ニチレキグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチレキグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、道路舗装に関する製品製造や工事請負事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高が757億円(前期比2.6%増)、経常利益が70億円(同10.3%増)となり、増収増益で推移しています。持株会社体制へ移行し、経営基盤の強化を図っています。


※本記事は、株式会社ニチレキグループ の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチレキグループってどんな会社?


道路舗装材料の製造販売と舗装工事請負を主力とし、「道」創りを通じて社会インフラを支える企業です。

(1) 会社概要


1943年にアスファルト防水工事等を目的として創業し、1950年にアスファルト乳剤の製造を開始しました。1974年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。2022年にはプライム市場へ移行し、2024年10月には持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。

連結従業員数は1,386名、単体では104名です。筆頭株主は外国法人のMAPLES TRUSTEE SERVICES (CAYMAN) LIMITEDで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も外国法人のTHE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.となっています。

氏名 持株比率
MAPLES TRUSTEE SERVICES (CAYMAN) LIMITED (ACTING IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF DUET)/GZ-1(常任代理人 香港上海銀行東京支店 カストディ業務部) 9.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.32%
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.(常任代理人 立花証券) 5.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は小幡 学氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
小幡 学 代表取締役社長 1982年4月同社入社。執行役員、取締役常務執行役員などを経て、2015年6月代表取締役社長執行役員社長に就任。2020年6月より現職。
川口 裕司 代表取締役副社長 1980年4月同社入社。執行役員、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員、専務取締役を経て、2022年6月より現職。
羽入 昭吉 専務取締役 1982年4月同社入社。執行役員、取締役上席執行役員、取締役常務執行役員、常務取締役を経て、2024年6月より現職。
戸塚 浩行 常務取締役 1985年4月同社入社。執行役員、上席執行役員を経て、2023年6月より現職。
山本 淳 取締役 2020年3月同社入社。2020年4月上席執行役員を経て、2021年6月より現職。
伊藤 達也 取締役 1986年4月同社入社。執行役員、上席執行役員を経て、2022年6月より現職。
野原 正昭 取締役監査等委員 1985年4月同社入社。総務部長、執行役員、常勤監査役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小林 修(公認会計士・税理士)、渋村 晴子(弁護士)、城處 琢也(弁護士)、福田 美詠子(中小企業診断士)、蟹谷 勉(税理士)、川手 典子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アスファルト応用加工製品事業」および「道路舗装事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) アスファルト応用加工製品事業


アスファルト乳剤、改質アスファルト、防水材料などの製造および販売を行っています。顧客は主に道路建設会社や官公庁などであり、道路舗装に必要な材料を提供しています。

収益は、顧客への製品販売代金として受け取ります。運営は主に連結子会社の株式会社ニチレキが行っており、他の連結子会社および海外関係会社の一部も同社製品の販売を担っています。

(2) 道路舗装事業


舗装工事および防水工事等の請負を行っています。道路インフラの整備や補修、維持管理に関連する工事サービスを、官公庁や民間企業に対して提供しています。

収益は、工事請負代金として発注者から受け取ります。運営は、連結子会社の株式会社日瀝道路ほか34社ならびに海外関係会社の一部が行っています。

(3) その他


不動産の賃貸事業や損害保険の代理業を行っています。保有する不動産の有効活用やグループ内の保険業務を担っています。

収益は、不動産の賃貸料や保険会社からの手数料として受け取ります。運営は、同社および連結子会社の一部が不動産賃貸を行い、連結子会社の株式会社安全開発が損害保険代理業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は700億円台で安定的に推移しています。利益面では、経常利益が減少傾向にありましたが、当期は増益に転じました。当期利益についても前期から増加し、利益率も改善傾向が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 715億円 780億円 784億円 738億円 757億円
経常利益 96億円 93億円 81億円 64億円 70億円
利益率(%) 13.4% 11.9% 10.3% 8.7% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 59億円 52億円 39億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上総利益率、営業利益率も前期と比較してわずかに改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 738億円 757億円
売上総利益 165億円 173億円
売上総利益率(%) 22.3% 22.9%
営業利益 60億円 63億円
営業利益率(%) 8.2% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が41億円(構成比37%)、減価償却費が9億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


