フコク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フコク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フコクは東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車用ワイパーブレードラバーなどの機能品事業や防振事業を主力とするメーカーです。直近の業績は、各種製品の受注が堅調で微増収となったものの、原材料費や労務費等のコスト上昇、および減損損失の計上などが影響し、経常利益や当期純利益は減益となっています。


※本記事は、フコクの有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. フコクってどんな会社?


機能品事業や防振事業を中心に、グローバルな製造網で自動車部品等の提供を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1953年12月に工業用ゴム製品の製造販売を目的として富国ゴム工業が設立されました。1956年4月にワイパーブレードラバーの生産を開始し、1986年1月に現在のフコクへ社名を変更しています。その後、タイや米国、中国などに拠点を展開し、2004年に東京証券取引所市場第二部へ上場、2005年に同市場第一部へ指定され、現在はプライム市場に移行しています。

現在の従業員数は連結で4,401名、単体で1,167名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には個人の渡邉まり氏、第3位にも信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 11.90%
渡邉まり 5.00%
日本カストディ銀行 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は大城郁男氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
小川隆 取締役会長 日本電装(現デンソー)副社長などを経て2019年に入社。2020年に代表取締役社長に就任し、2023年より現職。
大城郁男 代表取締役社長 1983年に入社後、新事業統括OA事業ユニット長や営業本部長などを歴任。2023年より現職。
江村昌広 取締役常務執行役員 1989年に入社し、各工場の工場長や事業統括本部長などを経て、2026年より現職。
渡邊泉 取締役執行役員CTO事業創造室長 トヨタ自動車でのFC製品開発部主査などを経て、2024年に入社。2025年より現職。
松岡善右 取締役執行役員CFOコーポレート本部長 双日などで管理部門責任者や取締役欧州・ロシア地域職能部門統括などを歴任後、2025年に入社。2026年より現職。
権益俊 取締役 1996年に入社。韓国フコクの社長や青島フコクの董事長などを経て、2024年に取締役に就任し、2026年より現職。
木村尚 取締役(監査等委員) アコムなどを経て2007年に入社。財務本部長兼財務部長などを歴任し、2020年より現職。


社外取締役は、ロバートHヤンソン(ヤンソン・アンド・アソシエイツ社長)、清水裕子(ライト工業社外取締役)、小泉寛(武蔵エンジニアリング主幹技師)、藤原康弘(藤原会計士事務所代表)、赤澤義文(露木・赤澤法律事務所入所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機能品事業」「防振事業」「ライフサイエンス事業」「金属加工事業」「ホース事業」の報告セグメントを展開しています。

(1) 機能品事業


ワイパーブレードラバーやシール部品、OA関連機器の部品などの製造販売を行っています。国内外の得意先向けに、自動車の安全性や視界確保に寄与する高付加価値な製品群を提供しています。
製品の販売代金を得る収益モデルです。運営は同社のほか、韓国フコクやサイアムフコクなどの海外子会社が幅広く担い、グローバルな製造・販売体制を構築しています。

(2) 防振事業


自動車や鉄道、建設機械などに使用されるダンパー、マウント、ウレタンなどの製品を製造販売しています。振動や騒音を抑え、快適な乗り心地や操作性を提供する部品が主力です。
製品の販売代金を得る収益モデルとなっています。同社を中心に、韓国フコク、タイフコク、サイアムフコク、上海フコクなどの海外子会社が製造と販売を担っています。

(3) ライフサイエンス事業


バイオ関連製品の製造販売を手掛けています。細胞別培地や用途別バッグなど、再生医療や遺伝子治療分野に向けた製品や、細菌検査用の試薬チップなどを提供しています。
顧客への製品販売による収益モデルです。同事業の運営は同社と、中国拠点の東莞フコクが担い、アカデミアとの共同研究も推進しています。

(4) 金属加工事業


建設機械用金属部品などの製造販売を行っています。建機メーカー等のニーズに対応する金属加工部品や板金製品を提供しています。
製品の販売代金を得る収益モデルです。本事業の運営は、子会社である末吉工業が担当しています。

