※本記事は、櫻護謨株式会社 の有価証券報告書(第165期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 櫻護謨ってどんな会社?
消防・防災用ホースや航空宇宙部品など、社会の安全とインフラを支える製品を製造・販売する企業です。
■(1) 会社概要
1918年に設立され、各種ゴム製品の製造を開始しました。戦時中に航空機部品へ進出し、1950年には「桜ファイヤーホース」の特許を登録しました。1964年に東証二部へ上場し、その後大田原製作所への工場集約や米国企業との技術提携を通じて事業を拡大しました。現在は航空宇宙分野や不動産賃貸など多角的に事業を展開しています。
2025年3月31日現在の従業員数は連結342名、単体310名です。筆頭株主は代表取締役社長の中村浩士氏で、第2位は代表取締役副社長の岩﨑哲也氏、第3位は個人株主であり、経営陣および創業家一族が主要な株式を保有する安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中 村 浩 士 | 12.49% |
| 岩 﨑 哲 也 | 11.57% |
| 梶 原 祐理子 | 8.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長兼営業本部長は中村浩士氏が務めています。取締役11名のうち、社外取締役は3名で、比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 浩士 | 代表取締役社長兼営業本部長 | 1993年10月同社入社。取締役総合企画部長、常務、専務を経て、2003年2月より現職。 |
| 岩﨑 哲也 | 代表取締役副社長 | 1991年4月同社入社。取締役大田原製作所技術部長、常務、専務を経て、2010年6月より現職。 |
| 遠藤 聡 | 常務取締役総務部門統括 | 1977年4月同社入社。総務部担当部長、執行役員、取締役総務部長を経て、2024年6月より現職。 |
| 國府田 文彦 | 常務取締役大田原製作所長 | 1990年4月同社入社。大田原製作所技術部長、執行役員、取締役を経て、2025年6月より現職。 |
| 黒川 洋二 | 取締役営業本部PM(消防・防災部門担当)兼営業一部長 | 1983年4月同社入社。営業本部営業一部担当部長、執行役員を経て、2021年6月より現職。 |
| 中条 誠 | 取締役大田原製作所副所長兼生産部長兼航空機器二課長 | 1994年4月同社入社。大田原製作所生産部次長、執行役員を経て、2025年2月より現職。 |
| 飯田 牧子 | 取締役大田原製作所工務部長兼管理課長 | 1996年4月同社入社。大田原製作所工務部次長、執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 五嶋 貴幸 | 取締役総務部長 | 1999年4月同社入社。総務部次長、執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 佐藤 重仁 | 取締役営業本部航空・宇宙部門、工業用品部門担当兼新技術営業部長 | 1982年4月同社入社。執行役員資材部長、大田原製作所副所長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、中村一雄(金陽社代表取締役会長)、白坂成功(慶應義塾大学大学院委員長)、大庭孝之(元国土交通大学校副校長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「消防・防災事業」、「航空・宇宙、工業用品事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■(1) 消防・防災事業
消防ホース、消防用吸管、防災救助資機材、労働安全機器などの製造販売を行っています。主な顧客は官公庁や自治体、企業などであり、消火活動や災害救助の現場で使用される製品を提供しています。
収益は、製品の販売代金や保守点検費用などから得ています。運営は主に櫻護謨、桜ホース、および日本エス・エイ・エスが行っています。
■(2) 航空・宇宙、工業用品事業
航空・宇宙関連部品、金属部品、ダクト、複合材、石油関連ゴム製品、建築土木関連ゴム製品およびゴム製品等製造用金型などの製造販売を行っています。航空機やロケット向けの高度な技術を要する部品や、産業インフラを支える工業用品を提供しています。
収益は、製品の販売代金や金型の製作費などから得ています。運営は主に櫻護謨および川尻機械が行っています。
■(3) 不動産賃貸事業
主に東京都渋谷区にある笹塚ショッピング・モールの賃貸および運営を行っています。地域の商業施設として、テナントへのスペース提供を行っています。
収益は、商業施設のテナントからの賃料収入や管理運営費などから得ています。運営は櫻護謨および二十一世紀が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は増減を繰り返していますが、直近では減少傾向にあります。利益面では、2022年3月期に赤字を計上しましたが、翌期以降は黒字を維持しています。直近の2025年3月期は減収減益となりましたが、一定の利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 89億円 | 107億円 | 134億円 | 122億円 |
| 経常利益 | 3億円 | -2億円 | 4億円 | 11億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | -1.7% | 3.8% | 8.3% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | -2億円 | 3億円 | 7億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。売上総利益率は微減となりました。営業利益は大きく減少し、営業利益率も低下しています。販管費などのコストコントロールは行われていますが、減収の影響が利益を圧迫している状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 134億円 | 122億円 |
| 売上総利益 | 30億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.7% | 21.7% |
