※本記事は、株式会社ニッピ の有価証券報告書(第178期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッピってどんな会社?
コラーゲンやゼラチンの研究開発に強みを持つ老舗メーカーです。食品、医薬、化粧品等の多分野で事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1907年に日本皮革として設立され、タンニン鞣製事業を開始しました。1936年にゼラチン製造へ進出し、1963年に株式店頭登録を行いました。1974年に現社名へ商号変更し、1988年にはニッピコラーゲン化粧品を設立しました。2022年の市場区分見直しにより、東証スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は640名、単体では471名です。筆頭株主は靴の製造販売を行うリーガルコーポレーションで、皮革関連事業における主要取引先でもあります。第2位は取引先である建設会社、第3位は創業家関連の不動産会社が名を連ねており、事業上の関係が深い企業が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リーガルコーポレーション | 14.45% |
| 大成建設 | 7.74% |
| 中央建物 | 4.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は伊藤裕子氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 裕子 | 代表取締役社長 | 2004年ニッピ入社。大倉フーズ取締役、ニッピ執行役員、ニッピコラーゲン化粧品代表取締役社長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 伊藤 隆男 | 代表取締役会長 | 1966年高砂ゴム工業入社。大鳳商事代表取締役社長、大倉フーズ代表取締役会長、ニッピ代表取締役社長などを経て、2019年4月より現職。 |
| 井上 善之 | 取締役皮革事業部・財務部門・関係会社担当、経理部長、経営企画室兼務 | 1986年ニッピ入社。経理部長、経営企画室長、皮革事業部担当、日皮(上海)貿易有限公司董事長などを経て、2023年6月よりニッピ・フジタ代表取締役社長を兼務。 |
| 深澤 幸洋 | 取締役コラーゲン事業部担当 | 1985年ニッピ入社。ニッピコラーゲン工業取締役、同社芝川工場工場長、コラーゲン・ケーシング製造統括長などを経て、2024年9月よりコラーゲン・ケーシング営業部長を兼務。 |
| 野村 聡 | 取締役バイオ・ケミカル事業部担当兼営業部長、バイオマトリックス研究所担当 | 1985年ニッピ入社。コラーゲン事業部品質保証室長、バイオ・ケミカル営業部長、上席執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
| 佐野 武彦 | 取締役ゼラチン事業部担当 | 1986年ニッピ入社。富士工場管理部長、富士工場工場長、執行役員などを経て、2023年7月よりNIPPI COLLAGEN NA INC.取締役社長を兼務。 |
| 宮脇 幹太 | 取締役総務部・労務人事部担当、経営企画室長、知財統括管理責任者 | 1988年大倉商事入社。長瀬産業を経て2018年ニッピ入社。労務人事部長、執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、村上勝彦(東京経済大学名誉教授、公益財団法人大倉文化財団理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コラーゲン・ケーシング事業」「ゼラチン関連事業」「化粧品関連事業」「皮革関連事業」「賃貸・不動産事業」および「食品その他事業」を展開しています。
■コラーゲン・ケーシング事業
ソーセージ等の加工食品に使用される可食性コラーゲン・ケーシングを製造・販売しています。国内外の食品メーカー等が主な顧客です。
収益は製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、原材料の一部は連結子会社の日皮胶原蛋白(唐山)有限公司から購入し、北米への輸出販売の一部は在外連結子会社のNIPPI COLLAGEN NA INC.が担っています。
■ゼラチン関連事業
食品用、医薬用、工業用のゼラチンおよびコラーゲンペプチドを製造・販売しています。国内外の食品メーカーや製薬会社等が顧客です。
収益は製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、一部の原材料調達や販売において、連結子会社の大鳳商事や日皮(上海)貿易有限公司等が関与しています。
■化粧品関連事業
コラーゲン配合の化粧品および健康食品を製造・販売しています。一般消費者が主な顧客です。
収益は通信販売による商品代金から得ています。同社が原料や製品を製造し、販売は連結子会社の株式会社ニッピコラーゲン化粧品が担当しています。
■皮革関連事業
靴用革、自動車用革、皮革製品等を販売しています。靴メーカーや自動車部品メーカー等が顧客です。
収益は製品の販売代金から得ています。運営は連結子会社の株式会社ニッピ・フジタ、日皮(上海)貿易有限公司、大鳳商事などが担っています。
■賃貸・不動産事業
東京都足立区や大阪市浪速区を中心に、所有する土地・建物等の不動産賃貸事業を行っています。
収益は賃貸料から得ています。運営は同社が行い、管理業務等は非連結子会社のニッピ都市開発株式会社が行っています。
■食品その他事業
輸入食材、有機穀物、肥料等の販売や、iPS細胞培養基材、リンカー製品等の製造販売を行っています。
収益は商品の販売代金から得ています。運営は連結子会社の大鳳商事、大倉フーズ、および同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、第174期の356億円から第178期には491億円へと成長しています。経常利益は第174期から第177期にかけて大幅に増加しましたが、第178期は微減となりました。利益率は第177期に7.6%と高い水準に達し、第178期も7.4%と高水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 356億円 | 393億円 | 448億円 | 490億円 | 491億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 18億円 | 16億円 | 37億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 4.5% | 3.5% | 7.6% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 44億円 | 10億円 | 7億円 | 18億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は約26%から27%へと改善しました。営業利益はほぼ横ばいで推移しており、安定した収益性を維持しています。販管費の増加が利益の伸びを抑制している傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 490億円 | 491億円 |
