※本記事は、NTT株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. NTTってどんな会社?
通信からITサービス、不動産まで幅広く展開する、国内最大規模の通信・ICTソリューション企業です。
■(1) 会社概要
1985年に日本電信電話として設立され、1987年に東証へ上場しました。1999年には純粋持株会社体制へ移行し、地域通信等の各事業会社を再編しています。近年は2020年にNTTドコモを完全子会社化し、2025年には現在のNTTへ社名変更するなど、グループ全体の事業基盤強化を進めています。
従業員数は連結で344,196名、単体で2,606名にのぼる巨大企業グループです。大株主については、筆頭株主は政府である財務大臣で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 財務大臣 | 35.83% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.92% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性6名の計16名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長社長執行役員CEOは島田明氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島田 明 | 代表取締役社長社長執行役員CEO | 1981年日本電信電話公社入社。NTT西日本財務部長、NTT東日本総務人事部長等を経て、2018年同社代表取締役副社長。2022年より現職。 |
| 廣井 孝史 | 代表取締役副社長副社長執行役員事業戦略担当CFO | 1986年日本電信電話入社。同社経営企画部門担当部長等を経て、2015年同社取締役。2020年NTTドコモ代表取締役副社長を経て、2022年より現職。 |
| 星野 理彰 | 代表取締役副社長副社長執行役員技術戦略担当CTO | 1990年日本電信電話入社。NTT東日本東京南支店長、ネットワーク事業推進本部長等を経て、2022年同社代表取締役副社長。2025年より現職。 |
| 大西 佐知子 | 常務取締役常務執行役員CCXO Co-CAIO | 1989年日本電信電話入社。NTT東日本ビジネス開発本部担当部長、NTTドコモビジネス取締役等を経て、2023年同社常務執行役員。2024年より現職。 |
| PatrizioMapelli | 取締役 | 1982年Olivetti入社。A.T.Kearneyバイスプレジデント、NTT DATA EMEA LTD. CEO等を経て、2022年NTT DATA, Inc.取締役。2025年より現職。 |
| 柳 圭一郎 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年日本電信電話公社入社。NTTデータグループ代表取締役副社長等を経て、2020年NTTデータ経営研究所代表取締役社長。2025年より現職。 |
| 髙橋 香苗 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年日本電信電話入社。NTT東日本取締役神奈川事業部長、NTTインフラネット常務取締役等を経て、2020年同社常勤監査役。2025年より現職。 |
社外取締役は、坂村健(東京大学名誉教授)、内永ゆか子(グローバリゼーションリサーチインスチチュート代表取締役社長)、渡邉光一郎(第一生命保険特別顧問)、遠藤典子(早稲田大学教授)、武井奈津子(元ソニーグループ常務)、腰山謙介(元会計検査院事務総長)、神田秀樹(東京大学名誉教授)、鹿島かおる(元新日本有限責任監査法人シニアパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合ICT事業」「グローバル・ソリューション事業」「地域通信事業」および「その他」事業を展開しています。
■総合ICT事業
携帯電話サービスや光ブロードバンドなどのコンシューマ通信事業をはじめ、金融サービスやコンテンツ等のスマートライフ事業、法人向け通信サービスやソリューション・システム開発等の法人事業を展開しています。
収益は主に、携帯電話や光回線の通信サービス利用料、スマートライフ領域の各種サービス手数料、および法人向けのソリューション提供対価から得ています。運営は主にNTTドコモ、NTTドコモビジネスなどが行っています。
■グローバル・ソリューション事業
国内外において、コンサルティング事業やITソリューション事業、システム・ソフトウェア開発事業、メンテナンス・サポート事業、およびデータセンター事業などを幅広く展開しています。
収益は主に、顧客企業に対するシステム構築やソフトウェア開発の対価、保守・運用サポート料、データセンターの利用料などから得ています。運営は主にNTTデータグループ、NTTデータ、NTT DATA, Inc.などが行っています。
■地域通信事業
主に国内の各地域において、光アクセスサービス事業、法人向けネットワーク事業、固定電話事業などを展開し、地域社会や企業の通信インフラを支えています。
収益は主に、光回線や固定電話の月額基本料および通信料、法人向けのネットワーク構築・運用サービス料などから得ています。運営は主にNTT東日本およびNTT西日本などが行っています。
■その他事業
通信・IT事業以外の領域として、不動産の取得・開発・賃貸などを手掛ける不動産事業や、太陽光・風力などのクリーンエネルギーによる発電等を行うエネルギー事業などを展開しています。
収益は主に、不動産の賃貸収入や物件売却益、エネルギーの売電収入などから得ています。運営は主にNTTアーバンソリューションズ、NTTアノードエナジー、NTTファイナンスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5年間で継続して拡大傾向にあり、順調な成長を示しています。税引前利益や当期利益についても高水準を維持しており、一時的な変動はあるものの、10%を超える安定した利益率を確保しながら堅調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 121,564億円 | 131,362億円 | 133,746億円 | 137,047億円 | 144,091億円 |
| 税引前利益 | 17,955億円 | 18,177億円 | 19,805億円 | 15,647億円 | 15,819億円 |
| 利益率(%) | 14.8% | 13.8% | 14.8% | 11.4% | 11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11,811億円 | 12,131億円 | 12,795億円 | 10,000億円 | 10,370億円 |
■(2) 損益計算書
