塩野義製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

塩野義製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の製薬企業。医療用医薬品の研究開発・製造・販売を主要事業とし、感染症領域に強みを持ちます。2025年3月期の業績は、抗HIV薬や海外事業の伸長により、売上収益は前期比6.9%増、営業利益は2.1%増の増収増益となりました。3年連続で過去最高の売上収益と営業利益を更新しています。


※本記事は、塩野義製薬株式会社 の有価証券報告書(第160期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 塩野義製薬ってどんな会社?


感染症や疼痛・神経領域に強みを持つ研究開発型製薬企業です。創薬から販売までを手掛け、グローバルに展開しています。

(1) 会社概要


1878年に薬種問屋として創業し、1919年に会社設立。1949年に株式を上場しました。2016年にコンシューマーヘルスケア事業を承継するシオノギヘルスケアを設立し、2019年には製造機能をシオノギファーマへ承継しました。2020年に中期経営計画「STS2030」を策定し、2025年にはワクチン事業の強化に向けた組織再編を実施するなど、感染症のトータルケア実現に向けた体制構築を進めています。

連結従業員数は4,955名、単体では2,129名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は機関投資家の住友生命保険相互会社です。国内外に多数の子会社を持ち、医薬品の研究開発から製造販売までを一貫して行うグループ体制を敷いています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.01%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 7.91%
住友生命保険相互会社 6.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役会長兼社長 CEOは手代木功氏です。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
手代木 功 代表取締役会長兼社長 CEO 1982年同社入社。経営企画部長、取締役専務執行役員医薬研究開発本部長などを経て2008年代表取締役社長に就任。2022年7月より現職。
ジョン ケラー 取締役 2010年Shionogi Inc.入社。同社CEO、塩野義製薬上席執行役員経営戦略本部長などを歴任。2025年6月より現職(上席執行役員兼R&D管掌)。
岸田 哲行 取締役常勤監査等委員 1984年同社入社。人事部長、上席執行役員経営支援本部長兼法務部長、コーポレート管掌などを経て、2025年6月より現職。
花﨑 浩二 取締役常勤監査等委員 1986年同社入社。創薬研究所長、上席執行役員経営戦略本部長、サプライ管掌などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、安藤圭一(元新関西国際空港社長)、尾崎裕(元大阪瓦斯会長)、藤原崇起(元阪神電気鉄道会長)、廣瀬恭子(広瀬製作所社長)、奥原主一(日本ベンチャーキャピタル会長)、髙槻史(弁護士)、後藤順子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」のみの単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 医療用医薬品事業(国内・海外)


医師の処方が必要な医療用医薬品の研究、開発、製造、販売を行っています。主な領域は感染症、精神・神経疾患などで、患者や医療従事者を顧客とします。特に感染症領域では、新型コロナウイルス治療薬やインフルエンザ治療薬などを提供しており、グローバルな開発体制を構築しています。

収益は、医薬品卸売業者や医療機関等への製品販売代金として受け取ります。また、海外においては、米国や欧州、アジア等の現地法人が販売活動を行っています。運営は、国内では主に塩野義製薬が、海外ではShionogi Inc.(米国)やShionogi B.V.(欧州)などの現地子会社が担っています。

(2) ロイヤリティー・ライセンス事業


自社で創出した新薬候補物質や技術を他社に導出し、その対価を得る事業です。代表的なものとして、ViiV Healthcare Ltd.に導出したHIV治療薬(ドルテグラビル等)があり、世界的な販売拡大に伴い収益の柱となっています。

収益は、提携先企業から契約一時金、マイルストン、および製品売上高に応じたロイヤリティーとして受け取ります。この事業モデルにより、自社販売網を持たない地域や領域でも収益化を図っています。運営は主に塩野義製薬が行っており、グローバルな提携先との契約に基づき収益を獲得しています。

(3) ヘルスケア・その他事業


一般用医薬品(OTC医薬品)や診断薬などの開発・販売を行っています。一般消費者を対象としたセルフケア製品や、医療現場での診断を支援する製品を提供し、疾患の予防から診断、治療までをカバーするヘルスケアソリューションを展開しています。また、医薬品原薬の製造受託も行っています。

収益は、ドラッグストア等への製品販売代金や、製薬企業からの製造受託料として受け取ります。運営は、一般用医薬品については主にシオノギヘルスケアが、製造受託についてはシオノギファーマが担っています。これにより、医療用医薬品以外の領域でも多様な収益源を確保しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は2021年3月期の約2,972億円から2025年3月期の約4,383億円へと大きく拡大しています。特に2023年3月期以降は4,000億円台で推移しており、3年連続で過去最高の売上収益を更新しました。利益面でも高い水準を維持しており、当期利益も安定して推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,972億円 3,351億円 4,267億円 4,101億円 4,383億円
税引前利益 1,430億円 1,263億円 2,203億円 1,983億円 2,008億円
利益率(%) 48.1% 37.7% 51.6% 48.4% 45.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,119億円 1,142億円 1,850億円 1,620億円 1,704億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は増加しましたが、売上原価も増加したため、売上総利益は微減となりました。一方、営業利益は増加し、営業利益率は高い水準を維持しています。全体として、増収に伴い利益も確保されており、底堅い収益構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 4,101億円 4,383億円
売上総利益 3,775億円 3,744億円
売上総利益率(%) 92.1% 85.4%
営業利益 1,533億円 1,566億円
営業利益率(%) 37.4% 35.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が346億円(構成比34.0%)、業務委託費が211億円(同20.7%)を占めています。売上原価については内訳の記載はありませんが、製品構成の変化により増加傾向にあります。