| 売上総利益 | 127億円 | 132億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.0% | 26.8% |
| 営業利益 | 36億円 | 36億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が22億円(構成比23.3%)、給料及び手当が16億円(同16.6%)、運賃及び荷造費が12億円(同12.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力であるゼラチン関連事業とコラーゲン・ケーシング事業が売上の大きな割合を占めていますが、ゼラチン関連事業は減収となりました。一方、食品その他事業は大幅な増収増益を達成しており、成長を牽引しています。コラーゲン・ケーシング事業は減収ながら増益となり、利益率が向上しました。皮革関連事業は減収減益で苦戦しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コラーゲン・ケーシング事業 | 95億円 | 93億円 | 10億円 | 12億円 | 12.5% |
| ゼラチン関連事業 | 139億円 | 132億円 | 16億円 | 16億円 | 12.0% |
| 化粧品関連事業 | 76億円 | 77億円 | 10億円 | 10億円 | 13.2% |
| 皮革関連事業 | 76億円 | 72億円 | 4億円 | 2億円 | 2.9% |
| 賃貸・不動産事業 | 11億円 | 11億円 | 8億円 | 8億円 | 78.8% |
| 食品その他事業 | 94億円 | 106億円 | 4億円 | 6億円 | 5.6% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -16億円 | -18億円 | -% |
| 連結(合計) | 490億円 | 491億円 | 36億円 | 36億円 | 7.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 47億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -19億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「優れた製品・サービスによって社会に貢献し、人々のより良い暮らしを創造すること」を経営理念として掲げています。長年培った技術開発力を基盤に、顧客ニーズに合致する高品質な製品を提供し、顧客満足度を高めることで中長期的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、社会的責任を果たすことを企業継続の基礎と認識し、法令・諸規定の遵守に努め、公正かつ適切な経営の実現を図ることを基本方針としています。また、意思決定プロセスの明確化と迅速化に努める姿勢を重視しています。「私たちの行動規準」を定め、環境保全や社会との共生関係、誠実な事業活動を推進する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする新たな中期経営計画(2026年3月期-2028年3月期)を策定しています。新中計では、成長事業への注力、既存事業の収益力向上によるリターンの強化、新たな資本政策の実施、コーポレート・ガバナンス体制への進化を基本方針としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「成長と健全性の両立」「収益基盤の改革」「人材育成の推進」を掲げ、事業ごとの課題に取り組んでいます。コラーゲン・ケーシング事業では海外市場開拓と製造コスト低減、ゼラチン関連事業では海外提携強化と機能性素材開発に注力します。化粧品事業は独自性の高い商品開発と新規顧客獲得を進め、食品その他事業では有機穀物の供給安定化やバイオ関連製品の生産性向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を価値創造の源泉と位置づけ、多様性を尊重し、従業員が能力を最大限発揮できる環境づくりに取り組んでいます。性別・国籍等を問わない採用や、現場経験と研修を通じた人材育成を推進しています。また、労働時間の適正管理やライフイベントに配慮した制度拡充により、安心して働き続けられる職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.4歳 | 15.0年 | 6,060,543円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修開催回数と参加人数(年8回・延べ139人)、年次有給休暇取得率(82.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 開発力・技術力と競争環境
同社の製品は研究所を中心とした開発力に依存していますが、安価品や新規参入者との競争が激化しています。開発品が良質であっても、必ずしも競合に対して優位に立てるとは限らないリスクがあります。
■(2) 法的規制及び貿易環境の変化
製品の一部や原料の多くは輸入品であり、関税対象品目です。貿易協定による関税率の変更や、原料・製品に対する法規制の改廃変更により、同社グループの取引や業績が影響を受ける可能性があります。
■(3) 金利上昇の影響
同社は主に固定金利での資金調達やデリバティブ取引によるヘッジを行っていますが、急激な金利上昇が発生した場合、支払利息の増加などを通じて経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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