テーオーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テーオーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テーオーシーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、都内での不動産賃貸事業やリネンサプライ事業を展開する企業です。直近の業績は、主力施設の営業再開によるテナント獲得や入居率の改善が寄与し、売上高が前期比で増加し、増収増益のトレンドを示しています。強固な財務基盤も同社の大きな特徴です。


※本記事は、株式会社テーオーシーの有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テーオーシーってどんな会社?


都心部を中心にオフィスビルや商業施設の不動産賃貸事業と、リネンサプライ事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1967年に不動産事業を目的として設立され、1970年にTOCビルをオープンしました。1982年に現在のテーオーシーに商号変更し、1983年にはリネンサプライ事業を開始しました。1986年の浅草ROX、2006年のTOC有明など、都内で大型商業施設やオフィスビルを次々と展開しています。

従業員数はグループ全体で148名、単体で67名です。筆頭株主はホテル業を展開し事業上の提携関係があるニュー・オータニで、第2位と第3位には大谷興産およびオオタニ・ファンドといった関係法人が名を連ねており、安定した株主構成と経営体制を維持しています。

氏名 持株比率
ニュー・オータニ 24.08%
大谷興産 16.56%
オオタニ・ファンド 7.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は大谷卓男氏が務めており、社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
大谷卓男 代表取締役社長 1981年東京卸売りセンター入社。ROX事業部長、常務、専務を経て、1993年より現職。
近藤正一 常務取締役ビル施設管理部長及び安全管理推進室担当 1979年同社入社。ビル施設管理部長等を経て、2020年より現職。
石田雅彦 常務取締役事務管理部門担当 1983年日本開発銀行入行。南海電気鉄道経営企画部長等を経て、2020年より現職。
松村康弘 常務取締役ビル営業事業部門TOC事業部部長兼催事施設事業部部長 1984年同社入社。ビル営業事業部門TOC事業部部長等を経て、2025年より現職。
栁沢和彦 取締役 1986年同社入社。ビル営業事業部門TOC事業部部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、稲葉弘文(三陽エンジニアリング代表取締役社長)、鳥巣元太(アルス デザイン アソシエイツ代表取締役社長)、小森谷友絵(日本大学生産工学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産事業」と「リネンサプライ及びランドリー事業」および「その他」事業を展開しています。

不動産事業


都内を中心とした営業用建物の賃貸を展開し、貸室、展示場、会議室、駐車場の賃貸を行っています。主要顧客はテナントとして入居する一般企業や、各種商業施設の店舗運営者です。

主にテナント企業から支払われるオフィスや商業施設の賃料、光熱水道料金を収益源としています。事業運営は主にテーオーシーおよび、商業施設を所有するTORアセットインベストメント、運営を受託するTOCディレクションが行っています。

リネンサプライ及びランドリー事業


宿泊施設、レストラン、宴会場、スポーツクラブなどの法人顧客に対し、各種リネン品のサプライおよび衣類等のランドリーサービスを提供しています。

顧客からの洗濯やリネン品レンタルの依頼に対し、納品数や利用量に応じたサービス対価を受け取ることで収益を上げています。本事業の運営は子会社であるテーオーリネンサプライが行っています。

その他事業


医薬品や健康食品の製造販売、商業施設内での商品販売、スポーツクラブや温浴施設の運営、さらにはビル内の内装工事や自動販売機サービスなどのビル管理関連事業を展開しています。

施設の利用者からの利用料や商品代金、テナントからの工事請負代金が主な収益源です。星製薬やTOCディレクション、TOLCD、テーオーシーサプライなどの各子会社がそれぞれの事業運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的な減少傾向が見られましたが、直近では主力施設の営業再開などが寄与し、反転増収となっています。経常利益率も20%台に回復しており、着実な収益力の改善と安定した利益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 163億円 157億円 137億円 132億円 152億円
経常利益 62億円 46億円 27億円 19億円 32億円
利益率(%) 38.2% 29.6% 19.4% 14.6% 21.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 31億円 47億円 12億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益と営業利益がともに大きく成長しています。徹底したコスト管理と物件の付加価値向上策により、利益率の改善が進み、事業の稼ぐ力が一段と高まっている状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 132億円 152億円
売上総利益 32億円 42億円
売上総利益率(%) 24.1% 27.8%
営業利益 14億円 25億円
営業利益率(%) 10.8% 16.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・福利費が6億円(構成比35.5%)、宣伝広告費が2億円(同10.9%)、租税公課が2億円(同9.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産事業は、TOCビルの営業再開と既存ビルの入居率改善により大幅な増収増益を達成しました。リネンサプライ事業もホテル業界からの受注が順調に回復し、増益に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
不動産事業 95億円 113億円 14億円 24億円 21.1%
リネンサプライ及びランドリー事業 17億円 18億円 0.2億円 0.5億円 2.9%
その他 20億円 20億円 0.2億円 0.1億円 0.6%
連結(合計) 132億円 152億円 14億円 25億円 16.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 57億円
投資CF △53億円 △29億円
財務CF △50億円 △11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会に役立つ企業」という企業理念を掲げています。お客様に対して「明るく、活力のある、和やかな」場を提供することを重視し、社会との調和を図りながら、テナントや利用者の喜びに貢献することを使命として、日々の事業活動を推進しています。

(2) 企業文化


全社を挙げて日々の向上に努める姿勢を大切にしており、その積み重ねによって事業の発展と社会への貢献を目指しています。また、企業の社会的責任や環境問題といった現代の課題に対しても真摯に向き合い、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを企業文化として根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社は、財務指標全般の向上を目標として掲げており、その中でも特にキャッシュ・フローの拡大と資本効率の向上を短期・中長期にわたる最重要の経営指標として位置付けています。持続的な成長に向けて、収益基盤の安定と資本の有効活用を同時に追求する計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


中核である不動産事業を中心に、既存事業と新規事業の融合によるグループ全体の強化を図っています。所有するビルごとの特性を活かしたきめ細やかなリニューアルや運営の効率化を進め、物件の付加価値向上に注力しています。また、長期的な視点から、建築コストの変化に柔軟に適応した新規開発計画も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人権尊重を事業継続の重要課題と位置づけ、多様性のある安全で快適な職場環境の実現とワークライフバランスの確保を推進しています。あらゆる人材に対して能力開発やキャリアアップの機会を公平に提供し、働きがいを高めることで、従業員の成長意欲と主体性を引き出す人材育成を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 16.2年 8,124,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用) 76.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況(オフィスビル市況)


景気動向などによるオフィス需給の変動が、主力のビル賃貸事業の稼働率や賃料水準に影響を及ぼす可能性があります。同社は所有する各ビルの特性を活かした営業活動を行い、リスクの低減に努めています。

(2) 商業ビルの事業環境


個人の消費動向や地域の景気動向の悪化が、商業施設内のテナント売上を低下させ、不動産事業の業績に影響を与える可能性があります。これに対し、魅力的な施設づくりや効果的な販売促進策を実施しています。

(3) 固定資産の減損リスク


保有する不動産の市況悪化や収益性の低下が発生した場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額する減損処理が必要となり、同社グループの業績や財務状況にマイナスの影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。