ゼリア新薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼリア新薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する製薬企業。医療用医薬品とコンシューマーヘルスケア事業を両輪とし、消化器領域に強みを持ちます。2025年3月期は、海外での新薬伸長や国内コンシューマー事業の好調により、売上高873億円(前期比15.3%増)、経常利益128億円(同50.8%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、ゼリア新薬工業株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼリア新薬工業ってどんな会社?


医療用医薬品と「ヘパリーゼ」等のコンシューマーヘルスケア製品を製造販売する総合健康企業です。

(1) 会社概要


1955年に株式会社ゼリア薬粧研究所として設立され、1959年にOTC医薬品、1962年に医療用医薬品の製造販売を開始しました。1998年に東証二部に上場し、2000年には東証一部へ指定されています。2009年にはスイスのTillotts Pharma AGを完全子会社化し、グローバル展開を加速させました。2025年には子会社の健創製薬を吸収合併し、生産体制の効率化を進めています。

連結従業員数は1,746名、単体では818名です。筆頭株主は有限会社伊部で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はメガバンクとなっています。

氏名 持株比率
有限会社伊部 12.09%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.58%
三菱UFJ銀行 4.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長兼CEOは伊部幸顕氏、代表取締役社長兼COOは伊部充弘氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
伊 部 幸 顕 代表取締役会長 兼 CEO 1972年同社取締役、1982年代表取締役社長を経て、2014年6月より現職。
伊 部 充 弘 代表取締役社長 兼 COO 1994年富士銀行入行。2010年同社入社、取締役経理部長、2011年常務取締役を経て、2014年6月より現職。
岡 澤 有 輝 取締役 兼 常務執行役員管理本部長・人事部長・生産物流本部・法務部・秘書室・コンプライアンス担当 1988年東海銀行入行。2017年同社入社。管理本部長、コンプライアンス担当、常務執行役員等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、小森哲夫(元UFJ銀行副頭取)、野本亀久雄(九州大学名誉教授)、森元誠二(元在スウェーデン大使)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品事業」、「コンシューマーヘルスケア事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医療用医薬品事業


消化器系領域に特化した医療用医薬品の研究開発、製造、販売を行っています。主な製品には、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」やクロストリディオイデス・ディフィシル感染症治療剤「ディフィクリア」などがあり、医療機関を通じて患者に提供されます。

収益は、医薬品卸売業者や医療機関等への製品販売による対価が中心です。運営は、国内ではゼリア新薬工業、海外ではスイスのTillotts Pharma AGおよびその子会社、ベトナムのPharmaceutical Joint Stock Company of February 3rdなどが行っています。

(2) コンシューマーヘルスケア事業


セルフメディケーションに貢献するOTC医薬品や健康食品、化粧品等を展開しています。主力製品群として「ヘパリーゼ群」「コンドロイチン群」「ウィズワン群」などを有し、ドラッグストアや薬局・薬店を通じて消費者に提供しています。

収益は、ドラッグストア等の小売店や卸売業者への製品販売によって得ています。運営は、ゼリア新薬工業に加え、健康食品等の販売を行うゼリアヘルスウエイ、化粧品を扱うイオナ インターナショナル、原料製造を行うデンマークのZPD A/Sなどが行っています。

(3) その他


保険代理業、不動産業、販促物の仕入・販売、ビルメンテナンス等の事業を展開しています。

収益は、保険手数料、不動産賃貸料、販促物の販売代金等から得ています。運営は、保険代理業・不動産業を行う株式会社ゼービス、販促物を扱うゼリア商事株式会社、メンテナンスを行う株式会社ゼリアエコテックなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は大幅な増収となり、利益面でも経常利益、当期純利益ともに拡大基調が続いています。利益率も上昇傾向にあり、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 528億円 595億円 684億円 757億円 873億円
経常利益 32億円 59億円 76億円 85億円 128億円
利益率(%) 6.1% 10.0% 11.1% 11.2% 14.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 14億円 22億円 16億円 29億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益も増加しており、営業利益率も改善しています。売上高の伸びが利益の伸びに寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 757億円 873億円
売上総利益 555億円 640億円
売上総利益率(%) 73.3% 73.3%
営業利益 96億円 122億円
営業利益率(%) 12.7% 14.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が112億円(構成比22%)、諸手数料が72億円(同14%)、減価償却費が59億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


