ハリマ化成グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハリマ化成グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハリマ化成グループは東京証券取引所プライム市場に上場し、松から得られるロジンなどを活用したパインケミカル事業を主力とする化学メーカーです。樹脂・化成品、製紙用薬品、電子材料、ローターなどの事業をグローバルに展開しています。直近の業績では、北米での販売好調などにより、増収増益のトレンドとなっています。


※本記事は、ハリマ化成グループの有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハリマ化成グループってどんな会社?


同社は、松由来の化学素材(パインケミカル)をベースに、世界各地で多様な化学製品を展開しています。

(1) 会社概要


1947年に播磨化成工業として設立され、1989年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2011年に米国企業のロジン関連事業を買収してグローバル展開を加速し、2012年に現在のハリマ化成グループへ商号変更し持株会社体制へ移行しました。2022年にははんだ材料事業も取得し事業を拡大しています。

同社の従業員数は連結で1,691名、単体で119名です。大株主については、筆頭株主は長谷川興産で、第2位は松川、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
長谷川興産 11.98%
松川 11.98%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は長谷川吉弘氏が務めており、社外取締役比率は37.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 吉弘 代表取締役社長 1974年三井東圧化学入社。1977年同社入社。1988年代表取締役社長。2012年ハリマ化成代表取締役社長。2014年ローター会長より現職。
谷中 一朗 代表取締役専務専務執行役員研究開発カンパニー長 1993年同社入社。2008年執行役員、2010年取締役。2014年常務取締役。2020年専務取締役。2025年代表取締役専務より現職。
田岡 俊一郎 常務取締役常務執行役員ローター社会長経営企画グループ長 1982年太陽神戸銀行入行。2012年同社監査グループ長。2013年執行役員、2017年取締役。2021年常務取締役より現職。
呂 英傑 常務取締役 1998年同社入社。2012年杭州杭化哈利瑪副総経理。2017年執行役員、2019年取締役。2023年常務取締役より現職。
川畑 明男 監査等委員である取締役 1983年同社入社。2013年監査グループ担当課長、2015年内部統制グループ長、2019年監査グループ長。2025年監査等委員である取締役より現職。


社外取締役は、道上達也(弁護士・指名報酬委員長)、林由佳(公認会計士)、加納淳子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「樹脂・化成品事業」、「製紙用薬品事業」、「電子材料事業」、「ローター事業」および「その他」を展開しています。

樹脂・化成品事業


松から工業的に得られる粗トール油を蒸留し、トールロジンやトール脂肪酸などを製造しています。建築物や船舶向けの塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、自動車用タイヤ向けの合成ゴム用乳化剤、粘接着剤用樹脂などを主力製品として顧客に提供しています。

塗料メーカーやインキメーカーなどを主な顧客として、製品の販売対価を得る収益モデルです。運営は主にハリマ化成などの子会社が担っています。

製紙用薬品事業


段ボールなどの強度を高める紙力増強剤や、紙に耐水性や印刷適性を与えるサイズ剤、塗工剤・バリアコート剤などを主な製品として製造・販売しています。製紙メーカーを中心に、環境負荷低減や高機能化に貢献する製品を提供しています。

製品の販売による収益を主な柱としており、製紙業界のニーズに応える製品開発を行っています。運営はハリマ化成や米国のプラスミンテクノロジー、中国の関連子会社などが共同で担っています。

電子材料事業


自動車用電子機器や家電製品の電子部品を接合するはんだ付け材料、先端半導体等の製造工程で使用される半導体レジスト用樹脂、熱交換器用アルミろう付け材料などを主な製品として製造・販売しています。自動車産業や半導体産業が主要顧客です。

電子部品メーカーや自動車部品メーカー等への材料販売から収益を得るモデルです。運営はハリマ化成のほか、日本フィラーメタルズや海外の現地子会社がグローバルに担っています。

ローター事業


世界7か国に製造拠点を持つローターグループが展開する事業で、主に粘接着剤用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、路面標示塗料用樹脂を製造・販売しています。環境対応や地域ごとの細かなニーズに対応する製品群を展開しています。

世界各国のメーカーに対する製品の製造・販売を収益源としています。オランダのローターをはじめとする海外各社が主体となって運営を行っています。

その他


ゴルフ場やホテルの運営、グループの不動産管理のほか、業務用洗剤や洗浄機器、業務用食品などの製造・販売を行っています。また、中国グループ会社に対する資金や財務等の管理・支援業務も含まれます。

