#黒崎播磨転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社黒崎播磨の有価証券報告書(第134期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 黒崎播磨ってどんな会社?
各種工業窯炉用耐火物の製造販売で世界有数のシェアを誇り、日本製鉄を親会社に持つセラミックス企業です。
■(1) 会社概要
同社は1918年に黒崎窯業として創立され、1949年に株式を上場しました。2000年にはハリマセラミックと合併し、現在の商号である黒崎播磨に変更しています。2011年にはインドのTATA REFRACTORIES LIMITED(現TRL KROSAKI REFRACTORIES LIMITED)を子会社化し、グローバル展開を加速させました。2019年には新日鐵住金(現日本製鉄)が親会社となっています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は5,013名、単体では2,514名です。筆頭株主は親会社の日本製鉄で46.42%を保有しており、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。強固な資本関係のもと、鉄鋼業界向けを中心に事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 46.42% |
| 日本カストディ銀行 | 12.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 7.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は江川和宏氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江 川 和 宏 | 代表取締役社長 | 新日本製鐵(現日本製鉄)に入社し、海外営業部長や常務執行役員などを歴任。同社執行役員を経て2019年6月より現職。 |
| 吉 田 猛 | 取締役常務執行役員 | 新日本製鐵(現日本製鉄)入社。同社企画部長、執行役員などを経て、サステナビリティ推進、セラミックス事業部門などを管掌。2023年4月より現職。 |
| 小 西 淳 平 | 取締役常務執行役員 | 新日本製鐵(現日本製鉄)入社。同社技術総括部部長、ウジミナス社出向などを経て、カーボンニュートラル推進、耐火物製造事業部門などを管掌。2025年4月より現職。 |
| 竹 下 正 史 | 取締役常務執行役員 | 黒崎窯業(現同社)入社。総務人事部長、営業本部長などを経て、安全衛生環境防災部門、本社部門などを管掌。2025年4月より現職。 |
| 奥 村 尚 丈 | 取締役常務執行役員 | 同社入社後、機能性製造事業部長、海外事業部長などを歴任。耐火物グローバル営業部門を管掌し、耐火物海外事業に関して吉田常務執行役員に協力。2025年4月より現職。 |
| 古 田 直 樹 | 取締役エグゼクティブアドバイザー | 黒崎窯業(現同社)入社。購買部長、耐火物製造事業本部長などを経て、原料関連業務支援等を担当。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、西村松次(元九電工代表取締役社長)、加藤卓二(西部ガスホールディングス代表取締役社長)、赤木由美(九州旅客鉄道取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「耐火物事業」「ファーネス事業」「セラミックス事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 耐火物事業
鉄鋼、セメント、ガラスなどの素材産業で使用される各種工業窯炉用の耐火物全般を製造・販売しています。主要顧客は鉄鋼メーカーであり、高温下での操業を支える不可欠な資材を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は主に黒崎播磨が担い、一部の製造はSNリフラテクチュア東海、海外では無錫黒崎蘇嘉耐火材料(中国)、TRL KROSAKI REFRACTORIES(インド)、KROSAKI AMR REFRACTARIOS(スペイン)などの連結子会社が行っています。
■(2) ファーネス事業
各種窯炉の設計、施工、築造修理を行っています。耐火物事業と連携し、炉の建設からメンテナンスまでをトータルで提供するエンジニアリングサービスです。
収益は、工事契約に基づく設計・施工料およびメンテナンス料です。運営は黒崎播磨が行い、連結子会社の黒播築炉が築炉工事および耐火物加工の請負を担当しています。
■(3) セラミックス事業
各種産業用セラミックスの製造販売および景観材の販売を行っています。半導体製造装置向けなどのファインセラミックスや、都市景観を彩る舗装用レンガなどを提供しています。
収益は、製品の販売対価です。運営は黒崎播磨が行っています。また、持分法適用関連会社の新日本サーマルセラミックスがセラミックファイバーを製造販売しています。
■(4) 不動産事業
同社グループが保有する土地や建物(店舗・倉庫等)を活用した賃貸事業を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料です。運営は黒崎播磨が行っています。
■(5) その他
製鉄所向けの生石灰の製造販売を行っています。なお、本事業については2025年3月31日をもって撤退しています。
収益は、製品販売による対価です。運営は黒崎播磨が行っていました。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあります。特に2022年3月期以降の伸びが顕著で、直近の2025年3月期には1,779億円に達しました。利益面では、経常利益が2024年3月期に過去最高水準となりましたが、2025年3月期はやや減少しています。当期純利益は増加傾向を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,137億円 | 1,338億円 | 1,652億円 | 1,770億円 | 1,779億円 |
| 経常利益 | 64億円 | 87億円 | 121億円 | 164億円 | 153億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 6.5% | 7.3% | 9.3% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 43億円 | 55億円 | 83億円 | 124億円 | 125億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益も同水準を維持しています。一方、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減益となりました。売上総利益率は約20%前後で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,770億円 | 1,779億円 |
