※本記事は、アキレス株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アキレスってどんな会社?
シューズ製品、プラスチック製品、産業資材製品の製造・販売を行う化学メーカーです。「瞬足」や「アキレス・ソルボ」などのブランドを展開しています。
■(1) 会社概要
1947年に興国化学工業として設立されゴム製品の製造を開始、1962年には東証一部に上場しました。1982年に現商号のアキレスへ変更しています。2022年の東証市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。
連結従業員数は1,677名、単体では1,210名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は持株会と思われる東京アキレス協和会、第3位は取引銀行であるみずほ銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.16% |
| 東京アキレス協和会 | 6.20% |
| みずほ銀行 | 4.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は日景一郎氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 日 景 一 郎 | 代表取締役社長 | 1985年入社。断熱資材事業部長、購買本部長、生産革新担当、シューズ部門担当などを経て、2022年より現職。 |
| 河 野 和 晃 | 常務取締役管理部門統轄兼CSR担当 | 1993年入社。経理部長、経理本部長などを経て、2024年より現職。アキレス商事代表取締役を兼務。 |
| 横 山 浩 樹 | 取締役中国・北米(製造)担当兼滋賀地区担当 | 1992年入社。工業資材工場長、産業資材製造本部長、研究開発本部長などを経て、2025年より現職。阿基里斯(佛山)新型材料有限公司代表を兼務。 |
| 柳 川 達 也 | 取締役営業部門統轄兼第二事業部担当兼シューズBU担当 | 1989年入社。工業資材販売部長、工業資材事業部長、海外事業推進担当などを経て、2025年より現職。 |
| 川 島 英 一 | 取締役製造部門統轄兼品質保証本部長 | 1997年入社。品質保証本部長、生産革新担当などを経て、2025年より現職。 |
| 越 智 久 生 | 取締役営業部門統轄補佐兼北米担当兼第一事業部担当兼第一事業部長 | 1992年入社。フイルム販売部長、化成品事業部長などを経て、2025年より現職。ACHILLES USA,INC.代表などを兼務。 |
| 山 田 茂 | 取締役常勤監査等委員 | 1975年入社。原価計算部長、経理部長、足利総務部長、常勤監査役を経て、2022年より現職。 |
| 菊 入 信 幸 | 取締役常勤監査等委員 | 1989年入社。人事総務部長、足利総務部長、常勤監査役を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、舘野均(元三井・ダウ ポリケミカル代表取締役社長)、須藤昌子(弁護士)、笠原智恵(弁護士)、松岡一臣(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「シューズ事業」「プラスチック事業」「産業資材事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■シューズ事業
シューズ製品の製造販売を行っています。子ども靴ブランド「瞬足」や、衝撃吸収素材を搭載したコンフォートシューズ「アキレス・ソルボ」、ランニングシューズ「BROOKS」などを取り扱っています。
製品の販売対価を収益源としています。運営は主に同社が行っており、アキレスリテールやACHILLES HONG KONG CO.,LTD.などが関係会社として事業に携わっています。
■プラスチック事業
車輌内装用資材、一般レザー・カブロン・ラミネート、フイルム、建装資材、防災対策商品などの製造販売を行っています。多様なプラスチック加工技術を活かした中間財および消費財を提供しています。
製品の販売対価を収益源としています。運営は主に同社が行っており、アキレスコアテック、アキレスビニスター、ACHILLES USA,INC.、阿基里斯(上海)国際貿易有限公司などが事業に関わっています。
■産業資材事業
ウレタン、断熱資材、工業資材、衝撃吸収材などの製造販売を行っています。住宅・建築用の断熱材や、半導体製造装置向けの工業資材など、産業用途の部材を提供しています。
製品の販売対価を収益源としています。運営は主に同社が行っており、東北アキレス、関東アキレスエアロン、大阪アキレスエアロン、三進興産などが事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は700億円台後半から800億円台で推移していますが、利益面では苦戦が続いています。経常損益は直近3期間連続で損失を計上しており、当期は純利益が黒字転換したものの、利益率は依然として低い水準にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 736億円 | 760億円 | 829億円 | 786億円 | 791億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 16億円 | -1.2億円 | -1.7億円 | -2.2億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 2.1% | -0.1% | -0.2% | -0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 29億円 | 11億円 | -10億円 | -69億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業損益は依然としてマイナスですが、損失幅は縮小しました。コストコントロールや価格改定などの取り組みが一定の効果を見せていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 786億円 | 791億円 |
