日本農薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本農薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の農薬メーカー。殺虫剤や殺菌剤等の農薬事業を中核とし、海外市場でも展開しています。第126期連結業績は、海外市場の在庫調整や天候不順等の影響を受け減収となりました。経常利益はブラジルでの収益改善等により増益を確保しましたが、当期純損益は赤字となりました。


※本記事は、日本農薬株式会社 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本農薬ってどんな会社?


1928年創業の農薬専業メーカー。独自技術による新薬開発に強みを持ち、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1928年に旭電化工業(現ADEKA)の農業薬品部と藤井製薬が合併し設立されました。1963年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1985年に同第一部へ指定替えとなりました。2018年にはADEKAによるTOB等を経て同社の連結子会社となり、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

同グループの連結従業員数は1,524名、単体では381名です。筆頭株主は親会社で化学品事業等を展開するADEKA(持株比率51.00%)です。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関の常任代理人となっています。

氏名 持株比率
株式会社ADEKA 51.00%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 6.58%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社) 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役社長は岩田浩幸氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
岩田 浩幸 代表取締役社長 1986年同社入社。海外営業本部長、経営企画本部長を経て、2022年6月より現職。
宍戸 康司 代表取締役副社長 1983年旭電化工業(現ADEKA)入社。同社執行役員環境・安全対策本部長を経て、2024年6月より現職。
郡 昭夫 取締役 1971年旭電化工業(現ADEKA)入社。同社代表取締役社長、代表取締役会長を経て、2020年6月より同社相談役。
冨安 治彦 取締役 1979年第一勧業銀行入行。ADEKA取締役兼専務執行役員等を経て、2023年6月より現職。
山本 秀夫 取締役常勤監査等委員 1985年同社入社。国内営業本部長、常務執行役員管理本部長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、中田ちず子(中田公認会計士事務所代表)、松本昇(元コーセー執行役員)、山名群(生産性ガーデン社長)、戸井川岩夫(弁護士)、大島良子(弁護士・税理士)、大谷益世(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「農薬事業」「農薬以外の化学品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 農薬事業


殺虫剤、殺菌剤、除草剤、農薬原体などを製造・販売しています。国内のほか、米国、インド、ブラジル、欧州等の海外子会社を通じてグローバルに展開しており、ゴルフ場向け農薬や家庭園芸用薬剤も取り扱っています。

収益は、特約店、JA、全農および農薬メーカー等への製品販売代金から得ています。運営は同社のほか、Nichino America,Inc.、Nichino India Pvt.Ltd.、Sipcam Nichino Brasil S.A.などの連結子会社が行っています。

(2) 農薬以外の化学品事業


シロアリ防除資材などの木材薬品や、外用抗真菌剤、動物用医薬品、飼料添加物などの医薬品等を製造・販売しています。独自の技術を活かし、農薬以外の分野での事業展開を進めています。

収益は、特約店や医薬品メーカー等への製品販売代金から得ています。木材薬品の販売は連結子会社の株式会社アグリマートが行い、医薬品等は主に同社が製造し販売しています。

(3) その他


造園緑化工事の請負・設計・施工、不動産の賃貸、農薬の物流業務請負、作物・環境中の残留農薬分析などを行っています。

収益は、工事請負代金、賃貸料、物流業務や分析業務の受託料等から得ています。運営は、株式会社ニチノー緑化(造園)、株式会社ニチノーサービス(不動産・物流)、日本エコテック株式会社(分析)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年3月期の売上高は999.7億円で前期比微減となりました。経常利益は70.9億円と増益でしたが、当期純損益は27.3億円の赤字となりました。利益率は経常段階では7.1%を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 715.3億円 801.1億円 1,020.9億円 1,030.3億円 999.7億円
経常利益 57.2億円 56.7億円 77.8億円 59.3億円 70.9億円
利益率(%) 8.0% 7.1% 7.6% 5.8% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 29.9億円 35.6億円 41.4億円 40.5億円 -27.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約30億円減少し、売上原価も減少しました。売上総利益率は改善し、営業利益も増加しています。一方、営業利益率は前期の7.2%から8.6%へと上昇しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,030.3億円 999.7億円
売上総利益 299.0億円 332.2億円
売上総利益率(%) 29.0% 33.2%
営業利益 74.4億円 85.8億円
営業利益率(%) 7.2% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、手数料が30億円(構成比12%)、委託研究費が27億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


農薬事業は海外の一部地域での販売減少等により減収となりましたが、利益率は改善しました。農薬以外の化学品事業は減収減益となり、その他事業は増収となりましたが利益は横ばいでした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
農薬 975.5億円 945.7億円
農薬以外の化学品 37.6億円 35.2億円
その他 17.2億円 18.7億円
連結(合計) 1,030.3億円 999.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済も進めている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -3.4億円 104.1億円
投資CF -48.1億円 -3.5億円
財務CF 98.4億円 -69.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食とくらしのグローバルイノベーター(Global Innovator for Crop & Life)」をビジョンに掲げ、世界中の人々の安全で安定的な食の確保とくらしを守ることを使命としています。新たな価値の創造により持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


公正で活力のある事業活動を通じて社会的責任を果たし、社会に貢献することを目指しています。サステナビリティ経営を推進し、新たな価値の創造を持続的に可能とする企業グループを目指すとともに、事業活動と社会活動の両立を推進し、人類と地球が共生できる社会の実現に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」を推進しています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,200億円
* 営業利益:108億円
* ROE:8%以上
* 海外売上高比率:75%

(4) 成長戦略と重点施策


サステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、重点品目の拡大や原価低減、エリア戦略に基づいた市場拡大を進めます。また、化学合成によるパイプライン化合物の研究開発加速や、バイオリソースの活用、デジタル技術の活用によるAI診断ビジネスの収益拡大などに取り組みます。資本収益性の向上やキャッシュフロー改善、人的資本経営の推進なども重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員のWell-Beingをテーマとし、人財開発の推進、健康経営、職場の環境整備に取り組んでいます。また、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進を掲げ、女性活躍推進や外国人の登用、キャリア採用者の活用を積極的に行っています。多様な人財が活躍し、異なる視点や価値観が存在することが成長の強みとなると考えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 14.9年 7,758,304円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.7%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 76.3%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況等


製品の多くを海外へ輸出・販売しており、国内外の政治・経済情勢、農業情勢、市場動向、天候、病害虫の発生状況などの影響を受けます。これらが業績に直接的または間接的に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料の調達について


農薬原体や原料の一部について特定の地域や購入先に集中する傾向があり、特に中国への依存度が高くなっています。調達先の複数化を進めていますが、相手国での規制強化や購入先の事故等により調達に制約を受けた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料の価格変動について


農薬原料等の購入価格は、国内外の市況、為替相場、原油・ナフサ価格の影響を受けます。価格転嫁やヘッジ等で対応していますが、予期せぬ価格変動があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 為替の変動について


原材料の輸入や製品の輸出、海外拠点での生産・販売を行っており、米ドル、インドルピー、ブラジルレアルなどの外貨建て項目があります。円換算時の為替レート変動により、業績が影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。