※本記事は、株式会社アイビー化粧品 の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイビー化粧品ってどんな会社?
訪問販売システムを基盤に、スキンケアやメークアップ製品を展開する化粧品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1975年に設立され、1977年に現在の商号へ変更し化粧品の製造販売を開始しました。1996年に日本証券業協会(現・東証スタンダード)に株式を公開し、社会的信用を高めました。2016年には主力製品となる美容液「レッドパワー セラム」を発売し、ブランド力を強化しています。2022年の東証市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
同社(単体)の従業員数は107名です。筆頭株主は株式会社白銀社で、第2位は株式会社ブリーズ、第3位はアイビー化粧品取引先持株会です。筆頭株主の株式会社白銀社は、同社の役員が兼任しており、創業家に関連する資産管理会社等と考えられます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社白銀社 | 18.61% |
| 株式会社ブリーズ | 3.68% |
| アイビー化粧品取引先持株会 | 2.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は白銀浩二氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白銀 浩二 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年同社入社。常務、専務、副社長を経て、2001年より現職。 |
| 白銀 恵美子 | 取締役会長 | 1980年同社取締役。社長、代表取締役会長を経て、1996年より現職。 |
| 中山 聖仁 | 取締役経営管理部 部長 | 2002年同社入社。財務IR室長、経理部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 江川 和憲 | 取締役経営企画室 室長 | 1989年同社入社。営業本部長、広報企画部長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 白銀 佳寿子 | 取締役 | 2006年株式会社アイプラティナ社長。2021年同社取締役就任。2024年より現職。 |
| 野本 優 | 取締役 | 1982年同社入社。専務取締役、常勤監査役を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、緒方孝則(リバティ法律事務所所長)、中山圭史(株式会社ケイハイブ代表取締役社長)、和田司(清友監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「訪問販売化粧品事業」を展開しています。
■訪問販売化粧品事業
同社は、化粧品、医薬部外品、美容補助商品、化粧雑貨品等の開発、製造および販売を行っています。主な顧客は全国にある販売会社であり、そこから営業所や販売員(ビューティマネージャー)を通じて最終消費者に製品が届けられます。主力製品には「アイビー プレステージ」などのスキンケアシリーズや、「チュリエ」シリーズなどのメークアップ製品があります。
収益は、主に契約を結んでいる販売会社への製品出荷(卸売)によって得ています。同社は販売会社に対し、製品の供給だけでなく販売支援活動も行い、販売実績に応じたインセンティブ(販社リファンドや経営指導料)を支払うことで販売組織のモチベーション向上を図っています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期の34億円から2024年3月期には27億円まで減少しましたが、当期は29億円へと回復傾向にあります。利益面では、2023年3月期に赤字を計上しましたが、2024年3月期以降は黒字を維持しています。特に経常利益は当期4.2億円と、前期の1.9億円から大きく伸長しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 35億円 | 29億円 | 27億円 | 29億円 |
| 経常利益 | 0.1億円 | 0.8億円 | -0.2億円 | 1.9億円 | 4.2億円 |
| 利益率(%) | 0.2% | 2.3% | -0.7% | 6.9% | 14.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.2億円 | 0.4億円 | -3.8億円 | 1.6億円 | 0.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も19億円から21億円へ増加しました。営業利益は1.9億円から4.2億円へと倍増しており、本業の収益性が大幅に改善しています。一方で、当期は特別損失の計上などにより最終利益は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 29億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 70.5% | 70.5% |
| 営業利益 | 1.9億円 | 4.2億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 14.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比33%)、賃借料が3億円(同19%)を占めています。売上原価においては、材料費が3億円(売上原価合計に対し39%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は主力のスキンケア製品が新製品の投入などにより好調で、売上高が増加しました。美容補助商品も新製品の寄与により伸長しましたが、メークアップ製品は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| スキンケア | 20億円 | 21億円 |
