※本記事は、バンドー化学株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. バンドー化学ってどんな会社?
自動車部品や産業資材、高機能エラストマー製品などの製造・販売を主力事業として展開するグローバルメーカーです。
■(1) 会社概要
1906年に創業し、1937年に株式会社へ改組後、1970年に現在のバンドー化学へ商号変更しました。1968年に東証第一部へ上場し、自動車部品や産業資材を軸に海外への生産・販売拠点を拡大しています。2019年にはAimedic MMTを子会社化し、医療機器など新規領域にも注力しています。
従業員数は連結で4,159名、単体で1,329名です。筆頭株主は取引先で構成される持株会のバンドー共栄会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| バンドー共栄会 | 12.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.42% |
| 三井住友銀行 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は植野富夫が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 植野富夫 | 取締役社長(代表取締役) | 1992年同社入社。人事・総務部長、自動車部品事業部営業部長、Bando Manufacturing (Thailand) Ltd.取締役社長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 吉井満隆 | 取締役会長 | 1981年同社入社。海外事業推進室長、産業資材事業部長などを経て、2013年4月取締役社長に就任。2023年4月より現職。 |
| 染田厚 | 取締役ものづくりセンター長 | 1987年同社入社。伝動技術研究所長、自動車部品事業部長などを経て、2018年4月よりものづくりセンター長。2024年4月より現職。 |
| 岡田勉 | 取締役 | 1985年太陽神戸銀行入行。三井住友銀行大阪本店営業第二部長などを経て、2016年同社入社。経営企画部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 畑克彦 | 取締役 | 1985年同社入社。中央研究所研究部長、エラストマー製品事業本部長兼R&Dセンター長などを歴任。2018年6月より現職。 |
| 中村恭祐 | 取締役(監査等委員) | 1981年同社入社。人事・総務部長、経営情報システム部長、経営企画部長などを歴任。2018年6月より現職。 |
社外取締役は、米田小百合(米田公認会計士事務所代表・報酬委員長)、富田健司(元川崎重工業副社長・指名委員長)、久川秀仁(元エクセディ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品事業」「産業資材事業」「高機能エラストマー製品事業」および「その他」事業を展開しています。
■自動車部品事業
同社グループの主力事業であり、自動車メーカーや二輪車メーカーを主要な顧客として、自動車用伝動ベルト製品や二輪車用伝動ベルト製品などを提供しています。補機駆動用伝動ベルトやオートテンショナなどの補機駆動用伝動システム製品を幅広く展開しています。
収益は、自動車および二輪車メーカーや補修市場の顧客に対する製品の販売代金から得ています。事業の運営は、親会社である同社をはじめ、Bando USA, Inc.やBando Manufacturing (Thailand) Ltd.などの国内外のグループ各社が行っています。
■産業資材事業
産業機械や農業機械などのメーカーおよびエンドユーザーを対象に、一般産業用伝動ベルト製品やコンベヤベルト、樹脂コンベヤベルトなどの運搬ベルト、もみすりロールなどを提供しています。生産設備や物流設備、農業機械向けに幅広い製品ラインアップを揃えています。
収益は、各産業のメーカーや代理店等に対する製品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社およびバンドー・I・C・S、Bando Belt (Tianjin) Co., Ltd.などの国内外のグループ各社が行っています。
■高機能エラストマー製品事業
OA機器メーカーや電子部品メーカー、建材メーカーなどを対象に、クリーニングブレードや高機能ローラ、精密ベルト、ポリウレタン機能部品、精密研磨材のほか、建築資材用や医療用のフイルム製品などを提供しています。
収益は、各メーカーに対する精密機能部品や機能フイルム製品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社およびバンドーエラストマー、Bando Siix Limitedなどの国内外のグループ各社が行っています。
■その他事業
ロボット関連デバイスや電子資材、医療機器・ヘルスケア機器などの製造および販売を行っています。また、不動産業や保険代理業などのサービスも展開しており、多様な分野での事業基盤の確立を進めています。
収益は、医療機関や各種メーカー等への製品およびサービスの提供対価から得ています。事業の運営は、同社をはじめ、Aimedic MMTやビー・エル・オートテックなどのグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は安定した成長を継続しており、直近5年間で順調に事業規模を拡大しています。利益面では一時的に減益となる年度も見られましたが、直近では自動車部品事業などの拡販や為替の円安効果が大きく寄与し、税引前利益および当期利益ともに大幅な増益を達成して過去最高の水準を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 937億円 | 1036億円 | 1083億円 | 1156億円 | 1193億円 |
| 税引前利益 | 34億円 | 85億円 | 87億円 | 35億円 | 126億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 8.2% | 8.0% | 3.0% | 10.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 57億円 | 62億円 | 15億円 | 106億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期から改善しています。特に営業利益については、前期に計上された減損損失の反動や、当期に計上された受取保険金などの要因も大きく寄与し、営業利益率が大きく向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1156億円 | 1193億円 |
