日本山村硝子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本山村硝子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本山村硝子は東京証券取引所スタンダード市場に上場する、ガラスびん製造のリーディングカンパニーです。ガラスびん、プラスチック容器、ニューガラス等を展開しています。直近の業績は、売上高が733億円と前期比で微増収となりましたが、経常利益は32億円と減益となり、当期純利益も減益で着地しました。


※本記事は、日本山村硝子株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本山村硝子ってどんな会社?


創業100年を超えるガラスびん製造の老舗企業であり、現在はプラスチック容器やニューガラス、物流事業なども多角的に展開しています。

(1) 会社概要


1914年に山村製壜所として創業し、1955年に山村硝子として発足しました。1998年に日本硝子と合併し、現在の日本山村硝子へ商号変更しています。その後、海外展開を進め、2008年には中国に現地法人を設立しました。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社グループ(連結)の従業員数は1,866名、同社(単体)では750名です。大株主構成は、筆頭株主が個人投資家(村上貴輝氏)、第2位が取引先持株会、第3位が資産管理業務を行う信託銀行となっており、創業家や特定法人による支配色は薄れつつあります。

氏名 持株比率
MURAKAMI TAKATERU 9.26%
日本山村硝子取引先持株会 6.77%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 4.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表者は代表取締役社長執行役員の山村昇氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山村 昇 代表取締役社長執行役員 1992年入社。山村製壜所社長、プラスチックカンパニー社長などを歴任。2024年取締役専務執行役員を経て、2025年4月より現職。
小林 史吉 取締役専務執行役員 1984年入社。プラスチックカンパニー社長、研究開発センター管掌などを歴任。2024年取締役専務執行役員に就任し、現在は環境室等を管掌。
明神 裕 取締役専務執行役員 1984年入社。ガラスびんカンパニー生産本部長、同カンパニー社長などを歴任。サンミゲル山村パッケージング社駐在を経て、2025年4月より現職。
田口 智之 取締役常務執行役員 1986年入社。ニューガラスカンパニー社長、山村フォトニクス社長などを歴任。2025年4月より研究開発センター長およびニューガラスカンパニー管掌。
山村 幸治 取締役会長取締役会議長 1985年日本興業銀行入行、1991年入社。2003年社長就任。長年にわたり社長兼CEOを務めた後、2025年4月より現職。
水田 好彦 取締役常勤監査等委員 1984年入社。コーポレート本部長、監査等委員会室長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、井上善雄(元巴川製紙所社長)、高坂佳郁子(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)、泉豊禄(ハクスイテック社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガラスびん関連事業」「プラスチック容器関連事業」「物流関連事業」「ニューガラス関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ガラスびん関連事業


ガラスびんの製造・販売および製びん機、搬送装置等の製造・販売を行っています。主要な顧客は飲料メーカーや食品メーカーなどです。

収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は主に日本山村硝子が行い、子会社の株式会社山村製壜所や星硝株式会社が製造・販売の一部を担っています。また、海外では山村インターナショナル・タイランドが関連業務を行っています。

(2) プラスチック容器関連事業


プラスチックキャップ等の製造・販売を行っています。飲料用や食品用のキャップが主力製品であり、顧客は飲料・食品メーカー等です。

収益は製品の販売代金から得ています。製造の一部は子会社の山村プラスチックプロダクツ株式会社に委託し、日本山村硝子が販売を行っています。中国では展誠(蘇州)塑料製品有限公司が製造・販売を行っています。

(3) 物流関連事業


製品の輸送・保管および構内作業等を行っています。グループ内製品の物流だけでなく、グループ外の顧客向けの物流サービスも提供しています。

収益は輸送・保管料や作業料等の役務提供対価から得ています。運営は、グループ外向けを主に担う山村ロジスティクス株式会社、グループ内向けを主に担う山村倉庫株式会社、および中山運送株式会社が行っています。

