※本記事は、森下仁丹株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 森下仁丹ってどんな会社?
健康関連製品の製造販売やシームレスカプセルの受託製造を手掛けるヘルスケア企業です。
■(1) 会社概要
1893年に薬種商として創業し、1905年に「仁丹」の販売を開始しました。1961年に東京証券取引所および大阪証券取引所へ上場しています。2009年に大阪テクノセンターの操業を開始し、生産体制を強化しました。2023年には、生産拡張拠点としての役割を担うMJ滋賀を完全子会社化しています。
同社グループは、連結従業員数359名、単体従業員数344名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家関連の資産管理を行う森下泰山で、第2位は資本業務提携関係にある事業会社のロート製薬、第3位は森下仁丹奨学会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 森下泰山 | 26.80% |
| ロート製薬 | 8.60% |
| 森下仁丹奨学会 | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は森下雄司氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役であり、過半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森下雄司 | 代表取締役社長 | 2007年同社入社。経営企画部長、ヘルスケア事業本部長等を歴任し、2019年4月より現職。 |
| 吉田秀章 | 取締役 | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)を経て2021年同社入社。執行役員管理本部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 大城広明 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 2012年同社入社。ヘルスケア事業部長、人事部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、末川久幸(元資生堂社長)、河﨑保徳(ロート製薬取締役CHRO)、石原真弓(大江橋法律事務所入所)、石黒訓(石黒公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンシューマー事業」「ソリューション事業」および「その他事業」を展開しています。
■コンシューマー事業
一般消費者向けに、「ビフィーナ」をはじめとする医薬品、医薬部外品、健康食品などの健康関連製品を製造販売しています。薬局や薬店への卸売のほか、通信販売などを通じて国内外の市場に幅広く製品を展開しています。
製品の販売代金を主な収益源としており、直販ルートや代理店ルートを通じて収益を得るモデルです。本事業の運営は、主に森下仁丹が主体となって行っています。
■ソリューション事業
法人顧客を対象に、独自のシームレスカプセル技術を活用した受託製造や機能性原料の販売を行っています。食品、医薬品、産業用途など幅広い分野のメーカーに対して製品やサービスを提供しています。
パートナー企業からの受託製造費や、機能性原料の販売代金が収益源です。運営は森下仁丹を中心に行い、製造基盤として子会社のMJ滋賀が連携して事業を推進しています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない、その他の事業活動を行っています。
これらの事業から得られる収益は、主に森下仁丹が運営して獲得しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は安定的に推移しており、直近5年間で100億円台から120億円台へと拡大しています。一方、利益面は戦略的な先行投資等の影響もあり、直近では減益基調となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 114億円 | 124億円 | 128億円 | 127億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 6億円 | 8億円 | 9億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 5.5% | 6.6% | 6.8% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 5億円 | 7億円 | 5億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高はほぼ横ばいで推移していますが、売上総利益率は前期から改善しています。一方で、将来の成長に向けた販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 128億円 | 127億円 |
| 売上総利益 | 60億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.8% | 48.0% |
| 営業利益 | 8億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が12億円(構成比22%)、その他が12億円(同22%)、運賃及び荷造費が5億円(同9%)を占めています。売上原価は66億円で、売上高に対する構成比は52%となっています。
■(3) セグメント収益
売上高・利益ともにソリューション事業が主力となっています。コンシューマー事業は、ブランド認知拡大に向けた広告宣伝等の先行投資により、セグメント損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンシューマー事業 | 48億円 | 47億円 | -0.6億円 | -1億円 | -2.1% |
| ソリューション事業 | 80億円 | 80億円 | 9億円 | 8億円 | 10.0% |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | -0.1億円 | -100.0% |
| 連結(合計) | 128億円 | 127億円 | 8億円 | 7億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で生み出した資金を将来の成長投資や借入金の返済に充てる優良な「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 12億円 |
| 投資CF | -7億円 | -12億円 |
| 財務CF | 9億円 | -0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業時の信念である「済世利民」を受け継ぎ、人々の健康や豊かな社会の実現を目指しています。また、パーパスとして「思いやりの心で、オモロい技術と製品で、一人に寄り添い、この星すべてに想いを巡らせ、次の健やかさと豊かさを、丹念に紡いでゆく」を掲げ、事業活動の根幹としています。
■(2) 企業文化
創業時からの「家族主義」の理念を掲げ、多様性を重んじる文化を築いています。従業員を家族と同様に大切にし、女性の発想を商品開発に活かすなど、多様な人財が個々の能力を最大限に発揮できる環境づくりと、イノベーティブな企業文化の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な成長の観点から「経常利益率」を重視し、安定成長の観点から「自己資本比率」を重要な経営指標として位置づけ、その維持・向上に努めています。高付加価値の新製品開発やコスト低減、営業力強化により収益力を高め、持続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コンシューマー事業とソリューション事業を両輪として成長を図ります。2026年度を基盤強化と収益構造の再構築期間と位置づけ、研究開発拠点の新設や生産ラインの増設等の投資を実施しています。コンシューマー領域では「腸テク」シリーズの市場浸透に注力し、ソリューション領域では受託製造の拡大を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「森下“仁財”の活躍推進」を重要課題に位置付け、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の構築を進めています。年代層に応じたキャリア研修やリスキリング支援を通じた活躍機会の創出、定期的な個別面談などのコミュニケーション充実を図り、持続的な成長を支える人材育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 13.3年 | 6,349,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 93.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 関連法規や法的規制の動向
健康関連製品の製造販売において、「医薬品医療機器等法」や「食品衛生法」などの多岐にわたる規制を受けています。コンプライアンス規程を制定し法令遵守を徹底していますが、行政の動向や万が一の抵触が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 個人情報漏洩による信用・業績悪化
健康関連製品の通信販売事業において多くの個人情報を保有しています。個人情報保護規程を制定し厳格な管理を行っていますが、何らかの原因で情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 大口受託の需要動向による影響
ソリューション事業では、国内外の大手メーカーからの大口受託が多く、受託先の需要動向により業績が大きく増減する傾向があります。リスク分散のため受託先の拡大を図るとともに、幅広い分野に対応可能なカプセル製剤技術の開発を進めています。



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