持田製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

持田製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

持田製薬は東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品関連事業とヘルスケア事業を展開する企業です。主力製品である新薬の販売が伸長し、直近の業績は売上高・利益ともに増収増益を達成しました。循環器、消化器、産婦人科などを重点領域とし、人々の健康と福祉に貢献する特色ある製品の創出と中長期的な成長を目指しています。


※本記事は、持田製薬株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 持田製薬ってどんな会社?


医薬品関連とヘルスケア領域で特色ある製品を創出する生命・健康関連企業です。

(1) 会社概要


1913年に持田商会薬局として創業し医薬品製造を開始しました。1945年に持田製薬を設立し、1963年に東京証券取引所に上場しました。その後、1970年に現在の持田ヘルスケアの基となる薬粧部門を設置するなど事業を拡大し、2005年には製造部門を持田製薬工場へ承継するなどの組織再編を経て現在に至ります。

従業員数は連結で1,479名、単体で1,195名です。筆頭株主は公益財団法人持田記念医学薬学振興財団で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益財団法人高松宮妃癌研究基金となっています。

氏名 持株比率
公益財団法人持田記念医学薬学振興財団 16.05%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.41%
公益財団法人高松宮妃癌研究基金 4.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は持田直幸氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
持田 直幸 取締役社長(代表取締役) 味の素を経て同社入社。開発企画部長、財務部長、経営企画室長を経て代表取締役社長に就任。持田記念医学薬学振興財団理事長。
榊 潤一 代表取締役専務取締役専務執行役員 万有製薬などを経て同社入社。創薬研究所長、事業開発本部長等を歴任し現職。研究、医薬開発、医薬営業等を管掌。
三石 基 代表取締役専務取締役専務執行役員 三菱銀行入行後、トランザクションバンキング本部長等を歴任。三菱UFJリサーチ&コンサルティング副社長を経て現職。
川上 裕 取締役常務執行役員 エーザイ、ファイザーを経て同社入社。医薬開発本部長、信頼性保証本部長を経て現職。持田製薬工場、持田ヘルスケア担当。
根津 淳一 取締役常務執行役員 中外製薬にて研究本部長などを歴任後、同社入社。常務執行役員研究担当を経て現職。研究担当、医薬開発管掌。
宮嶋 謙二 取締役常務執行役員 同社入社後、広島支店長、大阪支店長、医薬営業本部長を経て現職。医薬営業担当。
坂田 中 取締役相談役 三菱銀行入行後、中近東総支配人等を歴任。同社顧問、代表取締役副社長を経て現職。


社外取締役は、園田智昭(慶應義塾大学商学部教授)、吉川惠章(元三菱総合研究所代表取締役副社長)、小林麻実(森ビル文化事業部ライブラリーアドバイザー)、田中早苗(田中早苗法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、医薬品関連事業およびヘルスケア事業を展開しています。

(1) 医薬品関連事業


循環器、消化器、産婦人科、精神科を重点領域として、医療用医薬品の製造・販売および情報提供活動を行っています。自社創薬に加え、国内外の企業との提携による新薬の導入にも積極的に取り組んでおり、近年はバイオマテリアル事業や核酸医薬・細胞医薬の領域にも注力しています。

収益は、医療機関や卸売業者に対する医薬品の販売代金から得ています。製品の製造は主に子会社の持田製薬工場やテクノファインが受託し、販売は持田製薬および持田製薬販売が行っています。一部の医療機器の販売は米国の子会社が担うなど、グループ全体で開発から製造・販売までを連携して運営しています。

(2) ヘルスケア事業


皮膚科学に基づいた敏感肌向けの基礎化粧品や、抗真菌成分を配合したシャンプー・石鹸などのヘアケア・ボディケア製品の開発と販売を行っています。「コラージュフルフル」や「コラージュリペア」といったブランドを展開しており、皮膚科や産婦人科の医師等からの高い支持を基盤としています。