(4) ニューガラス関連事業


エレクトロニクス用ガラスや電気・電子機器用ガラス部品等の製造・販売を行っています。半導体周辺や光通信分野などのハイテク産業が主な顧客です。

収益は製品の販売代金から得ています。運営は日本山村硝子および子会社の山村フォトニクス株式会社が行っています。

(5) その他事業


農産物の生産・加工・販売(植物事業)や、海外での包装資材・機械設備の仕入販売・貿易業務等を行っています。

収益は製品の販売代金や貿易取引の手数料等から得ています。運営は山村JR貨物きらベジステーション株式会社や、海外子会社の山硝(上海)商貿有限公司などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第96期には733億円に達しています。利益面では、第94期までは損失を計上していましたが、第95期に大幅な黒字転換を果たしました。第96期は売上高が増加したものの、経常利益および当期利益は前期比で減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 571億円 643億円 681億円 729億円 733億円
経常利益 -55億円 -47億円 -30億円 61億円 32億円
利益率(%) -9.6% -7.2% -4.3% 8.3% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -20億円 -143億円 -12億円 126億円 19億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増しましたが、売上原価の増加等により売上総利益は減少しました。営業利益も前期の45億円から31億円へと縮小しており、利益率は低下しています。コスト増が利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 729億円 733億円
売上総利益 152億円 142億円
売上総利益率(%) 20.9% 19.3%
営業利益 45億円 31億円
営業利益率(%) 6.1% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が37億円(構成比33%)、従業員給料が19億円(同17%)、保管費が11億円(同10%)を占めています。物流コストや人件費が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


ガラスびん関連事業は減収減益となり、特に利益面での落ち込みが見られます。一方、プラスチック容器、物流、ニューガラス、その他事業はいずれも増収を達成しており、プラスチック容器と物流事業は増益となりました。主力事業の苦戦を他事業が補う構図となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ガラスびん関連事業 478億円 470億円 37億円 21億円 4.6%
プラスチック容器関連事業 76億円 83億円 4億円 6億円 6.8%
物流関連事業 147億円 147億円 7億円 8億円 5.2%
ニューガラス関連事業 28億円 31億円 -2億円 2億円 6.0%
その他 2億円 2億円 -1億円 -3億円 -156.4%
調整額 -93億円 -92億円 -1億円 -3億円 -
連結(合計) 729億円 733億円 45億円 31億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本山村硝子のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、利益や売上債権の減少などにより増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の支出により流出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行による収入があったものの、配当金の支払いなどにより流出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 57億円 67億円
投資CF 77億円 -56億円
財務CF -101億円 -15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「事業は人なり」「商いの基は品質にあり」「革新なくして未来なし」を基本理念として掲げています。また、「ずっと未来も、山村グループに関わる全ての人や社会の役に立ち、必要とされ続けるグループでありたい」との思いから、「100年先も必要とされる会社」をグループ経営ビジョンとしています。

(2) 企業文化


「Heart & Technology」をコーポレート・メッセージとし、「人と技術の力で、豊かな社会と快適な生活をつくりだす」という存在意義のもと、基本哲学(フィロソフィ)を定めています。また、従業員が誇りを持って働き続けたいと思える会社づくりを経営方針の一つとして掲げ、関わる全ての人や社会から必要とされることを誇りとする文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期においてROE 5.0%以上、中長期的にはROE 8.0%以上を目標とし、株主資本コストを上回るROEの確保と企業価値の向上を目指しています。

* ROE(2026年3月期):5.0%以上
* ROE(中長期):8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「成長に向けた事業基盤の整備」をテーマとする中期経営計画を推進しています。不採算事業の整理による「財務基盤の整備」、環境変化に対応する「既存事業の強化」、将来の成長に向けた「新しい事業の準備」、異業種連携などによる「循環型社会の実現に向けた開発」、そして「従業員が誇りを持てる会社づくり」の5つの方針を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「事業は人なり」の理念に基づき、「個性を尊重し、事業の場で活躍できる人をつくる」を人材ビジョンとしています。学びを実践につなげる教育、専門・技能教育の充実による成長支援、挑戦する風土の醸成を方針として掲げ、従業員一人ひとりの成長と能力発揮を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 21.8年 7,230,579円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.2%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 81.0%
男女賃金差異(正規雇用) 83.8%
男女賃金差異(非正規) 79.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性監督職比率(11.7%)、年次有給休暇取得率(69.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ガラスびん関連事業の市場縮小


国内ガラスびん市場は、少子高齢化による人口減少や他素材容器への転換により需要減少が続いています。同社グループはこの傾向を想定して計画を策定していますが、想定以上に需要減が進行した場合、販売量が減少し業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原燃料価格および物流コストの高騰


ガラス溶融の燃料やプラスチックキャップの原料である原油価格の変動、および物流費の高騰は、製造コストや輸送コストに直結します。価格転嫁を進めるものの、想定を超える価格変動が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材確保と労務費の上昇


物流関連事業をはじめとする各事業において、人手不足による人材確保が課題となっています。採用経費や労務費の高騰が利益を圧迫する可能性があるほか、コア人材の確保や技能伝承が滞った場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

(4) 環境規制への対応コスト


気候変動対策への関心の高まりに伴い、炭素税の導入や排出量取引制度などの環境規制が強化される可能性があります。これらの規制対応や脱炭素化に向けた設備投資、技術開発にかかるコストが増大し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。