| 売上総利益 | 354億円 | 355億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 19.9% |
| 営業利益 | 147億円 | 141億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 7.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が53億円(構成比25%)、発送運搬費が49億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
耐火物事業は売上高が減少したものの、依然として全体の大部分を占めています。ファーネス事業は大型工事案件の受注等により大幅な増収増益となりました。セラミックス事業は半導体関連の需要調整により減収減益となっています。不動産事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 耐火物事業 | 1,519億円 | 1,485億円 | 127億円 | 114億円 | 7.7% |
| ファーネス事業 | 152億円 | 197億円 | 6億円 | 15億円 | 7.7% |
| セラミックス事業 | 82億円 | 78億円 | 9億円 | 5億円 | 6.2% |
| 不動産事業 | 7億円 | 7億円 | 6億円 | 6億円 | 80.6% |
| その他 | 10億円 | 11億円 | 0.5億円 | 0.6億円 | 5.0% |
| 調整額 | -4億円 | -5億円 | -0.0億円 | -0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 1,770億円 | 1,779億円 | 147億円 | 141億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン:**積極型**
営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 137億円 | 31億円 |
| 投資CF | -36億円 | -43億円 |
| 財務CF | -62億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「たゆまぬ革新を通じ、セラミックス分野の価値ある商品、技術を世界に提供し、産業の発展を支え、社会の繁栄に貢献すること」を使命としています。「世界一の顧客価値の実現」を事業目標に掲げ、最高の品質と安心を提供することで信頼される企業集団を目指すとともに、事業価値向上を通じて株主利益への貢献を図ることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
有価証券報告書の記載からは、特定の「バリュー」や「行動指針」という名称での明文化された項目は見当たりませんが、経営方針において「お客様に最高の品質と安心をお届けし、信頼される企業集団を目指す」姿勢や、「たゆまぬ革新」を通じた社会貢献を使命とする企業風土がうかがえます。
■(3) 経営計画・目標
「鉄と産業を支える世界第一級の総合セラミックス企業」を目指し、2025年度までを実行期間とする「2025見直し経営計画」を推進しています。2023年7月に目標を上方修正しました。
* 連結売上高:1,800億円
* 連結経常利益:150億円
* ROS:8.3%以上
* ROIC:9.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「2025見直し経営計画」に基づき、グローバル戦略の推進や成長分野への積極投資を加速させます。国内では生産体制の最適化や高機能商品の拡販による基盤強化を図り、海外ではインド市場での生産・販売体制の最大活用や新工場建設、欧州・米州・東南アジアでの販売強化を推進します。また、セラミックス事業の設備増強や環境対応商品の展開も強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル人材の育成・採用強化および人的資本強化施策を推進しています。具体的には、人物能力本位での採用選考、女性活躍推進のための職域拡大やライフイベントに対応した制度見直しを行っています。また、人材育成においては、階層別教育や部門別教育に加え、DX対応やグローバル対応のための研修を充実させ、従業員が能力を最大限発揮できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 13.2年 | 6,817,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.3% |
| 男性育児休業取得率 | 43.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向
耐火物事業及びファーネス事業は鉄鋼業界の粗鋼生産量に大きく依存しており、世界経済の減速による粗鋼減産は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、セラミックス事業は半導体等の設備投資動向の影響を受けます。特に米国関税政策等による世界経済への影響やサプライチェーンの混乱、需要減少がリスク要因となります。
■(2) カントリーリスク
グローバル展開において、中国は重要な調達拠点であり、インドは主要な市場の一つです。これらの国における各種規制、政策転換、社会的混乱等が生じた場合、調達難や現地子会社(TRL KROSAKI REFRACTORIESなど)の事業活動への支障を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替相場の変動
海外売上や外貨建て資産を有しており、為替レートの変動が円換算後の業績に影響を与えます。現状では輸入額が輸出額を上回っているため、円安は輸入コスト増となり、価格転嫁までのタイムラグにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、先物為替予約によるヘッジや販売価格への転嫁交渉を行っています。
■(4) 特定の取引先との関係
親会社である日本製鉄は同社グループの主要顧客であり、同社グループに対する売上比率は約43.4%を占めています。そのため、日本製鉄グループの製鉄事業の動向や取引状況の変化が、同社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、グローバル展開やセラミックス事業への注力により顧客基盤の多角化を進めています。



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