※本記事は、コニカミノルタ株式会社の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. コニカミノルタってどんな会社?
同社は、オフィス向け複合機や産業印刷システム、各種計測機器等、独自のイメージング技術を活かした多彩な事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1873年に写真及び石版印刷材料の取扱いを開始したことに起源を持ちます。1936年に小西六本店として設立後、1987年にコニカへ商号変更しました。2003年にミノルタと経営統合してコニカミノルタホールディングスとなり、2013年に現在のコニカミノルタへと商号を変更しています。
現在の従業員数は連結で34,363名、単体で3,888名体制です。大株主については、筆頭株主が資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行、第3位がJPMSPLC CLIENT ASSETS SK JPYとなっており、信託銀行等が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.33% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.06% |
| JPMSPLC CLIENT ASSETS SK JPY(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 3.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性6名の計19名で構成され、女性役員比率は31.6%です。取締役 代表執行役社長 兼 CEO経営企画部 担当は大幸利充氏が務めています。取締役の構成は9名中5名が社外取締役(55.6%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大幸 利充 | 取締役 代表執行役社長 兼 CEO | 1986年ミノルタカメラ入社。米国法人のCEOやオフィス事業本部長等を経て、2022年より現職。 |
| 平井 善博 | 取締役 専務執行役 | 1991年三菱銀行入行。2019年同社入社、財務部長等を歴任。2023年取締役兼常務執行役を経て、2026年より現職。 |
| 葛原 憲康 | 取締役 常務執行役 | 1990年同社入社。機能材料事業本部長や経営企画本部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 鈴木 博幸 | 取締役 | 1979年ミノルタカメラ入社。経営監査室長等を経て、2019年より現職。 |
社外取締役は、佐久間総一郎(元日本製鉄副社長)、峰岸真澄(リクルートホールディングス会長)、澤田拓子(塩野義製薬副会長)、新井佐恵子(アキュレイ代表)、河村芳彦(キオクシアホールディングス副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルワークプレイス事業」「プロフェッショナルプリント事業」「インダストリー事業」「画像ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■デジタルワークプレイス事業
オフィス向けの複合機や関連消耗品の開発・製造・販売に加え、ITサービスやソリューションを提供しています。顧客の働き方改革や生産性向上を支援する幅広いサービスを展開しているのが特徴です。
複合機等のハードウェア販売や消耗品の販売、及び使用量に応じたメンテナンス契約等から収益を得ています。運営は同社のほか、コニカミノルタジャパンなどの国内外のグループ各社が行っています。
■プロフェッショナルプリント事業
商業印刷や産業印刷市場向けにデジタル印刷システムや関連消耗品の開発・製造・販売を行っています。各種印刷サービスやワークフロー改善ソリューション等も提供し、印刷業界のデジタル化を推進しています。
印刷システムの機器販売や関連消耗品の販売に加え、各種印刷サービス等の対価として顧客から収益を得ています。同事業の運営は同社やコニカミノルタジャパンなどのグループ会社が担っています。
■インダストリー事業
計測機器等の開発・製造・販売や、ディスプレイに使用される機能性フィルム、産業用インクジェットヘッド、産業・プロ用レンズ等の部材及び関連ソリューションを提供しています。
これらの計測機器や機能材料、光学コンポーネント等の製品を法人顧客等へ販売することで収益を得ています。運営は同社やコニカミノルタジャパンなどの国内外のグループ会社が行っています。
■画像ソリューション事業
ヘルスケア分野におけるデジタルX線画像診断システムや超音波診断システムの開発・製造・販売に加え、映像関連機器やプラネタリウム設備等のソリューション及びサービスを提供しています。
医療機関等からの機器購入代金やメンテナンス契約料、及びプラネタリウムの運営や機器販売等から収益を得ています。同事業は同社のほか、コニカミノルタジャパンやコニカミノルタプラネタリウム等が運営しています。
■その他
同社グループの経営基盤を支える情報システムの開発や設備工事、不動産管理等の各種サービスを提供しています。主にコニカミノルタ情報システム等のグループ会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上収益は1兆円前後で安定して推移しているものの、利益面では複数回にわたり大幅な赤字を計上するなど厳しい状況が続いていました。しかし、直近の2026年3月期では構造改革や事業の選択と集中の効果が表れ、税引前利益及び当期利益ともに大幅な黒字転換を果たし、収益力が回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 9114億円 | 11304億円 | 11077億円 | 11279億円 | 10877億円 |
| 税引前利益 | -236億円 | -1019億円 | 153億円 | -792億円 | 434億円 |
| 利益率(%) | -2.6% | -9.0% | 1.4% | -7.0% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -261億円 | -1032億円 | 45億円 | -475億円 | 303億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、構造改革や事業領域の絞り込み等に伴う費用の減少により、営業利益は赤字から大幅な黒字へと改善しました。収益構造の見直しが進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11279億円 | 10877億円 |
| 売上総利益 | 1301億円 | 1066億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 9.8% |
| 営業利益 | -640億円 | 499億円 |
| 営業利益率(%) | -5.7% | 4.6% |
