※本記事は、株式会社中山製鋼所の有価証券報告書(第132期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中山製鋼所ってどんな会社?
電気炉を用いた鉄鋼製品の製造を中心に、エンジニアリングや不動産事業を展開する鉄鋼メーカーです。
■(1) 会社概要
1919年に創業者が亜鉛鉄板製造工場を設立したことから始まり、1934年に中山製鋼所へと改称しました。1949年には東京・大阪の各証券取引所に上場しています。長らく高炉・転炉による製鉄を行っていましたが、2002年以降は電気炉へと転換しました。2026年には日本製鉄との合弁会社を設立しています。
現在、同社グループは連結で1285名、単体で850名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。株主構成を見ると、筆頭株主は事業会社の阪和興業で、第2位も同じく事業会社のエア・ウォーター、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 阪和興業 | 14.86% |
| エア・ウォーター | 8.72% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)(注) | 7.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は内藤伸彦氏が務めています。取締役11名のうち、社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 箱守一昭 | 代表取締役会長 | 1980年入社。生産技術部長や営業本部長などを経て、2013年に専務取締役に就任。2017年より代表取締役社長を務め、2025年6月より現職。 |
| 内藤伸彦 | 代表取締役社長 | 1982年入社。棒線営業部長や購買本部長、営業本部長を歴任し、2020年に常務取締役、2022年に専務取締役に就任。2025年6月より現職。 |
| 森川昌浩 | 取締役専務執行役員 | 1983年入社。製鋼工場長や生産技術部長などを経て、2018年に取締役、2021年に常務取締役に就任。2025年6月より現職。 |
| 柴原善信 | 取締役常務執行役員 | 1989年入社。営業部長や営業本部長を歴任し、2023年に取締役に就任。2025年6月より現職。 |
| 大穂勝也 | 取締役常務執行役員 | 1989年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。エムエスティ保険サービスの取締役などを経て2024年に入社し、2025年6月より現職。 |
| 阪口光昭 | 取締役常務執行役員 | 1991年入社。経理部長や経営本部長を経て、2023年に取締役に就任。2025年6月より現職。 |
| 岸田良平 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年入社。コークス工場長や総務本部長を歴任し、2020年に監査役に就任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、中務正裕(弁護士法人代表社員)、村上早百合(元神戸新聞社執行役員)、角田昌也(元徳島大正銀行常務取締役)、津田和義(公認会計士・税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼」「エンジニアリング」「不動産」の3つの事業セグメントを展開しています。
■鉄鋼
電気炉を用いて製造した鉄鋼一次製品や、二次加工製品などの製造・販売を行っています。また、自社グループの製品や半製品、原料等の海上輸送なども手掛けています。
主な収益源は、販売先からの製品販売代金です。鉄鋼製品の製造・販売は中山製鋼所が担い、一部の製品販売は中山通商や三星商事などの連結子会社を通じて行われています。
■エンジニアリング
水産資源の増大や生態系維持に貢献する鋼製魚礁の製造・販売のほか、ロールの製造・販売や各種機械の加工・組立等を手掛けています。
主な収益源は、自治体や水産系組織等からの製品販売および受注代金です。本事業の運営は、中山製鋼所のエンジニアリング事業部門が主体となって行っています。
■不動産
保有する不動産の有効活用を目的として、賃貸オフィスビルや商業施設、賃貸倉庫、賃貸住宅などの不動産の賃貸および販売を行っています。
主な収益源は、入居者やテナントからの賃貸収入および不動産の販売代金です。中山製鋼所が賃貸・販売を行うほか、中山興産が不動産の売買・仲介やその他サービス事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1600億円台から1800億円台で推移していましたが、直近では減収となっています。利益面では一時250億円を超える当期利益を計上した年もありましたが、足元では原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響を受け、経常利益・当期利益ともに減少傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1667億円 | 1885億円 | 1844億円 | 1693億円 | 1483億円 |
| 経常利益 | 67億円 | 134億円 | 122億円 | 81億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 7.1% | 6.6% | 4.8% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 255億円 | 81億円 | 48億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減少しています。利益率の面でも、売上総利益率が13.0%から12.5%へ、営業利益率が5.0%から3.3%へと低下しており、厳しい事業環境を反映して収益性が圧迫されている状況が見て取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1693億円 | 1483億円 |
