※本記事は、UBE株式会社の有価証券報告書(第120期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. UBEってどんな会社?
化学と機械を両輪とする総合メーカーであり、グローバル市場に向けて多様なスペシャリティ製品を提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1897年に匿名組合沖ノ山炭鉱として設立されました。1942年に宇部興産を設立し、1949年には東京証券取引所へ上場しています。2022年に現在のUBEへ商号を変更しました。直近では2025年にドイツLANXESS社の子会社株式を取得し、ウレタンシステムズ事業を連結化するなど事業の拡大を続けています。
同社グループは、連結従業員数7,968名、単体従業員数2,778名を擁しています。株主構成を見ると、筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。また、第3位には住友生命保険が名を連ねており、安定した株主基盤のもとで事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.73% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.46% |
| 住友生命保険 | 2.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は西田祐樹氏が務めています。社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西田祐樹 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。2016年執行役員、2019年常務執行役員、2022年専務執行役員、2024年代表取締役専務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 泉原雅人 | 取締役会長 | 1983年同社入社。2010年執行役員、2011年取締役執行役員、2018年取締役専務執行役員、2019年代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 石川博隆 | 代表取締役 | 1989年同社入社。2023年執行役員CFO、2023年取締役執行役員CFO、2025年4月代表取締役常務執行役員CFOなどを経て、2025年7月より現職。 |
| 川村了 | 取締役 | 1991年同社入社。2023年執行役員、2024年執行役員CRO、2025年取締役執行役員CROなどを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、福水健文(元中小企業庁長官)、満岡次郎(元IHI社長)、山本爲三郎(慶應義塾大学名誉教授)、鈴木智子(公認会計士)、田中達也(元富士通社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、機能品、高機能ウレタン、医薬、樹脂・化成品、機械およびその他の事業を展開しています。
■機能品
ポリイミド、分離膜、セラミックス等の機能性材料の開発と製造を行っています。また、リチウムイオン電池材料であるセパレータや電子・情報通信関連製品も提供しており、成長市場のニーズに応える製品群を取り揃えています。
主に同社が事業を統括し製造・販売を担うほか、グループ会社である宇部エクシモや宇部マクセルがそれぞれの専門領域で製品の製造と提供を行っています。
■高機能ウレタン
高機能熱硬化性ウレタンエラストマー用プレポリマーなどのウレタン樹脂中間体や、高機能コーティング製品等の開発と提供を行っています。半導体産業をはじめとするハイエンド用途に向けたソリューションを展開しています。
同社が製造・販売を行うほか、海外においてUBE URETHANES USA LLCやUBE Fine Chemicals (Asia) Co., Ltd.などのグループ会社がグローバルな拠点から製品を提供しています。
■医薬
がん領域等の創薬研究や、医薬品原体および中間体の受託製造と販売を行っています。独自の技術基盤を活かし、製薬会社等との共同研究開発や技術ライセンスの供与などを推進しています。
主に同社自身が事業主体となっており、ベルギーの連結子会社であるUBE Europe Belgium NVとともにグローバルな事業活動を展開しています。
■樹脂・化成品
ナイロンポリマー、カプロラクタム、コンポジット、アンモニア等の工業薬品や、エラストマーの製造と提供を行っています。また、ポリエチレン製品の製造など幅広い化学製品を取り扱っています。
同社が製造を担うほか、スペインのUBE CORPORATION EUROPE S.A.U.やタイのUBE Chemicals (Asia) Public Company Limited、国内のUBEエラストマーや宇部フィルム等が事業を展開しています。
■機械
成形機(ダイカストマシン、射出成形機等)や産業機械(窯業機、破砕機等)、橋梁・鉄構の製造・販売およびアフターサービスを行っています。自動車産業やインフラ向けに大型設備を提供しています。
UBEマシナリーが機械事業を統括し製造・販売を担うほか、福島製作所や米国子会社のUBE MACHINERY INC.等が国内外で事業を展開しています。
■その他
同社グループにおける電力の供給や、不動産の売買・賃貸借および管理などの事業を展開しています。グループ全体の基盤を支える役割を担っています。
主に同社が事業を運営するほか、海外市場での製品販売等を行う宇部興産(上海)有限公司やUbe Europe GmbH、米国の統括会社などがそれぞれの領域で活動しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は4,600億円から6,500億円の範囲で推移し、直近では需要減退や事業見直しの影響で減収傾向にあります。一方、経常利益は一時的に赤字となった時期もありましたが、足元では構造改革効果や原料価格の下落により回復し、安定した黒字を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,553億円 | 4,947億円 | 4,682億円 | 4,868億円 | 4,623億円 |
| 経常利益 | 415億円 | -87億円 | 363億円 | 224億円 | 375億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | -1.8% | 7.8% | 4.6% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 214億円 | 191億円 | 165億円 | 97億円 | 222億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、売上高が減少した一方で売上原価の減少幅がこれを上回り、売上総利益は改善しています。販売費及び一般管理費は増加しましたが、結果として営業利益および営業利益率ともに前期を上回る水準を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,868億円 | 4,623億円 |
