参天製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

参天製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、眼科領域に特化した医薬品の研究開発・製造・販売を行うスペシャリティ・カンパニーです。2025年3月期の連結業績は、売上収益が前期比0.6%減の3,000億円と微減収となった一方、親会社の所有者に帰属する当期利益は36.1%増の363億円と大幅な増益を達成しました。


※本記事は、参天製薬株式会社 の有価証券報告書(第113期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 参天製薬ってどんな会社?


眼科領域に特化した医薬品等の研究開発・製造・販売をグローバルに展開するスペシャリティ・カンパニーです。

(1) 会社概要


1890年に田口参天堂として創業し、1899年に「大学目薬」を発売しました。1925年に参天堂を設立後、1977年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。1990年代以降は米国や中国、欧州に拠点を設立しグローバル展開を加速させ、2014年には米国Merck社から眼科製品及び関連する権利を譲り受けました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は3,849名、単体では1,756名です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行(信託口)、第2位も同様に信託銀行(信託口)、第3位は常任代理人を通じた海外金融機関となっており、主に機関投資家や信託銀行が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.01%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.45%
BNYM AS AGT/CLTS NON TREATY JASDEC 3.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長兼CEOは伊藤毅氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤 毅 代表取締役社長兼CEO 1982年入社。研究開発統括部長、サージカル事業部長、医薬事業部長、日本事業統括などを歴任。2022年4月代表取締役副社長を経て、同年9月より現職。
黒川 明 取締役会長 1977年入社。医薬事業部長、常務執行役員などを経て2006年代表取締役社長兼COO、2008年同CEOに就任。2018年より代表取締役会長兼CEO、2024年4月より現職。
中島 理恵 取締役執行役員COO トヨタ自動車、ボストンコンサルティンググループ、MSD執行役員、MSD台湾社長、Organon & Co.バイスプレジデントなどを経て2023年入社。2024年6月より現職。
栗原 逸平 取締役執行役員日本事業統括兼グローバル コマーシャルストラテジー サイバード、A.T.カーニーなどを経て2015年入社。日本事業戦略企画統括部統括部長、眼科事業部マーケティング統括部長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、古谷昇(㈲ビークル代表取締役)、南多美枝(元スリーエムカンパニー役員)、伊香賀正彦(公認会計士)、菊岡稔(元ジャパンディスプレイ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品」などの事業区分により、グローバルに眼科関連事業を展開しています。

(1) 医療用医薬品


眼科領域における医療用医薬品の研究開発、製造、販売を行っています。主な製品には緑内障・高眼圧症治療剤、角結膜疾患治療剤、抗アレルギー点眼剤、網膜疾患治療剤、眼感染症治療剤などがあります。患者や医療関係者へ価値ある製品を提供し、目の健康をサポートしています。

収益は、病院や診療所などの医療機関で使用される医薬品の販売により得ています。運営は、日本においては参天製薬および参天アイケア株式会社などが担当し、中国、アジア、EMEA(欧州、中東及びアフリカ)、その他の地域においては、それぞれの地域統括会社や現地法人が製造・販売や臨床開発を行っています。

(2) 一般用医薬品・医療機器・その他


一般用医薬品(OTC医薬品)の販売や、緑内障治療用デバイスなどの医療機器の開発・製造・販売を行っています。また、その他事業として、サプリメントの販売や無塵・無菌服のクリーニング事業、ベンチャー企業への投資なども行っています。

一般用医薬品はドラッグストア等を通じて生活者に販売し対価を得ています。医療機器は医療機関等への販売により収益を得ています。運営は、一般用医薬品は主に参天製薬が、医療機器は参天製薬および海外子会社が担当しています。その他事業は株式会社クレールやSanten Ventures, Inc.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、2025年3月期は微減となりました。利益面では、2023年3月期に一時的な損失計上により赤字となりましたが、その後回復し、2025年3月期には税引前利益、当期利益ともに過去最高水準となり、利益率は15.8%まで向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,496億円 2,663億円 2,790億円 3,020億円 3,000億円
税引前利益 117億円 356億円 -58億円 299億円 475億円
利益率(%) 4.7% 13.4% -2.1% 9.9% 15.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 93億円 272億円 -149億円 266億円 363億円