| 営業利益 | 11億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比33%)、役員報酬が2億円(同8%)を占めています。売上原価については内訳の詳細な記載はありませんが、製品製造コストや仕入原価が中心となっています。
■(3) セグメント収益
消防・防災事業は大型案件の剥落により大幅な減収減益となりました。一方、航空・宇宙、工業用品事業は官需やロケット向け部品の販売増により増収増益を達成しました。不動産賃貸事業は安定的に推移しており、微増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 消防・防災事業 | 87億円 | 68億円 | 9億円 | 3億円 | 5.0% |
| 航空・宇宙、工業用品事業 | 41億円 | 48億円 | 5億円 | 6億円 | 13.2% |
| 不動産賃貸事業 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 20.7% |
| 調整額 | - | - | -3億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 134億円 | 122億円 | 11億円 | 6億円 | 5.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
櫻護謨は、財務活動において社債及び借入金による収支の増加と配当金の支払いを行いました。営業活動によるキャッシュ・フローは増加し、これは主に税金等調整前当期純利益や売上債権の減少などが要因です。投資活動によるキャッシュ・フローは減少しており、これは主に有形固定資産の取得による支出が影響しています。財務活動によるキャッシュ・フローも減少しましたが、これは社債及び借入金による収支の増加や配当金の支払いなどが要因です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 4億円 |
| 投資CF | -1億円 | -2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「顧客に満足される製品(もの)作り」、「正確な仕事で品質保証」を実践することにより広く社会に貢献することを経営理念として事業を行っています。顧客第一の精神に徹することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
顧客第一の精神を重視し、社会の安心・安全に不可欠な製品やサービスの安定供給を使命とする文化があります。また、品質保証に対する誠実な取り組みや、地域社会との連携を大切にする姿勢が企業活動の根底にあります。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と企業価値の向上という観点から、目標とする経営指標を「連結売上高経常利益率3%以上の維持」としており、安定的な収益の確保を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は強固な経営基盤の確立と持続的な成長を目指し、各事業において以下の施策に取り組みます。
* 大田原製作所における設備の更新投資および生産効率化。
* 消防・防災事業における顧客ニーズを取り込む商材の企画開発と提案型営業の強化。
* 航空・宇宙、工業用品事業における金属3Dプリンタの活用技術者育成、宇宙分野への販売拡大、サプライチェーン強化。
* 人材採用の強化と多様な働き方に対応する環境整備。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様性に富んだ人財・組織の構築が必要という認識のもと、人材の育成と働き甲斐のある職場環境の整備を行い、個人並びに組織の能力と生産性を高めることを基本方針としています。職種ごとの力量明確化や教育訓練計画に基づく継続的な教育、安全衛生委員会による職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.8歳 | 16.4年 | 6,024,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 56.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員数に占める女性従業員数の割合(18.6%)、男性の平均勤続年数における女性の平均勤続年数の割合(95.2%)、教育訓練実施計画の達成率(93.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の価格高騰、入手困難性
石油化学製品や金属素材を主な原材料としており、原油価格や金属素材価格の変動の影響を受けます。世界的な需給ひっ迫や地政学リスクによる急激な価格高騰は、販売価格への転嫁が難しく、経営成績に影響を与える可能性があります。また、生産中止や調達リードタイムの長期化などによる入手困難性が拡大した場合、生産活動の遅延や停止のリスクがあります。
■(2) 大規模自然災害リスク並びに感染症拡大リスク
防災計画等を整備していますが、大規模災害が発生した場合、従業員の被災や事業拠点・生産設備の損壊により甚大な損害が生じる可能性があります。また、未知の感染症拡大による社会混乱や経済活動の制約が生じた場合、取引の遅延や中断により経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保について
事業活動と持続的成長には、技術者や熟練技能者などの有能な人材が不可欠です。定期的な採用と育成に努めていますが、企業間の人材獲得競争激化などにより人材確保が困難となった場合、事業活動に影響を与える可能性があります。
■(4) 為替・金利変動リスク
外貨建の輸入取引や資金調達に係る金利など、市況変動の影響を受けます。為替予約や金利スワップなどでリスク低減を図っていますが、予測を超えた変動があった場合、為替決済代金や金利支払額の増加などにより、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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