※本記事は、株式会社ソフト99コーポレーションの有価証券報告書(第72期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ソフト99コーポレーションってどんな会社?
自動車用ケミカル品や多孔質体素材の製造販売を主力とし、多様な事業を展開する生活文化創造企業です。
■(1) 会社概要
同社は1954年10月に日東化学(旧商号)として設立されました。1962年4月に「ソフト99」の名称で自動車用ワックス製品等の製造販売を開始し、1993年4月に現在のソフト99コーポレーションへと商号を変更しました。2001年6月に東京証券取引所市場第二部に上場(2022年4月にスタンダード市場移行)し、近年はアズテックの全株式取得などM&Aによる事業拡大も推進しています。
従業員数は連結で839名、単体で206名です。筆頭株主は投資事業を行うECM MASTER FUND SPV3で、第2位はサントレード、第3位はMIKIKO SUZUKI氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ECM MASTER FUND SPV3 | 54.82% |
| サントレード | 15.03% |
| MIKIKO SUZUKI | 6.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は小西紀行氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小西 紀行 | 代表取締役社長ポーラスマテリアル事業担当 | 1983年4月同社入社。リテイルソリューションズ本部長などを経て、2019年6月取締役。2026年1月より現職。 |
| 上尾 茂 | 取締役管理本部長 | 1986年4月三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2016年11月同社入社。2018年6月より現職。 |
| 石居 誠 | 取締役企画開発本部長 | 1984年12月同社入社。研究開発部長等を経て、2013年4月より現職。 |
| 宮園 哲哉 | 取締役生産統括本部長 | 1985年4月同社入社。三田工場製造部長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 田中 一成 | 取締役営業統括本部長 | 1984年4月同社入社。東京第二営業部長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 生駒 英昭 | 取締役営業統括本部副本部長 | 1984年4月同社入社。西日本開発営業部長等を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、井原慶子(慶應義塾大学大学院特任教授)、藤井美保代(ビジネスプラスサポート代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインケミカル」「ポーラスマテリアル」「サービス」「不動産関連」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■ファインケミカル
主に一般消費者向けおよび自動車コーティング施工業者向けに、洗車用品、自動車用補修・整備用品、家庭用品、タイヤ空気圧監視装置(TPMS)、電子機器・ソフトウェアの開発販売などを行っています。
製品の販売やサービスの提供から収益を得ています。運営は主にソフト99コーポレーションが行うほか、アスモや上海速特99化工有限公司、オレンジ・ジャパンなどの子会社が企画・販売・開発を担っています。
■ポーラスマテリアル
工業資材・生活用品向けに、PVAやウレタンなどの多孔質体(ポーラスマテリアル)を素材とする吸水・洗浄材や研磨材などの化成品の製造・販売、病院施設向けの医療・衛生管理用品の企画・開発・販売を行っています。
製品の販売を通じて収益を得ています。PVAやウレタン素材の製品についてはアイオンが製造・販売を行い、医療・衛生管理用品についてはアズテックが企画・開発・販売を行っています。
■サービス
自動車整備・鈑金塗装やリース・レンタルを行う自動車整備・鈑金事業、免許取得支援やエコドライブ講習を行う自動車教習事業、生活協同組合向けに家庭用品を企画販売する生活用品企画販売事業を行っています。
各種サービスの提供および商品の販売から収益を得ています。運営は、ソフト99オートサービスが自動車整備・鈑金事業を、アスモが自動車教習事業を、くらし企画が生活用品企画販売事業をそれぞれ担っています。
■不動産関連
同社保有の不動産を賃貸する不動産賃貸事業と、保有不動産の有効活用の一環として展開するSI事業(飲食施設など)および介護予防支援事業を行っています。
不動産の賃貸料や各種サービスの利用料から収益を得ています。運営は主にソフト99コーポレーションが不動産賃貸事業とSI事業を行い、子会社のアスモが介護予防支援事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が概ね300億円前後で堅調に推移し、直近では過去最高水準に達しています。経常利益率も11〜14%台と安定した高い収益性を維持しており、安定成長を遂げています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 284億円 | 302億円 | 299億円 | 297億円 | 312億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 34億円 | 38億円 | 42億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 13.9% | 11.4% | 12.7% | 14.2% | 14.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 12億円 | 19億円 | 18億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、それに伴い売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率も前年と同等の高水準を維持しており、効率的なコストコントロールと安定した収益基盤が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 297億円 | 312億円 |
