※本記事は、住友大阪セメント株式会社 の有価証券報告書(第162期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 住友大阪セメントってどんな会社?
セメント製造を祖業とし、その技術を応用して光電子や新材料事業へも展開する、住友グループの中核企業です。
■(1) 会社概要
同社の源流は、1907年に設立された磐城セメントと、1926年に設立された大阪窯業セメントにあります。1949年に東京証券取引所へ上場し、1994年に住友セメントと大阪セメントが合併して現在の商号となりました。近年では、主力であるセメント事業の競争力強化に加え、半導体製造装置向け電子材料や光通信部品などの高機能品事業への展開を進めており、2023年度からは新たな中期経営計画をスタートさせています。
連結従業員数は2,952名、単体では1,312名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は海外機関投資家の常任代理人である銀行が名を連ねており、主に機関投資家や信託口による保有比率が高くなっています。第3位も信託銀行の信託口であり、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.96% |
| NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST | 9.40% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役は取締役社長の諸橋 央典氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 関根 福一 | 取締役会長 | 1975年入社。企画部長、管理部長などを経て2006年取締役常務執行役員。2011年代表取締役社長に就任し、2021年6月より現職。 |
| 諸橋 央典 | 取締役社長(代表取締役) | 1982年入社。名古屋支店長、大阪支店長、東京支店長などを歴任。2017年常務執行役員、2019年取締役常務執行役員を経て、2021年6月より現職。 |
| 土井 良治 | 取締役専務執行役員(代表取締役) | 1986年通商産業省入省。中小企業庁経営支援部長を経て2016年同社入社。生産技術部担当部長、栃木工場長などを歴任し、2021年6月より現職。 |
| 関本 正毅 | 取締役専務執行役員 | 1987年入社。管理部長を経て2018年執行役員資材部長。2020年常務執行役員、2021年取締役常務執行役員を経て、2024年4月より現職。 |
| 小野 昭彦 | 取締役常務執行役員 | 1988年入社。環境事業部長を経て2018年執行役員環境事業部長。2022年常務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 福嶋 達雄 | 取締役常務執行役員 | 1987年入社。大阪支店長、不動産事業室長兼東京支店長などを歴任。2023年常務執行役員セメント営業管理部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、牧野 光子(フリーアナウンサー)、稲川 龍也(高橋綜合法律事務所弁護士)、森戸 義美(関電工取締役副会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「セメント」「鉱産品」「建材」「光電子」「新材料」および「その他」事業を展開しています。
■セメント事業
セメント、セメント系固化材、生コンクリートの製造・販売を行っています。また、セメント工場における電力の販売、リサイクル原燃料の受入処理、各種品質試験サービス、電気設備工事なども手掛けています。
収益は、特約販売店等への製品販売代金や電力会社への売電収入、廃棄物処理による受入手数料などから得ています。運営は同社に加え、八戸セメント、和歌山高炉セメント、東京エスオーシーなどが製造・販売を行い、エスオーシー物流などが輸送を担っています。
■鉱産品事業
製鉄原料や道路工事用、生コンクリート製造用の骨材として使用される石灰石やドロマイト等を採掘・販売しています。同社が各地に所有する石灰石鉱山を活用し、資源供給を行っています。
収益は、鉄鋼メーカーや建設業者等への製品販売代金から得ています。運営は同社のほか、滋賀鉱産や秋芳鉱業が採掘・販売を行っています。
■建材事業
コンクリート構造物向けの補修・補強材料の製造・販売や、関連する工事を行っています。また、地盤改良工事や人工魚礁等の海洋製品、コンクリート二次製品の製造・販売も手掛けています。
収益は、建設会社や官公庁等からの工事代金や製品販売代金から得ています。運営は同社のほか、エステックが補修材料の販売や地盤改良工事を、クリコンやSNCがコンクリート製品関連事業を行っています。
■光電子事業
光通信システムに使用される光通信部品(光変調器など)や、光計測機器の製造・販売を行っています。急速な技術革新が進む情報通信分野において、高度な技術力を活かした製品を提供しています。
収益は、通信機器メーカー等への製品販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、スミテックが汎用電子機器の製造・販売を行っています。
■新材料事業
半導体製造装置向けの各種セラミックス製品や、化粧品材料などのナノ粒子材料、機能性塗料などの製造・販売を行っています。
収益は、半導体関連メーカーや化粧品メーカー等への製品販売代金から得ています。運営は主に同社が行っています。
■その他事業
同社が保有する賃貸ビルや倉庫等の不動産賃貸事業、およびグループ会社による情報処理サービス事業(ソフトウェアの製作・販売)を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料収入や顧客からのソフトウェア開発・販売代金から得ています。運営は同社および住友セメントシステム開発が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は2,000億円前後で推移していますが、利益面では資源価格高騰等の影響を受け変動が見られます。2023年3月期には経常損失を計上しましたが、その後は価格転嫁等の施策により回復基調にあり、直近では経常利益率が4%台まで改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,393億円 | 1,842億円 | 2,047億円 | 2,225億円 | 2,195億円 |
