ハリマ化成グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハリマ化成グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するハリマ化成グループは、松から得られる化学素材(パインケミカル)を軸に、樹脂・化成品、製紙用薬品、電子材料事業等をグローバルに展開しています。直近の業績は、売上高が1,000億円を超え過去最高を更新し、営業利益も黒字転換するなど増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、ハリマ化成グループ株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハリマ化成グループってどんな会社?


松から得られる化学素材「パインケミカル」を軸に、樹脂、製紙用薬品、電子材料等を展開するグローバル化学メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に兵庫県加古川市で播磨化成工業として設立され、松脂の蒸留やトール油の精製を開始しました。1989年に東証二部へ上場し、翌年一部へ指定替えとなりました。2011年に米国企業のロジン関連事業を買収しローター社を設立、2012年には持株会社体制へ移行し現商号となりました。現在は世界10カ国以上に拠点を展開しています。

2025年3月末時点の連結従業員数は1,695名(単体122名)です。筆頭株主は長谷川興産で、第2位は松川、第3位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。上位株主には創業家関連や資産管理機関、取引先金融機関などが名を連ねています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は長谷川吉弘氏です。取締役8名のうち社外取締役は3名で、その比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 吉弘 代表取締役社長 三井東圧化学を経て同社入社。1988年より社長を務める。2012年よりハリマ化成社長、2014年よりローター社会長を兼務。
谷中 一朗 代表取締役専務専務執行役員研究開発カンパニー長 1993年入社。経営企画室長、ローター社社長兼CEO、樹脂・化成品部門統括などを歴任。2025年6月より現職。
田岡 俊一郎 常務取締役常務執行役員ローター社会長経営企画グループ長 太陽神戸銀行(現三井住友銀行)出身。2012年同社入社。監査グループ長、海外業務推進グループ長などを経て現職。
呂 英傑 常務取締役常務執行役員製紙用薬品事業カンパニー長 1998年入社。杭州杭化哈利瑪副総経理、製紙用薬品事業カンパニー副カンパニー長などを経て現職。
川畑 明男 監査等委員である取締役 1983年入社。中央研究所第二グループ長、内部統制グループ長、監査グループ長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、道上達也(弁護士)、林由佳(公認会計士)、加納淳子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「樹脂・化成品事業」「製紙用薬品事業」「電子材料事業」「ローター事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 樹脂・化成品事業


塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、粘接着剤用樹脂に加え、トールロジンやトール脂肪酸などのトール油製品を製造・販売しています。建築物や船舶の保護、印刷物、自動車タイヤ、ラベル・シールなど幅広い用途に使用されます。

主な製品の製造・販売は、子会社であるハリマ化成が国内で行うほか、海外拠点でも展開しています。

(2) 製紙用薬品事業


段ボールなどの紙強度を高める紙力増強剤、インキのにじみを防ぐサイズ剤、塗工剤・バリアコート剤などを製造・販売しています。製紙工程において不可欠な薬品を提供しています。

国内ではハリマ化成が、海外では米国のPlasmine Technology, Inc.や中国の杭州杭化哈利瑪化工有限公司などの子会社が製造・販売を行っています。

(3) 電子材料事業


自動車用電子機器や家電製品向けのはんだ付け材料、半導体用機能性樹脂、熱交換器用アルミろう付け材料などを製造・販売しています。パソコンや5G通信関連など先端分野にも製品を提供しています。

国内のハリマ化成や日本フィラーメタルズに加え、米国、中国、マレーシア、チェコ、英国などの海外子会社が製造・販売を担っています。

(4) ローター事業


粘接着剤用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、路面標示塗料用樹脂などを製造・販売しています。世界8カ国に拠点を持つグローバルな事業セグメントです。