| 売上総利益 | 118億円 | 128億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.2% | 10.7% |
| 営業利益 | 35億円 | 121億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が29億円(構成比11%)、支払手数料が17億円(同7%)、運送費及び保管費が16億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の自動車部品事業および産業資材事業がそれぞれ着実な増収増益を達成し、全体の業績拡大を牽引しています。高機能エラストマー製品事業においても増収を確保し、全セグメントにおいて黒字を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車部品事業 | 581億円 | 604億円 | 49億円 | 57億円 | 9.4% |
| 産業資材事業 | 381億円 | 388億円 | 25億円 | 33億円 | 8.5% |
| 高機能エラストマー製品事業 | 142億円 | 144億円 | -0億円 | 4億円 | 3.0% |
| その他 | 61億円 | 70億円 | 3億円 | 2億円 | 3.5% |
| 調整額 | -9億円 | -13億円 | 0億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 1156億円 | 1193億円 | 77億円 | 96億円 | 8.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の営業利益で借入金の返済を進めつつ、手元資金で投資を賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 108億円 | 156億円 |
| 投資CF | -42億円 | -37億円 |
| 財務CF | -69億円 | -86億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.9%で市場平均を上回っています(いずれも市場平均を上回る)。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「調和と誠実の精神をもって、社会のニーズに沿った新たな付加価値とより高い品質を日々創造、提供し、お客様をはじめとする社会の信頼に応え、社業の発展を期するとともに、グループの従業員たることに誇りを持ち、社会に貢献することを期する」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、ゴム・プラスチック製品メーカーのパイオニアとして、新技術や新製品を開発し、企業倫理の遵守と環境保全に配慮した事業経営を進めています。
■(2) 企業文化
同社は、これまで培ってきた「現場力」と最新のデジタル技術を融合させることで、スマートものづくりを推進する文化を持っています。また、社長と従業員との少人数制の対話会を継続して実施するなど、相互理解の深化と目指す組織風土の醸成に取り組んでおり、従業員の成長や働きがいの向上と、業績や生産性の向上を両立させる仕組みづくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2023年度から2026年度までを中長期経営計画「Creating New Value for the Future」の第1ステージ(CV-1)と位置づけ、全社一丸となって持続的な成長を目指しています。具体的な数値目標として、最終年度となる2026年度に以下の指標の達成を掲げています。
* 売上収益:1,200億円
* コア営業利益:120億円
* ROE:12.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業と新規事業の拡大をグローバルで推進し、価値創造と持続的成長につながる事業ポートフォリオを目指しています。自動車分野における電動化の進展等の環境変化に対応するため、既存事業では環境対応製品の拡充や重点市場でのシェア拡大を図ります。新規事業では医療・ヘルスケア機器製品や電子資材製品の販売拡大を進めます。また、ロボットやAI、IoTを活用した無人化・自律化による生産体制の進化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「専門性と創造性と主体性を持った人材の育成」を目指す姿とし、自己啓発の促進と働きがいの向上、業務を通した育成と多様性の確保、資質を活かした育成と一体感の醸成を基本方針としています。上司と部下の対話と支援をベースとした働きがい改革を進め、多様な人材がいきいきと働くことができる魅力的な組織風土の構築とエンゲージメント向上に尽力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 15.9年 | 7,332,412円 |
※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.1% |
| 男性育児休業取得率 | 38.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 71.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、大卒等の新規採用者に占める女性比率(21.9%)、障がい者雇用率(2.3%)、従業員一人当たりの年間平均研修時間(36.8時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外取引拡大に伴うリスク
同社グループは海外への生産・販売体制の強化を進めており、外貨建金銭債権については為替予約等のリスクヘッジを行っていますが、各地域の経済状況の変化や為替の著しい変動が、同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) リコール発生に伴うリスク
同社グループは自動車メーカーやOA機器メーカー等に部品を供給しており、製品の品質確保に最大限注力しています。しかし、同社グループの製品が組み込まれた最終製品において不具合が発生しリコール等の処置がなされた場合、その費用負担が発生し業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 原材料の市況変動および調達に伴うリスク
原油価格の上昇や需給バランスの変化により、原材料価格が上昇する可能性があります。代替材料の検討や製品価格の是正、原価低減に取り組んでいますが、想定以上に材料や燃料等の価格高騰が続いた場合や調達が滞った場合、業績に影響を与える可能性があります。



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