直近の売上収益は前期から約7,000億円増加し、営業利益も堅調に推移しています。利益率は11%台後半を維持しており、トップラインの拡大とともに安定した収益基盤を確保していることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 137,047億円 | 144,091億円 |
| 営業利益 | 16,496億円 | 17,062億円 |
| 営業利益率(%) | 12.0% | 11.8% |
営業費用のうち、システム構築や業務委託等を含む経費が7兆2,079億円(構成比57%)、次いで人件費が3兆2,149億円(同25%)、減価償却費が1兆7,910億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
総合ICT事業は法人向けビジネスの拡大などで増収となりましたが、顧客基盤強化の施策費用により減益となりました。一方、グローバル・ソリューション事業は海外事業の成長やデータセンターの収益増が牽引し、大幅な増益を達成して全体の成長に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合ICT事業 | 62,131億円 | 64,581億円 | 10,205億円 | 9,421億円 | 14.6% |
| グローバル・ソリューション事業 | 46,387億円 | 50,046億円 | 3,239億円 | 4,882億円 | 9.8% |
| 地域通信事業 | 31,123億円 | 32,102億円 | 2,955億円 | 3,074億円 | 9.6% |
| その他(不動産、エネルギー等) | 17,265億円 | 17,526億円 | 558億円 | -16億円 | -0.1% |
| 調整額 | -19,859億円 | -20,164億円 | -461億円 | -299億円 | - |
| 連結(合計) | 137,047億円 | 144,091億円 | 16,496億円 | 17,062億円 | 11.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得たキャッシュで積極的な投資を行いながら、必要に応じて外部からの資金調達も活用する「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23,640億円 | 14,852億円 |
| 投資CF | -19,996億円 | -10,234億円 |
| 財務CF | -3,430億円 | 4,413億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、高い倫理観と最先端の技術・イノベーションに基づく次世代通信構想「IOWN」の推進により、自然との共生、文化の共栄、Well-beingの最大化を目指しています。これらの取り組みを通じて、企業としての成長と社会課題の解決を同時実現し、グローバルで持続可能な社会の実現に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、多様な人材が活躍できる「オープンで革新的な企業文化」の醸成を重視しています。外部環境の変化に柔軟に適応するため、トライ&エラーやコラボレーションを推奨し、その土台としてダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。経営層と社員の対話機会を増やし、社員一人ひとりが主体的に挑戦できる環境づくりに注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2030 powered by AIOWN」において、2030年度に向けて以下の財務目標およびサステナビリティ指標を掲げています。
* EBITDA(連結):4兆円
* ROIC(金融事業除き):5.5%
* 女性の新任管理者登用率:毎年30%以上
* 温室効果ガス排出量:2040年度にカーボンニュートラルおよびネットゼロ
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は今後の成長戦略として、AIを軸に利益を伸長させる「バリュー分野」と、AIネイティブなインフラへの転換を進める「コネクティビティ分野」の強化を掲げています。国内法人・海外事業ではAIやデータセンターを成長ドライバーとし、金融事業では決済や銀行サービスを起点に収益機会を拡大します。また、光電融合デバイスを活用した次世代インフラ「IOWN」の社会実装を加速し、持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営戦略を支える重要な柱として「従業員体験(EX)の高度化」を掲げています。社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援するため、管理職にはジョブ型、一般社員には専門性を軸とした人事給与制度を導入し、適所適材の配置を進めています。また、社内公募やダブルワークの推進、多様な働き方を促進するハイブリッドワークの導入など、柔軟で生産性の高い環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.4歳 | 15.6年 | 10,562,434円 |
※平均年間給与は基準内・基準外給与及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.7% |
| 男性育児休業取得率 | 132.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 79.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用率(34.1%)、女性役員比率(27.7%)、従業員エンゲージメント率(64.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI等の新技術投資に伴う事業成長リスク
同社はAIを軸とした抜本的な業務プロセス変革やビジネス展開を推進していますが、モデル開発の遅れやエコシステム形成の遅滞、法規制への対応遅れ等が生じた場合、当該ビジネスが想定通りに拡大せず、競争力の低下やコスト増につながる可能性があります。
■(2) システム不具合やネットワーク故障リスク
同社は社会や経済活動を支える重要な通信インフラや金融・決済サービスを提供しています。これらの重要システムにおける開発遅延や不具合、大規模なネットワーク故障が発生した場合、顧客へのサービス提供に深刻な影響を及ぼし、同社の信頼性や企業イメージが著しく低下する可能性があります。
■(3) 各種規制対応および政府の株式保有に関するリスク
同社は電気通信事業法やNTT法など、政府による各種規制の枠組みの中で事業を運営しています。法改正による規制の変更や、事業に不可欠な新たな周波数帯域の獲得が想定通りに進まない場合、サービス品質の低下や追加費用の発生を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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