ツムラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツムラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツムラは東京証券取引所プライム市場に上場し、医療用漢方製剤や一般用医薬品の製造・販売を主力事業として展開しています。日本国内で漢方市場を牽引するほか、中国でも生薬の調達から製造販売まで事業を拡大しています。直近の連結業績では、中国事業の伸長により増収となった一方、コスト増等の影響で減益となっています。


※本記事は、株式会社ツムラの有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ツムラってどんな会社?


医療用漢方製剤を中心に、生薬の調達から製造・販売までを一貫して手がける製薬企業です。

(1) 会社概要


1893年に個人経営の中将湯本舗として創立され、1936年に法人化して婦人薬や浴用剤の製造販売を開始しました。1976年に医療用漢方製剤が健康保険に採用されて発売され、1980年に東証二部へ上場、1982年に東証一部銘柄に指定されています。近年は中国での関連会社設立や事業拡大を積極的に進めています。

同社グループの従業員数は連結で4,923名、単体で2,858名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行信託口で、第2位は中国平安保険グループのBOCHK FOR PING AN LIFE INSURANCE COMPANY OF CHINA LTD、第3位も信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行信託口 15.65%
BOCHK FOR PING AN LIFE INSURANCE COMPANY OF CHINA LTD (三菱UFJ銀行) 10.20%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 6.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長CEOは加藤照和氏が務めています。取締役8名のうち5名が社外取締役であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
加藤照和 代表取締役社長CEO(最高経営責任者) 1986年4月同社入社。広報部長やコーポレート・コミュニケーション室長などを経て、2019年6月より現職。
杉井圭 取締役COO(最高執行責任者) アクセンチュアなどを経て2009年5月同社入社。生産本部長などを歴任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、三宅博氏(元特種東海製紙代表取締役副社長)、岡田正氏(元小松製作所常務執行役員)、江口真理子氏(元アフラック生命保険執行役員)、望月明美氏(元有限責任監査法人トーマツパートナー)、土屋智恵子氏(元アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 医薬品事業(日本)


医療用医薬品および一般用医薬品の製造・販売を提供しており、全国の医療機関や薬局、一般の消費者が主な顧客です。加えて、原料生薬の栽培、調達、選別加工、保管から製品の運送まで、サプライチェーン全体を自社グループで一貫して管理している点が特徴です。

収益は、医療機関や薬局などを通じた医薬品の販売代金から得ています。運営は主にツムラが担い、製品の物流についてはロジテムツムラが、生薬の調達や栽培支援については夕張ツムラなどの関連会社がそれぞれサポートしています。

(2) 医薬品事業(中国・その他海外)


中国においては、生薬プラットフォーム事業として原料生薬の調達や中薬飲片(刻み生薬)の製造販売、製剤プラットフォーム事業として漢方エキス粉末の製造などを行っています。また、ラオスでの生薬栽培や、米国での医薬品開発も推進しています。

収益は、中国国内での生薬や飲片、エキス粉末などの販売代金から得ています。事業の運営は、中国における地域統括を担う津村(中国)有限公司や、平安津村有限公司、上海津村製薬有限公司をはじめとする複数の子会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎年着実に成長を続け、1,295億円から1,926億円へと拡大しています。経常利益は2025年3月期に424億円まで急増しましたが、直近の2026年3月期はコスト増等の影響で400億円とやや減少しました。利益率も20%前後と高い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,295億円 1,400億円 1,508億円 1,811億円 1,926億円
経常利益 259億円 235億円 235億円 424億円 400億円
利益率(%) 20.0% 16.7% 15.6% 23.4% 20.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 150億円 149億円 137億円 260億円 244億円

(2) 損益計算書


直近の業績では、売上高は増加したものの、原材料価格や人件費等の上昇により売上総利益率は50.0%から47.5%に低下しました。その結果、営業利益は401億円から352億円へ減少し、営業利益率も18.3%に落ち着いています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,811億円 1,926億円
売上総利益 906億円 915億円
売上総利益率(%) 50.0% 47.5%
営業利益 401億円 352億円
営業利益率(%) 22.1% 18.3%


販売費及び一般管理費(563億円)のうち、給料諸手当が215億円(構成比38%)、研究開発費が85億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「医薬品事業」の単一セグメントであるため、売上高の増加は国内外の医薬品販売等の成長を反映しており、利益の減少は全社的なコスト構造の変化によるものです。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医薬品事業 1,811億円 1,926億円 401億円 352億円 18.3%
連結(合計) 1,811億円 1,926億円 401億円 352億円 18.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を出しつつ、借入等の資金調達によって設備や事業への積極的な投資を行っている「積極型」の状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 338億円 247億円
投資CF -250億円 -503億円
財務CF -199億円 326億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「自然と健康を科学する」という経営理念と、「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を基本理念として掲げています。これらを通じて、一人ひとりの健康に寄り添う医療の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「一人ひとりの、生きるに、活きる。」をパーパスとして掲げています。また、事業を行う上での原理・原則である「順天の精神」を大切にし、心と身体、個人と社会が調和のとれた未来を実現するため、自然環境や社会課題の解決に事業を通じて取り組む文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2031年に向けた長期経営ビジョン「TSUMURA VISION "Cho-WA" 2031」を策定しており、そのマイルストーンとして第2期中期経営計画(2025年度〜2027年度)を推進しています。2027年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:2,340億円
* 営業利益:460億円
* ROE:9%

(4) 成長戦略と重点施策


漢方の標準治療拡大と個別化治療の推進により、国内の漢方市場をさらに成長させる戦略を描いています。また、先端技術を用いた「KAMPOmics」による未病・養生領域の開拓や、中国における中成薬事業への参入、DXを通じたバリューチェーンの最適化などを推進し、持続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の成長なくして、組織の成長なし。組織の成長なくして会社の成長なし」という方針のもと、経営戦略の実行を支える組織・人的資本基盤の強化を進めています。各機能が独立しつつ調和する「漢方薬的組織」の実現を目指し、経営人財の養成や専門人財の育成、自律的なキャリア形成支援を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 15.5年 9,114,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 61.5%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規雇用) 78.6%
男女賃金差異(パート・有期) 75.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役比率(11.1%)、女性執行役員比率(7.7%)、障がい者雇用率(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度の影響

超高齢社会に伴う医療費高騰を背景に、国内では薬剤費の引き下げ政策が進められています。薬価制度改革などの医療費抑制策がさらに実施された場合や、医薬品の規制が厳格化された場合、同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原料生薬の調達リスク

同社の事業は天然物である生薬を主要原料としており、その多くを中国などから調達しています。天候不順や自然災害等による生薬価格の高騰、輸出入の法規制の変更、政治・経済状況の変化が生じた場合、製品の安定供給や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製品の安全性及び副作用問題

徹底した品質管理を実施していますが、原料生薬への予期せぬ農薬・化学物質の残留や、医薬品の副作用問題等が発生した場合、社会的信用の低下や大規模なリコール、損害賠償につながり、業績等に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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