※本記事は、株式会社朝日ラバーの有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 朝日ラバーってどんな会社?
工業用ゴムと医療用ゴム製品の製造販売を主力とし、独自の技術力を強みとするメーカーです。
■(1) 会社概要
1970年に設立され、1986年の福島工場開設以降、第二福島工場や白河工場など国内の生産拠点を順次拡大してきました。1998年に株式を店頭登録し、2004年のジャスダック上場を経て現在はスタンダード市場に上場しています。また、中国や米国、香港などに海外拠点を展開するほか、2024年には医療製品の販売子会社を設立しています。
同社グループは連結で538名、単体で335名の従業員を抱えています。筆頭株主は法人である伊藤コーポレーションで、第2位も法人である晋文金属が名を連ねており、第3位には従業員持株会が入っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤コーポレーション | 10.35% |
| 晋文金属 | 7.43% |
| 朝日ラバ―従業員持株会 | 5.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は渡邉陽一郎氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邉陽一郎 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。高機能製品事業部長などを経て、海外販売子会社の董事長を歴任。2015年3月より現職。 |
| 大槻尚文 | 専務取締役事業・品質保証担当 | 1995年同社入社。技術本部グループ長や福島工場技術グループ長を務め、中国法人の総経理を歴任。2025年6月より現職。 |
| 滝田充 | 取締役営業担当 | 1987年同社入社。営業統括部長や営業本部長を経て、海外子会社の董事長を歴任。2023年4月より現職。 |
| 堀信幸 | 取締役管理担当 | 1991年同社入社。管理本部総務部長や管理本部長を歴任し、中国法人や米国法人の役員を務める。2024年6月より現職。 |
| 田崎益次 | 取締役(監査等委員) | 1986年同社入社。技術統括部長や白河工場長、管理本部長を歴任。品質保証担当などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、筑紫勝麿(元造幣局長・弁護士)、渡部修(元福島県ハイテクプラザ副所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工業用ゴム事業」および「医療・衛生用ゴム事業」を展開しています。
■(1) 工業用ゴム事業
車載用機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用品などに使用される工業用ゴム製品の開発・設計・製造を行っています。自動車内装照明用のLED向けレンズや、卓球ラケット用ラバー、自動認識機器向けのRFIDタグ用ゴム製品などを国内外のメーカーへ供給しています。
製品を顧客に販売することで収益を得るモデルです。国内生産は同社が担当し、中国での製造は東莞朝日精密橡膠制品が担っています。販売面では同社が国内向けを、朝日橡膠や朝日科技、Asahi Crosslink Corporationが海外向けを展開しています。
■(2) 医療・衛生用ゴム事業
診断や治療向けに使用される医療用ゴム製品や、衛生性および衝撃吸収性に優れた衛生用ゴム製品を製造しています。主な製品として、採血用や薬液混注用のゴム栓、医療用逆止弁、プレフィルドシリンジガスケット、医療手技シミュレータ製品などを医療機関や医療機器メーカーへ提供しています。
医療関連機器向けのゴム製品を販売することで収益を上げています。国内の製造は同社が一貫して行い、販売業務については同社および子会社である朝日フロントメディックが国内ならびにアジア諸国の市場に向けて展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は長期的に拡大傾向にあり、直近では78億円を突破して過去最高水準となっています。利益面では、一時的な原材料価格の高騰や減損損失の影響により赤字を計上した時期がありましたが、直近の通期決算では価格転嫁や生産効率化が奏功し、経常利益・当期利益ともに黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 70.2億円 | 72.1億円 | 71.8億円 | 76.4億円 | 78.5億円 |
| 経常利益 | 3.1億円 | 1.9億円 | 2.0億円 | 0.3億円 | 1.9億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 2.7% | 2.7% | 0.4% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 2.0億円 | 1.3億円 | -2.4億円 | 1.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加えて売上総利益率が改善し、2026年3月期は大幅な増益を達成しました。原価改善や販売単価への転嫁が利益率の向上に寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 76.4億円 | 78.5億円 |
| 売上総利益 | 16.1億円 | 18.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 23.6% |