| 売上総利益 | 113億円 | 119億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.1% | 38.3% |
| 営業利益 | 40億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 13.5% | 13.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が14億円(構成比18%)、運賃及び荷造費が7億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ファインケミカルは国内外の需要動向により堅調に推移し、ポーラスマテリアルは半導体向けを中心とした産業資材が好調で増収を牽引しました。全セグメントにおいて前年を上回る売上を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ファインケミカル | 137億円 | 140億円 |
| ポーラスマテリアル | 91億円 | 101億円 |
| サービス | 57億円 | 58億円 |
| 不動産関連 | 13億円 | 13億円 |
| 連結(合計) | 297億円 | 312億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 35億円 |
| 投資CF | -23億円 | -11億円 |
| 財務CF | -12億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.8%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「生活文化創造企業」をグループ共通の経営理念として掲げています。すべての事業において「生活文化創造=未来の『あたりまえ』を発見する」という共通理念の下、新しい製品やサービスの開発に取り組んでいます。この理念を経営戦略に反映させるため、3年ごとに中期経営計画を策定しています。
■(2) 企業文化
同社グループ行動憲章において、「多様性と人権の尊重」「労働環境の整備」を掲げています。性別や国籍などの属性条件から生じる様々な視点や価値観を相互に理解し尊重しながら、公平かつ公正な採用活動や人事評価、人財育成を行う文化を重視しています。また、持続可能性を高める環境活動にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
第8次中期経営計画を策定し、将来的な目標としてROEの向上を目指しています。具体的には、設備投資や事業強化を進めることで、事業運営上の効率性改善に取り組み、資本効率の向上を図ります。
・ROE 8%(将来的な目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
社会課題の解決に資する価値を提供する存在であり続けるため、4つの「シンカ(深化・新化・信化・浸化)」を推進しています。人材育成の強化やデジタルの活用による新たな付加価値の創造に注力し、モノを大切にする文化などの情報発信や、ステークホルダーからの正当な評価獲得に向けた施策を展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人にしか創り出せない「アナログ的価値」を製品やサービスに活かし、デジタル技術を活用して知識共有や業務効率化を推進しています。学習を通じた知識と業務経験のかけ合わせを「スキル」と定義し、外部研修などの機会提供や業務への人財登用を推進することで、多様な価値観のシナジーを生み出す組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.2歳 | 17.9年 | 7,370,604円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.2% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全) | 51.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 60.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員数(204人)、外国人従業員数(33人)、中途採用従業員数(281人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 仕入先企業の営業方針転換に伴う影響
多くの仕入先から原料や製品を仕入れて事業活動を行っていますが、仕入先の化学品規制対応のための製品廃番や事業停止による品番統合などが発生する可能性があります。その結果、仕入競争の激化による仕入価格の高騰や、十分な原材料確保が困難になることでの生産・販売計画の遅延が生じるリスクがあります。
■(2) 季節商材の返品による業績への影響
ファインケミカル事業において、冬季商材であるタイヤチェーンの販売を行っています。この製品は積雪量といった天候の変動により消費者の購買行動が大きく左右されます。天候を事前に予測して正確な生産計画を立てることは困難であるため、返品による在庫の増加や、逆に製品が欠品するリスクがあります。
■(3) 特定市場および石油加工品への依存
自動車関連産業の市況や制度変更が業績に影響を与える可能性があります。特に自動車ディーラーへの販売依存度が高い業務用製品は市況の影響を受けやすい状況です。また、製品の原材料には合成樹脂や溶剤等の石油加工品を多く使用しており、原油価格の上昇や調達困難がコスト増や製品供給に影響を及ぼすリスクがあります。



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