| 売上総利益 | 909億円 | 1,035億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.7% | 22.4% |
| 営業利益 | 180億円 | 189億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が179億円(構成比21%)、研究開発費が121億円(同14%)、販売運賃諸掛が121億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、ウレタンシステムズ事業の取得により高機能ウレタン事業が大幅な増収となった一方、樹脂・化成品事業や機械事業等は販売減により減収となりました。利益面では樹脂・化成品事業が黒字転換し、全体の増益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能品 | 662億円 | 619億円 | 117億円 | 98億円 | 15.8% |
| 高機能ウレタン | 156億円 | 465億円 | -2億円 | -5億円 | -1.2% |
| 医薬 | 315億円 | 210億円 | 12億円 | -13億円 | -6.0% |
| 樹脂・化成品 | 2,736億円 | 2,512億円 | -7億円 | 82億円 | 3.3% |
| 機械 | 869億円 | 684億円 | 79億円 | 62億円 | 9.1% |
| その他 | 392億円 | 345億円 | 21億円 | 19億円 | 5.5% |
| 調整額 | -261億円 | -212億円 | -38億円 | -54億円 | -% |
| 連結(合計) | 4,868億円 | 4,623億円 | 180億円 | 189億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態と判定されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 358億円 | 600億円 |
| 投資CF | -632億円 | -1,402億円 |
| 財務CF | 1,059億円 | 130億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.2%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、パーパス(存在意義)として「希望ある化学で、難題を打ち破る。」を掲げています。創業以来培ってきたモノづくりの技術を活かし、安全で環境負荷を低減した方法で社会に価値を提供することを目指しています。また、経営理念に「技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します。」と定めています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を体現するための経営方針として、「倫理」「安全と安心」「品質」「人」の4つの軸を重視しています。高い倫理観の保持や安全・安心なものづくり、品質へのこだわりを徹底するとともに、従業員の個性と多様性を尊重し、技術革新のパートナーとして自ら仕掛け、顧客を開拓していく社風の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年の長期ビジョン「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学企業」の実現に向け、中期経営計画を設定しています。最終年度となる2030年度の数値目標として、以下を掲げています。
* 売上高:5,500億円
* 営業利益:600億円
* EBITDA:1,000億円以上
* 売上高営業利益率(ROS):10%以上
* 自己資本利益率(ROE):8%以上
* 投下資本利益率(ROIC):6%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社はスペシャリティ化学企業へのポートフォリオ転換を推進するため、「スペシャリティ事業の拡大」や「地球環境問題への対応」などのマテリアリティを定めています。既存事業とのシナジー追求やM&Aを通じた新たな事業創出を行うとともに、アンモニアやカプロラクタム等の製造設備の縮小・停止による事業構造改革を着実に実行しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を経営戦略の中核と位置づけています。スペシャリティ化学をグローバルに展開するため、多様な人財を採用し、専門性の高い人財のキャリア採用や育成制度を推進しています。また、社員のウェルビーイング向上を図り、挑戦と成長を後押しする人事制度や職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.4歳 | 15.3年 | 7,745,921円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.5% |
| 男性育児休業取得率 | 96.7% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 79.7% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用) | 79.5% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規雇用) | 72.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(17.3%)、環境貢献型製品・技術の連結売上高比率(46%)、温室効果ガス(GHG)排出量の削減率(2013年度比32%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 化学事業における市況・需要の変動
構造改革事業において、同業他社の生産能力増強や主原料であるベンゼン等の価格変動によってスプレッドが縮小するリスクがあります。また、スペシャリティ事業では製品の世代交代が速く、顧客要求にタイムリーに応えられない場合、販売量の減少や価格低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 機械事業の受注減少および競争激化
内燃エンジン系自動車販売の伸び悩みや公共事業の減少、設備投資の抑制等により、ダイカストマシンや射出成形機などの受注・出荷が減少するリスクがあります。また、グローバル市場での景気減速や地政学的要因、競合メーカーの台頭などにより販売が低迷する可能性があります。
■(3) 気候変動問題への対応遅れ
脱炭素社会への移行が加速する中、排出量取引制度等の規制強化によるコスト増加リスクが存在します。また、サーキュラーエコノミー等への対応が遅れ、ステークホルダーからの評価が低下した場合、製品販売の低迷などで企業価値に影響を及ぼすほか、自然災害の激甚化による生産活動への被害リスクもあります。
■(4) 大規模事故や品質問題の発生
化学製品の製造拠点等において、設備故障や自然災害に起因する爆発・火災・漏洩事故が発生した場合、生産停止や補償費用により業績に深刻な影響が生じるリスクがあります。また、品質に瑕疵のある製品が出荷された場合、大規模な回収費用や社会的信用の失墜につながる可能性があります。



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