収益は、消費者向けのヘルスケア製品の販売代金から得ています。製品の製造は子会社の持田製薬工場へ委託しており、製品の企画・仕入および販売は持田ヘルスケアが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円から1,100億円台で安定して推移しており、直近の2026年3月期は新薬の販売伸長により1,170億円へと増加しました。経常利益も薬価改定等の影響を受けつつ販売増により112億円へと回復しており、全体として増収増益の傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,102億円 1,033億円 1,029億円 1,052億円 1,170億円
経常利益 148億円 91億円 60億円 81億円 112億円
利益率(%) 13.4% 8.8% 5.9% 7.7% 9.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 104億円 73億円 47億円 54億円 66億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。薬価改定などの影響で売上原価は上昇したものの、販売数量の拡大や生産性の向上によってその影響を吸収し、営業利益率は前期の7.7%から8.6%へと改善しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,052億円 1,170億円
売上総利益 538億円 563億円
売上総利益率(%) 51.1% 48.1%
営業利益 81億円 101億円
営業利益率(%) 7.7% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が122億円(構成比26%)、給料手当が75億円(同16%)、支払手数料が66億円(同14%)を占めています。また、売上原価の主な内訳である当期総製造費用のうち、原材料費が24億円(構成比74%)、経費が8億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


医薬品関連事業は、薬価改定の影響を受けながらも主力となる新薬の販売が好調に推移し、増収を牽引しました。ヘルスケア事業についても主要ブランドが堅調に伸長し増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医薬品関連事業 980億円 1,090億円
ヘルスケア事業 72億円 79億円
連結(合計) 1,052億円 1,170億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス、投資活動によるキャッシュ・フローもマイナスの一方、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっており、将来の成長に向けて借入などで資金を調達し投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 94億円 -74億円
投資CF 174億円 -168億円
財務CF -29億円 70億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「先見的独創と研究」を社是とし、「絶えず先見的特色ある製品を開発し、医療の世界に積極的に参加し、もって人類の健康・福祉に貢献する」という企業理念を普遍的な使命としています。潜在的な医療や健康ニーズを捉え、患者や顧客にとって価値あるものを創造し提供していくことを存在意義として掲げています。

(2) 企業文化


「人類の健康・福祉に貢献」という価値の提供に取り組むとともに、地球環境への影響に配慮しつつ持続可能な社会の実現への貢献に努めるサステナビリティの文化を重視しています。また、すべての社員が「独創・自立の精神」で難しいことや新しいことにチャレンジできる風土の醸成を進めています。

(3) 経営計画・目標


「2031年のありたい姿」の実現に向けて、2025年度からの3年間を「成長戦略加速の3年間」と位置づける中期経営計画を推進しています。将来成長に向けた投資を総合的に評価する観点から、2027年度の連結経営目標数値を掲げています。

- 売上高:1,200億円
- 営業利益:120億円
- EBITDA+研究開発費:265億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「コア事業の収益力強化」「成長事業の継続投資」「成長を支える経営基盤の強化」の3つを重点テーマに設定しています。新薬の製品価値の最大化やバイオシミラーの拡充を図りつつ、バイオマテリアル事業や核酸医薬・細胞医薬などの成長領域への投資を継続し、中長期的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の拡充」を重要な経営基盤として位置づけ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。「組織風土改革」「人材マネジメント体制強化」「多様な人材の活躍促進」を柱とし、激しい環境変化の中でもイノベーション創出と生産性向上を牽引できる人材の確保と育成、そして従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 16.5年 8,425,359円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.4%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 71.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.5%)、CO2排出量削減目標(46%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発に関するリスク


医薬品等の研究開発には多額の資金と長期間を要します。その過程で当初期待した有効性が証明できない場合や、予期せぬ副作用が発現した場合などに開発が中断・遅延し、将来の売上機会を喪失することで期待した収益を下回るリスクがあります。

(2) 製造・仕入れに関するリスク


製品の製造上の瑕疵による品質問題の発生や、特定の取引先に依存する原材料などの供給が遅延または停止した場合、製品の回収や出荷停止、許認可の取り消し等の行政処分につながり、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品売上構成上のリスク


同社の中核事業である医薬品において、一部の主力製品が高い売上比率を占めています。そのため、他社製品やバイオシミラーを含む後発品の参入による競争激化、予期せぬ副作用等による販売中止が生じた場合、業績に重要な影響を与えるリスクがあります。

(4) 法規制・制度改革に関するリスク


医薬品の研究開発や製造・販売は厳格な法規制を受けています。医療費適正化の推進に伴う毎年度の薬価基準の引き下げや後発品の使用促進など、制度動向や規制の厳格化が同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。