| 売上総利益 | 142億円 | 145億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.0% | 18.3% |
| 営業利益 | -10億円 | -4億円 |
| 営業利益率(%) | -1.2% | -0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造及び発送費が34億円(構成比約23%)、従業員給料が20億円(同約14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、プラスチック事業が全体の約半数を占め、次いで産業資材事業、シューズ事業の順となっています。産業資材事業が増収となる一方、シューズ事業は減収となりました。プラスチック事業はほぼ横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| シューズ事業 | 104億円 | 101億円 |
| プラスチック事業 | 400億円 | 401億円 |
| 産業資材事業 | 281億円 | 289億円 |
| その他 | 9億円 | 8億円 |
| 調整額 | -9億円 | -11億円 |
| 連結(合計) | 786億円 | 791億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アキレスは、営業活動により資金を創出し、投資活動で設備投資等を行い、財務活動で自己株式取得や配当金の支払いを行っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の除売却損益や退職給付信託返還益、棚卸資産の減少等により増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出があったものの、固定資産の売却収入等により減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いがあったため減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 27億円 |
| 投資CF | -38億円 | -19億円 |
| 財務CF | 18億円 | -12億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「社会との共生」=「顧客起点」を企業理念として掲げています。これらを重要な価値と位置づけ、持続可能な社会の実現に貢献し、社会全体の幸福度を高めることを目指しています。企業倫理と遵法の精神に基づいた透明度の高い経営を行い、社会の信頼を得ていくことを重要視しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりの好奇心、多様な能力、ユニークなアイデア、ひらめきを大切にする文化があります。様々なテクノロジーを組み合わせたソリューションで社会に貢献することを目指し、企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向け、透明性の高い経営を実践していく風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
長期的な目標として「グローバル ソリューション プロバイダー」を掲げ、3カ年の方向性を示す『中期経営計画-FY25~FY27-』を策定しています。高い利益を生み出し続ける企業への転換を課題とし、人材力や生産性・技術力等の事業基盤の高度化に取り組み、収益力の再構築・強化を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「選択と集中の徹底」「新たな価値の創造」「グローバル戦略の推進」の3つの全社戦略を柱としています。収益性の低いアイテムを見直し、成長市場を特定して集中投資を行うほか、エレクトロニクス、モビリティ、メディカル&ヘルスケア等を重点分野と定め、事業横断的なシナジーにより新たな価値を創造します。また、グローバルビジネスの拡大も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性の確保を重視し、性別や採用形態に関わらず能力を発揮する人材を登用する方針です。職種コースの転換制度や、女性管理職比率向上に向けた採用・研修を実施しています。また、次世代経営者やグローバル人材、DX人材の育成に注力し、OJTと研修を通じて個々のスキルアップと組織力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.2歳 | 20.2年 | 5,784,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性比率(32.0%)、基幹職における女性比率(11.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替の変動リスク
為替レートの急激な変動が発生した場合、同社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。為替変動リスクを回避するために、為替予約等の対策を行っています。
■(2) 災害・火災・地震および感染症に係るリスク
生産設備で発生する災害や火災、停電等による製造ラインの中断、または新たな感染症の発生等によりサプライチェーンに影響が生じた場合、事業活動が停滞し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。定期的な点検や生産拠点の分散化を行っていますが、全てのリスクを完全に回避できる保証はありません。
■(3) 国際活動および海外進出に潜在するリスク
海外市場への事業展開において、予期しない法律・規制の変更、政治・経済要因、人材確保の難しさ、テロや戦争による社会的混乱などが生じるリスクがあります。これらの事象が発生した場合、生産設備の管理や事業遂行に問題が生じ、業績および財務状況に影響を与える可能性があります。



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