東洋合成工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋合成工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の化学メーカー。感光性材料事業と化成品事業を柱とし、半導体やディスプレイ製造に不可欠な素材を提供しています。直近の決算では、先端半導体向け材料の需要回復や高純度溶剤の好調により、売上高・利益ともに前期比で増加し、増収増益を達成しました。


※本記事は、東洋合成工業株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋合成工業ってどんな会社?


半導体や液晶用フォトレジストの感光性材料において世界的なシェアを持つ、高純度化学製品のメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1954年に日本アセチレン化学工業として設立され、1961年に現在の商号へ変更しました。1981年に感光性材料の製造を開始し、事業の柱を確立しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は928名です。筆頭株主は代表取締役社長の木村有仁氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家と金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
木村 有仁 13.79%
日本カストディ銀行(信託口) 8.61%
木村 愛理 7.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は木村有仁氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 有仁 代表取締役社長 日本電気入社を経て2003年に同社入社。経営企画部長、常務取締役感光材事業本部長などを歴任し、2012年6月より現職。
出来 彰 常務取締役化成品事業部長 P&Gジャパンにて滋賀工場長等を務めた後、2008年に同社入社。調達部長、取締役化成品事業本部長を経て2016年6月より現職。
平澤 聡美 取締役感光材事業部長 日本電気、海外半導体関連企業を経て2013年に同社入社。執行役員感光材事業部長を経て2017年6月より現職。
渡瀬 夏生 取締役経営企画部長 ヘキストジャパン、クラリアント台湾、カルゴンカーボンジャパン社長を経て同社入社。執行役員化成品事業部副事業部長等を経て2018年7月より現職。


社外取締役は、鳥井宗朝(元松下電工専務取締役)、松尾時雄(元日本カーバイド工業社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「感光性材料事業」および「化成品事業」を展開しています。

(1) 感光性材料事業


半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程で使用されるフォトレジスト(感光性樹脂)の主原料となる感光性材料等を製造・販売しています。微細化が進む半導体製造プロセスに対応した先端材料を提供しており、主な顧客は国内外のフォトレジストメーカーです。

収益源は、顧客である化学メーカー等からの製品販売代金です。運営は主に東洋合成工業が行っています。

(2) 化成品事業


半導体・液晶製造プロセスで使用される高純度溶剤や、トイレタリー製品等に使用される香料材料などの製造・販売を行っています。また、千葉県市川市の高浜油槽所において、化学品のタンク保管や物流業務も担っています。

収益源は、電子材料メーカーや香料会社等からの製品販売代金、および化学品メーカーや商社等からの保管料・荷役料です。運営は主に東洋合成工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に増加傾向にあり、直近の2025年3月期は過去最高を更新しました。利益面でも、一時的な調整局面を経つつも高い利益率を維持しており、当期は増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 272億円 331億円 342億円 320億円 387億円
経常利益 30億円 48億円 51億円 34億円 40億円
利益率(%) 11.0% 14.5% 15.0% 10.6% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 35億円 38億円 24億円 33億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高が増加したことに伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しました。先端材料の需要回復が増益に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 320億円 387億円
売上総利益 76億円 91億円
売上総利益率(%) 23.8% 23.4%
営業利益 35億円 41億円
営業利益率(%) 11.0% 10.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比16%)、運賃が6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


感光性材料事業は先端半導体向け材料の販売増により大幅な増収となりました。化成品事業も高純度溶剤や香料材料が好調で増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
感光性材料事業 194億円 239億円
化成品事業 126億円 148億円
連結(合計) 320億円 387億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と借入金を原資として、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行う「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 46億円 68億円
投資CF -76億円 -120億円
財務CF 36億円 52億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「安全操業を最優先し、関係者の安心できる操業環境を確保すること」を筆頭に、「世界最高のマイクロストラクチャー構造材料を国際社会に提供する」「常に新製品、新プロセス、新サービスを開発する」などを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「当社の生命線は研究開発にある」を理念とし、独創的な視点を大切にした研究・開発に注力する企業文化を持っています。また、「常に安全を最優先」を行動指針として掲げ、社員や地域住民が安心できる環境づくりに努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、5カ年の中期経営計画「Beyond 500」を推進しています。「世界No.1ダントツ企業として持続可能な脱炭素社会の実現に貢献する」コンセプトのもと、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高500億円以上
* 営業利益80億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、感光材セグメントでは需要拡大に対応する生産能力増強と超高純度合成技術の強化、化成品セグメントでは先端半導体向け高純度溶剤の供給体制強化やタンクターミナルの自動化などを推進しています。

* 感光材セグメントの戦略的な事業拡大
* 化成品セグメントの事業強化
* 事業連携の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「チャレンジ精神」「積極的な人材育成」「オープン&フェア」「安心して働ける職場環境」を人事基本方針としています。持続的な事業拡大に向け、次世代リーダーの育成や、性別に関係なく能力と実績に応じた公正な評価を行うとともに、ライフイベントに応じた働き方の制度拡充を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.9歳 10.2年 7,096,745円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.4%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 88.6%
男女賃金差異(正規雇用) 93.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.7%)、男性従業員の育児休業取得期間詳細(3か月以上が24%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動


感光性材料事業の主力製品は半導体やFPDの製造工程で使用されるため、エレクトロニクス製品の世界需要に大きく依存します。技術革新による市場需要の変化や業界再編などが、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原燃料価格の上昇


主要な原材料や燃料(重油等)の価格は市況により変動します。これらが高騰し、コストダウンで吸収できない場合や販売価格への転嫁が困難な場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替レートの変動


海外売上高比率が30%を超えており、海外市場での展開を進めています。為替予約等によるリスクヘッジを行っていますが、為替相場の急激な変動は業績に影響を与える可能性があります。

(4) 自然災害・事故災害の影響


大規模な地震や台風などの自然災害、予期せぬ事故により設備やインフラに被害が生じた場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。同社はBCP(事業継続計画)の整備や防災訓練等を通じてリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。