アスファルト応用加工製品事業は微減収ながらも高い利益率を維持しています。道路舗装事業は増収となりましたが、利益率はアスファルト事業に比べて低めです。その他事業は規模は小さいですが安定した収益を上げています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
アスファルト応用加工製品事業 259億円 258億円 51億円 49億円 18.9%
道路舗装事業 476億円 496億円 44億円 42億円 8.5%
その他 3億円 3億円 2億円 2億円 76.3%
調整額 -億円 -億円 -37億円 -31億円 -
連結(合計) 738億円 757億円 60億円 63億円 8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ニチレキグループは、長期借入れによる収入を財務活動で得て、積極的な設備投資を行う一方で、営業活動で資金を生み出し、最終的に資金を増加させています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や仕入債務の減少により増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出が大きくなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入が大幅に増加した一方、配当金の支払い等がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 74億円 49億円
投資CF -39億円 -125億円
財務CF -28億円 137億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「道」創りを通して社会に貢献することを目的とし、優れた機能とコストを満たす道路舗装材料や工法の提供、高度なコンサルティング、信頼される施工技術を一体化させることを掲げています。また、社員一人ひとりが能力を発揮でき、働きがいのあるグループであることを目指しています。

(2) 企業文化


「種を播き、水をやり、花を咲かせて実らせる」という「種播き精神」を企業文化として重視しています。これは、たゆみない努力の積み重ねによって絶えず新しい仕事を創造していく姿勢を表しており、経営理念とあわせて企業理念と位置づけています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画『しなやか2025』を推進しています。2025年度を最終年度とする数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:800億円
* 連結営業利益:70億円
* 連結経常利益:73億円
* ROIC(投下資本利益率):5.2程度
* ROA(総資産当期純利益率):4.3程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画『しなやか2025』において、市場の拡大と深耕により自社製品・工法を定着させること、研究開発力の強化と生産性向上を図ること、グループ経営基盤を強化すること、そして脱炭素社会実現への環境投資を促進することを重点施策としています。特に、茨城県つくばみらい市に先進的な生産物流基地を建設することで、将来への布石としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様性を認め合い、社員がいきいきと活躍できる職場づくりを目指しています。そのために定年年齢を65歳まで引き上げ、シニア人材も活躍できる環境を整備しました。また、専門職(技術的なプロフェッショナル職)の設置や社会人博士号取得支援など、役割を重視した処遇と適材適所の人員配置、人材育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 14.2年 7,007,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.6%
男女賃金差異(正規) 62.6%
男女賃金差異(非正規) -


※男女賃金差異(非正規)は、提出会社の従業員にパート・有期労働者がいないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇年間取得日数(付与日数の5割以上 78.0%)、年間残業時間(640時間以下 97.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動および供給動向


アスファルト応用加工製品事業の主原材料であるストレートアスファルト等は原油価格に依存しています。原油価格の高騰分を販売価格に転嫁できない場合や、原材料の供給が不安定になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、調達動向のモニタリングや価格転嫁を早期に推進する体制を整備しています。

(2) 公共事業の動向


道路舗装事業は公共事業の割合が高いため、国や地方公共団体の予算削減や執行状況によって業績が影響を受ける可能性があります。このリスクに対し、インフラ整備課題の分析に基づいた提案活動や、空港・港湾・鉄道・公園等への分野拡大により影響の軽減を図っています。

(3) 価格競争の激化


市場での価格競争が激化し、製品販売価格や工事受注価格が下落した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、高付加価値製品・工法の開発や、製造・施工コストの削減に取り組むことで、価格低下による影響を最小限に留めるよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。