NTT 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NTT 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、総合ICT事業、地域通信事業、グローバル・ソリューション事業等を展開しています。当期の連結業績は、システムインテグレーション収益の拡大等により増収となった一方、営業費用の増加等により営業利益・税引前利益ともに減益となりました。


※本記事は、株式会社日本電信電話 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

なお、同社は現在、NTT株式会社に商号変更しています。

1. 日本電信電話ってどんな会社?


通信事業を核に、システム開発や不動産・エネルギー事業まで幅広く展開する国内最大級のICT企業グループです。

(1) 会社概要


1985年に日本電信電話株式会社として設立され、1987年に東京証券取引所へ上場しました。1999年には持株会社制へ移行し、東日本電信電話、西日本電信電話、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズへ事業を継承しました。2020年にはNTTドコモを完全子会社化し、グループ連携を強化しています。2025年7月にはNTT株式会社へ商号変更を予定しています。

連結従業員数は341,321人、単体では2,554人です。筆頭株主は同社株式の3分の1以上を保有する義務を負う財務大臣で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。政府が筆頭株主である点が大きな特徴です。

氏名 持株比率
財務大臣 35.28%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.05%
日本カストディ銀行(信託口) 4.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性6名の計16名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長社長執行役員CEOは島田明氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
島田  明 代表取締役社長社長執行役員CEO(Chief Executive Officer) 1981年日本電信電話公社入社。西日本電信電話財務部長、東日本電信電話取締役総務人事部長、同社取締役総務部門長、代表取締役副社長を経て、2022年6月より現職。
廣井 孝史 代表取締役副社長副社長執行役員事業戦略担当CFO(Chief Financial Officer) 1986年同社入社。経営企画部門担当部長、財務部門長、取締役、NTTドコモ代表取締役副社長等を経て、2022年6月より現職。
星野 理彰 代表取締役副社長副社長執行役員技術戦略担当CTO(Chief Technology Officer) 1990年同社入社。東日本電信電話ネットワーク事業推進本部長、同社代表取締役副社長等を経て、2025年6月より現職。
大西 佐知子 常務取締役常務執行役員CCXO(Chief Customer Experience Officer)Co-CAIO(Co-Chief Artificial Intelligence Officer) 1989年同社入社。エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ執行役員、同社常務執行役員研究開発マーケティング本部長を経て、2024年6月より現職。
PatrizioMapelli 取締役 1982年Olivetti入社。NTT DATA EMEA LTD. CEO、NTT DATA Italia S.p.A. Chairman of the Board等を経て、2025年6月より現職。
柳 圭一郎 取締役(常勤監査等委員) 1984年日本電信電話公社入社。NTTデータ代表取締役副社長、NTTデータ経営研究所代表取締役社長、同社常勤監査役を経て、2025年6月より現職。
髙橋 香苗 取締役(常勤監査等委員) 1987年同社入社。東日本電信電話取締役神奈川事業部長、同社常勤監査役等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、坂村健(東京大学名誉教授)、内永ゆか子(元日本アイ・ビー・エム取締役)、渡邉光一郎(元第一生命保険社長)、遠藤典子(元週刊ダイヤモンド副編集長)、武井奈津子(元ソニー執行役員)、腰山謙介(元会計検査院事務総長)、神田秀樹(東京大学名誉教授)、鹿島かおる(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合ICT事業」、「地域通信事業」、「グローバル・ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

総合ICT事業


携帯電話事業、国内電気通信事業における県間通信サービス、国際通信事業、ソリューション事業などを提供しています。主な顧客は個人および法人です。

収益は、通信サービスの利用料、端末機器の販売代金、システム開発やソリューション提供の対価などが主な源泉です。運営は主に株式会社NTTドコモ、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社などが行っています。

地域通信事業


国内電気通信事業における県内通信サービスの提供およびそれに附帯する事業を行っています。固定電話や光回線サービスなどを、各地域の個人および法人顧客に提供しています。

収益は、音声伝送サービスやIP系・パケット通信サービスの利用料、通信端末機器の販売代金などが主な源泉です。運営は主に東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社が行っています。

グローバル・ソリューション事業


システムインテグレーション、ネットワークシステム、クラウド、グローバルデータセンターなどを提供しています。国内外の法人顧客に対し、DX支援やITインフラの構築・運用などを行っています。

収益は、システム開発、コンサルティング、運用保守サービス、データセンター利用料などの対価が主な源泉です。運営は主に株式会社NTTデータグループ、株式会社NTTデータ、株式会社NTT DATA, Inc.などが行っています。

その他(不動産、エネルギー等)


不動産事業、エネルギー事業などを展開しています。不動産の賃貸・管理や、電力の発電・小売りなどを通じて、グループ内外の顧客にサービスを提供しています。

収益は、不動産賃貸料、電力販売料などが主な源泉です。運営は主にNTTアーバンソリューションズ株式会社、エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社、NTTアノードエナジー株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は毎期順調に増加しており、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では第39期まで増加傾向にありましたが、第40期は減益となりました。当期利益についても同様の傾向で、第40期は前期を下回っています。全体として増収基調を維持しつつも、直近では利益成長が一服している状況です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 119,440億円 121,564億円 131,362億円 133,746億円 137,047億円
税引前利益 16,526億円 17,955億円 18,177億円 19,805億円 15,647億円
利益率(%) 13.8% 14.8% 13.8% 14.8% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 9,162億円 11,811億円 12,131億円 12,795億円 10,000億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上収益は増加しましたが、営業利益は減少しました。これは、グローバル・ソリューション事業などの拡大により増収となったものの、営業費用の増加が利益を圧迫したためです。特に営業利益率は低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 133,746億円 137,047億円
営業利益 19,229億円 16,496億円
営業利益率(%) 14.4% 12.0%


