当) | 1985年住友化学工業入社。同社常務執行役員や代表取締役兼専務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 中川勉 | 取締役常務執行役員(北米事業担当) | 1993年旧住友製薬入社。住友ファーマ経営企画部長やSumitomo Pharma America, Inc. CEOなどを経て、2025年より現職。 |
| 新沼宏 | 取締役 | 1981年住友化学工業入社。同社取締役兼副社長執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 加島久宜 | 取締役常勤監査等委員 | 1985年旧住友製薬入社。住友ファーマ経理部長や常勤監査役などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、碓井稔(元セイコーエプソン社長)、藤本康二(東京科学大学特任教授)、射手矢好雄(弁護士)、望月眞弓(慶應義塾大学名誉教授)、道盛大志郎(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、日本、北米、アジアの3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
医療用医薬品の製造、仕入および販売を行っています。また、オーソライズド・ジェネリック品の製造販売や再生・細胞医薬分野の製法開発・製造等の受託、再生医療等製品の研究開発なども手掛けています。
収益源は医療機関や卸売業者等への医薬品販売です。事業の運営は主に同社のほか、住友ファーマプロモ、RACTHERA、S-RACMOなどの子会社や合弁会社が行っています。
■(2) 北米
米国を中心に医療用医薬品の製造および販売を展開し、進行性前立腺がん治療剤や過活動膀胱治療剤などの主力製品を市場に提供しています。
収益源は北米市場での医薬品の販売収益やマイルストン収入です。事業の運営は主にSumitomo Pharma America, Inc.が中心となって行っています。
■(3) アジア
中国や東南アジア等の地域において、医療用医薬品などの製造および販売を行っています。
収益源はアジア市場における医薬品の販売収益です。事業の運営は主に、同社と丸紅グローバルファーマが共同出資する合弁会社である丸紅ファーマシューティカルズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は一時的に落ち込みを見せたものの、直近2期は回復傾向にあります。特に当期は北米市場での主力製品の売上拡大等により大幅な増収となり、税引前利益および当期利益についても事業構造改善効果などが寄与して黒字幅が大きく拡大しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 5,600億円 | 5,555億円 | 3,146億円 | 3,988億円 | 4,533億円 |
| 税引前利益 | 830億円 | -479億円 | -3,231億円 | 176億円 | 1,003億円 |
| 利益率(%) | 14.8% | -8.6% | -102.7% | 4.4% | 22.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 564億円 | -745億円 | -3,150億円 | 236億円 | 1,069億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から拡大し、それに伴い売上総利益および営業利益も大きく増加しました。特に営業利益率は大幅に改善しており、主力製品の好調と全社的なコスト削減の取り組みが利益の創出に直結していることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,988億円 | 4,533億円 |
| 売上総利益 | 763億円 | 1,010億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.1% | 22.3% |
| 営業利益 | 288億円 | 1,073億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 23.7% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が323億円(構成比40%)、減価償却費が153億円(同19%)、給料が66億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
北米セグメントが全社の売上を大きく牽引しており、主力製品の販売拡大により大幅な増収増益を達成しました。日本セグメントは減収ながらもコスト削減により増益となり、アジアセグメントは事業の一部譲渡の影響で減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 998億円 | 924億円 | 114億円 | 124億円 | 13.4% |
| 北米 | 2,518億円 | 3,379億円 | 426億円 | 757億円 | 22.4% |
| アジア | 472億円 | 230億円 | 239億円 | 95億円 | 41.3% |
| 連結(合計) | 3,988億円 | 4,533億円 | 288億円 | 1,073億円 | 23.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産売却で得た資金を用いて借入返済を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 165億円 | 717億円 |
| 投資CF | 998億円 | 225億円 |
| 財務CF | -1,088億円 | -913億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は46.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」を理念として掲げています。がん領域および精神神経領域を重点疾患領域とし、医薬品や再生・細胞医薬など多様なアプローチでヘルスケア課題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
「Patient First」「Always with Integrity」「One Diverse Team」をバリューとして定めています。日々の業務において守るべき行動宣言として、誠実な企業活動や積極的な情報開示、人権の尊重などを掲げ、サステナビリティ経営を推進する文化を根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
2033年に「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー(GSP)」の地位を確立することを目標としています。財務基盤の強化と次世代の収益基盤育成を目指す2028年度までの成長戦略「Boost 2028」を策定し、以下の目標を掲げています。
* 2027年3月期コア営業利益:910億円
■(4) 成長戦略と重点施策
北米では主力製品である進行性前立腺がん治療剤や過活動膀胱治療剤の価値最大化に最注力し、さらなるシェア拡大を図ります。また、規律あるコストマネジメントを継続しながら、がん領域などの次世代成長シーズへの研究開発投資を加速し、持続的な収益基盤の育成を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略の実行において、人的資本を重要な経営資源と位置付けています。「超える人材」を目指す姿勢を育成の方向性とし、期待や前例にとらわれず課題に向き合う人材の育成を図っています。選抜型研修やグローバル人材育成を通じ、多様な人材が成長できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 18.9年 | 9,055,526円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 43.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(58%)、デジタル人材数(108名)、社内公募異動者数(6名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新製品の研究開発に関わるリスク
新薬開発の難度が高まる中、開発が遅延または中止となる可能性があります。これが大型化を期待する研究開発品目で発生した場合、同社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 連結売上収益に関するリスク
収益の柱である北米での主力製品において、競合品の出現やサプライチェーンへの影響など予期せぬ事情で売上が減少した場合、同社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 知的財産権に関わるリスク
保有する技術を十分な範囲で権利化できない場合や、競合他社に知的財産権を回避された場合、競争上の優位性を確保できないリスクがあります。また、特許侵害訴訟の結果次第では早期にジェネリック品が参入する可能性があります。
■(4) 医療制度改革に関するリスク
国内外において、少子高齢化や国家財政の悪化を背景とした薬剤費抑制策や医療制度改革が進められています。これらの政策や規制の方向性によっては、同社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。



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