(2) 損益計算書


売上収益は微減となりましたが、売上原価の増加等により売上総利益率は低下しました。一方、営業利益は増加し、営業利益率は向上しています。これは、その他の費用が大幅に減少したことなどが寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,020億円 3,000億円
売上総利益 1,787億円 1,710億円
売上総利益率(%) 59.2% 57.0%
営業利益 385億円 469億円
営業利益率(%) 12.8% 15.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が292億円(構成比33%)、その他が247億円(同28%)、広告宣伝費及び販売促進費が133億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳はHTMLに記載がありません。

(3) セグメント収益


地域別の売上収益を見ると、日本は薬価改定等の影響により減少しましたが、EMEA(欧州、中東及びアフリカ)は為替の影響もあり増加しました。中国は微減、アジアは増加しており、全体としては海外事業の成長が国内の減少を補う構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 1,756億円 1,653億円
中国 299億円 289億円
アジア 287億円 301億円
EMEA 648億円 743億円
その他 31億円 13億円
連結(合計) 3,020億円 3,000億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を借入返済や株主還元に充てつつ、必要な投資も自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 726億円 609億円
投資CF -61億円 -82億円
財務CF -340億円 -533億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来の基本理念として「天機に参与する」を掲げ、自然の神秘を解明し人々の健康の増進に貢献することを目指しています。また、目指す理想の世界(ビジョン)として「Happiness with Vision」を掲げ、世界中の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に取り組んでいます。

(2) 企業文化


基本理念やビジョンのもと、世界中の一人ひとりが「見る」を通じて幸せな人生を実現するために、行動原則と価値観を行動と判断の拠り所としています。「肝心な事は何かを深く考え、どうするか明確に決め、迅速に実行する」ことを重視する企業文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


2029年度までの中期経営計画を策定しており、眼科領域に特化したグローバルカンパニーとして、高い確度での製品開発と確実な収益確保による堅実な成長を目指しています。2029年度の連結数値目標として以下のKPIを掲げています。

* 売上収益:4,000億円
* コア営業利益:800億円(EBITDA:900億円)
* ROE:14%以上
* EPS:160円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Santenグループのビジネスモデル」の展開を全地域で強化し、持続的な成長基盤を確立するために6つのイニシアチブを推進します。海外地域(EMEA・アジア・中国)でのリーダーポジション確立、近視・眼瞼下垂疾患の市場創造と海外展開、Rxポートフォリオ・パイプラインの強化などに取り組みます。

* 海外事業売上比率:58%(2029年度目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


基本理念やビジョンを体現し成長に寄与する人材を最重要のアセットと位置付け、能力向上と人材を活かす生産性の高い組織づくりを推進しています。また、「Santenで働く価値向上と人・組織の能力強化」を最重要マテリアリティの一つとし、理念体系の浸透とそれを実践できる人材・組織能力の最大化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 16.3年 9,255,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.1%
男性育児休業取得率 62.3%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規雇用) 82.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーン


特定の工場や外部委託先、原材料の供給元に依存している製品があり、パンデミックや自然災害、火災等により機能が停止した場合、生産活動の停滞や遅延、製品品質の問題が発生し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、グローバルな製品供給体制の強化や在庫管理の可視化に取り組んでいます。

(2) コンプライアンス


グローバルでの事業活動において、社会規範や法令等に違反する事態が発生した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償の支払い等により、経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。「参天企業倫理綱領」等の制定や教育プログラムの実施、グローバル通報システムの導入によりリスク管理を強化しています。

(3) ITセキュリティ及び情報管理


各種ITシステムの不備、サイバー攻撃、ウイルス感染等により業績に影響を与える可能性があります。また、個人情報等の機微情報の流出は信用失墜につながります。ISO/IEC27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステムの実装や社内規程の整備、研修、技術的対策を通じてリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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