科研製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

科研製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する製薬企業です。主要事業として医薬品、医療機器および農業薬品の製造・販売を行う「薬業」と、賃貸ビル運営などの「不動産事業」を展開しています。直近の業績は、海外売上の増加などが寄与し、前期比で大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社科研製薬の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 科研製薬ってどんな会社?


整形外科や皮膚科領域に強みを持つ製薬企業です。医薬品だけでなく農業薬品や不動産事業も展開しています。

(1) 会社概要


同社は1948年に株式会社科学研究所として発足し、1952年に生産部門が分離独立して科研化学が設立されました。1961年に東証二部に上場し、翌1962年には東証一部へ上場しました。1982年に科研薬化工と合併し、現在の商号である科研製薬に変更しています。2025年3月には米国アーディ社を買収し、完全子会社化しました。

連結従業員数は1,126名、単体では1,103名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(13.39%)で、第2位は同社製品の国内製造販売契約を締結している東レ(4.97%)、第3位は金融機関の農林中央金庫(4.79%)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 13.39%
東レ 4.97%
農林中央金庫 4.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は堀内裕之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
堀内 裕之 代表取締役社長 1984年同社入社。医薬営業部長、営業本部長、常務取締役などを経て、2020年6月より現職。
鈴土 雅 常務取締役 富士銀行(現みずほ銀行)出身。同社総務部長、経営企画部長、取締役を経て、2024年6月より現職。
松浦 真洋 取締役 1994年同社入社。経営企画部長、執行役員を経て、2020年6月より現職。
綿貫 充 取締役研究開発本部長 1989年同社入社。臨床開発部長、研開企画部長、研究開発本部長などを経て、2023年6月より現職。
梅田 泰弘 取締役 1993年農林中央金庫入庫。同庫常務執行役員、特別参与を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、髙木正一郎(元鳥居薬品社長)、井上康知(弁護士)、石川さと子(大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「薬業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 薬業


医薬品、医療機器および農業薬品の製造・販売を行っています。特に整形外科領域や皮膚科領域に強みを持ち、関節機能改善剤や爪白癬治療剤などを提供しています。また、農業薬品では微生物由来の天然物質農薬などを扱っています。

主な収益源は、医療機関や卸売業者への製品販売による対価や、導出先からのロイヤリティ収入、契約一時金などです。運営は主に科研製薬が行っており、連結子会社の科研ファルマ、アーサム、アーディ社なども事業に関わっています。

(2) 不動産事業


東京都文京区にある複合施設「文京グリーンコート」に関連するオフィスビルや商業施設、住宅等の不動産賃貸事業を行っています。

主な収益源は、テナントからの賃貸料収入です。運営は科研製薬が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は700億円台で推移してきましたが、当期は900億円台へと大きく伸長しました。利益面でも、一時的な減少が見られた時期もありましたが、当期は大幅な増益となり、利益率も20%を超える高水準に回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 750億円 760億円 730億円 720億円 940億円
経常利益 182億円 175億円 87億円 100億円 213億円
利益率(%) 24.3% 23.1% 12.0% 13.8% 22.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 134億円 99億円 68億円 85億円 164億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。特に営業利益は倍増以上の成長を見せており、利益率も大幅に改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 720億円 940億円
売上総利益 385億円 585億円
売上総利益率(%) 53.5% 62.2%
営業利益 95億円 210億円
営業利益率(%) 13.2% 22.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が187億円(構成比50%)、給料が56億円(同15%)を占めています。売上原価については、製品売上原価等の製造費用などが計上されています。

(3) セグメント収益


主力の薬業セグメントにおいて、海外売上の増加などが寄与し、売上・利益ともに大幅に増加しました。不動産事業は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
薬業 696億円 916億円 81億円 197億円 21.5%
不動産事業 24億円 25億円 14億円 14億円 55.4%
連結(合計) 720億円 940億円 95億円 210億円 22.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

科研製薬は、財務の健全性を保ちながら、積極的な事業展開を進めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加により、大幅な収入増となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社株式の取得による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や処分、配当金の支払いなどにより、支出が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 298億円
投資CF -59億円 -197億円
財務CF -57億円 -54億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「一人でも多くの方に笑顔を取りもどしていただくために、優れた医薬品の提供を通じて患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上につとめる」を企業理念として掲げています。この理念のもと、患者と医療関係者のニーズに即した医薬品の創製・提供、高い倫理観を持った企業活動、社員が誇りを持って働ける企業の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「患者さんのよろこび」「社会のよろこび」「社員のよろこび」という「3つのよろこび」を追求することを掲げています。医療現場のニーズを捉えた新たな治療選択肢の提供、社会からの要請に応える持続可能な経営、そして社員一人ひとりが新たな価値を創出できる環境づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2022年を起点とする10か年の長期経営計画において、2031年のビジョンとして「画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命延伸に貢献し続ける企業」「皮膚科、整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業」を掲げています。

* 連結売上高:1,000億円
* 連結営業利益:285億円
* 連結ROE:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「長期経営計画2031」のビジョン実現に向け、「研究開発」「海外展開」「経営基盤」の3つの変革(Transformation)を戦略として掲げています。研究開発への積極投資によるパイプラインの充実、米国市場での自社販売体制構築を含むグローバル展開の加速、DX推進や人材育成による経営基盤の強化に取り組んでいます。

* 研究開発および導出入活動への重点投資
* 米国アーディ社を中心としたグローバル展開の加速
* 整形外科・皮膚科領域等でのプレゼンス向上と製品価値最大化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロフェッショナルとして変革を追求し続ける人材の育成」と「最適な人事制度と就業環境の整備による社員のエンゲージメント向上」を基本方針としています。特に、研究開発や海外展開を担う高度なスキルを持つ人材の育成・採用、DXスキルの強化、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 17.6年 8,363,172円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 93.8%
男女賃金差異(全労働者) 74.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用比率(39.6%)、年次有給休暇取得率(62.5%)、従業員エンゲージメントレベル(肯定回答率67.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制・行政動向に関するリスク


国内医薬品事業は薬事行政による規制を受けており、薬価基準の改定やジェネリック医薬品の使用促進策などの医療費抑制策が進展しています。これらの法改正や行政施策の動向により、同社グループの経営成績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 新薬開発に関わるリスク


新薬の研究開発には多額の資金と長い期間が必要ですが、製品化に至る確率は高くありません。開発途中で有効性が証明できない場合や安全性の問題が生じた場合には開発中止となり、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(3) 副作用の発現によるリスク


医薬品は安全性試験を経て承認・販売されますが、市販後に予期せぬ副作用が発現する可能性があります。製品回収や販売中止となった場合、同社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外展開に関するリスク


米国市場での自社販売体制構築など海外展開を進めていますが、各国の規制変更や政治・経済情勢の変化、外交関係の悪化等のリスクがあります。これらを完全に回避できない場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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