※本記事は、東京窯業株式会社の有価証券報告書(第107期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京窯業ってどんな会社?
鉄鋼や非鉄金属などの基幹産業を支える耐火物製品やセラミックスの製造販売を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1947年2月に設立され、耐火煉瓦の製造を開始しました。1961年10月に株式を東京、名古屋の両証券取引所に上場しています。1982年に米国でTYKアメリカINC.、1988年に英国でTYK Ltd.を設立するなどグローバル展開を進め、直近では2023年4月にインドで新会社を設立し事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で927名、単体で400名です。筆頭株主は事業会社の大同特殊鋼で、第2位はみずほ銀行、第3位は十六銀行といずれも金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大同特殊鋼 | 11.75% |
| みずほ銀行 | 4.98% |
| 十六銀行 | 4.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は牛込伸隆氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 牛込 伸隆 | 代表取締役社長 | 元自治省入省、同社専務取締役営業本部長などを経て2005年より現職。 |
| 牛込 進 | 代表取締役会長 | 同社専務取締役営業本部長、代表取締役社長などを経て2005年より現職。 |
| 野村 茂紀 | 常務取締役営業本部長 | 同社執行役員営業本部長、取締役営業本部長などを経て2023年より現職。 |
| 北原 譲 | 取締役管理本部長 | 元富士銀行入行、同社管理本部長兼海外関連事業室長などを経て2016年より現職。 |
| 加藤 久樹 | 取締役技術管理部長 | 元日本鋼管入社、同社技術管理部長などを経て2017年より現職。 |
| 小池 康太 | 取締役環境材料研究所長 | 同社製造所長、環境材料研究所長などを経て2017年より現職。 |
社外取締役は、石黒武(大同特殊鋼代表取締役会長)、古川元久(国民民主党国対委員長)、曾我貴志(シティユーワ法律事務所パートナー弁護士)、岩本隆志(元日本製鋼所常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「ヨーロッパ」「アジア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において、鉄鋼業界向けの耐火煉瓦や不定形耐火物、ニューセラミックス等の製造販売、および黒鉛坩堝の販売を行っています。
顧客への製品販売から収益を得ています。製造は明智セラミックス、ユーセラミック、水野セラミックス、日ノ丸窯業が担い、販売は主に同社が行っています。
■(2) 北米
北米市場向けに、耐火煉瓦や不定形耐火物の製造販売を行っています。また、日本国内で製造された製品の現地販売も担っています。
顧客への製品販売から収益を得ています。運営はTYKアメリカINC.が行っています。
■(3) ヨーロッパ
ヨーロッパ市場向けに、耐火煉瓦や不定形耐火物の製造販売を行っています。また、日本国内および現地製造の製品の販売を担っています。
顧客への製品販売により収益を得ています。製造は主にTYK Ltd.が担い、販売はTYKヨーロッパGmbHが行っています。
■(4) アジア
アジア市場向けに、耐火煉瓦、不定形耐火物、黒鉛坩堝の製造販売を行っています。また、日本国内で製造された製品の販売も担っています。
顧客への製品販売から収益を得ています。運営は台湾東京窯業股份有限公司や青島東窯陶瓷有限公司が行っています。
■(5) その他
環境関連製品の販売、窯業機械器具の製造や修繕、建築・修繕、運輸、さらにはスポーツ施設の運営など多岐にわたる事業を展開しています。
グループ内および一般顧客への製品・サービスの提供から収益を得ています。運営は同社、豊栄興業、中日ホーム、トーヨー流通サービス、パークレーンズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は緩やかな増加傾向が続いていましたが、直近の事業年度では耐火物需要の減少などによりわずかに減少しました。経常利益についても前期まで順調に拡大していましたが、当期は原材料価格の高止まりや需要減の影響を受けて減少に転じています。一方、最終的な利益は継続的に増加しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 259億円 | 287億円 | 300億円 | 319億円 | 315億円 |
| 経常利益 | 36億円 | 38億円 | 41億円 | 50億円 | 43億円 |
| 利益率(%) | 13.7% | 13.2% | 13.5% | 15.8% | 13.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 11億円 | 17億円 | 23億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と比較して微減となりましたが、原材料価格やエネルギー価格の高止まりが原価を圧迫し、売上総利益および営業利益は大きく減少しました。それに伴い、売上総利益率と営業利益率も前期を下回る水準まで低下しており、収益性の確保が課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 319億円 | 315億円 |
| 売上総利益 | 91億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.6% | 26.4% |
