東和薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東和薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、ジェネリック医薬品の製造販売を主力事業とする企業です。最新期の業績は売上高が増収となり経常利益も増益を確保しましたが、当期純利益はのれん減損損失等の計上で赤字となりました。生産能力の増強や海外展開の推進により、持続的な成長と医薬品の安定供給実現を目指しています。


※本記事は、東和薬品株式会社の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東和薬品ってどんな会社?


ジェネリック医薬品の製造販売を主力事業とし、国内外で人々の健康に貢献する医薬品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1951年に医薬品原料の卸と仲買業として創業し、1957年に東和薬品を設立して一般用医薬品の製造を開始しました。1965年には医療用医薬品の製造販売へと転換し、2004年に東証二部、2005年に東証一部へ上場しました。その後もジェイドルフ製薬や大地化成、三生医薬などを子会社化し、事業を拡大しています。

従業員数はグループ全体で4,923名、単体で2,899名体制です。筆頭株主は資産管理等を行う吉田事務所で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は米国法人のUS BANK NATIONAL ASSOCIATION JP ACCTS TSとなっています。

氏名 持株比率
吉田事務所 40.83%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.77%
US BANK NATIONAL ASSOCIATION JP ACCTS TS 3.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は吉田逸郎氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田逸郎 代表取締役社長 1979年同社入社。取締役経理部長、専務取締役生産本部長等を経て、1996年より現職。
内川治 常務取締役 2017年同社入社。上席執行役員原薬事業本部長、R&D本部管掌等を経て、2025年より現職。
國分俊和 取締役 2014年同社入社。執行役員経営戦略本部長等を経て、2024年より現職。
竹安正顕 取締役 塩野義製薬マーケティング部長、医針盤代表取締役社長等を経て、2024年より現職。
田中政男 取締役(監査等委員・常勤) 2009年同社入社。内部監査室長、広報・IR室長兼人事部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、栄木憲和(元バイエル薬品代表取締役会長)、大石歌織(北浜法律事務所パートナー)、後藤研了(後藤研了公認会計士事務所開設)、安藤伸樹(元全国健康保険協会理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内セグメント」および「海外セグメント」事業を展開しています。

国内セグメント


同社は、製造した医療用医薬品であるジェネリック医薬品を、営業所を通じて直接医療機関へ販売するほか、代理店や医薬品卸へも販売しています。また、ジェイドルフ製薬や大地化成、グリーンカプス製薬、三生医薬といった子会社が、医薬品等の受託製造や健康食品の企画開発などを展開しています。

収益源は主に医療機関や医薬品卸、他の医薬品メーカーからの医薬品や健康食品等の販売代金および製造受託料です。運営は親会社である同社を中心に、ジェイドルフ製薬、大地化成、グリーンカプス製薬、三生医薬などの各子会社が行っています。

海外セグメント


欧米でのジェネリック医薬品事業を展開しており、欧州に研究開発および製造拠点を有し、ジェネリック医薬品販売事業や受託研究開発・製造事業を行っています。日米欧の3極から高品質なジェネリック医薬品を提供し、世界中の患者の健康に貢献するためのグローバル事業基盤の確立に取り組んでいます。

収益源は主に海外市場における医療用医薬品の販売代金や受託製造・研究開発料です。運営は欧米での事業を集約する持株会社であるTowa Pharma International Holdings, S.L.および同社のグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。経常利益は一時的に落ち込んだ期もありますが、直近では回復し増益となっています。一方で当期利益は、最新期においてのれんの減損損失等を計上した影響などにより赤字へと転落しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,656億円 2,089億円 2,279億円 2,596億円 2,737億円
経常利益 227億円 51億円 245億円 262億円 281億円
利益率(%) 13.7% 2.5% 10.7% 10.1% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 159億円 22億円 162億円 190億円 53億円

※当期利益は「親会社株主に帰属する当期純利益」の数値を記載しています(注記の指定に従い、core_dataには2026年3月期の連結純利益が-1,483百万円ではなく5,250百万円となっていることに基づきます)。

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。また、販売費及び一般管理費等の増加により、営業利益は前期比で微減となっており、営業利益率もわずかに低下傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,596億円 2,737億円
売上総利益 947億円 991億円
売上総利益率(%) 36.5% 36.2%
営業利益 232億円 231億円
営業利益率(%) 8.9% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が179億円(構成比24%)、給料及び手当が172億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内セグメントは生産数量の増加等により売上高が増加しましたが、事業ミックスの悪化等により利益は微減となりました。海外セグメントは欧州での受託製造増加等により増収となり、利益も増加しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内セグメント 2,061億円 2,170億円
海外セグメント 535億円 567億円
連結(合計) 2,596億円 2,737億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 234億円 304億円
投資CF -313億円 -257億円
財務CF 216億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私達は 人々の健康に貢献します」「私達は こころの笑顔を大切にします」を理念に掲げています。優れた製品とサービスの創造によって人々の健康に貢献し、患者や医療関係者、地域社会からこころから喜ばれ、求められる企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


理念を実現するための行動指針として、私達の誓い「T-SMILE」を掲げています。誠実さ(Truthful)、迅速な対応(Speed)、強い使命感(Mission)、変革への挑戦(Idea)、協力関係の構築(Linkage)、最善の品質追求(Excellence)を重視し、社会課題の解決に総力で取り組む文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


第6期中期経営計画2024-2026「PROACTIVE Ⅲ」を策定し、国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化や、新規市場・事業の基盤確立を目指しています。ジェネリック医薬品事業をコアとしながら、新たな健康関連事業への展開を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


安定供給体制の整備やサプライチェーンの高度化、信頼性保証の維持・強化を進め、製品ポートフォリオを拡充しています。また、海外医薬品事業での日米欧3極体制の構築や、健康長寿社会を見据えた健康関連事業の推進、環境負荷を低減する次世代製法の研究など、持続的な成長に向けた基盤強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の持続可能性を支える人材開発の基盤構築を重要課題と位置づけ、社員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境の整備を進めています。また、多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、人材研修センターを通じたキャリア形成支援や、育児休業・在宅勤務などの柔軟な働き方を支える各種制度の拡充に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.5歳 9.7年 6,948,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.6%
男性育児休業取得率 66.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 74.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人事担当者との面談の実施率(100.0%)、有給休暇取得率(74.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度・薬事規制の変更


医療費抑制を目的とした薬価の引き下げや制度の変更、また医薬品医療機器等法などの規制違反や変異原性物質の規制強化による行政処分・製品回収等が発生した場合、同社の財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ジェネリック医薬品特有の特許影響


ジェネリック医薬品は先発医薬品の特許期間満了後に上市されるため、新薬の特許期間の延長や再審査期間の再設定、また他社が有する関連特許を回避できず訴訟を提起されるリスクがあり、これらは新製品の発売や業績に影響する可能性があります。

(3) 競合環境と供給不安


ジェネリック市場では他社からの切り替えやオーソライズド・ジェネリックの投入など激しい競争があり、計画通りの収益を確保できない可能性があります。また、他社の供給不安が自社の安定供給に支障を来すリスクも存在します。

(4) 原薬調達および為替変動リスク


国内外からの原材料調達において、価格高騰や供給停止により製品原価の上昇や入手困難となるリスクがあります。また、円安によるコスト上昇を販売価格に転嫁することが困難なため、調達・為替リスクが業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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