東リ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東リ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東リは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、主にインテリア製品、グローバル展開、建材等の事業を展開する企業です。直近の業績では、主力のビニル系床材や壁装材の販売数量増加などにより、売上高が前年を上回り、営業利益も増益となる増収増益を達成しました。堅調な需要を背景に成長を続けています。


※本記事は、東リ株式会社の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東リってどんな会社?


同社は長年の歴史を持つ内装材メーカーとして、インテリア製品の製造や仕入販売を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


同社は1919年にリノリューム類の製造を目的に東洋リノリユームとして設立されました。1949年に東京・大阪証券取引所へ上場を果たし、1991年に現在の社名である東リに変更しています。2019年には創業100年を迎え、近年は2024年に北米での販路拡大を目指して米国に現地法人を設立しました。

現在の従業員数は連結で1940名、単体で920名となっています。筆頭株主は金融機関である日本生命保険で、第2位は事業会社のトクヤマ、第3位は東親会持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本生命保険 6.42%
トクヤマ 4.89%
東親会持株会 3.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は永嶋元博が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
永嶋元博 取締役社長代表取締役 1982年4月同社入社。総合企画部長、執行役員、取締役、営業本部長を歴任し、2012年4月より現職。
天野宏文 取締役専務執行役員事業本部長 1984年4月同社入社。企画推進室長、執行役員、取締役、事業本部長、常務取締役を歴任し、2021年4月より現職。
橋本昌幸 取締役常務執行役員グローバル戦略推進担当気候変動対応プロジェクトマネージャー 1983年日商岩井入社。双日化学本部副本部長を経て、2018年同社常勤顧問。取締役等を経て、2023年4月より現職。
加藤晃朗 取締役執行役員経営企画部長 1995年4月同社入社。2018年経営企画部長、2022年執行役員を経て、2025年6月より現職。
竹川政克 取締役執行役員技術開発部長 1997年4月同社入社。2021年技術開発部長、2023年執行役員を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、横田絵理(慶應義塾大学名誉教授)、関根近子(宝印刷社外取締役)、藤井秀延(中北製作所社外監査役)、木村麻子(慶應義塾大学商学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インテリア事業」「グローバル事業」「建材その他事業」を展開しています。

インテリア事業


日本国内において同社ブランド製品の製造販売や、インテリア商材・サービス等の仕入販売、内装工事等の業務を提供しています。顧客は住宅や非住宅向けの建設市場など多岐にわたります。

主に製品の販売代金や内装工事の請負代金として収益を得ています。運営は同社およびリック、滋賀東リなどが担当しています。

グローバル事業


同社ブランド製品やそれに関連するインテリア商材の輸出販売、ならびに仕入販売の業務を行っています。北米や中国などの海外市場を中心とした顧客に製品を提供しています。

製品の輸出販売代金として海外の代理店等から収益を得ています。運営は同社のほか、東璃(上海)貿易やTOLI North America Corporationなどが担っています。

建材その他事業


日本国内における建材や住設機器等の仕入販売、業際・産業資材用途での同社ブランド製品の製造販売などを行っています。

製品の販売代金として収益を受け取っています。運営は同社やリック、北海道東リなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業の着実な拡大がうかがえます。経常利益も一時的な踊り場はあったものの、全体として堅調に推移しており、利益率も改善傾向にあります。継続的な成長を支える安定した収益基盤が構築されています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 885億円 952億円 1025億円 1057億円 1123億円
経常利益 12億円 36億円 52億円 47億円 57億円
利益率(%) 1.4% 3.8% 5.1% 4.4% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 19億円 27億円 26億円 33億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年から順調に拡大しています。利益率も微増しており、コストコントロールが適切に行われ、本業の収益性が高まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1057億円 1123億円
売上総利益 307億円 336億円
売上総利益率(%) 29.0% 29.9%
営業利益 44億円 51億円
営業利益率(%) 4.1% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が79億円(構成比28%)、給与及び賞与が79億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のインテリア事業が売上高を牽引しており、安定した成長を見せています。一方でグローバル事業は減収となっており、海外市場での展開に課題が残る結果となりました。建材その他事業は前年と同水準で推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
インテリア事業 983億円 1050億円
グローバル事業 25億円 23億円
建材その他事業 49億円 50億円
連結(合計) 1057億円 1123億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で得たキャッシュを投資や借入金の返済に充当しており、健全な財務体質を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 91億円
投資CF -48億円 -44億円
財務CF 8億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは『信頼』を糧として新たな価値を創造し、世界の人々の心豊かな空間環境づくりに貢献します」というグループ経営理念を掲げています。これは企業グループとしての使命・あるべき姿を示したものであり、モノづくり企業としての責任と社会への貢献を経営の根幹に据えています。

(2) 企業文化


事業活動において大切にすべき価値観・行動基準として「東リグループバリュー」を制定しています。具体的には「『確かな品質と技術』を信頼に繋げる」「『お客様目線のモノづくり』で共創の精神を貫く」「『グローバルな進化』を目指す」の3つを掲げ、品質に裏付けられた事業活動と顧客中心の姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年度のあるべき姿として長期ビジョン「TOLI VISION 2030」を掲げ、その第2フェーズとなる中期経営計画「SHINKA Plus ONE 2.0」を推進しています。2031年3月期に向けた具体的な数値目標として以下を設定しています。

・連結売上高:1200億円以上
・連結営業利益:60億円以上
・ROE(自己資本利益率):10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


持続的成長の実現に向けて、製品競争力の強化や事業領域の拡大、グローバル事業の推進を重点施策としています。国内建設市場の縮小を見据え、高付加価値製品の開発や製造原価の低減を図るとともに、北米や中国などの海外拠点を通じて販売網を拡充し、次代の成長基盤を構築する戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「社員の成長と幸福を実現し、会社の発展及び社会に貢献する」という人材育成理念を掲げています。社員を「人財」と位置づけ、研修制度の充実や計画的なジョブローテーションにより成長機会を創出しています。また、多様な働き方に対応する「TOLIワークスタイル」の実現に向け、職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 17.0年 6,393,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.7%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全) 72.6%
男女賃金差異(正規) 73.3%
男女賃金差異(非正規) 76.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(30.5%)、障がい者雇用率(2.5%)、ストック有給休暇利用人数(53人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営成績の下期偏重


同社グループの経営成績は、年度末竣工物件での受注等により下半期に偏る傾向があります。このため、下半期の建設需要の動向や工事の進捗状況によっては、通期の業績が事前の予想から大きく乖離する可能性があり、財政状態や経営成績に影響を及ぼすリスクを抱えています。

(2) 原材料の調達環境の変化


製品の主要原材料である石油化学製品は、原油市況や為替動向と深く関係しています。地政学リスク等に起因する原油価格の高騰や原材料の不足、為替変動が発生した場合、製造コストの急増や生産調整を余儀なくされ、同社グループの収益性が低下するリスクがあります。

(3) 販売価格の動向


同社グループの製品は他社との競争が激しい市場で販売されています。市場価格の動向や競争激化によって製品の販売価格が下落した場合、あるいは販売数量が減少した場合には、売上高や利益の減少に直結し、同社の経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。