※本記事は、コニカミノルタ株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. コニカミノルタってどんな会社?
複合機や医療機器、産業用材料などを展開するグローバル企業です。画像技術を核に多様な事業を行っています。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1873年の写真材料取扱開始に遡ります。2003年にコニカとミノルタが経営統合し、持株会社として発足しました。2013年にはグループ内の事業会社7社を吸収合併して事業会社へと移行し、現在の商号となりました。2016年には国内販売機能の再編としてコニカミノルタジャパンが発足しています。
同社(単体)の従業員数は3,922名、連結では35,631名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は外国法人の常任代理人である銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 16.92% |
| 日本カストディ銀行 | 9.87% |
| BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) | 3.25% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表執行役社長兼CEOは大幸 利充氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大幸 利充 | 取締役 代表執行役社長 兼 CEO経営企画担当 | 1986年ミノルタカメラ入社。プロフェッショナルプリント事業本部長、オフィス事業本部長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 葛原 憲康 | 取締役 常務執行役インダストリー事業管掌 | 1990年入社。機能材料事業本部長、材料・コンポーネント事業本部長、開発統括本部長、経営企画本部長等を経て、2023年6月より現職。 |
| 平井 善博 | 取締役 常務執行役経理、財務、法務担当、コンプライアンス委員長、リスクマネジメント委員長 | 1991年三菱銀行入行。2019年同社入社、財務部長。上席執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
| 鈴木 博幸 | 取締役指名委員監査委員報酬委員 | 1979年ミノルタカメラ入社。経営監査室長、執行役等を経て、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、程 近智(元アクセンチュア代表取締役社長)、佐久間 総一郎(日鉄ソリューションズ顧問)、市川 晃(住友林業代表取締役会長)、峰岸 真澄(リクルートホールディングス代表取締役会長兼取締役会議長)、澤田 拓子(塩野義製薬取締役副会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルワークプレイス事業」、「プロフェッショナルプリント事業」、「インダストリー事業」、「画像ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デジタルワークプレイス事業
オフィス向け複合機や関連消耗品の開発・製造・販売を行っています。また、関連サービス・ソリューションやITサービス・ソリューションも提供しており、顧客のワークスタイル変革や業務効率化を支援しています。
収益は、顧客からの製品代金や消耗品代金、保守サービス料、ITサービス料等から得ています。運営は主にコニカミノルタや販売子会社であるコニカミノルタジャパン、各国の販売子会社などが行っています。
■(2) プロフェッショナルプリント事業
商業印刷・産業印刷市場向けのデジタル印刷システムや関連消耗品の開発・製造・販売を行っています。また、各種印刷サービスやソリューションも提供し、多品種少量生産や短納期化などのニーズに対応しています。
収益は、印刷会社等の顧客からの機器・消耗品代金やサービス料等から得ています。運営は主にコニカミノルタや各国の販売子会社が行っており、印刷サービスの提供はキンコーズ・ジャパンなどが担っています。
■(3) インダストリー事業
センシングユニットでは計測機器などを、材料・コンポーネントユニットではディスプレイ用機能性フィルムや産業用インクジェットヘッド、産業・プロ用レンズなどを開発・製造・販売しています。関連するソリューションやサービスも提供しています。
収益は、メーカー等の顧客からの製品代金やソリューション提供対価等から得ています。運営は主にコニカミノルタが行っており、一部製品の製造や販売は国内外の子会社が担当しています。
■(4) 画像ソリューション事業
ヘルスケアユニットでは画像診断システム(デジタルX線、超音波等)や医療ITソリューションを、画像IoT・映像ソリューションユニットでは画像IoT機器や映像関連機器などを開発・製造・販売しています。
収益は、医療機関等の顧客からの機器代金やサービス料、ソリューション提供対価等から得ています。運営は主にコニカミノルタやコニカミノルタジャパン、各国の医療系販売子会社などが行っています。
■(5) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、グループ会社に対するシェアードサービスや技術支援、その他の新規事業などが含まれています。
収益は、グループ会社からのサービス対価や外部顧客からの事業収益等から得ています。運営はコニカミノルタコネクトやコニカミノルタ情報システムなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近の期間において1兆1,000億円台で推移しており、当期も為替の影響などにより増収となりました。一方、利益面では、前期に黒字化しましたが、当期は構造改革費用や減損損失など一過性費用の計上により、営業損益および税引前損益が大幅な赤字に転じています。当期利益についても赤字となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 8,634億円 | 9,114億円 | 11,304億円 | 11,077億円 | 11,279億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | -200億円 | -236億円 | -1,019億円 | 153億円 | -792億円 |
| 利益率(%) | -2.3% | -2.6% | -9.0% | 1.4% | -7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -152億円 | -261億円 | -1,032億円 | 45億円 | -475億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、その他の費用が大幅に増加したため、営業損益は赤字となりました。売上原価率は微増しました。その他の費用の増加は、主に減損損失や事業構造改善費用の計上によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11,077億円 | 11,279億円 |
| 売上総利益 | 4,751億円 | 4,794億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.9% | 42.5% |
