持田製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

持田製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の医薬品メーカー。循環器、産婦人科、皮膚科等の重点領域における医療用医薬品事業を主軸に、スキンケア製品等のヘルスケア事業も展開しています。2025年3月期の連結業績は、新薬の伸長やヘルスケア製品の好調により、前期比で増収増益を達成しました。


#持田製薬転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社持田製薬 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 持田製薬ってどんな会社?


1913年創業の老舗製薬企業。「先見的独創と研究」を社是に掲げ、特色ある医薬品やヘルスケア製品を提供しています。

(1) 会社概要


1913年に医薬品製造を開始して創業し、1945年に設立されました。1963年に東証二部に上場し、1975年には東証一部(現プライム)へ指定替えとなりました。1970年には薬粧部門(現ヘルスケア事業)を設置し事業を多角化しました。2000年代には持田ヘルスケアや持田製薬工場などの子会社を設立し、グループ体制を整備しています。

同社グループの従業員数は連結1,508名、単体1,237名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は公益財団法人持田記念医学薬学振興財団であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益財団法人高松宮妃癌研究基金となっています。

氏名 持株比率
公益財団法人持田記念医学薬学振興財団 16.05%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.97%
公益財団法人高松宮妃癌研究基金 4.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は持田直幸氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
持田 直幸 取締役社長(代表取締役) 1981年入社。味の素勤務を経て1991年再入社。開発企画部長、財務部長、専務取締役経営企画室長などを歴任し、1999年1月より現職。
榊 潤一 専務取締役専務執行役員(代表取締役) チバガイギー、ノバルティスファーマ、万有製薬を経て2009年入社。創薬研究所長、事業開発担当、バイオマテリアル事業管掌などを経て2025年6月より現職。
三石 基 専務取締役専務執行役員(代表取締役) 1987年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行常務執行役員、三菱UFJリサーチ&コンサルティング副社長を経て2023年入社。2025年6月より現職。
川上 裕 取締役常務執行役員 エーザイ、ファイザーを経て2012年入社。医薬開発本部長、信頼性保証本部長などを歴任。2025年6月より持田製薬工場、持田ヘルスケア担当。
根津 淳一 取締役常務執行役員 1991年中外製薬入社。同社執行役員研究本部長などを経て2023年入社。常務執行役員研究担当を経て2024年6月より現職。
宮嶋 謙二 取締役常務執行役員 1990年入社。広島支店長、大阪支店長、医薬営業本部副本部長、医薬営業本部長を経て、2025年6月より現職。
坂田 中 取締役相談役 1982年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行中近東総支配人を経て2011年入社。企画管理本部長、代表取締役副社長などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、園田智昭(公認会計士・慶應義塾大学教授)、吉川惠章(元三菱総合研究所副社長)、小林麻実(元ユナイテッド・テクノロジーズ)、田中早苗(弁護士・元ノエビアHD社外取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品関連事業」および「ヘルスケア事業」を展開しています。

(1) 医薬品関連事業


循環器、産婦人科、精神科、消化器などの重点領域において、医療用医薬品の製造・販売を行っています。また、バイオマテリアル事業もこのセグメントに含まれ、医療機関を主な顧客としています。新薬開発に加え、バイオ後続品(バイオシミラー)やジェネリック医薬品も取り扱っています。

収益は、卸売業者や医療機関への製品販売による対価や、導出に伴うロイヤリティ収入などが主な源泉です。運営は主に持田製薬が行い、製造は子会社の持田製薬工場やテクノファインへ委託しています。また、一部医薬品については子会社の持田製薬販売を通じて販売を行っています。

(2) ヘルスケア事業


敏感肌向けのスキンケア製品などを中心としたヘルスケア製品の製造・販売を行っています。代表的なブランドには抗真菌成分配合の「コラージュフルフル」シリーズや、基礎化粧品「コラージュリペア」シリーズがあり、薬局・薬店や一般消費者を顧客としています。

