※本記事は、株式会社朝日ラバー の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 朝日ラバーってどんな会社?
ゴムの微細加工や光・色を制御する独自技術に強みを持ち、工業用および医療用ゴム製品を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1970年にゴム小物部品の製造販売を目的に設立。1976年に株式会社化し、2004年にJASDAQへ上場しました。その後、白河工場の開設や中国・北米への拠点展開を進め、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。現在は工業用と医療・衛生用の2事業を柱に展開しています。
連結従業員数は506名、単体では319名です。筆頭株主は有限会社伊藤コーポレーションで、第2位は従業員持株会、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社伊藤コーポレーション | 10.40% |
| 朝日ラバー従業員持株会 | 5.13% |
| 佐藤 尚美 | 4.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は渡邉陽一郎氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邉 陽一郎 | 代表取締役社長 | 1989年入社。営業統括部長、取締役営業担当等を経て2015年より現職。 |
| 滝田 充 | 取締役営業担当 | 1987年入社。営業統括部長、取締役営業本部長等を経て2024年8月より朝日フロントメディック社長を兼務し現職。 |
| 大槻 尚文 | 取締役事業・品質保証担当 | 1995年入社。執行役員事業・技術担当等を経て2025年4月より現職。朝日FR研究所社長を兼務。 |
| 堀 信幸 | 取締役管理担当 | 1991年入社。管理本部長、執行役員管理担当を経て2024年6月より現職。 |
| 田崎 益次 | 取締役(監査等委員) | 1986年入社。技術本部長、白河工場長、管理本部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、筑紫勝麿(元サントリー株式会社常務取締役・弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工業用ゴム事業」「医療・衛生用ゴム事業」を展開しています。
■工業用ゴム事業
車載用機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用品などに使用されるゴム製品を提供しています。特にLED関連製品やスイッチ用ラバーなどが主力です。顧客は自動車部品メーカーや電機メーカーなどが中心となります。
収益は、顧客への製品販売による対価を得ています。運営は、国内では同社、海外では中国の東莞朝日精密橡膠制品有限公司が製造を行い、販売は同社および朝日橡膠(香港)有限公司、Asahi Crosslink Corporationなどが担当しています。
■医療・衛生用ゴム事業
医療用ゴム製品(プレフィルドシリンジ用ガスケット等)や、衛生性・衝撃吸収性に優れた衛生用ゴム製品を提供しています。医療機器メーカー等が主な顧客であり、高い品質基準が求められる分野です。
収益は、製品の販売代金です。運営は主に同社が製造を行い、同社および子会社の株式会社朝日フロントメディックが販売を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は65億円から76億円へと緩やかな拡大傾向にあります。一方で利益面では、2022年3月期をピークに減少傾向が続き、直近の2025年3月期には当期純損失を計上しました。利益率の低下が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 65億円 | 70億円 | 72億円 | 72億円 | 76億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | 3.1億円 | 1.9億円 | 2.0億円 | 0.3億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | 4.5% | 2.7% | 2.7% | 0.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | 1.8億円 | 1.2億円 | 0.9億円 | -2.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は大幅に縮小しています。特別損失として減損損失を計上したこともあり、最終赤字となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 72億円 | 76億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 16億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.4% | 21.0% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 0.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 0.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.0億円(構成比31.4%)、研究開発費が1.6億円(同10.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
工業用ゴム事業は増収となったものの、開発費や設備投資関連費用の負担、減損損失の影響等により減益となりました。一方、医療・衛生用ゴム事業は売上高、利益ともに伸長しており、収益の柱として成長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 工業用ゴム事業 | 56億円 | 59億円 | 3.0億円 | 1.1億円 | 2.0% |
| 医療・衛生用ゴム事業 | 15億円 | 18億円 | 1.2億円 | 1.7億円 | 9.9% |
| 連結(合計) | 72億円 | 76億円 | 1.6億円 | 0.0億円 | 0.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
朝日ラバーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純損失があったものの、棚卸資産の減少や減損損失の計上などにより、前年と比較して収入額が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や有形固定資産の取得による支出が増加したため、大幅な支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の収入が支出を上回ったことなどにより、前年と比較して収入に転じました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.4億円 | 4.8億円 |
| 投資CF | 0.7億円 | -7.5億円 |
| 財務CF | -2.4億円 | 0.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、2030年を見据えたビジョン「AR-2030 VISION」を掲げています。行動指針として「ステークホルダー・エンゲージメントを高める」ことを定め、会社は社会のためにあるという認識のもと、持続的に社会に貢献できる企業であり続けることを目指しています。
■(2) 経営計画・目標
「AR-2030 VISION」実現に向け、2026年3月期を最終年度とする第14次中期経営計画を推進しています。テーマを「後継」と「Well-being」とし、「選択と集中で駆け抜ける・駆け上がる」をスローガンに掲げています。
* 連結売上高:85億円以上
* 連結営業利益率:5%以上
■(3) 成長戦略と重点施策
独自の技術を活かした付加価値提供と、OEMからODMへの移行による稼ぐ力の向上を目指しています。2025年4月より技術本部を設置し、技術の集約と効率的な運用を図ります。注力する4つの事業分野(光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信)において、「朝日ラバーらしさ」を磨き貢献していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員との対話を重視し、安心・健康でやりがいのある職場づくりを目指しています。人材像として「自立心」「個性の尊重」「公平な評価」を掲げ、従業員個人のスキルを踏まえた教育計画やキャリアアッププランの策定を行っています。また、役職ではなく名前による呼称の推奨など、風通しの良い職場環境づくりにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 16.7年 | 5,353,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 78.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 48.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要製品・新規受注製品の大幅な減少
同社製品の多くは顧客の最終製品に組み込まれるため、顧客の販売動向や戦略変更の影響を強く受けます。特に自動車関連製品などは車種の販売低迷により受注が減少するリスクがあります。営業部門と工場の連携強化や生産体制の平準化で対応していますが、依然として影響度は高いと認識しています。
■(2) 新製品立ち上げ・自社開発の遅れ
独自の技術を活かした新製品開発は経営の重要課題ですが、難易度の高いテーマや他社の動向により開発が遅れる可能性があります。これは将来の受注減や事業成長の停滞に直結するため、開発スケジュールの明確化や失注要因の分析などを通じて対策を進めています。
■(3) 採用募集の未達
少子化や競争激化により、計画通りの人材採用ができないリスクがあります。必要な人材を確保できない場合、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、大学等との関係強化やSNSでの情報発信、採用チャネルの拡大など、アピール強化に取り組んでいます。
■(4) エネルギーコストの高騰
製造工程において多くの電気や水を使用するため、エネルギー価格の高騰は製造原価の上昇に直結します。太陽光発電の導入や省エネ活動、生産性向上による対策を進めていますが、外部要因によるコスト増は業績に影響を与える可能性があります。



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