営業費用のうち、経費が6兆8,177億円(構成比57%)、人件費が3兆986億円(同26%)、減価償却費が1兆7,220億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は、グローバル・ソリューション事業が国内外のデジタル化需要を取り込み大幅な増収となり、連結売上の増加を牽引しました。総合ICT事業もスマートライフ事業等の拡大で増収でしたが、営業費用増により減益となりました。地域通信事業は固定電話の減少等により減収減益でした。全体として、システムインテグレーション領域が成長ドライバーとなっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
総合ICT事業 61,400億円 62,131億円 11,444億円 10,205億円 16.4%
地域通信事業 31,832億円 31,123億円 4,377億円 2,955億円 9.5%
グローバル・ソリューション事業 43,674億円 46,387億円 3,096億円 3,239億円 7.0%
その他(不動産、エネルギー等) 16,329億円 17,265億円 598億円 558億円 3.2%
調整額 -19,489億円 -19,859億円 -286億円 -461億円 -
連結(合計) 133,746億円 137,047億円 19,229億円 16,496億円 12.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

NTTグループは、事業創出による安定的なキャッシュ・フローを設備投資や株主還元、債務返済の原資としています。

営業活動では、主に事業活動から得られた資金で設備投資等の経常的な投資活動に必要な支出を賄い、株主還元や借入金等の返済に充てています。投資活動では、有形・無形資産等の取得に多額の資金を投じています。財務活動では、株主還元や借入金の増減等により資金の調達・返済を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23,742億円 23,640億円
投資CF -19,892億円 -19,996億円
財務CF -2,345億円 -3,430億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」を中期経営戦略として掲げ、新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支える存在となることをめざしています。IOWN構想の推進により、環境・エネルギー課題、社会課題、人権等の課題解決に取り組み、企業成長と社会課題解決の同時実現を図っています。

(2) 企業文化


同社は「オープンで革新的な企業文化へ」の変革を掲げ、トライ&エラーを推奨し、失敗を恐れず挑戦する文化の醸成に取り組んでいます。また、高い倫理観と最先端の技術・イノベーションに基づき、自然との共生、文化の共栄、Well-beingの最大化をめざすサステナビリティ憲章を制定し、活動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


2027年度を最終年度とする中期経営戦略において、以下の財務目標等を掲げています。
* EBITDA:2022年度比+20%(成長分野は+40%、既存分野は+10%)
* ROIC(投下資本利益率):9%
* 海外営業利益率:10%(2025年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


IOWNの研究開発・実用化加速や、データ・ドリブンによるパーソナルビジネスの強化、グローバルでのソリューション展開を推進します。また、グリーンソリューションや循環型ビジネスの創造、一次産業の効率化等により産業振興や地域創生に貢献します。さらに、事業基盤の強靱化やサイバーセキュリティ対策を通じて安心・安全なサービス提供に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員体験(EX)の高度化」を掲げ、専門性を軸とした人事制度、自律的なキャリア形成支援、多様な働き方の推進などを行っています。また、「オープンで革新的な企業文化」への変革に向け、D&Iの推進や、経営層と従業員の対話機会の拡大、挑戦する文化の醸成に取り組んでいます。従業員エンゲージメントを重視し、人が価値を生む好循環の実現をめざしています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 16.1年 10,690,766円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.6%
男性育児休業取得率 132.9%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規) 81.3%
男女賃金差異(非正規) 86.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント率(61%)、女性採用率(32.4%)、女性役員比率(26.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業成長に関するリスク


市場競争の激化や構造変化により、営業収益の低下やコスト削減効果が限定的になる可能性があります。特に、グローバルビジネスにおける法的規制や商習慣の相違、AIビジネスの拡大遅延、IOWNロードマップの進捗遅れなどが、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社は、デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上や、グローバル事業の運営体制強化、IOWNの研究開発加速などにより、競争優位性の確立と持続的な成長をめざしています。

(2) 環境に関するリスク


気候変動や資源循環への対応が不十分な場合、ステークホルダーからの信頼低下やコスト増加を招く可能性があります。また、災害の激甚化による設備被害のリスクもあります。同社は「NTT Green Innovation toward 2040」に基づき、2040年度のカーボンニュートラル実現やIOWNによる低消費電力化を推進しています。また、資源循環や生物多様性保全への取り組みを強化し、環境負荷低減と情報開示の充実を図っています。

(3) お客さま体験(CX)の高度化に関するリスク


顧客に新たな価値を提供するビジネス創造が進展しない場合、市場競争力が低下する可能性があります。同社はマーケティング戦略委員会やCX推進ラインを設置し、顧客エンゲージメント指標を導入するなど、CX向上に向けた体制を強化しています。また、カスタマージャーニーに寄り添ったサービスの改善やアップデートをアジャイルに実施し、顧客の期待を超える体験の提供に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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