科研製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

科研製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

科研製薬は東京証券取引所プライム市場に上場する製薬企業で、医薬品、医療機器及び農業薬品の製造・販売を主力とし、不動産事業も展開しています。直近の連結業績においては、主力品のAGへの置き換え等により減収となり、研究開発費の増加等により営業損益は赤字に転じました。新薬開発への重点投資を継続しています。


※本記事は、科研製薬株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 科研製薬ってどんな会社?


医薬品を中心とした薬業と不動産事業を展開し、画期的新薬の創出を目指す製薬企業です。

(1) 会社概要


同社は1948年に科学研究所として発足し、1952年に生産部門が分離独立して科研化学として設立されました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1982年に科研薬化工と合併して現在の商号に変更しました。近年は2021年にARTham Therapeuticsを買収、2025年にAadi Bioscienceを買収し、新薬開発体制を強化しています。

現在の同社グループは、連結従業員数1,114名、単体従業員数1,086名の体制で事業を展開しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行、第3位は農林中央金庫などの金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.22%
日本カストディ銀行(信託口) 5.70%
農林中央金庫 4.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は堀内裕之氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
堀内 裕之 代表取締役社長 1984年同社入社。広島支店長、大阪支店長、執行役員等を経て、2016年取締役就任。営業本部長、常務取締役を経て2020年より現職。
鈴土 雅 常務取締役 1985年富士銀行入行。みずほフィナンシャルグループ等を経て2016年同社入社。総務部長、経営企画部長等を経て2024年より現職。
綿貫 充 取締役研究開発本部長 1989年同社入社。臨床開発部長、研開企画部長等を経て、2021年研究開発本部長。2023年より現職。
梅田 泰弘 取締役 1993年農林中央金庫入庫。同庫営業第三部長、常務執行役員、特別参与を経て、2024年より現職。
奥山 明美 取締役 1994年同社入社。安全性情報部長、薬事部長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、髙木正一郎(元鳥居薬品代表取締役社長)、井上康知(長濱・水野・井上法律事務所パートナー)、石川さと子(慶應義塾大学薬学部薬学教育研究センター教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「薬業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 薬業


医薬品、医療機器および農業薬品の製造・販売を行っています。医療用医薬品を中心に、皮膚科領域や整形外科領域などの専門領域において、アンメットメディカルニーズを満たす画期的新薬の創出に注力しています。また、農業薬品事業では、微生物由来の天然物質農薬の普及を通じて、環境と調和のとれた持続可能な農業への貢献を目指しています。

医療機関や卸売業者等への医薬品等の販売から収益を得ているほか、製品や開発品の導出による契約一時金やロイヤリティ収入も収益源となっています。事業の運営は同社が主体となり、子会社の科研ファルマやアーサム、海外拠点であるKAKEN INVESTMENTS INC.、アーディ社と連携して行っています。

(2) 不動産事業


保有する不動産の賃貸管理を行っています。主に東京都文京区にある「文京グリーンコート」関連の商業棟やオフィス棟などの不動産を賃貸しており、グループにおける安定的な収益基盤の一つとして機能しています。

入居するテナントや法人から定期的に受け取る不動産賃貸料を主な収益源としています。この事業の運営は同社が単独で行い、資産の有効活用を通じてグループ全体の経営基盤を継続的に支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は大型ライセンス契約の有無等により年度ごとに変動が見られます。特に前々期は大型の一時金収入等により大きく伸長したものの、直近ではその反動や主力品のAGへの置き換え等により減収となっています。また、新薬開発に向けた研究開発費やライセンス契約に伴う投資を継続しているため、利益面も直近でマイナスを計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 760億円 730億円 720億円 940億円 769億円
経常利益 175億円 87億円 100億円 213億円 -2億円
利益率(%) 23.1% 12.0% 13.8% 22.6% -0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 99億円 68億円 85億円 164億円 20億円