オランダに拠点を置く連結子会社LAWTER B.V.およびその傘下のグループ会社が中心となり、世界各地で事業を展開しています。

(5) その他事業


不動産管理、ゴルフ場・ホテルの運営、業務用洗剤・洗浄機器、業務用食品の製造販売などを行っています。

運営は、ハリマ化成商事(不動産・ゴルフ場等)、セブンリバー(業務用洗剤)、ハリマ食品(業務用食品)などの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は長期的に拡大傾向にあり、当期は1,000億円の大台を突破しました。利益面では、前期に赤字計上となりましたが、当期は黒字回復を果たしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 629億円 761億円 945億円 923億円 1,010億円
経常利益 11億円 34億円 25億円 -3億円 13億円
利益率(%) 1.7% 4.5% 2.7% -0.3% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 -1億円 1億円 7億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益は前期の赤字から黒字に転換し、大幅な増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 923億円 1,010億円
売上総利益 179億円 218億円
売上総利益率(%) 19.4% 21.6%
営業利益 -2億円 21億円
営業利益率(%) -0.2% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が56億円(構成比29%)、運搬費が45億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


ローター事業や製紙用薬品事業が好調で、売上・利益ともに全体を牽引しました。樹脂・化成品事業は減収ながらも大幅増益を達成し、電子材料事業は増収ながら減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
樹脂・化成品 214億円 211億円
製紙用薬品 246億円 279億円
電子材料 116億円 133億円
ローター 312億円 349億円
その他 37億円 39億円
調整額 -2億円 -0億円
連結(合計) 923億円 1,010億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で得た現金を投資や借入返済に充てる健全型の傾向を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 61億円
投資CF -32億円 -50億円
財務CF 29億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、1947年の創業以来、「自然の恵みをくらしに活かす企業」として、松から得られるロジン(松やに)、脂肪酸、テレピン油などを使用した化学素材(パインケミカル)の製造を中心に発展してきました。パインケミカルのトップ企業をめざし、今後もさらなる成長を追求します。

(2) 企業文化


同社は、健全な企業活動を通じ、株主をはじめ、顧客、従業員、取引先、地域社会等のステークホルダーに対して、企業価値を持続的に高めることを重視しています。また、迅速・果断な意思決定を行い、経営の透明性、合理性を向上させるため、コンプライアンスおよびリスクマネジメント体制の強化を図っています。

(3) 経営計画・目標


2022年度を初年度とする中期経営計画「NEW HARIMA 2026」に掲げる戦略の実現に取り組んでいます。2026年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:1,100億円
* 営業利益:70億円
* 営業利益率:6.4%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、事業基盤の強化と事業領域の拡充、新規事業・成長分野に向けた研究開発、新時代に向けた経営の革新を基本方針としています。パインケミカル分野では環境対応と高機能化の両立、海外事業では買収事業の統合推進や成長市場での拡大を図ります。また、DX推進による業務効率化や研究開発の加速にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を最大の財産と捉え、一人ひとりが安心して仕事に全力投球し、自己実現できる環境整備に取り組んでいます。統一された価値観「バリュー」を基軸とした人材育成制度「Harima Growth Program System(H-GPS)」を導入し、キャリア開発プログラムと人事評価制度を連動させています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.6歳 16.3年 7,452,195円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 90.9%
男女賃金差異(全労働者) 70.2%
男女賃金差異(正規雇用) 68.0%
男女賃金差異(パート・有期) 52.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(連結)(16.1%)、男女間賃金割合(連結・全労働者)(63.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境に関するリスク


製品需要は販売国や地域の経済状況の影響を受けるため、景気後退や政情不安、貿易摩擦などにより需要が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、原材料価格の変動や調達制限、自然災害や感染症による操業中断、為替レートの変動、各国の公的規制の変更などもリスク要因として挙げられます。

(2) 事業運営に関するリスク


生産活動における爆発や有害物質の漏洩などの事故、大規模なクレームや製品の欠陥による製造物責任、知的財産権に関する紛争、機密情報の毀損・漏洩などの情報セキュリティリスクが存在します。これらが発生した場合、コストの発生や信用の低下、生産能力の低下などを招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 経理・財務に関するリスク


事業に必要な資金を金融機関等から調達しているため、金融市場の混乱により借入コストが上昇したり調達が困難になったりする可能性があります。また、固定資産の減損会計を適用しているため、土地等の時価や事業環境の大幅な変動により減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。