※本記事は、株式会社テーオーシーの有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テーオーシーってどんな会社?
不動産賃貸を中核に、リネンサプライや製薬、スポーツクラブ運営など多角的な事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1967年に不動産事業を目的として東京卸売りセンターが設立され、1982年に星製薬と合併し現在の商号となりました。1986年には浅草ROXをオープンし、同年東京証券取引所市場第一部へ上場しました。その後、2006年にTOC有明をオープンするなど保有物件を拡大し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
同社グループは連結子会社8社、関連会社1社等で構成され、連結従業員数は145名(単体66名)です。筆頭株主はホテル業を営むニュー・オータニで、第2位は有限会社大谷興産、第3位は株式会社オオタニ・ファンドとなっており、上位株主には関連企業や資産管理会社等が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニュー・オータニ | 24.09% |
| 有限会社大谷興産 | 16.57% |
| オオタニ・ファンド | 7.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は大谷卓男氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大谷卓男 | 代表取締役社長 | 1981年同社入社。ROX事業部長、専務取締役等を経て1993年より現職。テーオーリネンサプライ会長等を兼任。 |
| 近藤正一 | 常務取締役ビル施設管理部長及び安全管理推進室担当 | 1979年同社入社。ビル施設管理部長等を経て2020年より現職。テーオーシーサプライ社長を兼任。 |
| 石田雅彦 | 常務取締役事務管理部門 (総務・経理・財務)担当 | 1983年日本開発銀行入行。南海電気鉄道部長等を経て2020年より現職。 |
| 松村康弘 | 取締役ビル営業事業部門TOC事業部部長兼催事施設事業部部長 | 1984年同社入社。執行役員ビル営業事業部門TOC事業部部長等を経て2020年より現職。 |
| 栁沢和彦 | 取締役 | 1986年同社入社。テーオーリネンサプライ社長、同社執行役員等を経て2024年より現職。大崎再開発ビル社長を兼任。 |
社外取締役は、稲葉弘文(三陽エンジニアリング社長)、鳥巣元太(アルス デザイン アソシエイツ社長)、小森谷友絵(日本大学生産工学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」「リネンサプライ及びランドリー事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産事業
東京都内に所有するTOCビル、浅草ROX、大崎ニューシティ等の営業用建物(計12棟)において、オフィス、店舗、展示場、会議室、駐車場等の賃貸を行っています。顧客はテナント企業や施設利用者です。
収益は、テナントからの賃料収入や、展示場・駐車場の利用料等から得ています。運営は主に同社が行っていますが、浅草ROX等の商業施設については子会社のTORアセットインベストメントが所有し、運営業務をTOCディレクション等が受託しています。また、ビル管理関連サービスとしてテーオーシーサプライが内装工事や保険代理業務等を手掛けています。
■リネンサプライ及びランドリー事業
ホテルやレストラン、スポーツクラブ等を対象に、リネン類(シーツ、タオル、テーブルクロス等)のサプライおよびクリーニング業務を提供しています。神奈川県厚木市の自社工場を拠点としています。
収益は、顧客であるホテルや施設等から受け取るリネンサプライ料やクリーニング料等から構成されています。運営は、同社の連結子会社であるテーオーリネンサプライが行っています。
■その他
製薬事業、スポーツクラブ・温浴施設事業、ビル管理関連サービス事業、情報処理関連事業等を含みます。製薬事業では胃腸薬や健康食品等の製造・販売を行っています。
収益は、製品の販売代金や施設の利用料、業務受託料等から得ています。運営は、星製薬(製薬)、TOLCD(スポーツクラブ・温浴施設)、I-TINK(情報処理)などの各連結子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高および経常利益は減少傾向にあります。特に売上高は160億円台から130億円台へと推移しており、利益率も低下傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 161億円 | 163億円 | 157億円 | 137億円 | 132億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 62億円 | 46億円 | 27億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 37.5% | 38.2% | 29.6% | 19.4% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 41億円 | 31億円 | 33億円 | 51億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しており、それに伴い売上総利益および営業利益も縮小しています。営業利益率は依然として高い水準を維持していますが、収益性は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 132億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 24.1% |
| 営業利益 | 23億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 16.7% | 10.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当・福利費が6億円(構成比36%)、役員報酬が2億円(同11%)、租税公課が2億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産事業は主力ビルの建て替え計画に伴う一時閉館等の影響により減収減益となりました。一方、リネンサプライ及びランドリー事業はホテル業界からの受注増により増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 102億円 | 95億円 | 23億円 | 14億円 | 14.5% |
| リネンサプライ及びランドリー事業 | 16億円 | 17億円 | -0億円 | 0.2億円 | 0.9% |
| その他 | 19億円 | 20億円 | -0.3億円 | 0.2億円 | 1.0% |
| 調整額 | - | - | 0.2億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 137億円 | 132億円 | 23億円 | 14億円 | 10.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持していますが、前期比では大幅に減少しました。投資CFは有価証券や固定資産の取得によりマイナスとなり、財務CFは自己株式取得や配当支払によりマイナスとなりました。本業で得た資金の範囲内で投資と株主還元を行っており、「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 4億円 |
| 投資CF | 72億円 | -53億円 |
| 財務CF | -24億円 | -50億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.2%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社会に役立つ企業」という企業理念を掲げています。お客様に「明るく、活力のある、和やかな」場を提供することで、社会と調和し、お客様やテナントに喜ばれ、役に立つことを使命として事業を推進しています。
■(2) 企業文化
全社を挙げて日々の向上に努めることで事業の発展を成し、社会に貢献することを経営の基本方針としています。また、企業の社会的責任(CSR)や環境問題への対応にも真摯に取り組み、企業価値の向上を図りながら事業に邁進する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、各財務指標全般を目標としていますが、特に「キャッシュ・フローの拡大」と「資本効率の向上」を短期的のみならず中長期的にも重要な目標として位置付けています。具体的な数値目標としては、各事業年度の予算達成を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的かつ持続的な成長のため、収益性向上施策を積極的に実施し、経営基盤の強化を図ります。具体的には、所有する個々のビルにおいて運営の効率化やきめ細かなリニューアルを実施し、付加価値を高めます。また、新TOCビル計画については、より高収益化を目指して計画を見直し、新たな着工時期を2033年頃と想定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人権尊重を重要課題とし、多様性のある安全で快適な職場環境の実現とワークライフバランスへの配慮を掲げています。人材育成においては、ジョブローテーションによる多角的な経験やOJTによる知識習得、階層別研修や資格取得支援を通じて、従業員の働きがいを高め、自律的な成長を促す方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 16.7年 | 7,841,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.5% |
※男性労働者の育児休業取得率は、該当者がいない等の理由により「-」となっています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況の影響
同社グループはビル賃貸事業が営業利益の大半を占めており、景気動向によるオフィスビルの需給変動が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、各ビルの特性を活かした営業活動を行うことでリスク低減を図っています。
■(2) 商業ビルの事業環境
所有する商業ビルはスポーツクラブや温浴施設等を併設した複合施設ですが、個人消費動向や地域の景気動向の影響を受ける可能性があります。魅力的な施設づくりや効果的な販売促進策を実施することで、集客力を維持しリスクに対応しています。
■(3) 自然災害および人的災害
所有する賃貸ビルは全て東京都内に立地しており、地震や暴風雨などの自然災害、火災やテロなどの人的災害が発生した場合、経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。日頃から安全管理推進室を中心に災害対応を研究し、BCP対策を推進することでリスク低減に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。