※本記事は、ニッピの有価証券報告書(第179期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッピってどんな会社?
コラーゲンやゼラチンを用いた食品や化粧品の製造販売を中心に、皮革製品の販売や不動産賃貸まで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1907年に日本皮革として設立され、タンニンによる鞣製事業を開始しました。1936年にゼラチン製造事業へ進出し、1970年にはコラーゲン・ケーシング工場を新設するなど多角化を進めました。1974年に社名を現在のニッピに変更し、1988年にはニッピコラーゲン化粧品を設立して一般消費者向けの販売を強化しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。
現在の従業員数は連結で630名、単体で466名体制です。筆頭株主は事業会社のリーガルコーポレーションで、第2位は大成建設、第3位は中央建物と続いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リーガルコーポレーション | 12.70% |
| 大成建設 | 7.95% |
| 中央建物 | 4.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は伊藤裕子氏が務めており、社外取締役の比率は10%(1名)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 裕子 | 代表取締役社長 | 2004年同社入社。ニッピコラーゲン化粧品代表取締役社長や同社経営企画室長などを経て、2023年より現職。日本皮革研究所理事長も務める。 |
| 井上 善之 | 取締役経理部長、皮革事業部・財務部門・関係会社担当 | 1986年同社入社。経理部長、財務部門担当などを歴任。2023年よりニッピ・フジタ代表取締役社長を務め、関係会社担当として現職。 |
| 深澤 幸洋 | 取締役コラーゲン・ケーシング営業部長、コラーゲン事業部担当、知財統括管理責任者、化粧品製造開発部長 | 1985年同社入社。富士宮工場の工場長や執行役員を経て、2021年より取締役。2024年よりコラーゲン・ケーシング営業部長などを担う。 |
| 野村 聡 | 取締役ゼラチン事業部、バイオ・ケミカル事業部、バイオマトリックス研究所担当、コラーゲン事業部担当補佐 | 1985年同社入社。バイオ・ケミカル営業部長や製造部長を歴任。2023年より取締役。ニッピコラーゲン化粧品代表取締役社長も兼務。 |
| 宮脇 幹太 | 取締役経営企画室長、労務人事部担当取締役補佐 | 1988年大倉商事入社。長瀬産業を経て2018年に同社入社。労務人事部長や執行役員を歴任し、2023年より経営企画室長として現職。 |
| 児玉 憲明 | 取締役総務部・労務人事部担当 | 1997年同社入社。事務部長や富士宮工場長を経て、2021年に執行役員に就任。2025年より取締役として総務部および労務人事部を担当。 |
社外取締役は、東海林崇氏(元KDDI代表取締役執行役員副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コラーゲン・ケーシング事業」「ゼラチン関連事業」「化粧品関連事業」「皮革関連事業」「賃貸・不動産事業」「食品その他事業」を展開しています。
■コラーゲン・ケーシング事業
ソーセージ用の可食性コラーゲン・ケーシングを国内外の顧客向けに製造および販売しています。少量多品種のニーズに対応する生産体制を構築し、多様な食品メーカーに製品を提供しています。
国内外の食品メーカーから製品の販売代金を受け取ります。同社が製造および販売を主体として担い、輸出の一部は子会社のNIPPI COLLAGEN NA INC.を通じて販売しています。
■ゼラチン関連事業
食品用、医薬用、工業用のゼラチンやコラーゲンペプチドを国内外から原材料として調達し、加工・製造してユーザーに販売しています。健康志向の高まりを受け、需要が拡大している分野です。
国内外の顧客からの販売代金が主な収益源です。製品の販売は主に同社が行っていますが、一部は大鳳商事や日皮(上海)貿易有限公司などの子会社を通じて販売しています。
■化粧品関連事業
化粧品用コラーゲン原料や健康食品用コラーゲン、スキンケアジェルを製造し、通信販売を通じて一般消費者に直接提供しています。スペシャルケア領域に強みを持ち、顧客基盤の拡充を進めています。
一般消費者からの製品購入代金が収益となります。同社が原料および製品の製造やOEM委託を行い、販売は通信販売会社である子会社のニッピコラーゲン化粧品が担っています。
■皮革関連事業
靴用革や自動車用革などの皮革製品を国内外から購入し、ユーザーに販売しています。また、東南アジア諸国では自動車のハンドル用革なども取り扱っています。
靴メーカーや自動車関連企業からの販売代金が収益源です。主に子会社のニッピ・フジタが仕入販売を行い、日皮(上海)貿易有限公司なども自動車用革の原材料調達と販売を担っています。
■賃貸・不動産事業
東京都足立区や大阪市浪速区を中心とする所有不動産の賃貸や管理を行っています。商業施設やオフィスビルなどの用途で土地や建物を有効活用しています。
入居するテナント企業や店舗からの不動産賃貸収入が収益となります。不動産の賃貸は同社が直接行い、管理業務やコンサルタント業務はニッピ都市開発が担当しています。
■食品その他事業
イタリア食材や有機穀物などの輸入販売に加え、iPS細胞培養基材や医療用コラーゲンなどのバイオ関連製品の製造販売を展開しています。研究用途や医療用の高度なニーズに対応しています。