施設の利用料や不動産賃貸収入、製品の販売代金などを収益源としています。ハリマ化成商事、セブンリバー、ハリマ食品などの各子会社がそれぞれの事業領域を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的な増減があるものの、直近では1,000億円規模へと拡大傾向にあります。経常利益は原材料価格の高騰や地政学リスクの影響を受け変動していますが、足元では収益力の改善が進み、増収増益の傾向を示しています。利益率も回復基調にあり、底堅い業績推移が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 761億円 945億円 923億円 1,010億円 1,038億円
経常利益 34億円 25億円 -3億円 13億円 30億円
利益率(%) 4.5% 2.7% -0.3% 1.3% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -1億円 1億円 7億円 21億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大し、売上総利益率は改善しています。営業利益についてもコスト管理や価格転嫁が進んだことで大幅な増益を達成しており、本業の収益性が高まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,010億円 1,038億円
売上総利益 218億円 229億円
売上総利益率(%) 21.6% 22.1%
営業利益 21億円 33億円
営業利益率(%) 2.1% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が58億円(構成比29%)、運搬費が45億円(同23%)、研究開発費が29億円(同15%)を占めています。売上原価は808億円で、売上高に対して78%の構成比となっています。

(3) セグメント収益


製紙用薬品事業が安定して利益を稼ぎ出しているほか、樹脂・化成品事業が増収増益と大きく伸長し全体を牽引しています。一方、海外展開を中心とするローター事業はコスト上昇の影響を受けて減益となっており、事業ごとの収益動向にばらつきが見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
樹脂・化成品事業 211億円 214億円 4億円 15億円 7.0%
製紙用薬品事業 279億円 287億円 21億円 25億円 8.8%
電子材料事業 133億円 137億円 4億円 4億円 2.7%
ローター事業 349億円 359億円 6億円 0.4億円 0.1%
その他 39億円 39億円 0.2億円 -0.1億円 -0.3%
調整額 -0.3億円 0.3億円 -15億円 -11億円 -
連結(合計) 1,010億円 1,038億円 21億円 33億円 3.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 61億円 79億円
投資CF -50億円 -17億円
財務CF -37億円 -49億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「自然の恵みをくらしに活かす企業」という基本理念を掲げています。松から得られるロジン(松やに)や脂肪酸、テレピン油を原料とする化学素材(パインケミカル)の製造を中心に発展し、天然素材を有効活用して環境負荷の軽減に役立つ製品を供給することで、サステナブルな社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「人と技術を大切にする」という理念をグローバル戦略の核に据えています。世界に拠点を展開する「グローバル経営」を支えるため、全社員が共有すべき価値観(バリュー)と行動特性(コンピテンシー)を定義し、単なるスキルの習得だけでなく、感謝・素直・謙虚といった「人づくり」を企業価値向上の必須要素とする文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「NEW HARIMA 2026」において、長期ビジョン「Harima Vision 2030」の実現に向けた数値目標を設定し、企業価値の持続的な向上を目指しています。

* 2026年度目標:売上高1,100億円
* 2026年度目標:営業利益70億円
* 2026年度目標:ROE10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「事業基盤の強化と事業領域の拡充」「新規事業・成長分野に向けた研究開発」「新時代に向けた経営の革新」を基本方針としています。需要が見込まれる半導体レジスト用樹脂など高成長分野への資本配分を強化するほか、石油化学原料のバイオマス化や機能性を高める製品開発を推進し、事業ポートフォリオの最適化と収益力の改善を急務としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが安心して全力投球でき、仕事を通して自己実現できる環境の整備に取り組んでいます。「バリュー」を中心に据えた人材育成制度により多様化する価値観の中で方向性を統一し、中長期的な経営戦略からバックキャストした「Harima Growth Program System(H-GPS)」等を通じて、次世代幹部候補や新規事業を創出できる人材の育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 17.0年 7,638,734円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 90.9%
男女間賃金差異(全労働者) 77.5%
男女間賃金差異(正規雇用労働者) 74.8%
男女間賃金差異(パート・有期労働者) 52.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、休業災害発生件数(5件)、ストレスチェック総合健康リスク(92)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 各国の経済状況や世界情勢の悪化
同社グループは世界各国で事業を展開しており、製品需要は販売先の国や地域の経済状況に左右されます。日本、北米、アジア、欧州などの主要市場における景気後退や政情不安、貿易摩擦による需要の縮小が、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動と調達難
ロジン、粗トール油、石油化学製品などを原材料として調達しているため、市況による価格変動リスクを抱えています。また、地政学的リスクや自然災害、サプライチェーンの混乱により調達が制限された場合、生産活動や収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 生産活動における事故や災害
化学品を扱う生産活動において、爆発や有害物質の漏洩などの事故が発生した場合、近隣住民や従業員の安全確保、復元処置のためのコストが発生します。これにより、生産能力の低下や社会的信頼の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 情報セキュリティとサイバー攻撃
財務、人事、顧客、技術などの機密情報がサイバー攻撃やシステム障害により毀損、漏洩した場合、事業活動に支障を来すリスクがあります。また、情報インフラの増強に伴う経費の増加も、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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