東和薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東和薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するジェネリック医薬品の大手メーカーです。国内市場でのシェア拡大と海外展開を推進し、直近の業績では売上高2596億円、経常利益262億円と増収増益を達成しました。医薬品の安定供給体制の強化と、健康関連事業への新規展開に注力しています。


※本記事は、東和薬品株式会社 の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東和薬品ってどんな会社?


ジェネリック医薬品の製造販売を主軸とし、直販体制に強みを持つ医薬品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1951年に医薬品原料の卸として創業し、1957年に設立されました。2005年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。2020年には欧米事業を統括する持株会社Towa Pharma International Holdings, S.L.の株式を取得し、海外展開を本格化させました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行するとともに、三生医薬の株式を取得し子会社化するなど、事業基盤の拡大を続けています。

現在の連結従業員数は4,788名、単体では2,790名です。筆頭株主は資産管理会社と見られる株式会社吉田事務所で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家に関連する安定株主が存在しつつ、機関投資家も一定の株式を保有する構成となっています。

氏名 持株比率
株式会社吉田事務所 40.83%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.39%
BNYM AS AGT/CLTS 10 PERCENT 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は吉田逸郎氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田 逸郎 代表取締役社長 1979年入社。経理部長、総務部長、専務取締役生産本部長などを歴任し、1996年より現職。グループ各社の会長職も兼任。
内川 治 取締役 2017年入社。原薬事業本部長、R&D本部管掌などを歴任し、2023年より現職。大地化成取締役会長を兼任。
國分 俊和 取締役 2014年入社。事業推進本部、経営戦略本部長などを経て、2024年より経営戦略・人事・管理・営業等の管掌役員として現職。
竹安 正顕 取締役 塩野義製薬執行役員、H.U.グループHD等を経て2023年入社。経営戦略本部副本部長などを経て、2024年より現職。
田中 政男 取締役(監査等委員・常勤) 2009年入社。内部監査室長、広報・IR室長、管理本部長などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、栄木憲和(元バイエル薬品代表取締役会長)、大石歌織(北浜法律事務所パートナー)、後藤研了(後藤研了公認会計士事務所代表)、安藤伸樹(元日本通運常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内セグメント」および「海外セグメント」事業を展開しています。

(1) 国内セグメント


ジェネリック医薬品を中心とした医療用医薬品の製造販売を行っています。医療機関への直接販売のほか、代理店や医薬品卸、他の医薬品メーカーへの販売も手掛けています。また、ジェイドルフ製薬やグリーンカプス製薬等の子会社を通じて、医薬品やソフトカプセルの受託製造、原薬の研究製造なども行っています。

主な収益源は、医療機関や卸売業者等からの医薬品販売収入および受託製造による売上です。運営は主に東和薬品が行い、ジェイドルフ製薬、大地化成、グリーンカプス製薬、三生医薬などの連結子会社が製造や特定分野の事業を分担しています。三生医薬では健康食品等の企画・開発・受託製造も展開しています。

(2) 海外セグメント


欧米市場におけるジェネリック医薬品事業を展開しています。欧州に研究開発および製造拠点を有し、ジェネリック医薬品の販売および受託研究開発・製造事業を行っています。同社も同セグメントのグループ会社に研究開発や製造を委託する体制をとっています。

収益は欧米市場での医薬品販売および受託業務から得ています。運営は、スペインに拠点を置く持株会社Towa Pharma International Holdings, S.L.とそのグループ会社が担っています。これにより日米欧の3極体制を構築し、グローバルな事業展開を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では2023年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後はV字回復し、直近では経常利益262億円、当期純利益190億円と過去最高水準の利益を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,549億円 1,656億円 2,089億円 2,279億円 2,596億円
経常利益 187億円 227億円 51億円 245億円 262億円
利益率(%) 12.1% 13.7% 2.5% 10.7% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 137億円 163億円 63億円 196億円 211億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期比で増加しています。売上総利益率は35.7%から36.5%へ、営業利益率は7.7%から9.0%へと改善しており、増収効果に加え、利益率の向上も進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,279億円 2,596億円
売上総利益 814億円 947億円
売上総利益率(%) 35.7% 36.5%
営業利益 176億円 232億円
営業利益率(%) 7.7% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が165億円(構成比23%)、研究開発費が162億円(同23%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の売上原価が大部分を占めています。