| メークアップ | 2億円 | 2億円 |
| ヘアケア | 1億円 | 1億円 |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 美容補助商品 | 3億円 | 4億円 |
| 化粧雑貨品等 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 27億円 | 29億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アイビー化粧品は、株式の発行や長期借入による収入を主な源泉として、財務活動を通じて資金調達を行っています。営業活動では、前払年金費用の減少や棚卸資産の減少などが、資金増加に寄与しました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得による支出などにより、資金を使用しました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.5億円 | 4.5億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -5.0億円 | -0.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「愛と美と豊かさの実践と追求」を理念として掲げています。創業以来、人と人が直接出会いコミュニケーションを取る訪問販売を通じて、品質と機能性を追求した製品やサービスを提供しています。「目の前の人を美しくすること」や「美しくなった喜びを伝えること」を地道に行い、幸せや豊かさの輪を広げる総合化粧品メーカーを目指しています。また、ビジョンとして「日本の肌はアイビーがつくる」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「アイビーの誓い」を行動指針としています。これは「美と美の限りなき追求」「自信と誇りをもった製品の提供」「心を豊かにし、幸福の輪を広げる」「地域社会への奉仕と還元」の4項目からなります。経営の透明性・健全性を確保しつつ、これらの指針に基づいた企業活動を行うことで、すべてのステークホルダーから信頼され満足される企業文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、目標売上高の達成を最重要視しており、販売会社と上代金額(定価ベース)で目標を共有しています。KPI(重要業績評価指標)としては、以下の数値を目標として掲げ、バランスのとれた経営を目指しています。
* 棚卸資産回転期間:6.0ヶ月(当期実績約9.4ヶ月)
* 自己資本比率:60.0%(当期実績69.2%)
* 売上高経常利益率:15.0%(当期実績14.4%)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は長期ビジョンの実現に向け、普通配当の復配や販売組織の再構築を最優先課題としています。営業サポート体制の構築や、安定的なキャッシュ・フローを生む収益基盤の確立、棚卸資産の適正化に取り組んでいます。また、デジタル社会に対応するための業務のDX化や、環境に配慮した製品開発、特許技術の活用も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な視点や価値観が持続的な成長の強みになるとの認識のもと、女性活躍促進を含む多様性の確保を推進しています。特に顧客の多くが女性であることから、女性の登用を重視しています。育成面では、IBS(アイビービジネススクール)による教育制度を活用し、研修やOJTを通じて人材育成を行っています。また、今後5年以内に女性役員比率30.0%以上、女性管理職比率35.0%以上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.8歳 | 19.7年 | 5,066,904円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与が含まれております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 30.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 76.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新たな感染症の流行
同社の事業基盤は、人と人が直接出会いコミュニケーションを取る対面・訪問販売にあります。そのため、新たな感染症が流行した場合、カウンセリング販売や研修、イベント等が制限され、新規顧客や販売員の獲得活動に支障をきたす可能性があります。
■(2) 原料・資材の調達リスク
製品の原料や資材は世界各地から調達しています。供給停止や価格高騰、法改正による使用制限などが発生した場合、主要製品の製造・販売ができなくなり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、大規模災害による供給寸断のリスクもあります。
■(3) 流通在庫による売上変動
同社は販売会社への製品引渡し時点で売上を計上する卸売形態をとっています。販売会社の在庫状況や仕入政策により同社の売上が大きく変動する可能性があります。特に強化製品の需要予測を見誤り、販売会社で過剰在庫が生じた場合、その後の在庫調整により売上が低迷するリスクがあります。
■(4) 新製品・強化製品への依存と季節変動
売上高に占める新製品・強化製品の比率が高く(当期47.3%)、販売促進時期に売上が集中する傾向があります。そのため、これらの製品の売れ行きやキャンペーンの成否が業績に大きな影響を与え、四半期ごとの業績変動が大きくなる特徴があります。



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