綜研化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

綜研化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。ケミカルズ製品の製造・販売および装置・システムの販売、エンジニアリングを主な事業としています。直近の業績は、中国市場における粘着剤製品の販売伸長や採算是正効果などにより、売上高・利益ともに前期を大きく上回る増収増益となりました。


※本記事は、綜研化学株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 綜研化学ってどんな会社?


独自の技術力をベースに、粘着剤や微粉体などのケミカルズ製品と、装置システムのエンジニアリングを展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1948年に綜合化工研究所として設立され、1953年に現在の社名に変更しました。1963年にアクリル系樹脂の生産を開始し、事業の基礎を築きました。1994年には中国に合弁会社を設立して海外展開を本格化させ、2002年には蘇州に子会社を設立しています。2004年にJASDAQ市場(現スタンダード市場)へ株式を上場しました。

連結従業員数は1,114名、単体では357名です。筆頭株主は公的な投資育成機関である東京中小企業投資育成で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には通信サービスや電力小売りなどを展開する事業会社が入っています。

氏名 持株比率
東京中小企業投資育成株式会社 4.02%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.02%
光通信株式会社 2.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は冨田幸二氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
冨田 幸二 代表取締役社長執行役員 1992年入社。寧波綜研化学有限公司技術総監、粘着・機能樹脂本部長、新規事業企画部長などを歴任。2024年6月より現職。
岡本 秀二 取締役常務執行役員 1990年入社。機能性材料部長、研究開発センター長、研究開発本部長などを経て、2025年6月より現職。
蓮井 崇文 取締役常務執行役員 1995年入社。加工製品部長、樹脂生産本部長、浜岡事業所長、狭山事業所長などを経て、2025年6月より現職。
滝澤 清隆 取締役 2001年入社。経営管理部長、管理本部長、専務取締役などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、布施木孝叔(元新日本監査法人代表社員)、泉弘毅(元AIRDO代表取締役副社長)、浅野恵子(ムンタース代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ケミカルズ」および「装置システム」事業を展開しています。

(1) ケミカルズ


粘着剤、微粉体、特殊機能材、加工製品の製造・販売を行っています。液晶ディスプレイや自動車、情報・電子デバイス、建材、日用品など幅広い分野のメーカーが主な顧客です。

製品販売による収益が主となります。運営は、国内では綜研化学が、海外では綜研化学(蘇州)有限公司、寧波綜研化学有限公司、Soken Chemical Asia Co., Ltd.、綜研高新材料(南京)有限公司などの連結子会社が行っています。

(2) 装置システム


熱媒体油の輸入販売、装置・システムの販売、生産システムのエンジニアリング、プラントのメンテナンスを行っています。化学メーカーや合成樹脂、塗料・インキメーカー等が主な顧客です。

装置やシステムの販売代金、工事代金、メンテナンス料などが収益源となります。運営は、綜研化学および連結子会社の綜研テクニックス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台から400億円台後半へと順調に拡大傾向にあります。利益面では、第75期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後は回復し、直近では高い利益水準を記録しています。特に当期は売上高、各利益ともに過去最高水準となっており、成長軌道に乗っていることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 315億円 386億円 381億円 413億円 476億円
経常利益 36億円 27億円 22億円 39億円 63億円
利益率(%) 11.4% 7.1% 5.7% 9.5% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 20億円 14億円 26億円 44億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率も改善しており、採算性が向上しています。営業利益率は大きく上昇しており、増収効果に加えてコストコントロールや高付加価値製品の販売が寄与していると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 413億円 476億円
売上総利益 125億円 158億円
売上総利益率(%) 30.4% 33.1%
営業利益 38億円 63億円
営業利益率(%) 9.3% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比20%)、荷造運搬費が14億円(同15%)、研究開発費が13億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


ケミカルズ事業は、中国市場での液晶ディスプレイ関連用途の粘着剤販売が大幅に増加したことや、加工製品の販売伸長により、大幅な増収増益となりました。一方、装置システム事業は、一部案件の工期変更等の影響で工事完成高が減少し、減収および営業損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ケミカルズ 375億円 449億円 36億円 64億円 14.3%
装置システム 38億円 27億円 2億円 -1億円 -3.7%
調整額 -1億円 -1億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 413億円 476億円 38億円 63億円 13.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

綜研化学は、財務基盤の強化と事業活動の健全な展開を図っています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上などが主な要因となり、資金が増加しました。一方、投資活動では、有形固定資産の取得などにより資金が減少しました。財務活動では、短期借入金の借入れがあったものの、配当金の支払いなどが主な要因となり、資金が減少しました。これらの結果、当期末の現金及び現金同等物は前期末に比べて増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 64億円 59億円
投資CF -24億円 -19億円
財務CF -11億円 -14億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


独自の技術・製品開発力を磨き、環境・社会課題の解決を志向した事業領域の創出と事業構造の変革による新たな成長軌道を築き、社会の発展とともに成長し続けることをビジョンとして掲げています。環境変化に新たな事業機会を見出し、次世代の事業領域を創出することで、業績変動リスクに耐えうる強靭な事業構造への転換を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「サステナビリティ経営の推進」を重要施策として掲げており、次世代を担う多様な人材の活躍・成長を促す人事制度改革や、脱炭素・循環型社会への貢献に取り組む姿勢を持っています。また、独自技術や製品開発力の研鑽を重視し、すべてのステークホルダーと信頼・協働関係を築くことを基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Advance 2025」において、収益基盤の維持・拡大と収益性の改善によりキャッシュ創出力を高め、事業ポートフォリオ変革に向けた投資を行うことを目指しています。当初の経営指標目標(ROA 7%以上、ROE 9%以上)を前倒しで達成したため、最終年度の目標を上方修正しました。

* 2025年度目標:ROA(総資産経常利益率)9%以上
* 2025年度目標:ROE(自己資本当期純利益率)10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の安定収益基盤拡大と、次世代事業領域の創出による事業構造改革を推進しています。液晶ディスプレイ関連の中国市場における技術対応力を強化してシェア拡大を図りつつ、自動車や情報・電子分野など成長分野での新たなニーズ獲得に注力します。また、非アクリル製品やバイオマス材料の開発、新たな海外事業地域の探索、新規事業開発へ積極的に投資を行う方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のために、国籍・性別・年齢等を問わず多様な人材を採用・育成・登用することを重視しています。経営戦略の実現に不可欠なグローバル人材や高度専門人材の確保・育成を進めるとともに、ダイバーシティ推進やワークライフバランス実現に向けた制度充実、快適な職場環境形成、人事制度改革などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 14.4年 7,538,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用) 80.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向及び特定製品分野への依存


同社のケミカルズ製品は、電子・情報分野や自動車・家電など幅広い分野で使用されていますが、特に液晶ディスプレイ関連分野の需要動向や価格情勢の影響を強く受けます。技術革新により光学フィルムが不要になった場合や、競合製品による価格競争が激化した場合には、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料市況の変動


主要原材料であるアクリル酸エステル類や酢酸エチルなどの価格は、原油・ナフサ価格の影響を受けます。同社は複数購買などで安定調達とコスト低減を図っていますが、原材料価格の上昇分を製品価格に転嫁できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 中国を中心とした海外事業リスク


同社は中国市場の将来性に注目し、現地子会社を通じて積極的に事業展開を行っています。そのため、現地の法令変更、商慣習、政治・経済情勢の混乱、自然災害、伝染病などの予期せぬ事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動も業績への影響要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。