(3) セグメント収益


国内セグメントは増収増益となり、全社の利益成長を牽引しています。販売数量の増加や子会社化の影響等が寄与しました。海外セグメントも増収となり黒字を確保していますが、利益率は国内に比べて低い水準にとどまっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内 1,787億円 2,061億円 219億円 272億円 13.2%
海外 492億円 535億円 0億円 4億円 0.8%
連結(合計) 2,279億円 2,596億円 176億円 232億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の儲けを示す営業CFはプラスを維持し、その資金と借入金を活用して設備投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 234億円
投資CF -404億円 -313億円
財務CF 354億円 216億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私達は 人々の健康に貢献します」「私達は こころの笑顔を大切にします」を企業理念として掲げています。優れた製品とサービスの創造を通じて人々の健康に貢献し、患者や医療関係者、地域社会から求められる企業を目指しています。ジェネリック医薬品をコア事業としつつ、新たな健康関連事業への展開も視野に入れています。

(2) 企業文化


企業活動を通じて理念を実現するために、「T-SMILE」という誓いを掲げています。これは、誠実(Truthful)、迅速(Speed)、使命感(Mission)、発想力(Idea)、連携(Linkage)、卓越性(Excellence)の頭文字をとったもので、変化に俊敏に対応し、前例にとらわれない変革にチャレンジする姿勢や、誠実で公正な心を重視する文化を表しています。

(3) 経営計画・目標


第6期中期経営計画2024-2026「PROACTIVE Ⅲ」を策定し、国内ジェネリック医薬品事業の進化や新規事業の基盤確立を目指しています。

* 2026年度までに年間生産能力175億錠体制の構築

(4) 成長戦略と重点施策


「国内ジェネリック医薬品事業の進化」「新規市場・新規事業の基盤確立」「サステナビリティ経営の強化」を基本方針としています。特に安定供給体制の整備に注力し、山形工場の新棟稼働や設備の自動化を進めています。また、海外事業では欧米市場での新製品投入による収益基盤強化を図り、健康関連事業ではスマートシティ構想への参画や三生医薬との連携強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の持続可能性を支えるため、人材開発の基盤構築を経営の重要課題としています。社員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境を整えるため、人事制度改革を進めるとともに、2024年4月に「人材研修センター」を設立し、社員のスキル向上とキャリア形成を支援しています。また、多様な人材の獲得や、個人の成果・成長に基づいた処遇を行うことで、組織全体の価値創造の最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.2歳 10.8年 6,675,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.3%
男性育児休業取得率 56.5%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(73.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度及び薬事規制等の影響


医療用医薬品の販売には薬価基準への収載が必要ですが、毎年の薬価改定により多くの品目で薬価が引き下げられています。医療費抑制政策の強化や薬価制度の大幅な変更が行われた場合、業績に影響を与える可能性があります。また、関連法規への違反や品質問題が生じた場合の行政処分や製品回収のリスクもあります。

(2) 特許及び再審査期間の影響


ジェネリック医薬品事業は先発企業の特許権に影響を受けます。新薬の特許期間延長や再審査期間の設定により、新製品の発売時期や効能・効果に制約が生じる可能性があります。また、発売後も特許権に関する訴訟リスクがあり、これが顕在化した場合は財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 競合状況と供給体制


ジェネリック医薬品市場は他社との競争が激しく、競合他社の動向や供給状況が需要に大きく影響します。他社の供給不安等はシェア獲得の機会となる一方、同社製品への急激な需要増加は安定供給上のリスクとなり得ます。生産能力の向上やバックアップ体制の整備を進めていますが、需給バランスの変動への対応が課題です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

東和薬品の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

東和薬品の2026年3月期3Q決算は、増産体制の構築と海外受託製造の好調により増収増益。175億錠への生産能力拡大や大塚製薬との製造協業など、供給責任を果たすための構造改革が進んでいます。本記事では、医薬品の安定供給を支える現場で求められる役割や、今後の成長戦略を整理します。


【面接対策】東和薬品の中途採用面接では何を聞かれるのか

ジェネリック医薬品の製造販売で知られる製薬メーカー、東和薬品への転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。