| 売上総利益 | 221億円 | 185億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.0% | 12.5% |
| 営業利益 | 84億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運送費が52億円(構成比38%)、給料諸手当が28億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力事業である鉄鋼セグメントは、電気炉の操業停止による減産影響や需要低迷に伴う販売量の減少により、減収減益となりました。エンジニアリングセグメントもコスト増や受注減により赤字となっています。一方、不動産セグメントは賃貸収入を中心に安定した収益水準を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼 | 1665億円 | 1457億円 | 78億円 | 42億円 | 2.9% |
| エンジニアリング | 19億円 | 17億円 | 0.4億円 | -0.2億円 | -1.2% |
| 不動産 | 10億円 | 10億円 | 7億円 | 7億円 | 70.3% |
| 連結(合計) | 1693億円 | 1483億円 | 81億円 | 48億円 | 3.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 73億円 | 153億円 |
| 投資CF | -47億円 | -49億円 |
| 財務CF | -38億円 | -25億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「公正な競争を通じて付加価値を創出し経済社会の発展を担うとともに、社会にとって有用な存在であり続けます」という経営理念を掲げています。また、鉄鋼事業を中核に発展してきた企業集団として、社会にとって有用な付加価値の高い製品を開発・提供していく努力を継続することをグループビジョンとして定めています。
■(2) 企業文化
法令や社会的規範を守り、高い倫理観を持って行動することを基本としつつ、「安全・防災・環境問題は企業の存在の基本条件と位置づけ、生産活動に優先して取り組みます」と行動指針に明記しています。良き企業市民として社会貢献活動にも積極的に取り組むなど、地域社会との協調・共生を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた長期ビジョンおよび長期計画を策定し、数値目標として2030年度に経常利益100億円以上、EBITDA220億円以上、ROE5%以上を掲げています。また、新電気炉による施策効果が見込まれる2033年度には、経常利益130億円以上、EBITDA260億円以上、ROE6%以上の達成を目指しています。
* 経常利益:100億円以上(2030年度目標)
* EBITDA:220億円以上(2030年度目標)
* ROE:5%以上(2030年度目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
カーボンニュートラル・循環型社会の実現と収益構造の改善に向けた取り組みを推進しています。日本製鉄との合弁により新電気炉設備を建設し、老朽化した既存設備からの転換と生産能力の増強を図ります。これにより、自社鉄源比率を向上させてコスト競争力を強化するとともに、CO2排出量の大幅な削減を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の人格・個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現します」という行動指針のもと、人的資本への取り組みを推進しています。将来人事戦略を具現化し、優秀な人材獲得や離職率の低減、人材育成の仕組み再構築とともに、多様な人材が活躍できる職場環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 18.8年 | 7,396,000円 |
※平均年間給与は時間外手当等の基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 90.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要原材料・製品価格の変動リスク
鉄鋼製品の主要原材料価格は国際的な資源需給の影響を受けます。主原料やエネルギーの価格が急激に上昇した場合、製造コストの上昇分を早期に販売価格へ転嫁することは難しく、同社の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 最終ユーザーの需要動向リスク
同社の製品は、主に商社や問屋を通じて建設、建設機械、産業機械などの最終ユーザーに販売されています。これらの業界での需要低迷や生産量の減少が生じた場合、鉄鋼需要そのものが落ち込み、同社の経営成績が影響を受ける可能性があります。
■(3) 気候変動が及ぼすリスク
世界的に脱炭素化の流れが加速する中、気温上昇や異常気象などにより原材料の調達停止や生産停止が生じる可能性があります。また、カーボンニュートラル対応への遅延により、生産コストの増加や新たな税負担等の影響を受けるリスクがあります。



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