昭和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和ホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、食品、スポーツ、ゴム、コンテンツの4事業を主に展開しています。直近の業績は、売上高が86億円と前年比で微減となり、経常損失は9億円へと赤字幅が拡大する減収減益の厳しい結果となりました。事業の選択と集中による収益改善を目指しています。


※本記事は、昭和ホールディングスの有価証券報告書(第125期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昭和ホールディングスってどんな会社?


スポーツ事業やゴム事業を祖業とし、多角的な事業展開を図る企業です。

(1) 会社概要


1937年にゴム事業の経営を企図して設立されました。1945年に戦後復興としてスポーツ用品の生産を開始し、事業の多角化を進めました。2009年に持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更しています。その後、2010年に和菓子を製造する明日香食品、2011年にウェッジホールディングスを子会社化し、事業を拡大しました。

現在の従業員数は連結で311名、単体で1名という少数精鋭の持株会社体制です。筆頭株主は常任代理人を務める三菱UFJ銀行名義の外国法人等で、第2位は親会社の明日香野ホールディングスとなっています。各事業会社に権限を委譲し、機動的なグループ経営を推進しています。

氏名 持株比率
SIX SIS LTD.(常任代理人 三菱UFJ銀行) 58.44%
明日香野ホールディングス 5.06%
ニューエラストマー 2.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼最高経営責任者は此下竜矢氏が務めており、社外取締役の比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
此下竜矢 代表取締役社長兼最高経営責任者 2006年United Securities PCL最高経営責任者。2008年同社代表取締役最高経営責任者。関係各社の代表・取締役を歴任し、2018年より現職。
庄司友彦 代表取締役最高執行責任者兼最高財務責任者 2004年ノジマ取締役兼執行役。2009年同社取締役兼執行役財務総務担当。関係各社の代表・取締役を歴任し、2018年より現職。
渡邉正 取締役会長 1973年同社入社。事業部部長や専務取締役を経て、昭和ゴム代表取締役社長等を歴任。2018年より現職。
ニコラス・ジェームズ・グロノウ 取締役 1994年フェリエ・ホジソン・リミテッドエグゼクティブディレクター。FTIコンサルティングシニアマネージングディレクター等を経て、2019年より現職。


社外取締役は、戸谷雅美(元三井安田法律事務所パートナー)、増田辰弘(元神奈川県商工労働部横浜労働センター労働福祉課長)、西村克己(元富士フイルム生産システムセンター)、久間章生(元防衛大臣)、細野敦(元東京地方裁判所判事補任官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」「スポーツ事業」「ゴム事業」「コンテンツ事業」および「その他」事業を展開しています。

食品事業


大福もち等の餅類、団子類等の日配和菓子の製造および販売を行っています。スーパーマーケットなどの小売業を主な顧客とし、「ちょっと食べる」喜びを日常的に提供する和菓子を開発・提供しています。

収益源は食品卸業および小売業者への和菓子の卸売による販売代金です。同事業の運営は、主に明日香食品、明日香、日本橋本町菓子処の各社が担っており、SNSを活用したブランディングにも注力しています。

スポーツ事業


ソフトテニスボールの製造・販売や、スポーツウェアの販売、スポーツ施設工事、テニスクラブの運営を行っています。部活動を行う学生や一般のスポーツ愛好家を主な顧客としています。

主力製品であるソフトテニスボールなどの販売代金やテニスクラブの会員費用などが主な収益源です。運営は主にルーセントが担っており、ランニングツアーなどの関連事業も展開しています。

ゴム事業


創業以来の事業であり、ゴムライニング、型物、洗浄装置、食品パッキン等の製造・販売を行っています。化学、金属、半導体などの工場設備投資を行う民間製造業者を主な顧客としています。

顧客に対する防食施工サービスや工業用ゴム製品の販売による収益を柱としています。東日本におけるリーディングカンパニーとして、主に昭和ゴムとマレーシアの現地法人が運営を担っています。

コンテンツ事業


音楽、雑誌、書籍、トレーディングカードゲーム、ウェブ等のコンテンツの企画・制作・編集・デザイン・配信を行っています。コンテンツ愛好家や関連企業に向けてエンターテインメントを提供しています。

コンテンツ関連商品の卸売・小売代金や、ロイヤリティ収入を主な収益源としています。同事業の運営は主にウェッジホールディングスが担い、東南アジアを中心とした海外展開も推進しています。

その他


上記4つの報告セグメントに属さない事業として、グループ統括事業や投資育成事業、事業開発事業を展開しています。グループ全体の経営効率化や新たな収益源の確保を目指す活動を含んでいます。