(5) ホース事業


自動車や産業機械などに用いられるホースなどのゴム製品を製造販売しています。商用車向けなどを中心に、幅広い用途に対応する製品を展開しています。
顧客への製品販売による収益モデルです。事業の運営は、東京ゴム製作所、サイアムフコク、トリムラバーが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績推移を見ると、売上高は715億円から900億円へと着実に増加傾向にあります。一方で経常利益は直近2期間で伸び悩んでおり、利益率は5.1%から4.3%へと低下しました。親会社所有者帰属の当期利益も直近で減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 715億円 823億円 888億円 897億円 900億円
経常利益 25億円 31億円 41億円 46億円 39億円
利益率(%) 3.5% 3.8% 4.6% 5.1% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 18億円 24億円 8億円 -5億円

(2) 損益計算書


売上高は897億円から900億円へとわずかに増加しています。一方で売上総利益率は19.0%で横ばいとなっており、コスト負担等の影響から営業利益率は5.3%から4.2%へと低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 897億円 900億円
売上総利益 170億円 171億円
売上総利益率(%) 19.0% 19.0%
営業利益 47億円 38億円
営業利益率(%) 5.3% 4.2%

(3) セグメント収益


機能品事業やホース事業の売上高は、各種製品の拡販効果などにより堅調に推移しました。一方、金属加工事業は採算性向上に向けた事業の選択と集中を進めたことで減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
機能品事業 405億円 419億円
防振事業 382億円 378億円
ライフサイエンス事業 10億円 10億円
金属加工事業 53億円 40億円
ホース事業 47億円 53億円
連結(合計) 897億円 900億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期の営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 66億円 80億円
投資CF -58億円 -54億円
財務CF -6億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Yes, We Do!」の創業の精神の下、顧客の要望に真摯に向き合うことを経営の方針としています。創業以来のモノづくりで培った設計・試作・評価・量産のノウハウを集結させ、常に新しい価値創造に挑戦し続けることで、持続的な成長を遂げることを目指しています。

(2) 企業文化


創業70周年を節目として企業理念を刷新し、2023年に制定されたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の社内推進活動を行っています。従来の発想から抜け出し、価値創造に貢献する組織風土の醸成を推進するほか、コンプライアンスの強化やサステナビリティ経営を重視する文化の構築に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2023年6月に策定した「新中期経営計画2026」に基づき、体質改善と既存事業の強化、成長事業の拡大を図っています。なお、同計画の数値目標は一旦取り下げ、2027年3月期を「持続的成長のための強固な事業基盤構築」の最優先課題と位置づけ、通期連結業績予想値に置き換えて取り組むとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の強化として、ワイパーシステムの開発期間短縮やインドなどの成長地域への拡販を進めています。成長事業・新事業としては、EV化に伴うCASE市場に向けたバッテリーホールドシートなどの製品拡充や、ライフサイエンス分野での細胞別培地のソリューション提案などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「働きがいのある職場環境づくり」を人材戦略の3つの柱としています。次世代経営幹部やグローバル人材、DX人材の育成に注力し、すべての従業員が自分らしく働き、能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.3歳 15.6年 6,471,860円


※平均年間給与は賞与を含む支給総額を対象として算出しています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 70.6%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規労働者) 77.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 85.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外出向経験者比率(19.0%)、デジタル人材育成人数(34.0名)、障がい者雇用率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大規模災害等の影響


地震や津波などの自然災害や地政学リスクにより、事業拠点のある地域で生産活動や物流が停滞するリスクがあります。同社は事業継続計画(BCP)を策定し、安全最優先の基本方針に則って経営への影響を最小限に留める体制を整えています。

(2) コンプライアンスと内部統制


事業活動において法令に抵触する事態や内部統制上の重大な不備・不正が発生した場合、社会的信用の低下や業績悪化を招くリスクがあります。同社はコンプライアンス委員会の設置や社内規程の整備を通じ、再発防止とガバナンス向上を推進しています。

(3) 需要変動と自動車業界の動向


同社の売上高の8割以上は自動車関連部品が占めており、自動車メーカーのEV化方針やグローバル生産体制の見直しによる需要変動リスクがあります。情報収集を常に行い、技術開発投資を適切に判断して対応策を検討しています。

(4) 原材料及び部品の調達


多数の外部取引先から原材料を購入しているため、価格の高騰や供給の逼迫によって業績に影響が及ぶ可能性があります。取引先の拡充や適正化を進めるとともに、継続的な情報収集により安定調達を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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