※本記事は、日本高純度化学株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本高純度化学ってどんな会社?
電子部品の接点や接続部位に使用される貴金属めっき薬品に特化した、研究開発型のファインケミカル企業です。
■(1) 会社概要
1971年に貴金属めっき薬品の開発・製造を目的として設立されました。1999年にMBO(マネジメント・バイアウト)を実施し、2002年にJASDAQ市場へ上場。その後、2004年に東証二部、2005年に東証一部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
同社(単体)の従業員数は52名で、連結子会社はありません。大株主には、資産管理業務を行う信託銀行や海外の投資ファンド、証券会社などが名を連ねています。筆頭株主は信託口を持つ信託銀行で、第2位は米国の証券会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.00% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 9.31% |
| HIBIKI PATH AOBA FUND | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は小島智敬氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小 島 智 敬 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。経営企画部長、製造部長、品質保証部長などを歴任。2020年取締役、2021年常務取締役を経て、2022年4月より現職。 |
| 渡 邊 基 | 常務取締役 | 1983年富士通入社。富士通Japan取締役執行役員常務CFOなどを経て、2022年同社顧問。取締役経営企画部長兼財務経理部長を経て、2024年6月より現職。 |
| 渡 辺 雅 夫 | 取締役相談役 | 1965年日本トレーディング入社。1986年同社入社し取締役社長に就任。1999年代表取締役社長、2009年代表取締役会長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、大畑康壽(元株式会社ウエストホールディングス代表取締役社長)、川島勇(元日本電気株式会社代表取締役執行役員常務CFO)、黒松百亜(弁護士・晴海協和法律事務所)です。
2. 事業内容
同社は、「貴金属めっき薬品製造事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 貴金属めっき薬品製造事業
スマートフォン、パソコン、自動車、家電などの電子機器に組み込まれるプリント基板、半導体搭載基板、コネクター、リードフレーム等の接点・接続部位に使用される貴金属めっき薬品を開発・提供しています。主な製品には金、パラジウム、銀などのめっき薬品があります。顧客は国内外のめっき専業メーカー、電子部品メーカー、総合電機メーカーです。
収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は日本高純度化学が行っています。同社は大型の製造設備を持たず、製造工程をフォーミュレーション(調合)に絞るファブレス(ファブライト)型経営を採用しており、研究開発と技術サポートに資源を集中させています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は110億円台から180億円台の間で推移しています。2022年3月期に売上高187億円を記録した後、調整局面が見られましたが、直近の2025年3月期は回復傾向にあります。利益面では、利益率が5〜7%程度で推移しており、2025年3月期は当期純利益が大きく伸長しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 166億円 | 187億円 | 163億円 | 114億円 | 126億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 13億円 | 8億円 | 6億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 7.2% | 4.6% | 4.8% | 5.2% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 6億円 | 5億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は114億円から126億円へ増加しました。これに伴い売上総利益も14億円から16億円へ増加し、売上総利益率は12.0%から12.9%へ改善しています。営業利益も4億円から5億円へと増益となり、営業利益率は3.1%から4.0%へ上昇しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 114億円 | 126億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 16億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.0% | 12.9% |
| 営業利益 | 4億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.5億円(構成比22%)、支払手数料が1.5億円(同13%)、役員報酬が1.2億円(同11%)を占めています。売上原価においては、材料費が108億円(売上原価合計の98%)を占めており、貴金属などの原材料コストが大半を占める構造です。
■(3) セグメント収益
用途別の売上動向を見ると、主力のプリント基板・半導体搭載基板用は、生成AI関連の好調等により増収となりました。コネクター・マイクロスイッチ用は、車載向けの減速や産業機器向けの低迷により減収となりました。リードフレーム用はスマートフォンやパソコン向けの底堅い推移により増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| プリント基板・半導体搭載基板用 | 47億円 | 57億円 |
| コネクター・マイクロスイッチ用 | 22億円 | 18億円 |
| リードフレーム用 | 43億円 | 47億円 |
| その他 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 114億円 | 126億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、将来予測可能な資金需要に対して十分な流動性ある資産を確保する方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益の改善があったものの棚卸資産の増加により、前期比で減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入が増加したことにより、大幅な収入増となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が増加したことにより、支出が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 6億円 |
| 投資CF | 2億円 | 15億円 |
| 財務CF | -5億円 | -7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「化学の好奇心でエレクトロニクスに役立てる」を企業理念として掲げています。化学(ケミストリ)を基礎として科学的に理論武装した独創的な製品により社会課題と向き合い、多様な視点と独自の発想力を発揮することで、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、物理・化学分野に精通した技術者が社員の大部分を占める「技術者集団」です。海外技術に頼らない「自社独自の開発技術体制」を重視し、営業部門と技術部門のローテーションを行うなど、「化学の好奇心」を持つ技術者が直接顧客のもとへ赴き課題を解決するスタイルを確立しています。また、製造工程を調合に絞る「ファブレス型」経営により、投資を人に集中させる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期ビジョン「RDD2030(Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030)」を掲げています。めっきで培ったRedox(酸化還元)技術を進化させ、ナノレベルから豊かな未来を支えることを目指し、以下の数値目標を設定しています。
* 2030年度 売上高:300億円
* 2030年度 営業利益:30億円
* 経営効率目標 ROE:10%
* 配当指標 DOE:5%下限
■(4) 成長戦略と重点施策
「めっき工程のトータルプロセスカンパニーへの変革」を戦略の方向性とし、投資による事業拡大をテーマとしています。具体的には、成長分野(生成AI、パワーデバイス等)へのタイムリーな製品提供、環境配慮型製品(省資源プロセス等)の提案、グローバルなテクニカルサポート機能の拡充に取り組んでいます。また、めっきコア技術を応用した電池材料開発など、新規事業領域の創出も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を事業活動の源泉と位置づけ、「能動型自律人材」の採用と育成を推進しています。企業理念に共感しビジョン実現に主体的に参画する組織風土の醸成、働きやすくやりがいを感じる職場環境の整備を重点テーマとしています。具体的には、人材投資の拡大、キャリア採用による多様性の確保、社員のウェルビーイングを重視した制度導入などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.3歳 | 12.5年 | 809万円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用される従業員が100名以下の事業規模であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電子機器業界への依存
同社製品は主に電子部品(半導体搭載基板、プリント基板等)に用いられ、販売先は電子機器業界が中心です。そのため、スマートフォンやパソコン市場など、電子機器業界の景気動向や技術革新の影響を強く受ける傾向にあります。
■(2) 原材料市況の変動
主要原材料である貴金属(金、銀、パラジウム)は国際商品市況に左右されます。地政学的リスクや供給制限等による価格高騰が事業活動に影響する可能性があります。なお、価格変動リスクに対しては、顧客との契約や在庫管理により影響を最小限に抑える対策を講じています。
■(3) 研究開発と知財管理
技術革新が著しい業界において、新製品開発や既存製品改良が計画通り進まない場合、業績に影響する可能性があります。また、成分組成が複雑なため特許出願を控える場合もあり、技術ノウハウの流出や他社による特許取得が事業戦略に影響を及ぼすリスクがあります。



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