相模ゴム工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

相模ゴム工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する相模ゴム工業は、コンドームを主力とするヘルスケア製品やプラスチック製品の製造販売を手掛けています。第93期の業績は、ポリウレタン製コンドームが国内外で堅調に推移し増収を達成しました。価格転嫁の推進や不採算事業の整理により、営業黒字転換および経常増益を果たしています。


※本記事は、相模ゴム工業株式会社の有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 相模ゴム工業ってどんな会社?


相模ゴム工業は、コンドーム事業を中核として人々の健康や安全を支える製品を提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1934年にアサヒラテックス化学研究所として創立し、日本初のラテックス製コンドームを製品化しました。1944年に相模ゴム工業へ改名し、1961年に株式を公開しました。1998年には日本初のポリウレタン製コンドームを発売し、現在は国内外に生産拠点を拡大してヘルスケア事業をグローバルに展開しています。

従業員数は連結737名、単体173名です。筆頭株主はMSCO CUSTOMER SECURITIESで、第2位は創業家の大跡一郎氏、第3位は大跡典子氏となっています。創業100周年に向けて、ヘルスケア領域の強化や国内外でのブランド価値向上に取り組み、さらなる事業拡大を目指しています。

氏名 持株比率
MSCO CUSTOMER SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 12.69%
大跡一郎 9.88%
大跡典子 9.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は大跡賢介氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
大跡賢介 代表取締役社長 2013年同社入社。経営計画室室長や常務取締役を経て、2024年に代表取締役副社長に就任。2025年より現職。
大跡一郎 取締役会長 1976年同社入社。1988年より長らく代表取締役社長を務める。2025年に代表取締役会長を経て、2026年より現職。
吉田邦夫 専務取締役 1983年同社入社。経営企画室室長や管理本部本部長などを歴任し、2023年に常務取締役を経て、2024年より現職。
蓼沼茂夫 取締役(常勤監査等委員) 1986年同社入社。ヘルスケア事業部製造本部副本部長や管理本部本部長を歴任し、2025年より現職。
玉上宗人 取締役 三井住友銀行、ニトリHD、RIZAPグループ等を経て、アークリンクス代表取締役に就任。2025年同社取締役に就き、2026年より現職。


社外取締役は、黒石奈央子(B STONE代表取締役)、鹿内智行(京橋法律事務所)、小柴克彦(コーポレート・イノベーション代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ヘルスケア事業」「プラスチック製品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ヘルスケア事業


ラテックス製およびポリウレタン製のコンドームを中心に、医療用ゴム製品や生活自助具、日用雑貨品などの製造・販売を行っています。主に一般消費者や医療機関などが顧客となります。

製品の販売代金を収益源としています。事業の運営は主に相模ゴム工業が行っており、マレーシアの相模マニュファクチャラーズ有限公司がコンドームの製造を担っています。また、フランスのラジアテックス等を通じて製品の海外販売を行っています。

(2) プラスチック製品事業


食品用包装フィルムや包装用チューブなどのプラスチック製品の製造・販売を手掛けています。食品メーカーや生活用品メーカーなどの法人が主な顧客となります。

法人顧客に対するプラスチック製包装資材の販売代金を収益源としています。本セグメントの事業運営は、相模ゴム工業が単独で製造および仕入販売を担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、その他の製品の製造・仕入販売およびサービスの提供を行っています。なお、過去に展開していた介護サービス事業はすでに撤退しています。

製品販売等の代金を収益としています。事業の運営は相模ゴム工業が行っており、一部の製品についてはラジアテックスや関連当事者である相模産業を通じて販売を実施しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調な推移を見せており、直近ではポリウレタン製コンドームの需要回復により増収となっています。利益面では原材料価格高騰や為替の影響を受け一時的に低下しましたが、価格改定や不採算事業の見直しにより直近の経常利益は回復基調にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 54億円 60億円 61億円 57億円 59億円
経常利益 15億円 11億円 4億円 5億円 6億円
利益率(%) 27.1% 17.6% 6.4% 9.2% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 8億円 7億円 6億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。主力であるポリウレタン製コンドームの高利益率商品へのシフトが寄与し、売上総利益率は上昇しました。また、販売費及び一般管理費が減少したことで営業利益は黒字転換を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 57億円 59億円
売上総利益 15億円 16億円
売上総利益率(%) 25.8% 26.5%
営業利益 -0.3億円 2億円
営業利益率(%) -0.6% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が4億円(構成比30%)、支払手数料が2億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


ヘルスケア事業はポリウレタン製コンドームの需要回復により増収となりました。一方、プラスチック製品事業は販売数量の減少により減収となったものの、価格転嫁の推進により利益の確保に努めています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ヘルスケア事業 43億円 47億円
プラスチック製品事業 13億円 12億円
その他 2億円 0.4億円
連結(合計) 57億円 59億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資CFがともにプラスとなり、それらの資金を活用して借入金の返済や配当金の支払いを進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 6億円
投資CF 4億円 0.1億円
財務CF -5億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業者である松川サクが掲げた「誰かに寄り添い、自らの人生を豊かにする」という理念を原点としています。この理念のもと、人々の健康で豊かな生活に貢献する企業グループを目指し、コンドーム事業を中核として人々の安心・安全を支える製品を提供しています。

(2) 企業文化


創業以来培ってきた「利他と進取の精神」を重視しています。先行き不透明な時代においても、情報リテラシーを高め、科学的思考と自由闊達な風土を軸に、大局的な見地から時代に即したビジネスを展開する姿勢を大切にしています。安易な選択と集中に陥ることなく、粘り強い努力を継続する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


収益性、資本効率、財務健全性を重視した経営を推進しています。具体的には、営業利益率、ROE(自己資本利益率)、営業キャッシュ・フロー、および純資産比率を重要な経営指標に位置付けています。また、中長期的な成長に向けて、海外売上高比率やEC売上比率などの非財務指標の向上にも取り組んでいます。

* 売上高:61億円(2026年3月期計画)
* 営業利益:2億円(2026年3月期計画)
* 経常利益:1.4億円(2026年3月期計画)

(4) 成長戦略と重点施策


創業100周年を見据え、コンドームメーカーの枠を超えた「Life Care Company」への進化を目指しています。世界人口の上位10%を占める高所得層を主なターゲットとし、高付加価値な商品を提供する「小さくても光る会社」を標榜しています。本業の競争力強化に加え、成長領域への投資やデジタル技術の活用を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値向上の源泉である最も重要な経営資本と位置付けています。多様な人材が能力を最大限に発揮し、失敗を恐れず挑戦できる企業文化の醸成を目指しています。階層別教育や専門教育による人材育成の強化に加え、女性や専門人材の積極的な登用、働きやすい職場環境の整備を通じてエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 16.0年 4,693,427円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※育児休業取得率および男女賃金差異に関する記載はありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替相場の変動


同社グループは製品の生産や販売を海外で展開しており、原材料や製品の輸入取引も行っています。また、海外連結子会社の財務諸表は円換算されるため、為替相場の変動がグループの経営成績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 原材料の仕入価格の変動


プラスチック製品事業で使用する主原料は石油化学製品です。そのため、国際的な原油価格の変動に連動して原材料の仕入価格が変動する傾向があり、コスト高騰が収益を圧迫する可能性があります。

(3) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


海外市場への進出や現地での生産活動においては、予期せぬ法律や規制の変更、政治・経済的要因の変化、インフラ環境の悪化など、現地のカントリーリスクが内在しており、これらが事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。