※本記事は、小野薬品工業株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
小野薬品工業グループは、医薬品部門に関わる事業を展開しています。医療用および一般用医薬品の製造・販売を手がけ、特に医療用医薬品の研究開発に注力しています。同社グループは、小野薬品工業および子会社28社で構成されています。
単体従業員数は3,396名、連結従業員数は4,206名です。同社グループの事業セグメントは医薬品事業の単一セグメントです。
主な国内グループ会社は、ビーブランド・メディコーデンタル(医薬品事業)、小野薬品ヘルスケア(同)、小野デジタルヘルス投資(同)、小野薬品ユーディ(同)、michiteku(同)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
小野薬品工業は、医薬品事業を主軸とする企業として、安定した事業基盤のもと、専門性の高い人材が長期的に活躍できる環境を提供していると考えられます。社員一人ひとりの多様性を尊重し、能力を最大限に引き出すための人事施策に力を入れていることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、社員が腰を据えて長く働き続ける傾向があることが示されています。これは、安定した環境でキャリアを築きたいと考える方にとって、魅力的な要素となるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 10,935,334円 |
| 平均勤続年数 | 17.4年 |
| 平均年齢 | 44.6歳 |
| 単体従業員数 | 3,396人 |
| 連結従業員数 | 4,206人 |
| 単体のグループ内比率 | 80.7% |
同社グループの退職給付制度は、主として確定給付制度と確定拠出制度を採用しています。確定給付型は給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度、確定拠出型は会社が拠出した資金を従業員が運用する制度です。適用範囲は国内グループ会社です。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
小野薬品工業は、企業の永続的な発展を支えるのは「人財」であるとの考えに基づき、人的資本の拡充に向けた取り組みを推進しています。中期経営計画の達成に向けて、社員一人ひとりが多様性を生かし、能力を最大限に発揮できるよう、組織風土・カルチャーの醸成を含む人事施策をグローバル人事ポリシーに沿って進めています。
これらの取り組みを通じて、成長戦略の実現とグループ全体のエンゲージメント向上を目指しています。従業員の給与その他の給付の額及び内容については、職務・役割に基づく処遇設計と、成果に連動した報酬配分に基づき決定されています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女賃金差異は、管理職クラスの中途採用で男性の比率が高いことや、総合職の女性の平均年齢が男性より若いこと等により生じています。女性管理職比率は2021年度の4.6%から2024年度の7.4%へと推移しており、改善に向けた取り組みが進められています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 9.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 88.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 73.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 73.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち有期労働者) | 79.7% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ 東洋製薬化成株式会社
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 20.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
小野薬品工業グループは、医薬品部門に特化した事業を展開しています。医療用および一般用医薬品の製造・販売を主軸としており、特に医療用医薬品の研究開発に注力し、これを事業の中心に位置づけています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、医薬品事業の単一セグメントで構成されています。収益は、製品商品の販売とロイヤルティ収入が主な柱となっています。ロイヤルティ収入には、オプジーボやメルク社の「Keytruda®」からの収入が含まれており、これらが同社グループの収益に貢献しています。
地域別の売上収益を見ると、日本が最大の収益源となっていますが、米国からの収益も大きく、前期から増加傾向にあります。アジアや欧州からの収益も増加しており、海外展開を進めていることがうかがえます。
主要な顧客としては、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社およびそのグループ会社が挙げられ、同社グループの売上収益に大きく貢献しています。また、株式会社メディパルホールディングスおよびそのグループ会社、株式会社スズケンおよびそのグループ会社も主要な顧客となっています。
| セグメント | 売上収益(2025年3月期) | 売上収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日) | 5,158億円 | 5,158億円 |
| 前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日) | 4,869億円 | 4,869億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5期間において売上収益が概ね増加傾向にあります。直近の連結会計年度では、売上収益、税引前当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれも前期から増加となりました。特に、営業利益と親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期から大きく増加しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,614億円 | 4,472億円 | 5,027億円 | 4,869億円 | 5,158億円 |
| 税引前利益 | 1,050億円 | 1,435億円 | 1,637億円 | 593億円 | 927億円 |
| 税引前利益率 | 29.1% | 32.1% | 32.6% | 12.2% | 18.0% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 805億円 | 1,127億円 | 1,280億円 | 500億円 | 698億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 162.19 | 230.85 | 266.61 | 106.55 | 148.49 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上収益は、前期から増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から増加しており、生産性が向上している傾向が見られます。これらの指標は、同社グループの収益体質と組織効率の状況を示すものとなります。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 113.6百万円 | 122.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 13.9百万円 | 21.9百万円
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
小野薬品工業グループは、本業で安定した資金を創出し、将来に向けた投資も行いつつ、手元に十分な資金を確保している状態です。財務基盤は堅固であり、安定した経営状況を示しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は76.9%となっており、プライム市場上場企業(製造業)の平均46.8%を大きく上回る水準です。ROE(自己資本利益率)は8.5%で、前期の6.4%から改善しています。プライム市場平均の9.4%と比較するとやや下回るものの、堅実な経営がうかがえます。
現金及び現金同等物は2,370億円と潤沢であり、不測の事態にも対応できる手元資金を確保している状況です。これらの財務指標は、同社グループが安定した財務基盤を有していることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 7,825億円 | 8,507億円 |
