森下仁丹 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

森下仁丹 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。ヘルスケア製品の製造販売およびカプセル技術の受託製造を展開。第88期は、ソリューション事業が好調で売上高128億円と増収、経常利益も8.7億円と増益でしたが、特別損失の計上等により当期純利益は減益となりました。


#森下仁丹転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、森下仁丹株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森下仁丹ってどんな会社?


ヘルスケア製品「仁丹」や「ビフィーナ」等の製造販売、および独自のカプセル技術を活かした受託製造を行う老舗企業。

(1) 会社概要


1893年に森下博が薬種商森下南陽堂を創業し、1905年に「仁丹」の販売を開始しました。1936年に森下仁丹株式会社へ改称し、1961年には株式を上場しています。その後、独自のシームレスカプセル技術を確立し、2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。

同グループの連結従業員数は356名(単体333名)です。大株主については、筆頭株主は株式会社森下泰山(26.8%)で、第2位は資本業務提携を結ぶロート製薬(8.7%)、第3位は公益財団法人森下仁丹奨学会(5.1%)となっています。

氏名 持株比率
森下泰山 26.80%
ロート製薬 8.70%
公益財団法人森下仁丹奨学会 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は森下雄司氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
森下 雄司 代表取締役社長 2007年同社入社。経営企画部長、ヘルスケア事業本部長等を歴任し、2019年より現職。
吉田 秀章 取締役 元三菱UFJ銀行岡山兼岡山駅前支店長。2021年同社入社、管理本部長を経て2024年より現職。
大城 広明 取締役(監査等委員)(常勤) 2012年同社入社。ヘルスケア事業部長、人事部長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、末川久幸(元資生堂社長)、河﨑保徳(ロート製薬取締役CHRO)、石原真弓(弁護士)、石黒訓(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンシューマー事業」「ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

コンシューマー事業

主力製品「ビフィーナ」シリーズや「仁丹」などの健康関連商品を、通信販売や卸売を通じて一般消費者に提供しています。
製品販売による売上が主な収益源です。運営は主に同社が行い、森下仁丹ヘルスコミュニケーションズがコールセンター業務等を代行しています。

ソリューション事業

独自のシームレスカプセル技術を活用し、食品・医薬品メーカー等からの受託製造(OEM/ODM)や、機能性原料の販売を行っています。
受託加工費や原料販売費が収益源となります。運営は同社および、製造拠点であるMJ滋賀が行っています。

その他

上記セグメントに含まれない事業を展開しています。
運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で連続して増加しており、事業規模は拡大傾向にあります。経常利益も増加基調を維持していますが、当期純利益については第88期に減益となりました。利益率は改善傾向にあり、安定した収益性を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94億円 96億円 114億円 124億円 128億円
経常利益 2.5億円 3.4億円 6.2億円 8.2億円 8.7億円
利益率(%) 2.7% 3.6% 5.5% 6.6% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.0億円 2.8億円 5.1億円 7.2億円 6.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は微減となりました。一方、営業利益は増加しており、本業の収益性は向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 124億円 128億円
売上総利益 60億円 60億円
売上総利益率(%) 48.3% 46.8%
営業利益 7.2億円 8.0億円
営業利益率(%) 5.8% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が12億円(構成比23%)、研究開発費が11億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


ソリューション事業が大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。一方、コンシューマー事業は主力製品の競合激化や自主回収の影響等により減収となり、営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンシューマー事業 55億円 48億円 2億円 -0.6億円 -1.2%
ソリューション事業 69億円 80億円 5億円 9億円 10.7%
その他 0.1億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 100.0%
調整額 - - - 0.1億円 -
連結(合計) 124億円 128億円 7億円 8億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.9%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.0億円 6.7億円
投資CF -11.5億円 -7.0億円
財務CF -3.6億円 8.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


業祖・森下博が掲げた「済世利民」の信念を受け継ぎ、1893年の創業来、人々の健康や豊かな社会の実現を目指しています。コンシューマー事業では顧客に寄り添った製品・サービスを、ソリューション事業では市場創造型の受託企業として価値提供を行うことを方針としています。

(2) 企業文化


創業130周年を機に策定したパーパス「思いやりの心で、オモロい技術と製品で、一人に寄り添い、この星すべてに想いを巡らせ、次の健やかさと豊かさを、丹念に紡いでゆく」を掲げています。モノづくりの原点である「仁丹」から発展した球体技術や素材研究を基盤としています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な成長の観点から「経常利益率」を重視するとともに、安定成長の観点から「自己資本比率」を重要な経営指標として位置づけ、その改善に努めています。高付加価値の新製品開発やコストダウン、営業力強化により収益力を高めることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


コンシューマー事業では「おなかの健康」「おくちの健康」を重点テーマとし、新ブランド「腸テク」シリーズの展開やマーケティング強化を図ります。ソリューション事業では製造ライン増設等の投資による生産能力強化や、機能性原料の拡販、非可食分野への展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業課題解決の基盤として、従業員のスキルアップやエンゲージメント向上を重視しています。若手従業員には部門横断的なコミュニケーションプログラムを導入し、シニア層にはリスキリング支援を行うなど、年齢にかかわらず多様な人材が能力を発揮できる環境構築を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 12.4年 6,439,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.9%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 86.4%
男女賃金差異(正規) 86.5%
男女賃金差異(非正規) 88.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業後の復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品医療機器等法などの法的規制


同社グループ製品の多くは医薬品医療機器等法、JAS法、食品衛生法などの法的規制を受けています。行政の動向や法令違反が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 個人情報の管理


通信販売事業等において多くの個人情報を保有しています。厳格な管理を行っていますが、万一の情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) ソリューション事業の変動性


ソリューション事業は可食・非可食分野における大口受託が多く、受託先の需要動向により売上が大きく変動する傾向があります。リスク分散のため、受託先の拡大や幅広い分野への技術展開を推進しています。

(4) 新製品開発と競争激化


健康関連商品は異業種含む大手企業の参入等により競争が激化しています。市場ニーズに合った新製品開発や差別化が不十分な場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。