医療用医薬品事業は、海外での「ディフィクリア」の急拡大などが寄与し増収増益となりました。コンシューマーヘルスケア事業も「ヘパリーゼ群」等の伸長により増収増益を達成しました。両事業ともに好調に推移し、全社の業績拡大を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医療用医薬品事業 496億円 590億円 92億円 108億円 18.3%
コンシューマーヘルスケア事業 260億円 282億円 53億円 64億円 22.7%
その他 2億円 2億円 3億円 2億円 151.7%
調整額 -6億円 -5億円 -51億円 -52億円 -
連結(合計) 757億円 873億円 96億円 122億円 14.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 122億円 129億円
投資CF -40億円 -11億円
財務CF -81億円 -78億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「健康づくりは幸せづくり」を基本理念としています。総合健康企業として、国際的な医療ニーズに応えた医薬品や、セルフメディケーションを指向したコンシューマーヘルスケア製品の研究開発、製造販売に取り組み、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


社会規範と行動規範を遵守し、企業活動すべてにおいて、さらに供給する製品すべてにおいて「ベスト・クオリティ」を追求することを重視しています。信頼と期待に応えるべく健全経営に努める姿勢を掲げており、高い倫理観とコンプライアンスを基盤とした事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


第11次中期経営計画(2023年度~2025年度)において、「連結売上高900億円」をはじめとした経営目標の達成を目指しています。グローバル展開の加速、医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業の拡大と収益性改善、財務体質の強化を通じて、企業価値向上とサステナブルな社会の実現に貢献する方針です。

* 連結売上高900億円

(4) 成長戦略と重点施策


グローバル展開では、欧州での「ディフィクリア」「アサコール」の販売拡大に加え、成長著しいアジア地域での事業拡大に注力します。国内では、医療用医薬品の新薬「ビルタサ」やコンシューマーヘルスケアの主力製品「ヘパリーゼ群」等の拡販を図ります。また、M&Aやアライアンスにも積極的に取り組み、事業基盤の強化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ヒトは人財」を理念に掲げ、社会の期待に応える人財を育成するため、教育・研修体制の充実に努めています。専門知識や行動規範に加え、社会人としての素養を備えた人財育成を行っています。また、従業員が能力を最大限発揮できるよう、在宅勤務やフレックスタイム制の導入など、働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 17.0年 7,511,850円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.9%
男女賃金差異(正規雇用) 83.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ITパスポート取得者数(180名)、男女の平均勤続年数の差異(78.1%)、障がい者雇用率(2.57%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品等の安全性


医薬品等に関して予期せぬ副作用や安全性上の懸念が生じた場合、製品の使用制限や販売中止に至る可能性があります。主力製品でこのような事態が発生すれば、同社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社は副作用情報の収集と報告、安全対策の実施に努めています。

(2) 研究開発の成否


医薬品開発は多大な時間と費用を要し、開発途中で予期せぬ副作用や有効性不足により開発を断念したり、計画が遅延したりする可能性があります。これにより事業計画の変更を余儀なくされ、業績等に影響を与える可能性があります。同社は綿密な計画策定と適切な継続・中止判断によりリスク管理を行っています。

(3) 関連する諸法規等


医薬品事業は薬機法等の規制を受け、法改正により販売や研究開発に制約が生じる可能性があります。また、薬価基準の改定(引き下げ)により売上や利益が減少するリスクや、新薬開発の遅れが中長期的に影響する可能性もあります。同社は情報収集と迅速な対応、コスト低減等により影響の最小化に努めています。

(4) 提携関係等


製品導入や共同開発など他社との提携関係が、将来的な事情により解消される可能性があります。解消された場合、期待した成果が得られず、業績等に影響を及ぼす可能性があります。同社は複数の主力品を育成することで、特定のリスクによる影響を分散・最小化するよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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