ニチレキグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチレキグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、道路舗装材料の製造や工事請負を主力としています。直近の業績は売上高759億円(前期757億円)と増収となった一方、営業利益は59億円(前期63億円)と減益を記録しており、公共投資が底堅く推移する中で原材料高への対応を進めています。


※本記事は、ニチレキグループの有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチレキグループってどんな会社?


アスファルト製品の製造から道路舗装工事までを一貫して手掛け、日本のインフラを支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1943年に日本瀝青化学工業所として設立され、アスファルト製品の製造を開始しました。1954年に日瀝化学工業が設立されて事業を継承し、1970年には東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。1974年に同市場第一部へ指定替えとなり、2024年に持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。

現在、同社グループは連結で1,434名、単体で110名の従業員を抱えています。株主構成をみると、筆頭株主は香港上海銀行東京支店を常任代理人とする外国法人等で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
MAPLES TRUSTEE SERVICES (CAYMAN) LIMITED (ACTING IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF DUET)/GZ-1(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 10.39%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.64%
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.(常任代理人 立花証券) 5.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は小幡学氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
小幡学 代表取締役社長 1982年4月同社入社。2005年6月執行役員などを経て、2020年6月より現職。
川口裕司 代表取締役副社長 1980年4月同社入社。2007年6月執行役員などを経て、2022年6月より現職。
羽入昭吉 専務取締役 1982年4月同社入社。2011年6月執行役員などを経て、2024年6月より現職。
戸塚浩行 専務取締役 1985年4月同社入社。2014年4月執行役員などを経て、2025年6月より現職。
山本淳 常務取締役 2020年3月同社入社。2021年6月取締役などを経て、2025年6月より現職。
伊藤達也 常務取締役 1986年4月同社入社。2015年4月執行役員などを経て、2025年6月より現職。
野原正昭 取締役監査等委員 1985年4月同社入社。2014年4月総務部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小林修(公認会計士)、渋村晴子(弁護士)、城處琢也(弁護士)、福田美詠子(中小企業診断士)、蟹谷勉(税理士)、川手典子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アスファルト応用加工製品事業」「道路舗装事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) アスファルト応用加工製品事業


アスファルト乳剤や改質アスファルト、防水材料など、道路インフラを支える多種多様な製品を製造し、全国の顧客に提供しています。

同製品の販売から収益を得るモデルです。運営は主にニチレキが行っており、製造から販売までを担うことでインフラ整備の需要に応えています。

(2) 道路舗装事業


道路などの舗装工事および防水工事等の請負事業を行っています。防災・減災や国土強靭化対策などの社会的要請に対応した施工技術を提供しています。

顧客からの工事請負代金から収益を得るモデルです。運営は主に日瀝道路などの子会社が行い、地域のインフラ保全に貢献しています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、グループが保有する不動産の賃貸事業や、損害保険代理業などを展開しています。

不動産賃貸収入や保険代理手数料から収益を得るモデルです。運営は同社や安全開発などの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は700億円台後半で安定的に推移しており、堅調な公共投資需要を背景に底堅い推移を見せています。一方で経常利益や利益率には変動が見られ、原材料価格の高騰などが影響を与えていることが窺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 780億円 784億円 738億円 757億円 759億円
経常利益 93億円 81億円 64億円 70億円 61億円
利益率(%) 11.9% 10.3% 8.7% 9.3% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 59億円 52億円 39億円 21億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高は微増となりましたが、売上総利益率は若干の改善にとどまっています。その一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 757億円 759億円
売上総利益 173億円 179億円
売上総利益率(%) 22.9% 23.6%
営業利益 63億円 59億円
営業利益率(%) 8.3% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が46億円(構成比38%)、減価償却費が9億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の道路舗装事業が増収となり全体の業績を支えていますが、アスファルト応用加工製品事業は原材料価格の高止まりなどの影響で減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アスファルト応用加工製品事業 258億円 247億円
道路舗装事業 496億円 508億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 757億円 759億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 49億円 24億円
投資CF -125億円 -53億円
財務CF 137億円 -40億円


企業の収益力を測るROEは5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「道」創りを通して社会に貢献するため、優れた機能とコストを満足する道路舗装材料や工法を提供し、高度なコンサルティングと信頼される施工技術を完全に一体化することを掲げています。収益性に優れた企業グループであり続けるとともに、働きがいのあるグループであることを目指しています。

(2) 企業文化


「種を播き、水をやり、花を咲かせて実らせる」という「種播き精神」を重視しています。たゆみない努力の積み重ねによって絶えず新しい仕事を創造していくことを、同社グループの企業文化として根付かせています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「のびやか2030」において、持続可能な企業グループの構築に向けた数値目標を定めています。
・連結売上高:860億円
・連結営業利益:68億円
・ROE:6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


環境変化にしなやかに対応し、「のびやかな4つの成長」を目指します。環境配慮型製品・工法の提供を通じた顧客基盤の強化、新たな生産・物流拠点である「つくばビッグシップ」による事業基盤の強化、およびDX推進によるサプライチェーンの高度化に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが能力を発揮でき、働きがいのあるグループであることを目指しています。役割を重視した処遇の導入やシニア人材も活躍できる定年年齢の引き上げを行うほか、専門職の設置や社会人博士号の取得支援など、適材適所の人員配置と専門性の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.9歳 14.8年 8,447,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.5%
男女賃金差異(正規) 59.5%
男女賃金差異(非正規) -


※非正規労働者については、該当者がいないなどの理由で数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動および供給動向

製品の主原材料であるアスファルトや副資材は原油を原料としているため、原油価格に大きく依存しています。価格高騰分を製品価格に転嫁できない場合や安定供給が損なわれた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 公共事業の動向

道路舗装事業は公共事業の占める割合が高いため、国および地方公共団体の財政状態による予算削減やコスト縮減が行われた場合、受注動向を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制等によるリスク

建設業法、独占禁止法、労働安全衛生法などの法的規制を受けて事業を行っています。これらの関連法令に抵触し、行政処分等が生じた場合には、企業活動や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。