フコク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フコク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する同社は、自動車用ワイパーブレードラバーや防振ゴムなどを主力とするゴム製品メーカーです。直近の業績は、売上高が前期比微増ながら、営業利益は約30%増と大幅な増益を達成しており、生産合理化や価格転嫁により収益性が向上しています。


※本記事は、株式会社フコク の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フコクってどんな会社?


自動車用ワイパーブレードラバーで世界的なシェアを持つ、工業用ゴム製品の製造・販売を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は1953年に富国ゴム工業として設立され、1956年にワイパーブレードラバーの生産を開始しました。2005年には東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。2024年10月には、顧客との共創拠点として愛知県に「ΦコミュニケーションHUB PCH」を開所しました。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は4,523名、単体では1,163名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位は資産管理会社と思われる法人および個人株主となっています。なお、前事業年度末に主要株主であったKAWAMOTO CMKは、当事業年度中に主要株主ではなくなりました。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 11.80%
KAWAMOTO CMK株式会社 9.10%
J河本株式会社 7.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は大城 郁男氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小川 隆 取締役会長 日本電装(現デンソー)入社。アスモ米国法人副社長、デンソーモータ事業部エグゼクティブアドバイザー等を経て、2020年より同社代表取締役社長。2023年6月より現職。
大城 郁男 代表取締役社長 1983年同社入社。機能品事業部長、産業機器事業部長、営業本部長などを歴任。2022年代表取締役副社長を経て、2023年6月より現職。
江村 昌広 取締役執行役員管理本部長兼人事企画部長 1989年同社入社。サイアムフコク副社長、群馬第二工場長、機能品事業部長などを経て、2023年6月より現職。安全・品質本部等を担当。
権 益俊 取締役 1996年同社入社。韓国フコク社長、青島フコク董事長などを歴任。2024年6月より現職(非常勤・中国担当)。


社外取締役は、ロバートHヤンソン(ヤンソン・アンド・アソシエイツ社長)、清水 裕子(元富士通サービスビジネス本部主席部長)、小泉 寛(武蔵エンジニアリング主幹技師)、藤原 康弘(公認会計士)、赤澤 義文(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機能品事業」、「防振事業」、「ライフサイエンス事業」、「金属加工事業」、「ホース事業」の5つの報告セグメントを展開しています。

機能品事業


シール部品、ワイパーブレードラバー、OA機器用製品などを製造・販売しています。自動車メーカーやOA機器メーカーなどが主な顧客です。特にワイパーブレードラバーは同社の主力製品であり、高いシェアを誇ります。

製品の販売対価が主な収益源です。製造・販売は、主にフコク本体および、韓国フコク、サイアムフコク、フコク東海ゴムインドネシアなどの海外子会社が行っています。国内および海外の顧客に対してグローバルに展開しています。

防振事業


自動車用のダンパー、マウント、ウレタン製品などを製造・販売しています。これらは振動を抑制し、自動車の快適性や静粛性を向上させるための部品です。自動車メーカーや建機メーカーが主な顧客となります。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は、フコク本体に加え、タイフコク、フコクインディア、上海フコク、青島フコクなどの海外子会社が製造・販売を担っています。

ライフサイエンス事業


バイオ関連製品の製造・販売を行っています。再生医療や細胞培養に関連する製品などを取り扱っており、研究機関や医療関連企業などが顧客です。新中期経営計画において注力分野とされています。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は、主にフコク本体および東莞フコクが行っています。

金属加工事業


トラックおよび建設機械用の金属部品などを製造・販売しています。輸送用機器メーカーや建機メーカーなどが主な顧客です。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は、主に子会社の末吉工業が行っています。同社から材料を仕入れ、加工部品を販売する形態をとっています。

ホース事業


各種ホース等のゴム製品を製造・販売しています。自動車や産業機械などに使用される製品を提供しています。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は、主に子会社の東京ゴム製作所、サイアムフコク、トリムラバーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。経常利益も第68期から第72期にかけて増加基調を維持しており、利益率も改善傾向にあります。ただし、第72期(当期)の当期純利益は、子会社の不正行為に関連する特別損失等の計上により減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 632億円 715億円 823億円 888億円 897億円
経常利益 14億円 25億円 31億円 41億円 46億円
利益率(%) 2.3% 3.5% 3.8% 4.6% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 8億円 18億円 24億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増ですが、売上総利益率が改善し、営業利益は大きく伸長しています。原材料費や労務費の上昇があったものの、合理化や売価反映が進んだことが要因です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 888億円 897億円
売上総利益 151億円 170億円
売上総利益率(%) 17.0% 19.0%
営業利益 36億円 47億円
営業利益率(%) 4.1% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料が43億円(構成比35%)、運賃が25億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