| 経常利益 | 176億円 | 98億円 | -78億円 | 85億円 | 94億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 5.3% | -3.8% | 3.8% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 91億円 | 71億円 | -95億円 | 130億円 | 68億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。売上総利益率は改善傾向にあり、営業利益率も上昇しました。コストコントロールや販売価格の適正化が進んだことが窺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,225億円 | 2,195億円 |
| 売上総利益 | 461億円 | 501億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.7% | 22.8% |
| 営業利益 | 73億円 | 94億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、販売諸掛が138億円(構成比34%)、給与・賞与が90億円(同22%)を占めています。売上原価については内訳の詳細な記載がありませんが、原材料費や労務費、製造経費等が主要な構成要素となります。
■(3) セグメント収益
セメント事業は販売数量減少の影響等で減収となりましたが、鉱産品、建材、光電子事業は増収となりました。特に鉱産品事業は海外向け販売が好調で大幅な増収となっています。新材料事業は半導体市場の影響等で減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| セメント | 1,616億円 | 1,564億円 |
| 鉱産品 | 146億円 | 174億円 |
| 建材 | 217億円 | 236億円 |
| 光電子 | 20億円 | 25億円 |
| 新材料 | 187億円 | 157億円 |
| その他 | 38億円 | 39億円 |
| 連結(合計) | 2,225億円 | 2,195億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
住友大阪セメントは、営業活動により多額の資金を生み出しており、事業活動の基盤を支えています。投資活動では、固定資産の取得等により資金を使用していますが、有価証券の売却等で一部資金を回収しています。財務活動では、自己株式の取得等により資金が減少しました。これらの活動の結果、当期の資金残高は前期末から減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 437億円 | 249億円 |
| 投資CF | -154億円 | -218億円 |
| 財務CF | -244億円 | -53億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちは、地球環境に配慮し、たゆまない技術開発と多様な事業活動を通じて、豊かな社会の維持・発展に貢献する企業グループを目指します。」という企業理念を掲げています。この理念のもと、各種製品の安定供給と持続的発展を目指し、事業拡大およびコスト削減に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「信用を重んじ確実を旨とする」という住友の事業精神を基盤としています。また、中長期的ビジョンにおいて「環境解決」をキーワードとしており、社会から必要とされる存在感のある会社となることを目指す姿勢を重視しています。安全に厳しい風土づくりの醸成にも努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは中長期的ビジョンとして「SOC Vision2035」を定め、その最初のステップとして「2023-25年度 中期経営計画」を策定しています。2025年度の数値目標として、以下の指標を掲げています。
* ROE(自己資本当期純利益率):8%以上
* ROIC(投下資本利益率):5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「既存事業収益改善」「成長基盤構築」「経営基盤強化」の3つを柱としています。既存事業ではセメント事業の収益力回復や次世代光通信部品のシェア獲得を目指します。成長基盤構築では、半導体製造装置向け電子材料事業へのリソース集中や豪州などの海外事業拡大、脱炭素分野の新規事業開発を推進します。
また、経営基盤強化として、以下の施策に取り組んでいます。
* 人財戦略(採用・育成強化)
* 研究開発戦略(高機能品・脱炭素分野の強化)
* 知財戦略(IPランドスケープの推進)
* DX戦略(デジタル技術による業務変革)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財基本方針」を策定し、社員一人ひとりを大切にする原則のもと、能力や適性を活かして社会に貢献できる人財の育成を目指しています。階層別研修によるリーダーシップの育成や、女性活躍推進、育児・介護との両立支援などダイバーシティの推進にも注力しています。また、健康経営優良法人の認定を取得するなど、健康保持増進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 18.4年 | 7,025,896円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
| 男性育児休業取得率 | 77.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 77.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用数(総合職)に占める女性労働者の割合(18.5%)、年次有給休暇取得率(85.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) セメント国内需要の減少リスク
セメントの国内需要は公共投資や民間設備投資の動向に強く依存しています。これらの投資が急激に減少した場合、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、効率的な生産・物流体制の見直しやコスト削減、販売価格の改善などに取り組んでいます。
■(2) 原材料の価格高騰リスク
セメント事業では石炭や電力などのエネルギーコストが製造コストの大きな割合を占めています。国際情勢等により石炭価格が高騰した場合、コスト増加を招き業績に影響を与える可能性があります。同社はカーボンニュートラルに向けた石炭使用量の削減や分散調達、販売価格への転嫁を進めています。
■(3) 地球温暖化・カーボンニュートラルリスク
セメント製造プロセスでは多量のCO2が発生するため、将来的な炭素税の導入や排出規制の強化は、コスト増加や操業制約につながる可能性があります。同社は長期ビジョン「SOCN2050」に基づき、省エネ設備の導入や廃棄物・バイオマスエネルギーの利用拡大、CO2回収・利用技術の開発などを推進しています。



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