(2) 損益計算書


前期間と当期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しており、利益率も低下傾向にあります。これは高利益率のライセンス一時金収入の反動減が大きく影響しています。また、将来の成長に向けた積極的な投資や開発活動を継続していることから、営業利益は赤字に転じています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 940億円 769億円
売上総利益 585億円 400億円
売上総利益率(%) 62.2% 52.0%
営業利益 210億円 -9億円
営業利益率(%) 22.4% -1.2%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が191億円(構成比47%)、給料が55億円(同13%)を占めています。売上原価は369億円であり、売上原価率は48%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力である薬業は、前々期におけるライセンス契約に伴う一時金収入の反動や、主力品のAG(オーソライズド・ジェネリック)への置き換えが進んだ影響等により、減収となっています。一方、不動産事業は、保有物件からの安定した賃貸収入を背景に堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
薬業 916億円 743億円
不動産事業 25億円 25億円
連結(合計) 940億円 769億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる事業検討型の構造となっています。営業CFのマイナスは主に法人税等の支払額の増加によるものであり、投資CFは有形固定資産の売却額の増加によりプラスとなりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 298億円 -111億円
投資CF -197億円 3億円
財務CF -54億円 -88億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「一人でも多くの方に笑顔を取りもどしていただくために、優れた医薬品の提供を通じて患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上につとめる」を企業理念として掲げています。さらに、患者さんと医療関係者のニーズに即した有用な医薬品の創製・提供に努めること、社会的責任を自覚し高い倫理観をもって企業活動を行うこと、そして社員がその仕事に歓びと誇りをもつ存在感のある企業を目指すことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「患者さんのよろこび」「社会のよろこび」「社員のよろこび」からなる「3つのよろこび」を追求する文化を大切にしています。独自の視点やユニークな着眼点により新たな治療選択肢を提供することや、社会からの要請に応える柔軟で持続可能な経営を推進し、社員一人ひとりが多くの人を笑顔にする仕事に誇りを持つことを重視しています。この価値観を通じて、ステークホルダーとともに多くの笑顔を創出することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2022年を起点とする10か年の経営計画において、2031年ビジョンとして「画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命延伸に貢献し続ける企業」「皮膚科、整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業」を掲げています。

* 売上高1,000億円
* 営業利益285億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ビジョン実現に向けた戦略として「研究開発」「海外展開」「経営基盤」の3つのTransformationを策定しています。研究開発への積極的な戦略投資や、国内外の企業・研究機関との共同研究を推進し、海外展開品の充実を図ります。さらに、デジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成と人材育成を進め、高品質な医薬品の安定的・持続的な供給体制の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「プロフェッショナルとして常に新たな挑戦をし、変革を追求し続ける人材の育成」と「最適な人事制度と就業環境の整備による社員のエンゲージメント向上」を基本方針としています。多様な人材が能力を十分に発揮できるよう、子育てや介護への支援、柔軟な働き方のサポートなど就業環境の整備に努めるとともに、挑戦を奨励する企業文化の醸成や教育研修の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 17.3年 8,748,060円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 82.9%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用比率(54.0%)、年次有給休暇取得率(64.5%)、従業員エンゲージメントの肯定回答率(70.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制、医療費抑制策等の行政動向に関するリスク

医薬品事業は薬事行政による様々な規制を受けており、薬価基準の改定やジェネリック医薬品使用促進策等の医療費抑制策が進展しています。これらの関連法規の改正や医療制度・健康保険に関わる行政施策の動向によっては、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新薬開発に関わるリスク

医薬品の研究開発には多額の資金と長期の開発期間が必要ですが、新製品や新技術として成功する確率は高くありません。有効性が証明できない場合や安全性に問題が明らかとなった場合などには、途中で開発が中止となるリスクがあります。

(3) 他社との競争に伴うリスク

製薬業界は競争が激しく、販売している医薬品と同様の効能・効果を持つ他社の競合品との販売競争や、特許切れ後に発売される他社のジェネリック医薬品との競争が激化した場合、同社製品の売上高の減少を招くリスクがあります。

(4) 製品供給が遅滞または休止するリスク

自社および製品調達先における生産設備の不具合や、原材料の入手の遅れなどにより、製品供給が遅滞または休止するリスクがあります。また、品質上の問題が発生して製品回収等を行うことになった場合も、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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