機能品事業と防振事業が売上・利益ともに主力となっています。特に防振事業は利益が大きく伸長しました。一方、金属加工事業は非採算部品の事業縮小により減収となりましたが、黒字を確保しています。ライフサイエンス事業は規模は小さいものの高い利益率を示しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
機能品事業 383億円 405億円 43億円 50億円 12.4%
防振事業 377億円 382億円 21億円 29億円 7.5%
ライフサイエンス事業 8億円 10億円 2億円 3億円 25.6%
金属加工事業 67億円 53億円 0.2億円 1億円 1.5%
ホース事業 53億円 47億円 2億円 2億円 4.4%
調整額 - - -33億円 -37億円 -
連結(合計) 888億円 897億円 36億円 47億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フコクは、営業活動により事業から得た資金が堅調に推移しました。投資活動では、主に設備投資のために資金を使用しました。財務活動では、借入による収入が返済を上回った一方で、配当金の支払いも行われました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 88億円 66億円
投資CF -45億円 -58億円
財務CF -28億円 -6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Yes, We Do!」の精神のもと、顧客の要望に真摯に向き合い、モノづくりで培ったノウハウを結集して新しい価値創造に挑戦し続けることを目指しています。中長期的には、独自のコア技術で高付加価値製品やソリューションを提供し、「あらゆる願いを、感動に変える。」心から愛される企業となることを掲げています。

(2) 経営計画・目標


2023年6月に「新中期経営計画2026」を策定し、最終年度である2027年3月期に向けた目標を掲げています。体質改善を推し進めるとともに、既存事業の強化と成長事業・新事業の拡大、ESGを重視した経営基盤の改革を通じて収益力の最大化を狙います。

* 2026年度 連結売上高:1,200億円
* 2026年度 営業利益率:8%
* 2026年度 ROE:12%

(3) 成長戦略と重点施策


「既存事業の強化」として、ワイパーブレードラバーにおけるソリューションビジネスの展開や、インドなどの成長地域への拡販を進めています。また、「成長事業・新事業の拡大」として、インダストリアル向け製品、CASE(電動化・自動運転等)市場、ライフサイエンス製品の拡大に注力しています。特にライフサイエンスでは、培地開発力の強化や検査チップの事業化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「新中期経営計画2026」に基づき、「幅広い視点から自ら深く考え動く人材の育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「働きがいのある職場環境づくり」を人材戦略の柱としています。次世代経営幹部やグローバル人材、デジタル人材の育成に加え、女性リーダーの育成、シニア社員の活躍推進、男性育児休業の取得促進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 15.1年 6,211,802円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 72.4%
男女賃金差異(正規労働者) 76.8%
男女賃金差異(非正規労働者) 82.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外出向経験者比率(19%)、デジタル人材育成人数(28名)、障がい者雇用率(2.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 内部統制不備のリスク


連結子会社において元従業員による不正な経理処理が発生した事実を受け、管理体制の立て直しやグループ全体の内部統制強化を進めています。しかし、今後予期せぬ内部統制上の重大な不備や不正等が発生した場合、業績や財務状況、社会的信用に大きな影響を与える可能性があります。

(2) コンプライアンスリスク


法令違反等の事態が発生した場合、信用低下や損害賠償費用等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、企業理念の浸透や組織風土改革、啓発活動による意識向上に取り組み、違反の予防に努めています。

(3) 災害・社会インフラ麻痺等の影響


国内外に広く事業展開しているため、地震等の自然災害、戦争、パンデミック等が発生した場合、調達・生産・販売活動の遅延や停止のリスクがあります。事業継続計画(BCP)の策定や危機対策組織の設置により、影響を最小限に留める体制を整えています。

(4) 原材料調達リスク


多数の外部取引先から原材料や部品を購入しているため、市況高騰や供給逼迫、取引先の廃業などにより影響を受ける可能性があります。取引先の拡充や適正化、経営状況の把握などを通じて安定調達に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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