※本記事は、UBE株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. UBEってどんな会社?
化学製品や産業機械の製造・販売を行う総合化学メーカーです。スペシャリティ化学への転換を推進しています。
■(1) 会社概要
1897年に匿名組合沖ノ山炭鉱として創業し、1942年に4社合併により宇部興産(現・UBE)が設立されました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2022年に現在の商号へ変更しました。同年にセメント関連事業をUBE三菱セメントへ承継し持分法適用関連会社とするなど、事業構造の転換を進めています。
連結従業員数は7,563名、単体では2,693名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には生命保険会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.87% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 7.37% |
| 住友生命保険相互会社 | 2.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は西田祐樹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西田 祐樹 | 代表取締役社長 | 1987年入社。執行役員、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 泉原 雅人 | 取締役会長 | 1983年入社。取締役専務執行役員、代表取締役社長社長執行役員CEOなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 石川 博隆 | 代表取締役 | 1989年入社。執行役員CFO、取締役執行役員CFOを経て、2025年4月より現職。 |
| 山本 謙 | 取締役 | 1977年入社。代表取締役社長社長執行役員グループCEO、取締役会長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 藤井 正幸 | 取締役(監査等委員) | 1985年入社。執行役員グループCFO、取締役常務執行役員CFOなどを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、福水健文(元中小企業庁長官)、満岡次郎(元IHI代表取締役会長)、山本爲三郎(慶應義塾大学名誉教授)、鈴木智子(公認会計士)、田中達也(元富士通代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機能品」「樹脂・化成品」「機械」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 機能品
ポリイミド、分離膜、セラミックス、セパレータ等の製造・販売を行っています。電子・情報通信関連製品やリチウムイオン電池用セパレータなど、高機能材料を提供しており、デジタル家電や自動車向けなどの需要に対応しています。
収益は製品の販売対価が主です。運営は同社のほか、宇部エクシモ、宇部マクセルなどが担っています。
■(2) 樹脂・化成品
コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム、エラストマー(合成ゴム)、高機能コーティング等の製造・販売を行っています。自動車部品や食品包装フィルム、工業薬品など幅広い用途に使用されています。
収益は製品の販売対価です。運営は同社のほか、宇部フィルム、UBEエラストマー、海外の製造・販売子会社などが行っています。
■(3) 機械
成形機(ダイカストマシン、射出成形機等)、産業機械(運搬機、破砕機等)、橋梁・鉄構等の製造・販売を行っています。自動車産業やインフラ関連などの顧客に対し、製品およびアフターサービスを提供しています。
収益は製品販売およびアフターサービス料などです。運営は主にUBEマシナリーが統括し、福島製作所などが製造・販売を行っています。
■(4) その他
医薬品(原体・中間体)の製造・販売、電力供給、不動産の売買・賃貸借などを行っています。
収益は製品販売、電力販売、不動産賃貸料などです。運営は同社およびグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の売上高は4,800億円台で推移しています。利益面では、原材料価格の変動や、不採算事業の構造改革に伴う巨額の特別損失(減損損失等)の計上などにより変動が大きく、当期(2025年3月期)は親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,139億円 | 6,553億円 | 4,947億円 | 4,682億円 | 4,868億円 |
| 経常利益 | 233億円 | 415億円 | 87億円 | 363億円 | 224億円 |
| 利益率(%) | 3.8% | 6.3% | 1.8% | 7.8% | 4.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 229億円 | 245億円 | 70億円 | 290億円 | -48億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は4,868億円、売上総利益は909億円です。販管費が増加したことなどにより、営業利益は180億円となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,682億円 | 4,868億円 |
| 売上総利益 | 867億円 | 909億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.5% | 18.7% |
| 営業利益 | 225億円 | 180億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が144億円(構成比20%)、販売運賃諸掛が125億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
UBEは現在、「スペシャリティ化学企業」への進化に向けた、非常にダイナミックな事業構造改革の真っ只中にあります。業績表からは以下の実態が読み取れます。
売上の「樹脂・化成品」、利益の「機能品」 売上規模を見ると「樹脂・化成品」が2,872億円と圧倒的ですが、利益率は0.7%にとどまっています。一方で、ポリイミドやセラミックスなどを扱う「機能品」は、売上規模こそ600億円台ですが利益率は17.6%と全社で最も高く、同社の稼ぎ頭(高収益・高成長事業)となっています。
