※本記事は、相模ゴム工業株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 相模ゴム工業ってどんな会社?
コンドームを中心としたヘルスケア製品や包装用フィルム等のプラスチック製品を製造・販売する企業です。
■(1) 会社概要
1934年にアサヒラテックス化学研究所として創立し、日本初のラテックス製コンドームの製造を開始しました。1944年に現在の社名となり、1961年に株式を公開しています。1998年には日本初のポリウレタン製コンドーム「サガミオリジナル」を発売し、2018年にはマレーシアに新工場を増設するなど、グローバルな生産体制を強化しています。
同グループの連結従業員数は790名、単体では200名です。筆頭株主は外国法人等で、第2位は代表取締役会長の大跡一郎氏、第3位は大跡典子氏となっており、創業家出身の役員が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MSCO CUSTOMER SECURITIES | 12.66% |
| 大跡 一 郎 | 9.88% |
| 大跡 典 子 | 9.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は大跡 賢介氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大 跡 賢 介 | 取締役社長(代表取締役) | 2013年同社入社。経営計画室室長を経て、2016年取締役就任。2024年代表取締役副社長を経て、2025年4月より現職。 |
| 大 跡 一 郎 | 取締役会長(代表取締役) | 1976年同社入社。1988年に代表取締役社長に就任。長年にわたり経営を牽引し、2025年4月より現職。 |
| 吉 田 邦 夫 | 専務取締役 | 1983年同社入社。経営企画室長、管理本部本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 蓼 沼 茂 夫 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年同社入社。ヘルスケア製造部部長、管理本部本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、黒石奈央子(B STONE株式会社 代表取締役)、玉上宗人(株式会社アークリンクス 代表取締役)、鹿内智行(Shika Law 開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヘルスケア事業」および「プラスチック製品事業」の2つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) ヘルスケア事業
主にコンドーム(ラテックス製およびポリウレタン製)や生活自助具等の医療機器・ヘルスケア製品を提供しています。特にポリウレタン製コンドーム「サガミオリジナル」は同社の主力製品であり、国内外の一般消費者に向けて販売されています。
製品の製造は主に同社および子会社の相模マニュファクチャラーズ有限公司(マレーシア)が行っています。販売については同社が行うほか、海外では子会社の株式会社ラジアテックス(フランス)などを通じて展開しており、製品販売による売上が主な収益源です。
■(2) プラスチック製品事業
食品包装用チューブやフィルム、事務用ファイルなどのプラスチック製品を提供しています。これらは主に法人顧客向けに製造・販売されており、機能性や環境対応を考慮した製品開発が行われています。
この事業の運営は主に同社が担っています。製品の製造および販売を通じて、取引先企業から対価を受け取ることで収益を得るモデルとなっています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、入浴・介護サービス等の提供や、その他の製品の製造販売を行っています。地域社会の福祉に貢献するサービス活動などが含まれます。
運営は同社が行っており、サービス利用者や製品購入者からの利用料や代金が収益源となります。なお、介護事業については事業譲渡や閉鎖を進めている状況にあります。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は50億円台後半から60億円前後で推移しています。2024年3月期には利益率が低下しましたが、2025年3月期には回復傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 56億円 | 54億円 | 60億円 | 61億円 | 57億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 15億円 | 11億円 | 4億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 18.4% | 27.1% | 17.6% | 6.4% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 11億円 | 8億円 | 0.4億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少しています。また、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業損益は赤字に転落しました。一方で、為替差益等の営業外収益により経常利益は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 57億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.9% | 25.8% |
| 営業利益 | 4億円 | -0.3億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | -0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が4.2億円(構成比28%)、支払手数料が2.2億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ヘルスケア事業は需要の停滞等により減収減益となりました。プラスチック製品事業は価格転嫁により増収となりましたが、営業損失を計上しています。全体として主力事業の不調が響き、連結全体での営業損失につながりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヘルスケア事業 | 47億円 | 43億円 | 10億円 | 6億円 | 14.3% |
| プラスチック製品事業 | 12億円 | 13億円 | 0.0億円 | -0.8億円 | -6.7% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | -0.9億円 | -0.7億円 | -46.8% |
| 調整額 | - | - | -5億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 61億円 | 57億円 | 4億円 | -0.3億円 | -0.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
相模ゴム工業グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、製造費や販売費等の営業費用を賄うための資金を生み出しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資等による資金の流出を示しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入や長期借入等による資金の調達・返済を表しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 8億円 |
| 投資CF | -1億円 | 4億円 |
| 財務CF | -9億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、人口爆発や環境問題などの地球規模の課題に対処すべく、世界市場を舞台に意義ある事業を発展させ、真の意味での豊かな社会作りに貢献することを目指しています。ユーザーや消費者が求める高品質・高付加価値の商品・サービスを、独自の発想と企画力で提供することを基本姿勢としています。
■(2) 企業文化
他社の模倣を排除し、高品質で個性あふれる製品・サービスを提供することを重視しています。利益の最大化だけでなく、「創造性重視」「社員の自己啓発と自主性の醸成」「柔軟性と即応性を持った経営」をキーワードに掲げ、小さくても光る会社を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
売上規模の拡大のみを追及するのではなく、高い収益性を確保する「営業利益率」や「経常利益率」、および財務の健全性を維持する「純資産比率」に力点を置いています。また、株主に対して安定した配当を維持することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
世界人口の上位10%の高所得層を主なターゲットとし、高付加価値商品による高収益確保を目指しています。急速に変化する時代に対応するため、情報リテラシーの向上と科学的思考の活用を推進し、eコマースの台頭を背景とした販売チャネルの強化や、生産体制の構築、品質システムの高度化に取り組んでいく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を事業活動の基盤と位置づけ、社員の創造性と自主性の醸成を重視しています。各社員の特性を生かした組織づくりを行い、人材の成長を積極的にサポートすることで新たな企業価値を創出することを目指しています。また、女性の活躍促進を含む多様性の確保や多様な働き方の推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 15.3年 | 5,045,912円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※「男性育児休業取得率」「男女賃金差異」については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替相場の変動による影響
同社グループは海外での生産・販売や原材料の輸入を行っているため、為替レートの変動が業績や財政状態に影響を与える可能性があります。また、海外子会社の財務諸表の円換算においても為替変動の影響を受けます。
■(2) 原材料の仕入価格の変動による影響
プラスチック製品事業において、主原料である石油化学製品の価格は原油価格の影響を受けやすくなっています。国際的な原油価格の変動が仕入価格に波及し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外進出による影響
海外市場での事業展開には、予期せぬ法規制の変更、政治的・経済的な要因、インフラの状況など、国内とは異なる様々なリスクが内在しており、これらが生産活動や事業運営に影響を与える可能性があります。
■(4) 金利変動による影響
事業資金を主に金融機関からの借入で調達しているため、市場金利の著しい変動があった場合、支払利息の増加などを通じて財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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