※本記事は、株式会社イトーヨーギョー の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イトーヨーギョーってどんな会社?
コンクリート二次製品の製造販売を祖業とし、建築設備や環境関連製品、不動産事業も手掛ける多角化企業です。
■(1) 会社概要
1950年12月に株式会社伊藤商店として設立され、1967年にバイコン成型機を導入してコンクリート製品の製造を開始しました。1999年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2024年6月には名古屋証券取引所メイン市場にも上場を果たしています。
同社(単体)の従業員数は125名です。筆頭株主は創業者一族の畑中千弘氏で、第2位は取締役の畑中浩太郎氏、第3位は代表取締役社長の畑中雄介氏となっており、創業家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 畑中千弘 | 19.80% |
| 畑中浩太郎 | 11.31% |
| 畑中雄介 | 11.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は畑中雄介氏です。取締役8名中、社外取締役は3名で比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 畑中雄介 | 代表取締役社長兼開発本部長兼技術開発部長兼管理本部長 | 三井住友カード等を経て2015年同社入社。インフラ事業本部副本部長、社長室長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 髙岡薫生 | 常務取締役開発本部副本部長兼生産技術部長 | 日本海工を経て2003年同社入社。技術開発部長、開発本部長などを経て、2020年4月より現職。 |
| 畑中浩太郎 | 取締役管理本部副本部長 | 英国ミドルセックス大学卒業後、2014年同社入社。経営管理本部長補佐、監査室長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 伊藤量哉 | 取締役執行役員コンクリート営業本部長兼コンクリート営業部長 | 丸紅建設機械販売を経て1999年同社入社。インフラ事業本部長などを歴任し、2022年4月より現職。 |
| 佐藤勝也 | 取締役執行役員建築設備本部長 | 精研、アイワテック等を経て2013年同社建築設備部長。インフラ事業本部長などを経て、2022年4月より現職。 |
社外取締役は、岡博(元三菱重工空調システム社長)、吉田史(あおぞら司法書士法務総合事務所社員)、辰田淳(きっかわ法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンクリート関連事業」「建築設備機器関連事業」「不動産関連事業」を展開しています。
■(1) コンクリート関連事業
道路関連製品、バイコンパイプ、バイコンマンホール、環境関連製品等の製造・販売を行っています。特に「バイコン製法」による高強度かつ省エネルギーなコンクリート製品を強みとし、近年は無電柱化製品やゲリラ豪雨対策製品などの高付加価値製品に注力しています。
収益は、官公庁や民間企業への製品販売代金から得ています。公共事業の比率が高いものの、民間市場への参入も進めています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 建築設備機器関連事業
空調設備を中心とする建築設備関連機器の販売・施工、およびメンテナンスを行っています。省エネルギーに対応した設備改修や、民間工事への営業活動を積極的に展開しています。
収益は、施主や建設会社からの機器販売代金および施工・メンテナンス料から得ています。公共工事だけでなく民間工事の受注拡大も図っています。運営は主に同社が行っています。
■(3) 不動産関連事業
自社所有の不動産(賃貸用マンション、オフィスビル、商業施設等)の賃貸を行っています。大阪府、兵庫県、岡山県、東京都、京都府などに物件を所有しています。
収益は、テナントや入居者からの賃貸料から得ています。経営資源の有効活用を目的として、遊休不動産の課題解決にも取り組んでいます。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は30億円前後で推移していましたが、直近の第76期には34億円まで伸長しました。経常利益も変動が見られますが、第76期には前期の約2倍となる2億円を達成し、利益率も5.8%まで向上しています。当期純利益も大幅な増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30.5億円 | 29.3億円 | 34.7億円 | 31.3億円 | 34.0億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 0.6億円 | 1.8億円 | 1.0億円 | 2.0億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 2.0% | 5.1% | 3.2% | 5.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | 3.2億円 | 1.3億円 | 1.0億円 | 3.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大し、売上総利益率は34.0%となりました。営業利益は前期の約1.1億円から2.0億円へと倍増し、営業利益率も向上しており、収益性が改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31.3億円 | 34.0億円 |
| 売上総利益 | 10.1億円 | 11.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 34.0% |
| 営業利益 | 1.1億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比36%)、賞与及び賞与引当金繰入額が0.9億円(同9%)を占めています。売上原価に関しては、労務費や外注費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
コンクリート関連事業は公共工事の縮小傾向にありながらも高付加価値製品が好調で増収増益となりました。建築設備機器関連事業も堅調な受注により増収増益を達成しています。不動産関連事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンクリート関連事業 | 18.7億円 | 20.2億円 | 0.2億円 | 0.7億円 | 3.4% |
| 建築設備機器関連事業 | 11.5億円 | 12.6億円 | 0.6億円 | 1.1億円 | 9.0% |
| 不動産関連事業 | 1.2億円 | 1.2億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 33.5% |
| 連結(合計) | 31.3億円 | 34.0億円 | 1.2億円 | 2.2億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
イトーヨーギョーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動では、本業で得た収入が大幅に増加し、資金獲得に繋がりました。投資活動では、資産の売却収入が取得支出を上回り、資金獲得となりました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより、資金が使用されました。これらの結果、現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.5億円 | 5.2億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | 1.0億円 |
| 財務CF | 0.8億円 | -4.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「高品質」「高価値」を旨とし、他社にない製商品の創造と提供を通じて、価値としての利益を還元し、顧客に貢献することを基本方針としています。独創性に満ちた、売上規模は小さくとも利益率の高い「小さくて強い会社」を目指しています。
■(2) 企業文化
中期ビジョンとして「自ら需要をつくれる企業」を掲げています。また、次期経営方針として「Beyond innovation ―革新のその先へ―」というスローガンを掲げ、既存製品の進化だけでなく、常に新たな製品の開発と販売に挑戦し続けることで更なる価値を生み出す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期ビジョン「自ら需要をつくれる企業」の実現に向け、一歩ずつ着実に成長できるよう努力するとしています。具体的な数値目標としての記載はありませんが、公共事業だけでなく民間市場への参入により収益構造の改善を図り、持続可能な収益モデルの早期確立を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国土交通省の「選択と集中」を視野に入れ、インフラ老朽化対策、無電柱化推進、生活道路の安全対策、ゲリラ豪雨対応などに焦点を絞り技術開発を強化しています。また、民間需要に対しては新たな事業チャンネルを構築し、環境を中心とした民間設備投資の開拓にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様化と育成が中長期的な企業価値向上につながると考え、性別・国籍・年齢に関わらず意欲と能力のある人材を採用・登用しています。人材確保難への対応として、有給休暇取得率や産前産後休暇・育児休業等の取得率向上を進め、働きやすい就業環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.9歳 | 11.9年 | 5,038,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 女性管理職比率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(25%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共投資への依存
売上の多くを公共事業に依存しているため、公共投資の動向に業績が左右される可能性があります。公共事業費の大幅な増加が見込めない中、市場縮小が続けば業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、民間企業への参入や高付加価値製品の開発により対応を進めています。
■(2) 原材料価格の変動
コンクリート製品の主要原料である国内セメント価格は原油価格の影響を受けます。これら原材料価格の変動分を販売価格に転嫁できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替リスク
取り扱い商品の一部に海外メーカーからの外貨建て輸入商品があり、仕入に係る買掛金債務について為替変動リスクを有しています。為替レートの管理や社内ルールの徹底等によりリスク対応に努めています。



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