(3) セグメント収益


同社グループは医療用医薬品事業等の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な損益データはありません。全体としては、海外事業やロイヤリティー収入の増加が牽引し、増収増益となりました。国内では薬価改定の影響等がありましたが、感染症治療薬などが寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Total 4,101億円 4,383億円 1,533億円 1,566億円 35.7%
連結(合計) 4,101億円 4,383億円 1,533億円 1,566億円 35.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:本業である営業活動でキャッシュを稼ぎ出し、将来のための投資活動を行いつつ、配当や自社株買いなどの財務活動で株主還元や借入返済を進めている、財務的に健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,543億円 1,955億円
投資CF 59億円 -1,161億円
財務CF -1,269億円 -649億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬(ヘルスケアソリューション)を提供する」ことを基本方針(SHIONOGI Group Heritage)としています。この方針のもと、2030年に成し遂げたいビジョンとして「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」を掲げ、創薬型製薬企業からヘルスケアサービスを提供する企業への変革を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、目指すべき人材像として「SHIONOGI Way」を定めています。これは、「他者を惹きつける強みを持ち、貪欲に知識とスキルを高めつつ、積極的に挑戦しやり遂げる人」と定義されています。変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「STS2030 Revision」において、2025年度および2030年度の数値目標を設定しています。2025年度は成長加速フェーズと位置づけ、感染症領域を中心としたグローバルでのトップライン成長と積極投資による成長ドライバーの育成を目指しています。

* 売上収益:5,300億円(2025年度目標)
* EBITDA:1,960億円(2025年度目標)
* ROE:14%以上(2025年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


「HIVビジネスの更なる成長」「急性呼吸器感染症事業」「新製品・新規事業拡大」を3つの柱として成長を加速させます。HIV領域では長時間作用型製剤などを推進し、感染症領域では治療薬とワクチン、診断薬を組み合わせたトータルケアをグローバルに展開します。また、従来の医療用医薬品にとどまらず、HaaS(Healthcare as a Service)企業として新たなヘルスケアプラットフォームの構築に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が競争力の源泉」という理念のもと、グローバルな競争に勝ち抜ける強い個人の育成と多様な人材を生かす組織の構築に取り組んでいます。目指すべき人材像「SHIONOGI Way」を定め、自律的な学びを支援するとともに、キャリア採用を強化して不足する専門性を獲得しています。また、従業員のエンゲージメント向上を重視し、働きやすい環境整備や健康経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 15.2年 10,034,029円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び法定外福利厚生を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.9%
男性育児休業取得率 78.5%
男女賃金差異(全労働者) 80.1%
男女賃金差異(正規雇用) 78.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 107.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員女性比率(27.0%)、女性組織長比率(24.6%)、男性育児休業の14日以上取得率(63.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 感染症領域を中心としたグローバルな成長


感染症領域は流行の予測が困難であり、市場の不確実性が高いという特徴があります。同社は感染症治療薬やワクチンのグローバル展開を推進していますが、開発計画や販売戦略が想定通りに進まない場合、あるいは市場予測が外れた場合には、将来の収益や成長に影響を及ぼす可能性があります。

(2) パイプラインの拡充


医薬品の研究開発には長期間と多額の投資が必要ですが、成功確率は低く不確実性が高いものです。自社創薬に加え、導入や提携によるパイプライン拡充を進めていますが、臨床試験の結果等により開発が中止・遅延する場合や、期待される効果が得られない可能性があります。これにより、将来の成長ドライバーを確保できず、業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 人的資本マネジメント


事業モデルの変革やグローバル成長を実現するためには、多様な専門性を持つ人材の確保と育成が不可欠です。しかし、人材獲得競争の激化により必要な人材を確保できない場合や、従業員のエンゲージメント低下、健康・安全上の問題が発生した場合には、人的資本の価値が毀損され、事業変革や成長戦略の実行が停滞する可能性があります。

(4) DX変革の実現


データに基づく迅速な意思決定や新たな価値創造のため、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。しかし、IT基盤の構築やAI活用、デジタル人材の育成などの取り組みが遅れたり、想定した成果が得られなかったりした場合には、競争力の低下を招き、業績や企業価値の向上に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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