| 営業利益 | 228万円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.0% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.6億円(構成比34%)、研究開発費が1.2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
工業用ゴム事業は、スポーツ用品向けや操作系精密ゴム製品の受注増により増収、生産効率化で大幅な増益となりました。一方、医療・衛生用ゴム事業は診断・治療向けゴム栓の好調で売上高が過去最高となったものの、販売製品構成の変化により減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 工業用ゴム事業 | 58.7億円 | 59.5億円 | 1.1億円 | 3.1億円 | 5.1% |
| 医療・衛生用ゴム事業 | 17.6億円 | 19.1億円 | 1.7億円 | 1.3億円 | 6.9% |
| 連結(合計) | 76.4億円 | 78.5億円 | 228万円 | 2.0億円 | 2.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金と借入による資金調達を合わせて、成長のための積極的な投資を行う「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.8億円 | 8.4億円 |
| 投資CF | -7.5億円 | -6.7億円 |
| 財務CF | 0.4億円 | 2.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も51.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「個性を尊重し特徴ある企業に高めよう。豊かな人間関係、生活の向上を目指し社会に奉仕しよう。」という社訓を掲げています。また、2030年を見据えた長期ビジョン「AR-2030VISION」を策定し、「弾性無限の創造で持続的な価値向上がつながる社会に貢献する企業へと成長し続ける」ことを目指すべき姿として定めています。
■(2) 企業文化
社訓の精神に基づき、「広く社会に貢献すること」「人間として成長していくこと」を経営の基本方針の骨子としています。行動指針には「ステークホルダー・エンゲージメントを高める」ことを据え、「機動力・対応力・誠実」という「朝日ラバーらしさ」を磨き続けることで、社会や組織に最大限貢献できる人材の育成を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「AR-2030VISION」の実現に向け、2026年度から5カ年の「第15次中期経営計画」を推進し、「ウェルネスブランディングで持続的な成長を目指す」ことを基本方針に掲げています。具体的な定量目標として以下の数値を設定し、持続的な成長を追求しています。
・売上高100億円以上
・連結営業利益率5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中核である4事業をベースに、将来を見据えた市場への挑戦と事業の枠組みの再構築を推進します。具体的には、「モビリティ」「医療」「スポーツ・健康」「生活」の重点市場における「ウェルネス領域」に注力し、従来のOEMから自社設計開発を行うODM企業への成長を目指します。技術やノウハウの融合、外部とのアライアンスを通じて高付加価値なソリューションを提供します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員との対話を大切にし、安心・健康でやりがいのある働きやすい職場づくりを推進しています。「働きがい(Well-being)向上」「人材育成」「採用」を軸とし、従業員が公平に評価される資格等級制度や給与制度の構築を目指しています。また、主体的な挑戦と自己実現を支援するキャリア開発プランや専門スキル研修なども充実させています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 16.5年 | 5,736,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | 44.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 49.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要製品・新規受注製品の大幅な減少
同社の製品は最終製品に組み込まれる部品であるため、顧客の販売戦略や市場動向によって受注数量が計画を下回るリスクがあります。この影響を抑えるため、工場間のフレキシブルな生産体制の構築や、新しい付加価値提案による新規市場の開拓を進めています。
■(2) 人材採用の未達と雇用維持リスク
少子化や労働市場における競争激化により、計画通りに人材を採用できないリスクや、人件費の上昇による利益圧迫のリスクが存在します。これに対し、採用ブランディングの強化や情報発信の拡充を図るとともに、生産性向上やデジタル化による業務効率化を推進しています。
■(3) 新製品立ち上げ・自社開発の遅れ
独自の技術を活かした新製品開発は中長期的な成長に不可欠ですが、難易度の高い開発テーマの進捗遅れなどが生じた場合、将来の売上高に影響を及ぼす可能性があります。重要案件のプロジェクト化によるリソース集中や失注要因の分析を行い、開発のスピードアップに努めています。
■(4) 原材料価格の高騰や調達難
ゴム原料などの価格はグローバルな市況変動の影響を受けやすく、価格が急騰した場合や物流問題によって必要な材料が入手困難になった場合、業績に影響する可能性があります。原価改善や販売単価への価格転嫁交渉を進めつつ、代替品の調査や新たな仕入先の開拓に取り組んでいます。



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