※本記事は、日本山村硝子株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本山村硝子ってどんな会社?
日本山村硝子は、ガラスびんやプラスチック容器を中心とした各種包装容器の製造・販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1914年に山村製壜所として創業し、1955年に株式会社へ改組して山村硝子として発足しました。1998年には日本硝子と合併し、現在の日本山村硝子へと社名を変更しています。その後、2009年に関西・東京の二本社制へ移行し、2019年には山村プラスチックプロダクツを設立するなど体制強化を進めています。
現在の同社グループは、連結従業員数1,884名、単体従業員数773名の体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業関係者で構成される日本山村硝子取引先持株会であり、第2位は個人投資家のMURAKAMI TAKATERU氏、第3位は信託業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本山村硝子取引先持株会 | 7.25% |
| MURAKAMI TAKATERU | 4.74% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口) | 4.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は山村昇氏が務めています。また、社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山村幸治 | 取締役会長取締役会議長 | 1985年日本興業銀行入行。1991年入社。代表取締役社長兼最高執行責任者などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 山村昇 | 代表取締役社長執行役員 | 1992年入社。山村製壜所代表取締役社長、プラスチックカンパニー社長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 小林史吉 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。山村製壜所代表取締役社長などを歴任し、2026年4月より現職。 |
| 明神裕 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。ガラスびんカンパニー生産本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 田口智之 | 取締役常務執行役員 | 1986年入社。ニューガラスカンパニー社長などを歴任し、2026年4月より現職。 |
| 佐貫正義 | 取締役常勤監査等委員 | 1987年入社。コーポレート本部経理部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、高坂佳郁子(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)、泉豊禄(ハクスイテック代表取締役社長)、近谷逸郎(青陵法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガラスびん関連事業」「プラスチック容器関連事業」「物流関連事業」「ニューガラス関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■ガラスびん関連事業
ガラスびんの製造および販売を行っており、顧客は主に飲料や食品などの各種メーカーです。また、これに関連して製びん機や搬送装置等の製造・販売も手掛けています。
主な収益源は製品の販売代金です。ガラスびんの製造販売は日本山村硝子のほか、山村製壜所やSEISHOなどが担当し、物流や構内作業は山村倉庫などが担っています。
■プラスチック容器関連事業
飲料用を中心とした各種プラスチックキャップ等の製造・販売を行っており、国内外の飲料メーカー等へ製品を供給しています。
主な収益源はプラスチックキャップ等の製品販売代金です。日本山村硝子が販売を担うほか、製造は山村プラスチックプロダクツへ委託しています。また、中国では展誠(蘇州)塑料製品有限公司が製造販売を行っています。
■物流関連事業
グループ内外の顧客向けに、製品の輸送・保管、および構内作業などの物流サービスを総合的に提供しています。
顧客からの輸送運賃や保管料、荷役料等が主な収益源となります。事業の運営は、山村ロジスティクスや中山運送が主体となって行っています。
■ニューガラス関連事業
エレクトロニクス関連や電気・電子機器用のガラス部品、半導体向けガラスセラミックス製品等の製造・販売を行っています。
主な収益源は、これら高付加価値ガラス製品の販売代金です。事業の運営は、日本山村硝子および山村フォトニクスが行っています。
■その他事業
農産物の生産や加工、仕入販売などの植物事業を展開しています。機能性野菜の品種や栽培方法等の研究開発も進めています。
主な収益源は農産物の販売代金です。事業の運営は、山村JR貨物きらベジステーションや日本山村硝子が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的に拡大傾向にありましたが、直近期はやや足踏みしています。一方、利益面では数期前の赤字から黒字転換を果たしており、近年は安定的な黒字基調を維持しています。主力事業における価格改定効果やコスト削減の取り組みが寄与し、収益体質の改善が進んでいることが窺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 643億円 | 681億円 | 729億円 | 733億円 | 722億円 |
| 経常利益 | -47億円 | -30億円 | 61億円 | 32億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | -7.2% | -4.3% | 8.3% | 4.4% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -143億円 | -12億円 | 126億円 | 19億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となったものの、売上総利益および営業利益はともに増加しています。原材料やエネルギー価格の高騰といった外部環境の逆風に対し、製品の価格改定や生産性向上の取り組みが奏功した結果、利益率の改善につながっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 733億円 | 722億円 |
