ハーバー研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハーバー研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の化粧品メーカーです。「無添加主義」を掲げ、美容オイル「スクワラン」等の化粧品や健康食品を製造販売しています。直近の業績は、不採算店舗の整理やコスト削減効果により、売上高は微減ながらも各段階利益は黒字転換を果たし、増益となりました。


※本記事は、株式会社ハーバー研究所 の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハーバー研究所ってどんな会社?


「無添加主義」を掲げ、肌本来の力を引き出す化粧品や健康食品を、通信販売や百貨店等で展開する企業です。

(1) 会社概要


1983年に設立し、美容オイル「スクワラン」を中心とした基礎化粧品の通信販売を開始しました。1998年に百貨店での販売を開始し、2003年に株式を上場しました。その後、子会社の設立や吸収合併を経て製造・販売体制を強化し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は568名、単体では406名です。大株主については、筆頭株主は創業家に関連する公益財団法人で、第2位、第3位も創業家出身の個人が名を連ねています。

氏名 持株比率
公益財団法人小柳財団 35.28%
小柳 東子 2.92%
小柳 かず江 1.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は西幹男氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
西 幹男 代表取締役社長 ワールド入社後、同社マーケティング総括部長などを経てハーバー研究所入社。常務取締役、ウィズウィット社長などを歴任し、2025年6月より現職。
小柳 典子 取締役会長 1987年ハーバー入社。取締役工場長、社長などを経て、2017年にハーバー研究所社長に就任。2024年会長兼社長を経て、2025年6月より現職。
西村 良徳 取締役化粧品開発部、食品開発部、品質保証部、デザイン部、メディカルフーズ事業部担当 エイチプラスビイ・ライフサイエンス(現ハーバー研究所)入社。同社社長を経て、ハーバー研究所取締役研究開発部担当などを歴任し、2025年6月より現職。
松井 朋隆 取締役店舗販売部、国内販売部、海外販売部担当 三越(現三越伊勢丹)入社。英国三越出向などを経て、ハーバー研究所に入社。通信販売部ディレクターなどを歴任し、2024年10月より現職。
山岡 照明 取締役通信販売部、業務部、システム部、美容部担当 ハーバー入社。ノースジェニシス製造管理担当などを経て、ハーバー社長に就任。2023年ハーバー研究所取締役に就任し、2025年6月より現職。
高﨑 明彦 取締役総務・人事部、財務・経理部担当 ハーバー研究所入社後、大東京信用組合、東京都信用組合協会事務局長などを経て、2023年ハーバー研究所取締役に就任し現職。


社外取締役は、加藤信子(元ブリヂストン首席フェロー)、植田史恵(アクト有限責任監査法人社員)、樫野平(新宿法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化粧品事業」および「健康食品・その他」事業を展開しています。

(1) 化粧品事業


防腐剤パラベンや石油系界面活性剤などを使用しない「無添加主義」に基づいた基礎化粧品やメイクアップ化粧品を提供しています。主力製品の「スクワラン」をはじめ、洗顔料、化粧水などを展開し、美容に関心の高い層を顧客としています。

収益は、主に一般消費者への製品販売代金として得ています。販売チャネルは通信販売、百貨店、直営店、卸売など多岐にわたります。商品の製造は主に連結子会社のハーバー株式会社およびハーバーコスメティクス株式会社が行い、販売は同社が中心となって運営しています。

(2) 健康食品・その他事業


「美と健康を助ける」という理念のもと、栄養補助食品や美容食品の開発・販売を行っています。また、子会社を通じて商品の発送代行や物流業務なども行っています。

収益は、製品の販売代金や物流業務の受託料などから構成されています。健康食品の製造は主にハーバー株式会社が行うほか、外部への製造委託も活用しています。物流・発送業務は主にハーバーコスメティクス株式会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は120億円から140億円の範囲で推移しており、2021年3月期以降は減少傾向にあります。利益面では、2022年3月期から3期連続で経常損失を計上していましたが、直近の2025年3月期には経常利益6.1億円となり、黒字転換を果たしました。利益率もマイナス圏から5.0%まで回復しています。