販売費及び一般管理費(単体)のうち、研究開発費が494億円(構成比48%)、支払手数料及び業務委託料が193億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インダストリー事業の売上が伸長した一方、デジタルワークプレイス事業等の減収により全体では減収となりました。しかし、各セグメントで構造改革等による費用削減が進み、利益面では多くのセグメントで大幅な改善や黒字化を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルワークプレイス事業 | 6164億円 | 6105億円 | 140億円 | 371億円 | 6.1% |
| プロフェッショナルプリント事業 | 2847億円 | 2552億円 | -132億円 | 93億円 | 3.7% |
| インダストリー事業 | 1193億円 | 1268億円 | -127億円 | 223億円 | 17.6% |
| 画像ソリューション事業 | 1069億円 | 945億円 | -259億円 | -13億円 | -1.4% |
| その他 | 6億円 | 7億円 | 9億円 | 11億円 | 147.2% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -270億円 | -185億円 | -% |
| 連結(合計) | 11279億円 | 10877億円 | -640億円 | 499億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.6%であり、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 511億円 | 863億円 |
| 投資CF | 246億円 | -340億円 |
| 財務CF | -1109億円 | -403億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「新しい価値の創造」を経営理念に掲げ、顧客や社会に対して革新的な価値を提供し続けることを目指しています。また、長期の経営ビジョンステートメントとして「Imaging to the People」を掲げ、独自のイメージング技術を中心に、「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」の高次な両立を目指し、持続可能な社会の実現と企業の成長を図っています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を体現するための基盤として「6つのバリュー」からなる企業文化・風土を重視しています。「自ら学び、事業の壁・地域の壁を越え、結果にこだわり続ける人財」が「多様性を武器とし相互に切磋琢磨し挑戦し続ける文化」の中で最大限の力を発揮することを目指しており、グローバルに広がる多様な人財が新たな価値を創出する土壌を形成しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Corporate Plan 2026-2028」では、長期成長の礎を構築する期間として位置付け、ROIC経営及び事業ポートフォリオマネジメントの強化を通じて収益基盤を一段と強化することを目標としています。これらの取組を通じ、企業価値の継続的な向上を図るため、以下の数値目標を掲げています。
* 2028年度までにROE8%以上の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期の成長に向けて、事業別の資本効率を向上させるとともに全社視点での固定費の効率化に取り組みます。また、材料、光学、画像、微細加工という4つのコア技術にAIを組み合わせることで、付加価値の高い事業領域へ展開します。半導体向け光学コンポーネントやペロブスカイト太陽電池等の成長領域へ研究開発投資や設備投資を重点的に配分し、循環経済や脱炭素への貢献と事業の拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営ビジョンの実現とROE8%の達成に向けて、従業員一人ひとりが社内外のステークホルダーと共創し価値を提供する姿を目指しています。グローバルで多様な専門性を持つ人財の育成や、AI前提の組織設計と人財力強化を推進し、全社的な技術人財の育成基盤の再構築等、組織と個人の成長を両立させる人材戦略を実行しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.4歳 | 20.7年 | 8,441,281円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.0% |
| 男性育児休業取得率 | 86.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 85.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(7.1)、製品ライフサイクルCO2排出量(70万トン)、CO2削減貢献量(112万トン)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向・市場環境の変化と経済安全保障のリスク
インフレや景気後退、地政学的情勢の深刻化等により顧客の投資抑制や消費低迷が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、経済安全保障関連法制の強化に伴う輸出管理や各種規制の動向により、部材調達や生産活動に制約が生じるリスクがあります。
■(2) デジタルワークプレイス事業におけるプリント環境の変化
ペーパーレス化やリモートワークの普及、生成AIの活用拡大により、オフィスにおけるプリント需要が中期的に減少する構造的な変化が生じています。想定を超えるプリント需要の減少に対し、オフィスソリューションへの転換等の顧客動向に迅速に対応できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 調達・製造等のサプライチェーンにおけるリスク
生産拠点の海外展開に伴い、各国の法規制、関税政策、地政学リスク等が生産・調達活動に影響を及ぼす可能性が高まっています。物流網の混乱やエネルギー価格の高騰、重要部品の供給制約等により、製品供給の遅延や生産コストの上昇が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) サイバー攻撃等に関する情報セキュリティのリスク
高度化・巧妙化するサイバー攻撃により、社内ネットワークへの不正侵入や管理者権限の奪取が発生するリスクがあります。これによって技術情報や営業秘密等の機密情報が漏えいし、不正利用された場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生等、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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