収益は、製品の販売による対価が主な源泉です。運営は子会社の持田ヘルスケアが担っており、製品の製造は持田製薬工場へ委託しています。皮膚科医や産婦人科医などの医療従事者からの支持を基盤としたマーケティングを展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円から1,100億円の範囲で推移しており、安定した基盤を持っています。利益面では、2022年3月期をピークに一時減少傾向にありましたが、直近の2025年3月期は増収増益となり、回復基調にあります。利益率は一桁台後半で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,030億円 1,102億円 1,033億円 1,029億円 1,052億円
経常利益 123億円 148億円 91億円 60億円 81億円
利益率(%) 11.9% 13.4% 8.8% 5.9% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 90億円 104億円 73億円 47億円 54億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これは新薬の伸長などが寄与したためです。営業利益率は前期の5.6%から7.7%へと上昇しており、収益性が向上しています。販管費の抑制も利益増に貢献した形となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,029億円 1,052億円
売上総利益 521億円 538億円
売上総利益率(%) 50.6% 51.1%
営業利益 58億円 81億円
営業利益率(%) 5.6% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が117億円(構成比26%)、給与手当が75億円(同16%)を占めています。研究開発型企業として、引き続き研究開発への投資を重視していることがわかります。

(3) セグメント収益


主力の医薬品関連事業は、新薬の売上が伸長したことで前期比増収となりました。ヘルスケア事業も「コラージュフルフル」等の主要ブランドが好調で、二桁増収を達成しています。両セグメントともに売上を伸ばし、連結業績の向上に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医薬品関連事業 965億円 980億円
ヘルスケア事業 64億円 72億円
連結(合計) 1,029億円 1,052億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「改善型」のキャッシュ・フロー状態です。本業で得たキャッシュと資産売却等による収入により、手元資金を厚くしつつ配当支払等の財務活動を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -75億円 94億円
投資CF 0.7億円 174億円
財務CF -64億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「絶えず先見的特色ある製品を開発し、医療の世界に積極的に参加し、もって人類の健康・福祉に貢献する」という企業理念を普遍的な使命として掲げています。潜在的な医療・健康ニーズを捉え、患者や顧客にとって価値あるものを創造・提供することを存在意義とし、「先見的独創と研究」を社是と定めています。

(2) 企業文化


全ての社員が独創・自立の精神で活躍することを目指し、チャレンジする風土の醸成を重視しています。また、「人類の健康・福祉への貢献」という製薬企業としての価値提供を通じて、社会から必要とされる企業として持続的に成長し、SDGsの達成にもつながる持続可能な社会の実現に貢献するという基本方針を持っています。

(3) 経営計画・目標


2027年度を最終年度とする「25-27中期経営計画」において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,200億円
* 営業利益:120億円
* EBITDA+研究開発費:265億円

(4) 成長戦略と重点施策


「25-27中期経営計画」では「成長戦略加速の3年間」と位置づけ、コア事業の収益力強化、成長事業への継続投資、経営基盤の強化に取り組みます。医薬事業では主要新薬5品目の価値最大化やパイプライン拡充を図り、ヘルスケア事業では主力ブランドの確立を進めます。成長事業としてバイオマテリアルや核酸医薬、細胞医薬への投資を継続し、グローバル展開も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業の価値創造の原動力は「人財」であるとし、独創・自立の精神で活躍できる環境整備を進めています。人財育成では階層別・職種別研修や留学制度を充実させ、能力開発を支援しています。また、人財マネジメント体制の強化として、役割や貢献度に応じた処遇や早期登用を可能にする人事制度を導入しています。女性活躍やキャリア採用、高年齢者雇用など、多様な人財の活躍も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 17.0年 8,251,926円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含めております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 77.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(非正規) 62.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(12%以上、25-27期間目標)、育児休業取得率(女性90%以上、男性30%以上、2021~2025年度目標)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発に関するリスク


医薬品の研究開発には多額の資金と長期間が必要ですが、開発過程で有効性が証明できない場合や予期せぬ副作用の発現などで開発が中断・遅延する可能性があります。これにより、将来の売上機会の喪失等が発生し、期待した収益を下回るリスクがあります。

(2) 製造・仕入れに関するリスク


製品の品質問題が発生した場合や、特定の取引先に依存している原材料等の供給が遅延・停止した場合、製品回収や出荷停止、欠品が生じる可能性があります。これらに伴う許認可の取り消しや行政処分、売上減少等が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 業務提携に関するリスク


他社との共同研究・開発・販売や製品の導出入等の業務提携を行っていますが、何らかの事情により提携が解消される可能性があります。その場合、将来の売上見込みや機会が喪失し、収益が予想を下回るリスクがあります。

(4) 法規制、制度改革に関するリスク


医薬品事業は関連法規の規制を受けており、薬価基準の引き下げや後発品使用促進などの医療費適正化策、規制の厳格化等が経営成績に影響を与える可能性があります。また、規制に適合しない場合の行政処分や信用失墜によるリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。