| 営業利益 | 45億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 14.1% | 10.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当賞与が17億円(構成比36%)、発送運賃諸掛が6億円(同12%)を占めています。また、売上原価は232億円で、売上高に対する構成比は74%となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、日本およびヨーロッパでは堅調な耐火物需要が維持されたことにより前期比で増収となりました。一方で、北米およびアジアでは耐火物需要の減少が影響し、売上を落としています。その他事業も含めた全体としてはわずかな減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 216億円 | 217億円 |
| 北米 | 47億円 | 41億円 |
| ヨーロッパ | 44億円 | 45億円 |
| アジア | 9億円 | 8億円 |
| その他 | 4億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 319億円 | 315億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 31億円 |
| 投資CF | -18億円 | -15億円 |
| 財務CF | -9億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.4%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「仕事を通じて世界に喜びと感謝の輪を広げる」を社是とし、鉄鋼業界をはじめとする基幹産業に対して耐火物関連事業に重点を置いた製品とサービスを提供しています。技術の革新と進歩、そして産業の発展に貢献することを使命とし、地球環境を保全することによって人類社会が永続的に発展することへの貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
スピリットとして「お客様への誠意」「新しい技術への挑戦」を掲げ、お客様と共にお客様の抱えている課題を解決するというTYKビジネスモデルの徹底を図っています。また、「過去の成功体験を捨てて、新しい冒険に乗り出そう!」というテーマのもと、既存分野への更なる展開とともに新規分野の開拓に挑戦する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営環境が変化する中で、圧倒的な成長を目指し、環境関連等の次世代産業向け製品をはじめとした新たなニーズへの対応を進めています。適切な水準の投資による生産量拡大と新製品の開発を通じて、磐石な経営基盤の確立に邁進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
耐火物事業において、さらに市場拡大が見込まれるインドへの進出をはじめとした海外での高付加価値な鋼生産市場の取り込みに注力しています。また、鉄鋼業界におけるカーボンニュートラルへの対応や新素材分野、環境創造分野といった成長分野へ重点的に取り組むことで、利益の伴った成長の実現とグループ全体の体力強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念を実現し、会社の発展と社員一人ひとりの生活をより豊かにしていくために、人材育成が要諦であると位置づけています。全社員の知識・技能・品性・人間性の向上を図るため、継続的・実効的・一貫性のある教育訓練を実施しています。また、女性や外国人、中途採用者の採用を積極的に行い、多様性の確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 17.0年 | 6,830,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全) | 67.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 58.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者における女性従業員の割合(14.8%)、男女間平均勤続年数の差異(0.9年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鉄鋼業界の動向や主要市場の経済状況
同社の製品構成は鉄鋼関連の耐火物製品のシェアが高いため、鉄鋼業界の動向に大きく影響を受けます。需要地域における経済情勢や競合状況、さらには関税や通商・租税といった法的規制の動向などが業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 耐火原料等の価格変動
世界各地から耐火原料を輸入していますが、一部については特定の地域や購入先に依存しています。購入先を複数にするなど価格変動リスクの低減に努めていますが、原材料価格の流動性が高まった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 外貨建て取引に伴う為替レートの変動
同社の外貨建て取引は主として米ドルおよびユーロ建てで行われています。原材料等の輸入と製品輸出の相殺により為替変動リスクの限定に努めていますが、リスクを完全に排除することは困難であり、急激な為替レートの変動が業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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