| 売上総利益 | 142億円 | 150億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 20.8% |
| 営業利益 | 31億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が36億円(構成比32%)、従業員給料が18億円(同16%)、保管費が12億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、プラスチック容器関連、物流関連、ニューガラス関連の各事業が堅調に推移し増収を確保しています。一方で、主力であるガラスびん関連事業は国内出荷量の減少等が影響し、減収となりました。全体の売上高としてはガラスびん関連事業の減収が響き、小幅な減少となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ガラスびん関連事業 | 473億円 | 452億円 |
| プラスチック容器関連事業 | 83億円 | 85億円 |
| 物流関連事業 | 145億円 | 148億円 |
| ニューガラス関連事業 | 31億円 | 35億円 |
| その他事業 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 733億円 | 722億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金の範囲内で、設備投資や借入金の返済などの財務活動を賄えている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 67億円 | 82億円 |
| 投資CF | -56億円 | -34億円 |
| 財務CF | -15億円 | -44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「事業は人なり」「商いの基は品質にあり」「革新なくして未来なし」を基本理念として掲げています。また、存在意義を「人と技術の力で、豊かな社会と快適な生活をつくりだす」と定義し、コーポレート・メッセージ「Heart & Technology」を定めています。これらからなる基本哲学(フィロソフィ)に基づき、「ずっと未来も、山村グループに関わる全ての人や社会の役に立ち、必要とされ続けるグループでありたい」との思いから、「100年先も必要とされる会社」をグループ経営ビジョンとしています。
■(2) 企業文化
「個性を尊重し、事業の場で活躍できる人をつくる」ことを人材ビジョンに掲げています。また、基本理念である「事業は人なり」には、「人間を尊重し、明るい経営を実現する」という思いが込められており、従業員全員が仕事を通じて切磋琢磨し、努力が正しく報いられる会社をつくりあげることを目指しています。さらに、「挑戦する風土を醸成する」ことを教育基本方針の一つとして掲げ、社員の成長意欲を歓迎し、挑戦が自然に生まれる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「持続的な成長に向けた飛躍」をテーマとする3ヵ年の新中期経営計画を推進しています。資本収益性向上と株主資本コストの低減を図るため、明確な数値目標を設定し、中長期的な企業価値の向上を目指しています。
* 2029年3月期においてROE6.0%以上
* 中長期的にはROE8.0%以上を目標
■(4) 成長戦略と重点施策
グループ経営ビジョン「100年先も必要とされる会社」の実現に向けて、持続的な成長を牽引するための重点施策を定めています。主力事業であるガラスびん関連事業での収益力強化や、海外ビジネスの拡大、環境対応型の技術開発などに取り組んでいます。
* 既存事業セグメントの収益基盤強化
* 未来事業創造に向けた準備
* グローバルビジネスの再構築と拡大
* 循環型社会の実現に向けた更なる開発の強化
* 従業員が誇りを持って働き続けたいと思える会社づくり
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略に沿った人材の獲得および育成を図るため、求める人材像を基軸とした人事制度や採用基準を設けています。人材育成においては「学びを仕事で実践する」「成長を支援する」「挑戦する風土を醸成する」という教育基本方針を掲げ、現場の課題解決を通じた成長や専門技能の向上を支援しています。また、全社員が個性と能力を十分に発揮し、仕事と家庭の両立ができるよう、在宅勤務やスーパーフレックス制度などを導入し、働きやすい環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 21.2年 | 6,931,805円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 70.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(71.9%)、女性監督職比率(12.0%)、360度評価における他者の総合評価の偏差値・部長層(56.5)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要や販売量の変動リスク
ガラスびん関連事業においては、少子高齢化に伴う人口減少や他素材容器への転換により、市場全体の需要減少が見込まれています。また、プラスチック容器関連事業やニューガラス関連事業においても、天候や市場動向、技術革新のスピードによって販売量が大きく変動するリスクが存在します。
■(2) 原燃料価格・物流費の高騰リスク
中東情勢の緊迫化や為替変動の影響等により、ガラス溶融に使用する天然ガスやプラスチックキャップの主原料であるナフサの価格が大きく変動する可能性があります。また、原油価格の動向に伴う物流費や資材調達コストの上昇が、グループの業績を圧迫するリスクとして挙げられています。
■(3) 環境問題と制度対応に伴うコスト増加
循環型社会や脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進める中、国内排出量取引制度の本格導入や炭素税の動向によっては、温室効果ガス排出量削減にかかる設備投資や技術開発等の対応コストが増大する可能性があります。これらの環境規制への対応が、同社の業績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(4) 特定の大口顧客への依存リスク
物流関連事業においては、売上高の大部分を少数の大口顧客との取引が占めています。そのため、仮にこれらの顧客との契約が喪失した場合、同事業の売上や収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、人手不足による採用経費等の労務費高騰も利益圧迫の要因として懸念されています。



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