主に昭和ホールディングスが親会社としてグループ経営の統括を行うことで収益基盤を支えているほか、東南アジアにおけるファイナンス事業など、持分法適用関連会社を通じた事業展開も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は86億円から98億円の間で推移していますが、経常損失が継続しており、直近では赤字幅が拡大する厳しい状況にあります。利益率もマイナス傾向が続いており、事業全体の収益構造の改善が急務となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 98億円 76億円 89億円 86億円 86億円
経常利益 -5億円 0.6億円 -8億円 -3億円 -9億円
利益率(%) -5.0% 0.8% -8.8% -3.1% -10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -7億円 -4億円 -1億円 -2億円 -6億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準を維持していますが、売上総利益が減少しており、原材料価格の高騰等の影響が見られます。営業利益は前年の黒字から一転して赤字に転落しており、コスト負担の増加が利益を圧迫しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 86億円 86億円
売上総利益 24億円 22億円
売上総利益率(%) 27.8% 26.1%
営業利益 0.3億円 -2億円
営業利益率(%) 0.3% -2.6%


販売費及び一般管理費のうち、運送費が6.3億円(構成比26%)、給料が4.8億円(同20%)を占めています。売上原価は63億円で、売上原価合計に対する構成比は74%となっています。

(3) セグメント収益


主力の食品事業は堅調に推移し増収増益を達成しましたが、ゴム事業が設備投資減速等により大幅な減収減益となりました。スポーツ事業やコンテンツ事業も増収ながら減益となり、全体として収益性の課題が残っています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
食品事業 44億円 48億円 2億円 2億円 5.1%
スポーツ事業 12億円 12億円 -0.3億円 -0.6億円 -4.6%
ゴム事業 22億円 17億円 1億円 0.4億円 2.6%
コンテンツ事業 8億円 8億円 2億円 2億円 22.3%
その他 0.2億円 0.4億円 -1億円 -1億円 -329.6%
調整額 -億円 -億円 -5億円 -5億円 -%
連結(合計) 86億円 86億円 0.3億円 -2億円 -2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で資金が流出し、資産売却等による資金の流入で補いつつ借入の返済を進めている事業検討型の局面です。事業の見直しが迫られる状況といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3億円 -1億円
投資CF -0.6億円 16億円
財務CF -0.3億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-42.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、事業を通じて社会的な課題である環境への負荷低減や人々の心身の健康増進を解決していくことを基本理念としています。単なる利益追求を目的とせず、持続的な成長を実現しながら社会へ貢献する姿勢を掲げており、各事業領域において独自の付加価値を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、持続的な成長と企業価値の向上を実現させるため、多様な視点や価値観を尊重する文化を重視しています。経験や技能、キャリアが異なる人材を積極的に採用し、性別や国籍、新卒・中途を問わず能力を発揮できる環境整備に努める柔軟な組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「2024~2028 再成長」を掲げており、グループ全体の収益基盤の立て直しと拡大を目指しています。また、食品事業においては中期経営計画「深耕と進化」に基づき、製品の開発力・製造力の強化とブランディングの確立を基本方針とし、業績拡大に向けた活動を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


各セグメントの強みを活かし、徹底的なコスト削減や生産効率の改善を進めつつ、SNSを活用したブランディングや新規事業投資を推進しています。スポーツ事業のマルチスポーツ化やコンテンツ事業の海外展開など、市場の活性化と新たな需要開拓に取り組み、持続的な成長軌道への回帰を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「リクルート力こそが事業の競争力の源泉である」と考え、外国人やスポーツ人材など新しいカタチの採用活動を推進しています。性別に関係なく能力に基づく管理職登用を行うほか、年間休日の増加やフレックスタイム制を導入し、多様な人材が柔軟に活躍できる働きやすい職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 57.0歳 9.0年 14,000,000円

※平均年間給与は、賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達と価格変動リスク

合成ゴム、天然ゴム、配合薬品などの原材料や輸入資材が、商品市況の高騰や急激な円安により購入価格の上昇を招くリスクがあります。量的調達に支障が生じた場合、製造コストの増加や生産量の低下につながり、グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定市場の需要動向に依存するリスク

ゴム事業における設備投資の動向や、スポーツ事業での競技人口の変化、コンテンツ事業の愛好者人口の動向など、各市場の需要変化が業績に直結します。また、食品事業においても主要販売先であるスーパーマーケット等の経営方針の変更が受注高の減少を招くリスクがあります。

(3) 海外事業展開に伴う為替および地政学リスク

タイ王国やシンガポール共和国など東南アジアを中心に事業を展開しており、利益の大半を海外関連会社に依存しています。そのため為替レートの変動が業績に影響を与えるほか、進出国の政治状況の激変やテロ、法改正などの地政学的リスクが財務状態に波及する懸念があります。

(4) 係争および法的トラブルに関するリスク

持分法適用関連会社に関連して、海外の証券取引委員会からの指摘や元役員の不正疑惑に伴う調査が継続しています。これに起因して関連する外国法人から各種の損害賠償請求訴訟などが提起されており、これらの訴訟の動向次第ではグループの信用低下や経営への重大な影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。