不採算事業の「大ナタ」と新規領域への「投資」 UBEは当期、中国企業の過剰供給等で市況が悪化しているアンモニアやカプロラクタム(ナイロン原料)について、国内やタイの製造設備の停止を決断し、約290億円もの巨額の減損損失を計上しました。
一方で、ドイツのLANXESS社からウレタンシステムズ事業を買収しており、2026年3月期からはこの分野を独立させた「高機能ウレタンセグメント」を新設しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能品 | 638億円 | 662億円 | 121億円 | 117億円 | 17.6% |
| 樹脂・化成品 | 2,586億円 | 2,872億円 | 25億円 | 19億円 | 0.7% |
| 機械 | 969億円 | 869億円 | 72億円 | 79億円 | 9.1% |
| その他 | 745億円 | 678億円 | 45億円 | 32億円 | 4.7% |
| 調整額 | -254億円 | -212億円 | -38億円 | -66億円 | - |
| 連結(合計) | 4,682億円 | 4,868億円 | 225億円 | 180億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス(約358億円)、投資CFがマイナス(約631億円)、財務CFが大幅なプラス(約1,058億円)となっており、本業で手堅く稼いだ資金に加えて大規模な外部調達を行い、積極的な事業投資に踏み切っている「勝負の先行投資型」です。
特筆すべきは、財務CFの大幅なプラスの理由です。これは単なる借入ではなく、翌期首(2025年4月)に実行される大規模なM&A(独LANXESS社からのウレタンシステムズ事業買収)の決済資金として、戦略的に手元キャッシュを積み増したことによるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 530億円 | 358億円 |
| 投資CF | -333億円 | -632億円 |
| 財務CF | -157億円 | 1,059億円 |
当期に不採算事業(アンモニアやカプロラクタム等)の製造設備停止を決定し、巨額の特別損失(減損損失など)を計上しました。その結果、最終的な「親会社株主に帰属する当期純利益」が約48億円の赤字となったため、ROEも一時的にマイナスに沈んでいます。
自己資本比率(45.6%)の背景 一方で、最終赤字を出してもなお、自己資本比率は45.6%と底堅い水準をキープしています。UBEは翌期に大規模なM&A(独LANXESS社のウレタンシステムズ事業買収)などの成長投資を控えていますが、財務規律を重視しており、積極的な先行投資を行いつつも市場からの信頼を維持できる安定した財務基盤を保っていることが分かります。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、パーパス(存在意義)として「希望ある化学で、難題を打ち破る。」を掲げています。創業以来培ってきたモノづくりの技術を活かし、地球環境問題の解決や人々の生命・健康、豊かな未来社会に貢献することを目指しています。また、経営理念として「技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します。」を定めています。
■(2) 企業文化
創業の精神である「共存同栄」と「有限の鉱業から無限の工業へ」を受け継いでいます。経営方針として「倫理」「安全と安心」「品質」「人」の4つを掲げ、高い倫理観の保持、安全・安心なものづくり、信頼に応える品質の提供、個性と多様性を尊重する職場づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けて「UBE Vision 2030 Transformation -2nd Stage-」を策定しています。2030年の目指す姿として「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学企業」を掲げ、以下の数値目標を設定しています。
* 売上高:5,500億円
* 営業利益:600億円
* 売上高営業利益率(ROS):10%以上
* 自己資本利益率(ROE):8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
スペシャリティ化学企業への進化を目指し、ポリイミドや分離膜などの既存スペシャリティ事業の拡大に加え、買収したウレタンシステムズ事業の統合による収益拡大を図ります。一方で、アンモニア等のベーシック事業については生産撤退・縮小などの構造改革を実行します。また、DXの推進や人的資本の充実、地球環境問題への対応(GHG排出量削減等)にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を最重要課題と位置づけ、多様な人財の活躍を推進しています。経験・知識・能力を持つ多様な人財の採用や、女性活躍推進、専門性の高い人財のキャリア採用などを強化しています。また、健康経営の推進やワークエンゲージメントの改善を通じ、ウェルビーイングの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 15.8年 | 7,742,245円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(16.0%)、キャリア採用比率(51.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 各事業の経営成績に影響を与える変動要因
化学事業では、同業他社の生産能力増強による供給増加や、ベンゼン等の主原料価格の急激な変動により、製品と原料の価格差(スプレッド)が縮小し業績に悪影響を与える可能性があります。機械事業では、自動車販売台数の減少や公共事業の減少等が受注や出荷に影響する可能性があります。
■(2) 地球環境問題
気候変動問題への対応として炭素税や規制が強化された場合、コストが増加する可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴い、対応が遅れていると評価された場合、製品販売の低迷や企業価値の毀損につながる恐れがあります。自然災害の激甚化による設備被害等のリスクもあります。
■(3) 海外事業展開(カントリーリスク)
海外に生産・販売拠点を有しており、アジア、北中南米、欧州等で事業を展開しています。各国の政治・経済情勢の悪化、戦争・紛争、法規制の変更、労働争議等が顕在化した場合、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。