項目 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上高 121億円 123億円 120億円 129億円 143億円
経常利益 6.1億円 -1.9億円 -5.8億円 -2.9億円 2.5億円
利益率(%) 5.0% -1.6% -4.8% -2.3% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.8億円 -11.7億円 -9.1億円 -3.0億円 4.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方、営業利益は前期の赤字から大きく改善し、黒字化を達成しました。これは主に販売費及び一般管理費の削減によるもので、コストコントロールが進んだことが収益性の改善に寄与しています。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 121億円 123億円
売上総利益 81億円 84億円
売上総利益率(%) 67.1% 68.2%
営業利益 5.9億円 -1.9億円
営業利益率(%) 4.9% -1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が19億円(構成比25%)、販売促進費が13億円(同18%)、広告宣伝費が13億円(同17%)を占めています。売上原価については、商品製造に関わるコストが中心であり、売上高に対する原価率は約33%で推移しています。

(3) セグメント収益


同社グループは化粧品事業の単一セグメントですが、品目別に見ると基礎化粧品が売上の約6割を占めています。基礎化粧品はその他卸売の減少により微減となりましたが、メイクアップ化粧品は百貨店向けの好調により増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
基礎化粧品 76億円 75億円
メイクアップ化粧品 10億円 10億円
トイレタリー 7億円 7億円
健康食品・雑貨等 26億円 24億円
連結(合計) 123億円 121億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に商品及び製品、原材料及び貯蔵品の減少等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に事務所移転等及び工場の機械装置に係る有形固定資産への投資等により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金及び長期借入金の返済等により減少しました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「美と健康を助ける(Health Aid Beauty Aid)」を実現するために、「無添加主義®」を貫いています。経営理念である「われらの誓い」の下、従業員と家族の幸せを優先し、顧客からの信頼を得ること、企業および人間として進化すること、そして社会へ貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「謙虚な姿勢を持つ」「ありがとうを声に出す」「前進・学び・進化する」「コミュニケーションを持つ」という4つの行動指針を掲げています。互いに意見を尊重し、感謝の気持ちを忘れず、主体性を持って対等に接する風土が重視されています。また、従業員が良い職場環境で自由闊達に意見を言えることを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの第2次中期経営計画を策定しています。中長期的ビジョンとして「美と健康で人々に笑顔を届け、地球にやさしい企業をめざします。」を掲げ、以下の数値目標を設定しています。

* 2028年3月期 連結売上高:160億円
* 2028年3月期 営業利益:12億円
* 2028年3月期 売上高営業利益率:7.5%

(4) 成長戦略と重点施策


収益体質への復活と事業伸長を図るため、「人的資本の強化」「収益構造の改善」「製品開発の強化」「顧客接点の拡大」の4つを戦略課題としています。店舗のスクラップ&ビルドや在庫圧縮、主力スキンケアの刷新、新規獲得商材の拡充などを進める方針です。

* 連結売上高125.5億円(2026年3月期見込み)
* 営業利益5億円(2026年3月期見込み)
* 親会社株主に帰属する当期純利益4.8億円(2026年3月期見込み)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


女性が活躍する社会の実現を目指し、女性社員の活躍推進や仕事と育児の両立支援に注力しています。優秀な人材は性別や国籍を問わず積極的に採用し、能力や成果に応じた評価を行う方針です。また、連結子会社と一体化した人材育成や適材適所の配置、人事制度の再構築を通じて、将来を担う人材の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 11.2年 3,951,953円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 65.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 72.2%
男女賃金差異(正規) 65.3%
男女賃金差異(非正規) 76.2%


※男性育児休業取得率については、当連結会計年度における取得対象者がいなかったため算出されていません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者の管理職比率(95.0%)、外国人採用の比率(4.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料供給に関するリスク


主力製品に使用される「スクワラン」は深海ザメの肝油由来であり、漁獲制限等が発生した場合は原材料の見直しが必要となる可能性があります。また、一部製品に配合される「チシマザサ水」も特定のメーカーから供給を受けており、製造に不測の事態が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 法的規制に関するリスク


化粧品や医薬部外品の製造販売業許可が必要であり、医薬品医療機器等法による規制を受けています。また、健康食品については食品衛生法や食品表示法などの規制対象となります。さらに、広告表現においては景品表示法などの遵守が求められ、違反時には信用失墜や売上減少のリスクがあります。

(3) 個人情報の管理リスク


通信販売を主体としているため、多数の個人情報を保有しています。外部からの不正アクセスや内部の過失等により個人情報が流出した場合、損害賠償費用の発生や社会的信用の失墜により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策としてシステムセキュリティの強化や社員教育を実施しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。