※本記事は、綜研化学株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 綜研化学ってどんな会社?
同社はアクリル系粘着剤などのケミカルズ製品および装置・システムの製造・販売を主力とする化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、1953年に現在の綜研化学へ社名変更しました。1963年よりアクリル系樹脂の生産を開始し、1990年代以降は中国をはじめとするアジア市場へ本格的に進出しました。2001年に店頭登録銘柄として登録後、2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、グローバルに事業を拡大しています。
同社グループは連結で1,097名、単体で348名の従業員を擁しています。筆頭株主はファンドのBRIDGESTREAM LIMITEDで、第2位はベンチャーキャピタルの東京中小企業投資育成、第3位には自社の従業員持株会が名を連ねており、多様なステークホルダーによって支えられる安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BRIDGESTREAM LIMITED,AS TRUSTEE OF AXC STRATEGIC OPPORTUNITIES | 14.93% |
| 東京中小企業投資育成 | 4.01% |
| 綜研化学従業員持株会 | 2.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は冨田幸二氏が務めています。取締役7名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は約42.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 冨田 幸二 | 代表取締役社長執行役員 | 1992年同社入社。寧波綜研化学有限公司技術総監、粘着・機能樹脂部長、新規事業企画部長などを歴任。2021年取締役上席執行役員を経て、2024年に代表取締役社長に就任。2025年より現職。 |
| 岡本 秀二 | 取締役常務執行役員 | 1990年同社入社。機能性材料部長、プロジェクト推進室長、研究開発センター長などを経て、2019年執行役員研究開発本部長に就任。2022年に取締役上席執行役員となり、2025年より現職。 |
| 蓮井 崇文 | 取締役常務執行役員 | 1995年同社入社。加工製品部長、樹脂生産本部長、狭山事業所長などを歴任。2022年に取締役上席執行役員となり、綜研テクニックス取締役を経て、2025年より現職。 |
| 滝澤 清隆 | 取締役 | 2001年同社入社。経営管理部長などを経て、2019年取締役執行役員管理本部長に就任。2021年常務取締役、2023年専務取締役を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、布施木孝叔(元新日本監査法人代表社員)、泉弘毅(元AIRDO代表取締役副社長)、浅野恵子(ムンタース代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ケミカルズ」および「装置システム」事業を展開しています。
■(1) ケミカルズ
液晶ディスプレイ関連や自動車・建材などに用いられる粘着剤をはじめ、光拡散用途などの微粉体、電子材料用の特殊機能材、加工製品等のケミカルズ製品を製造・販売しています。多様な市場ニーズに応える高付加価値な化学素材を提供し、顧客の製品開発を支えています。
収益源は、粘着剤や機能性材料などの製品販売代金です。運営は同社のほか、中国の綜研化学(蘇州)有限公司、寧波綜研化学有限公司、タイのSoken Chemical Asia Co., Ltd.などの海外連結子会社が担い、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
■(2) 装置システム
合成樹脂や塗料・インキなどのメーカーに向けて、化学プラント装置や生産システムのエンジニアリング、熱媒体油の輸入販売などを展開しています。顧客の生産活動を支えるプラントの設計からメンテナンスまで、一貫した技術サービスを提供しています。
収益源は、装置・システムの販売代金やプラントのメンテナンス工事、熱媒体油の販売収益などです。この事業の運営は、主に同社の連結子会社である綜研テクニックスが担っており、ケミカルズ事業で培った生産技術力とエンジニアリングノウハウを活かして事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が386億円から480億円へと拡大基調にあります。利益面でも増減はあるものの、経常利益は安定して黒字を確保しており、直近2期は60億円台の高水準で推移するなど、着実な成長と高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 386億円 | 381億円 | 413億円 | 476億円 | 480億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 22億円 | 39億円 | 63億円 | 62億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 5.7% | 9.5% | 13.3% | 13.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 10億円 | 27億円 | 42億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益を比較すると、売上高は前年並みを維持しつつ、売上総利益が微増しています。一方で、物流経費や研究開発費の増加が影響し、営業利益率はわずかに低下しました。全体として安定した収益構造を維持しつつ、将来への投資を進めています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 476億円 | 480億円 |
| 売上総利益 | 158億円 | 161億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.1% | 33.6% |
| 営業利益 | 63億円 | 62億円 |
| 営業利益率(%) | 13.3% | 12.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比20%)、研究開発費が15億円(同15%)、荷造運搬費が15億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のケミカルズ事業は、液晶ディスプレイ関連の需要が弱含み、製品価格の値下げなどにより減収となりました。一方、装置システム事業は、設備関連の工事完成高が大幅に増加したことで、売上が大きく伸長しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ケミカルズ | 449億円 | 438億円 |
| 装置システム | 27億円 | 41億円 |
| 連結(合計) | 476億円 | 480億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業の利益で借入金の返済を進めつつ、手元資金で将来の成長に向けた投資を賄う優良な「健全型」のキャッシュ・フロー状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 59億円 | 57億円 |
| 投資CF | -19億円 | -33億円 |
| 財務CF | -14億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.7%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「独自の技術・製品開発力を磨き、環境・社会課題の解決を志向した事業領域の創出と事業構造の変革による新たな成長軌道を築き、社会の発展とともに成長し続ける企業集団」を長期ビジョンに掲げています。社会に役立つ革新的な技術や製品を提供し、経済的価値と社会的価値の両立を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、倫理綱領において「法令を遵守し、社会的規範や良識に基づいて行動する」ことを定めています。また、従業員一人ひとりの個性や価値観を尊重するとともに、自律的に挑戦する組織風土の醸成を推進しています。多様な人材が活躍できる環境を整え、共創を通じて持続的な成長を実現する方針です。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Advance 2028」において、資本効率の向上に向けた経営指標を設定しています。事業ポートフォリオの変革により持続的な利益成長を図り、財務健全性を維持しながら最適な資本構成を追求していくことを目指しています。
* 総資産経常利益率(ROA)10.5%
* 自己資本当期純利益率(ROE)11.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
ASEAN・インド市場での事業拡大、既存事業と親和性の高い新規領域への参入、既存事業領域での収益力強化を成長戦略として推進しています。タイ拠点の機能強化や新規事業開発におけるアカデミア・スタートアップとの連携強化、国内拠点の再編と自動化・省人化などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
すべての価値創造の根源は人であるという認識のもと、多様な人材を育成・確保し、自律的に挑戦する組織風土を醸成していくことを基本方針としています。グローバル人材や高度専門人材の確保・育成を進めるとともに、組織のフラット化やミドルマネジメント層の教育に注力し、人的資本の拡充を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.1歳 | 14.5年 | 7,829,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 液晶ディスプレイ市場の需要・価格変動
同社のケミカルズ製品は液晶ディスプレイをはじめとする幅広い分野で使用されています。特に液晶ディスプレイ関連分野における需要動向、競合他社との競争激化、販売価格の下落が進んだ場合、同社グループの経営成績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の高騰と価格転嫁の遅れ
ケミカルズ製品の主要原材料であるアクリル酸エステル類や酢酸エチルなどの価格は、原油・ナフサの市況変動による影響を強く受けます。原材料コストが大幅に上昇し、その増加分を製品の販売価格へ適切に転嫁できない場合、収益性が低下し業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 有機溶剤取扱いに伴う法的規制と環境基準
同社グループは製造工程で有機溶剤等の化学物質を使用するため、労働安全衛生法や消防法などの法規制を受けています。環境保全の観点から年々規制が強化されており、使用可能な化学物質が制限されたり、対応のために多額の設備投資が必要となったりした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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