外食産業や食品メーカー、研究機関などからの販売代金が収益です。食品関連の輸入販売は大鳳商事や大倉フーズが行い、バイオ関連製品は同社やマトリクソームを通じて販売しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近でやや減少傾向にありますが、経常利益や当期利益は堅調に推移しており、利益率は着実な上昇傾向を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 393億円 | 448億円 | 490億円 | 491億円 | 473億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 16億円 | 37億円 | 36億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 3.5% | 7.6% | 7.4% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 12億円 | 25億円 | 25億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少したものの、売上総利益と営業利益はいずれも増加し、各利益率も改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 491億円 | 473億円 |
| 売上総利益 | 132億円 | 140億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.8% | 29.6% |
| 営業利益 | 36億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が23億円(構成比23.4%)、給料及び手当が16億円(同16.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ゼラチン関連事業や化粧品関連事業が売上構成の大半を占め、高い利益率で全体を牽引しています。一方、皮革関連事業などは需要減少の影響を受けています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コラーゲン・ケーシング事業 | 93億円 | 92億円 | 12億円 | 8億円 | 8.8% |
| ゼラチン関連事業 | 132億円 | 126億円 | 16億円 | 24億円 | 19.0% |
| 化粧品関連事業 | 77億円 | 83億円 | 10億円 | 13億円 | 15.7% |
| 皮革関連事業 | 72億円 | 59億円 | 2億円 | 2億円 | 3.4% |
| 賃貸・不動産事業 | 11億円 | 11億円 | 8億円 | 8億円 | 72.7% |
| 食品その他事業 | 106億円 | 103億円 | 6億円 | 6億円 | 5.8% |
| 連結(合計) | 491億円 | 473億円 | 36億円 | 42億円 | 8.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 47億円 | 30億円 |
| 投資CF | -8億円 | -4億円 |
| 財務CF | -38億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「優れた製品・サービスによって社会に貢献し、人々のより良い暮らしを創造する」ことを経営理念に掲げています。創業以来の理念を現代の事業環境に適応させながら、付加価値の高い製品提供を通じて社会に寄与することを使命としています。
■(2) 企業文化
「長年培った技術開発力をベースに、お客様ニーズに合致する高品質の製品を提供し、顧客満足度を高めることで中長期的成長の持続を目指す」ことを基本方針としています。また、社会的責任を重視し、法令遵守による公正かつ適切な経営の実現に努める文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画において、企業価値向上を実現するための重要な財務指標を掲げています。成長事業への注力と既存事業の収益力強化を図る方針です。
・ROE 7%
・連結配当性向 70%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の課題解決と収益基盤の強化を推進します。コラーゲン・ケーシング事業では生産性の向上を図り、ゼラチン関連事業では由来原料や調達先の見直しによるコスト競争力を強化します。また、化粧品部門の顧客基盤拡充や、バイオ関連分野での新製品開発など、成長領域への戦略的投資を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「タンパク質研究のエキスパートとして人々の生活の質の向上に貢献する」というビジョンのもと、人材を重要な経営資本と位置付けています。多様性を尊重し、OJTやOFF-JTを通じた教育・研修体制の充実を図ることで、従業員が能力を最大限に発揮できる職場環境づくりと自律的なキャリア形成を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.4歳 | 14.7年 | 6,262,290円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修参加人数(延べ526人)、年次有給休暇取得率(88.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制に係る影響
同社が販売する製品や製造原料の多くは輸入品であり、関税の対象となります。貿易協定などによる関税率の変更や、国内外の原料および製品に対する新規規制の導入、法的な改廃によって、取引や事業活動が影響を受ける可能性があります。
■(2) 大規模災害等の影響
地震、津波、洪水などの自然災害や感染症の拡大により、同社グループの事業拠点や原料調達先が稼働できなくなるリスクがあります。特に主要事業の生産工場が静岡県に集中しており、富士山噴火などの災害が発生した場合、生産・供給に重大な支障をきたす恐れがあります。
■(3) 原料価格の変動リスク
製品の原料として牛皮、豚皮、魚皮などを多く使用しています。調達先の複数化による安定確保に努めていますが、市場の需給動向により原料価格が高騰する可能性があります。多岐にわたる製品を展開しているため、価格変動を販売価格に転嫁しきれず製造コストが増加するリスクがあります。
■(4) 設備投資に係るリスク
事業の競争力強化に向けて、生産設備などの投資を継続的に行っています。事前の市場環境調査により採算性を慎重に検討していますが、市場規模が想定以上に縮小し生産能力が過大となった場合、投資回収が困難となり減損損失等が発生する可能性があります。



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