| 営業利益 | 275億円 | -640億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | -5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が3,847億円(構成比86.0%)、減価償却費及び償却費が706億円(同15.8%)を占めています(注:人件費などは売上原価に含まれる分も合算された注記数値の可能性がありますが、主要費目として記載)。研究開発費は551億円(同12.3%)となっています。
■(3) セグメント収益
デジタルワークプレイス事業とプロフェッショナルプリント事業は増収となりましたが、インダストリー事業は減収となりました。利益面では、デジタルワークプレイス事業は増益を確保しましたが、プロフェッショナルプリント事業、インダストリー事業、画像ソリューション事業はいずれも減損損失等の計上により営業損失となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルワークプレイス事業 | 6,149億円 | 6,164億円 | 330億円 | 140億円 | 2.3% |
| プロフェッショナルプリント事業 | 2,634億円 | 2,847億円 | 116億円 | -132億円 | -4.6% |
| インダストリー事業 | 1,236億円 | 1,193億円 | 166億円 | -127億円 | -10.7% |
| 画像ソリューション事業 | 1,052億円 | 1,069億円 | -109億円 | -259億円 | -24.3% |
| その他 | 7億円 | 7億円 | 10億円 | 9億円 | 138.3% |
| 調整額 | - | - | -237億円 | -270億円 | - |
| 連結(合計) | 11,077億円 | 11,279億円 | 275億円 | -640億円 | -5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は、本業の営業活動で現金を生み出し、資産売却等による投資活動からの収入も合わせて借入金の返済を進めていることから「改善型」に分類されます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 833億円 | 511億円 |
| 投資CF | -445億円 | 246億円 |
| 財務CF | -969億円 | -1,109億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-9.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.6%で市場平均(製造業平均)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「新しい価値の創造」を経営理念として掲げています。また、長期経営ビジョンとして「Imaging to the People」を掲げ、独自のイメージング技術をコアに、人間中心の生きがい追求と持続的な社会の実現を高次に両立することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
同社は「6つのバリュー」を企業文化・風土の基盤としています。これは「Open and Honest」「Customer-centric」「Innovative」「Passionate」「Inclusive and Collaborative」「Accountable」から構成され、価値創造の源泉と位置付けられています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画(2023年度-2025年度)において、収益力の回復と持続的な成長軌道への回帰を目指しています。2025年度は「Turn Around 2025」と位置づけ、成長基盤の確立を図ります。
* 売上高:1兆500億円
* 事業貢献利益:525億円
* 営業利益:480億円
* 当期利益:240億円
* ROE:5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業の選択と集中、グローバル構造改革を完遂し、収益基盤と財務基盤の強化を進めます。デジタルワークプレイス事業ではコスト削減やDXによる効率化、プロフェッショナルプリント事業ではノンハード収益の拡大を目指します。インダストリー事業では高付加価値製品のシェア拡大、画像ソリューション事業では医療のデジタル化機会を捉えた収益改善に取り組みます。また、既存事業から派生した技術をAIで強化し、新たな成長の芽を育成します。
* 有利子負債削減目標:2025年度末に約1,940億円削減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営ビジョン実現のため、自律的に考え行動する「プロフェッショナル人財」の育成に注力しています。個人のポテンシャルを最大化する教育投資や、多様な人財が活躍できる環境整備を進め、エンゲージメントとレジリエンス力の向上を目指しています。また、次世代リーダーやグローバル人財の育成、専門性の高い「エキスパート」と組織を牽引する「エンパワーメントリーダー」への複線型管理職制度の導入などを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.3歳 | 20.8年 | 8,211,911円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.0% |
| 男性育児休業取得率 | 77.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 78.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、セールス等の売上部門で働く女性比率(20.5%)、STEM関連業務に携わる社員の女性割合(14.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向・市場環境
世界経済の停滞や米国の関税政策などの影響により、顧客の投資抑制や消費行動の変化が起きる可能性があります。これにより、新規機器購入の減少や販売価格の下落、在庫増加などが生じ、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替レートの変動
海外売上高比率が高いため、為替レートの変動により業績が影響を受けます。円安は欧州や中国での利益増要因となりますが、米ドルについては調達・製造コスト増によりマイナス影響を与える可能性があります。ヘッジ取引等でリスク軽減を図っています。
■(3) デジタルワークプレイス事業のプリント環境変化
ペーパーレス化やリモートワークの進展により、オフィスにおけるプリント需要が減少するリスクがあります。想定を超える需要減少が発生し、顧客動向に迅速に対応できない場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) グローバルサプライチェーン
生産・販売活動をグローバルに展開しているため、物流の停滞や混乱、地政学リスク、港湾ストライキ、輸送コストの上昇などが供給遅延を引き起こし、売上機会の損失やコスト増につながる可能性があります。これに対し、在庫の最適化や代替ルートの確保等で対応しています。



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