ゼリア新薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼリア新薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼリア新薬工業は、東京証券取引所プライム市場に上場する総合健康企業です。医療用医薬品と一般用医薬品等のコンシューマーヘルスケアをコア事業としています。直近の業績では、主力の「アサコール」や「ディフィクリア」の好調等により増収となったものの、為替差損の影響等により減益となりました。


※本記事は、ゼリア新薬工業株式会社の有価証券報告書(第72期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼリア新薬工業ってどんな会社?


医療用医薬品とコンシューマーヘルスケア事業を両軸に展開する総合健康企業です。

(1) 会社概要


1955年にゼリア薬粧研究所として設立され、1959年にOTC医薬品、1962年に医療用医薬品の製造販売を開始しました。2000年に東京証券取引所市場第一部に指定されました。2009年にはスイスのTillotts Pharma AGを買収し、グローバル展開を本格化させています。

従業員数は連結で1,748名、単体で872名体制です。筆頭株主は有限会社伊部で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には都市銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社伊部 12.09%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.34%
三菱UFJ銀行 4.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長 兼 CEOは伊部幸顕氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
伊部幸顕 代表取締役会長 兼 CEO 1972年同社取締役就任。常務取締役、代表取締役専務取締役を経て1982年代表取締役社長。医専営業本部長等を歴任し、2014年より現職。
伊部充弘 代表取締役社長 兼 COO 1994年富士銀行入行。みずほ銀行法人業務部参事役を経て2010年同社入社。経理部長、常務取締役等を歴任し、2014年より現職。
岡澤有輝 取締役 兼 常務執行役員管理本部長・人事部長・生産物流本部・法務部・秘書室・コンプライアンス担当 1988年東海銀行入行。三菱東京UFJ銀行融資部部長等を経て2017年同社入社。経理部長、総務部長等を歴任し、2020年取締役就任。2024年より現職。


社外取締役は、小森哲夫(元UFJ銀行代表取締役副頭取)、野本亀久雄(九州大学名誉教授)、森元誠二(元在オマーン日本国特命全権大使)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品事業」「コンシューマーヘルスケア事業」および「その他」事業を展開しています。

医療用医薬品事業


消化器系領域に特化した医療用医薬品の研究開発、製造および販売を行っています。上部から下部消化管領域までの幅広い製品をラインアップし、医療機関向けに提供しています。

運営は主にゼリア新薬工業のほか、スイス子会社のTillotts Pharma AGやベトナム子会社などが担い、医薬品の販売による収益をモデルとしています。

コンシューマーヘルスケア事業


一般生活者を顧客とし、セルフメディケーションに向けたOTC医薬品、健康食品、医薬部外品、化粧品の製造および販売を行っています。主力製品には「ヘパリーゼ群」や「コンドロイチン群」があります。

運営は主にゼリア新薬工業が行うほか、ゼリアヘルスウエイやイオナ インターナショナルなどが販売・製造を担い、製品販売による収益を得ています。

その他


保険代理業および不動産業などを展開しています。

主にゼービスが運営を担い、損害保険の代理店手数料や不動産賃貸による収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高は右肩上がりで成長を続けており、595億円から892億円へと拡大しています。経常利益も概ね増加傾向にありましたが、直近の期では110億円と前年度からやや減少しました。利益率は10%台から14%台で安定的に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 595億円 684億円 757億円 873億円 892億円
経常利益 59億円 76億円 85億円 128億円 110億円
利益率(%) 10.0% 11.1% 11.2% 14.7% 12.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 22億円 16億円 29億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない売上総利益も拡大していますが、売上総利益率および営業利益率ともに前年度と同水準を維持しており、安定した収益構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 873億円 892億円
売上総利益 640億円 652億円
売上総利益率(%) 73.3% 73.1%
営業利益 122億円 124億円
営業利益率(%) 14.0% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が118億円(構成比22%)、販売促進費が63億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の医療用医薬品事業が前年度から増収となり全体を牽引しています。これは海外市場での販売が好調に推移したことなどが寄与しています。一方、コンシューマーヘルスケア事業は競合品の影響などによりわずかに減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医療用医薬品事業 590億円 616億円
コンシューマーヘルスケア事業 282億円 274億円
その他 2億円 2億円
連結(合計) 873億円 892億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 129億円 100億円
投資CF -11億円 -27億円
財務CF -78億円 -59億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「健康づくりは幸せづくり」を基本モットーとして掲げ、総合健康企業として人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献することを目指しています。国際的な医療ニーズに応えた医薬品や、セルフメディケーションを指向したコンシューマーヘルスケア製品の研究開発、製造販売を通じて、人々の健康回復や維持に貢献することを企業の基本理念としています。

(2) 企業文化


社会規範と行動規範を遵守し、企業活動すべてにおいて「ベスト・クオリティ」を追求しています。医薬品メーカーとしての高い倫理観とコンプライアンスを経営の基盤とし、信頼と期待に応える健全な経営に努めるとともに、環境負荷の低減を意識した持続可能な企業活動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を起点とした3カ年の「第12次中期経営計画」において、将来の継続的な成長に向けた積極的な投資を展開し、グローバル企業としてのさらなる発展を目標としています。

・売上高1,000億円
・連結自己資本当期純利益率10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


後発品の参入等の環境変化に備え、持続的な成長を図るための重要な施策を掲げています。

・欧州・アジアでの製品導入や販売網拡充による「グローバル展開のさらなる拡大」
・主力製品のシェア拡大や新規製品の市場認知度向上による「国内両事業を再び成長軌道へ」
・新たな開発候補品の導入等による「開発パイプラインの拡充」

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を会社の重要な財産である「人財」と捉え、「ヒトは人財」という理念を掲げています。社会の期待と信頼に応えるため、教育体制を充実させ、専門知識や行動規範に加えて社会人としての素養を備えた人財育成に注力しています。また、従業員が能力を最大限に発揮できるよう、柔軟な働き方を取り入れた職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.7歳 18.0年 7,991,507円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.22%)、ITパスポート等の取得者数(211名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品等の安全性に関するリスク


販売中の医薬品に関して予期せぬ副作用や安全性上の懸念が生じた場合、使用制限や販売中止となる可能性があります。同社は副作用情報の収集や適正使用の推進、原料工場の定期調査等を実施してリスクの最小化に努めています。

(2) 研究開発の成否によるリスク


医薬品の開発には多大な時間と費用を要し、予期しない副作用や有効性が確認できないことによる開発中止や期間延長のリスクがあります。同社はグローバル開発体制のもとで綿密な進捗管理と投資対効果の適切な判断を行っています。

(3) 薬機法等関連諸法規の変更によるリスク


医薬品等の事業は薬機法や薬価基準等の厳格な法規制を受けています。医療費抑制策による薬価の引き下げや保険制度の変更が収益に影響を及ぼす可能性があるため、同社は規制情報の収集やコスト低減、販売戦略の実行により対応しています。

(4) ジェネリック医薬品の参入によるリスク


自社の医療用医薬品の特許期間や再審査期間が終了した場合、ジェネリック医薬品の参入により競争が激化し収益に影響を及ぼす可能性があります。同社は適正使用の促進やライフサイクルマネジメントを通じて業績への影響最小化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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