| 自己資本比率 | 73.5% | 76.9% |
| ROE(自己資本利益率) | 6.4% | 8.5% |
| 現金及び現金同等物 | 2,046億円 | 2,370億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは1,368億円のプラスとなりました。これは税引前当期利益の増加や減価償却費及び償却費の増加、棚卸資産の減少、未払法人所得税の増加などが主な要因です。本業で安定的に資金を創出している状況を示しています。
投資活動によるキャッシュ・フローは△399億円のマイナスであり、無形資産の取得による支出などが主な要因です。前期の△1,368億円と比較するとマイナス幅は大きく減少しており、投資活動は継続しつつも、資金流出は抑制されています。この結果、フリーキャッシュ・フローは970億円のプラスとなり、本業で得た資金で投資を賄い、なお余剰資金を生み出している優良な状態です。財務活動によるキャッシュ・フローは△655億円のマイナスとなっており、配当金の支払いや長期借入金の返済などが行われています。
これらのキャッシュ・フローの状況から、同社グループは本業で安定した収益を上げ、将来に向けた投資も適切に行いつつ、財務的な健全性を維持していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 825億円 | 1,368億円 |
| 投資CF | △1,368億円 | △399億円 |
| 財務CF | 943億円 | △655億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △543億円 | 970億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、特定の製品への依存というリスクを認識しています。「オプジーボ点滴静注」および「抗PD-1/PD-L1抗体関連のロイヤルティ」の売上収益が、売上収益合計の約50%台半ばを占める状況です。薬価改定や競合品の出現、特許期間満了などにより、これらの売上収益が減少する可能性があります。
また、市場環境の変化もリスクとして挙げられています。競合品や後発品の販売状況、公定薬価の引下げ、医療制度改革、海外における様々な医療費抑制策の影響により、売上収益が減少する可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、人財の採用・育成・確保(リテンション)に関するリスクを認識しています。中長期的に多様かつ優秀な人財が採用・育成・確保できない場合、事業活動の停滞等が生じる可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
小野薬品工業は、創業以来の企業理念を基盤に、患者さんのために革新的な医薬品を創製することを目指しています。持続可能な社会への貢献も重視し、事業活動を通じて社会から必要とされる企業であり続けることを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの企業理念は「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」です。いまだ満たされない医療ニーズに応えるため、真に患者さんのためになる革新的な医薬品の創製を行う「グローバル スペシャリティ ファーマ」を目指しています。
また、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、財務と非財務の経営課題を統合的に捉えています。価値創造につなげるサステナブル経営方針を定め、重点課題への取り組みを推進しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、人の生命に関わる医薬品を取り扱う製薬企業としての責任を深く自覚しています。法令遵守はもとより、高い倫理観に基づき行動すべく、コンプライアンスの一層の強化に努めています。
企業の永続的な発展を支えるのは「人財」であるという考えのもと、人的資本の拡充に向けた取り組みを推進しています。
同社グループの全ての人財が、それぞれの多様性を生かし、能力を最大限に発揮できるよう、組織風土・カルチャーの醸成を含む人事施策をグローバル人事ポリシーに沿って進めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、研究開発型医薬品企業として永続的な発展を実現するため、現状の課題を定め、対応に取り組んでいます。
4つの成長戦略を支え、飛躍的な成長を果たすため、「デジタル・ITによる企業変革」「品質と安全性の確保」「安定供給体制の強化」「企業ブランディング」「企業価値の保護」「人的資本の拡充」を重点項目として定めています。
これらの取り組みにより、経営基盤の強化に努め、成長戦略のさらなる推進を図っています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
小野薬品工業は、監査役会設置会社として、取締役会と監査役会の機能強化を通じてコーポレート・ガバナンスの充実を図っています。経営の透明性と監督機能の強化、迅速な意思決定を重視し、執行役員制度も採用しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
小野薬品工業の株主構成を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、複数の信託銀行や金融機関が上位に名を連ねています。その他、公益財団法人や事業会社も主要な株主として同社を支える構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.70% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.27% |
| 明治安田生命保険相互会社(常任代理人日本カストディ銀行) | 3.88% |
| 公益財団法人小野奨学会 | 3.43% |
| 鶴鳴荘 | 3.37% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役取締役会長CEOは相良暁氏、代表取締役取締役社長COOは滝野十一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 相良 暁 | 代表取締役取締役会長CEO | 1983年4月同社入社、2006年6月同社取締役、2008年9月同社代表取締役社長、2024年4月同社代表取締役会長CEOより現職。 |
| 滝野 十一 | 代表取締役取締役社長COO | 1995年4月同社入社、2011年6月同社執行役員、2020年6月同社取締役常務執行役員、2024年4月同社代表取締役社長COOより現職。 |
| 辻中 聡浩 | 代表取締役専務執行役員CMC・生産本部管掌 兼 デジタルテクノロジー本部管掌 兼 品質保証統括部管掌 兼 BX推進部管掌 兼 ビジネスデザイン部管掌 兼 関連会社担当 | 1988年4月同社入社、2016年6月同社執行役員、2020年6月同社取締役常務執行役員、2026年4月同社代表取締役専務執行役員より現職。 |
社外取締役は、野村雅男氏(岩谷産業顧問)、奥野明子氏(甲南大学経営学部教授)、長榮周作氏(パナソニック ホールディングス特別顧問)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役3名を招聘しています。社外取締役は、役員人事案検討会議および役員報酬案検討会議の議長や主要構成員として、企業統治に関する意思決定において重要な役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
小野薬品工業の役員報酬は、持続的な成長と企業価値向上への貢献を促すことを基本方針としています。社外取締役と監査役は固定報酬である基本報酬のみで構成されます。一方、社外取締役を除く取締役の報酬は、固定報酬の基本報酬に加えて、短期インセンティブとしての賞与、そして中長期インセンティブとしての株式報酬が組み合わされた体系となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 3名 | 5.7億円 | 1.91億円 |
| 社外取締役 | 3名 | 71百万円 | 23.7百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 72百万円 | 36.0百万円 |
| 社外監査役 | 2名 | 37百万円 | 18.5百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は、相良暁氏(2.60億円)、滝野十一氏(1.85億円)、辻中聡浩氏(1.29億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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