愛知製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

愛知製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する愛知製鋼は、特殊鋼や鍛造品、電子機能材料などの製造・販売を展開しています。直近の2026年3月期業績では、売上収益が3043億円で増収、営業利益も174億円で増益となり、堅調な成長を遂げています。トヨタグループに属しています。


**愛知製鋼転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、愛知製鋼の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. 愛知製鋼ってどんな会社?


特殊鋼や鍛造品の製造を主力とし、次世代モビリティ向け素材も手掛けるトヨタグループの鉄鋼メーカーです。

(1) 会社概要


1940年に豊田自動織機製作所より分離独立し、豊田製鋼として創立されました。1945年に愛知製鋼へ社名を変更し、1949年に名古屋証券取引所、1961年に東京証券取引所に上場しました。1995年以降はフィリピンや米国などで海外子会社を設立し、グローバル展開を加速させています。

従業員数は連結4,427名、単体2,525名です。筆頭株主は事業会社のトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は事業会社の豊田自動織機です。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 24.69%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.31%
豊田自動織機 8.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は後藤尚英氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
藤岡高広 代表取締役会長 1979年トヨタ自動車工業入社。2006年トヨタ自動車常務役員。2011年愛知製鋼取締役社長などを経て、2023年より現職。
後藤尚英 代表取締役社長 1989年愛知製鋼入社。アイチフォージユーエスエイ取締役社長や愛知製鋼経営役員などを経て、2023年より現職。
中村元志 代表取締役副社長 1983年トヨタ自動車入社。同社常務理事などを経て、2018年愛知製鋼取締役。2020年同社取締役副社長などを経て、2026年より現職。
石井直生 取締役副社長 1986年トヨタ自動車入社。同社常務役員などを経て、2020年愛知製鋼執行役員。2024年同社取締役などを経て、2026年より現職。
横田博史 取締役(常勤監査等委員) 1984年愛知製鋼入社。品質保証部長や常勤監査役などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、新居勇子(元全日本空輸上席執行役員)、小川恭範(元セイコーエプソン代表取締役社長)、三木浩一(弁護士・慶應義塾大学名誉教授)、宮坂彰一(元ファーストリテイリンググループ執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鋼(ハガネ)カンパニー」「ステンレスカンパニー」「鍛(キタエル)カンパニー」「スマートカンパニー」および「その他事業」を展開しています。

鋼(ハガネ)カンパニー


自動車部品用などの特殊鋼(熱間圧延材)や製鋼用資材を提供しています。主力顧客は自動車部品メーカーや商社などです。

収益源は特殊鋼などの販売代金です。運営は主に愛知製鋼が行うほか、アイチセラテックや近江鉱業が資材を生産し、アイチ物流が製品の運搬・保管を担っています。

ステンレスカンパニー


インフラ関連や自動車部品向けにステンレス鋼およびチタンの熱間圧延材、二次加工品、ステンレス構造物エンジニアリングを提供しています。

収益源はステンレス製品の販売代金です。運営は主に愛知製鋼が行うほか、愛鋼やアイチテクノメタルフカウミが加工や販売を、海外ではアイチコリアが販売を担っています。

鍛(キタエル)カンパニー


自動車部品粗形材や機械部品粗形材などの型打鍛造品および鍛造用金型加工品を提供しています。次世代電動ユニット車向けの高機能な鍛造製品などを開発しています。

収益源は鍛造品の販売代金です。運営は主に愛知製鋼やアスデックスが行うほか、アジアや北米の海外子会社であるアイチフォージユーエスエイなどが製造・販売を担っています。

スマートカンパニー


車載電子機器用放熱部品や超小型・超高感度磁気センサなどの電子部品、ネオジム系異方性ボンド磁石などの磁石応用製品を提供しています。

収益源は電子部品や磁石応用製品の販売代金です。運営は主に愛知製鋼が行うほか、アイチヨーロッパや愛知磁石科技などが海外での製造・販売を担っています。

その他事業


コンピュータソフトの開発や物品販売、緑化などのサービス事業を幅広く提供しています。

収益源はソフトウェア開発の受託費用や物品の販売代金などです。運営は主にアイチ情報システムやアイコーサービスが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上収益は右肩上がりで成長を続けています。特に直近では販売数量の増加などにより売上収益が3043億円に達しました。利益面でも原価低減や購入品価格の値下がりなどが寄与し、税引前利益と当期利益ともに大幅な増益を達成しており、利益率も順調に向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2601億円 2851億円 2965億円 2993億円 3043億円
税引前利益 29億円 41億円 109億円 119億円 185億円
利益率(%) 1.1% 1.4% 3.7% 4.0% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 16億円 66億円 78億円 112億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高は増加し、売上総利益や営業利益も順調に伸長しています。販売価格の値下がり等の影響はあったものの、鉄スクラップなどの購入品価格の低下や原価低減活動の成果により、利益率が大きく向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2993億円 3043億円
売上総利益 357億円 386億円
売上総利益率(%) 11.9% 12.7%
営業利益 120億円 174億円
営業利益率(%) 4.0% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費などが含まれる従業員給付費用が117億円(構成比41%)、発送費が75億円(同26%)、研究開発費が49億円(同17%)を占めています。売上原価の主な内訳は原材料の購入原価です。

(3) セグメント収益


主力である鋼(ハガネ)カンパニーは特殊鋼の販売数量増加があったものの価格低下により減収となりましたが増益を確保しました。一方、鍛(キタエル)カンパニーやスマートカンパニーは販売数量増などにより増収増益を達成しました。ステンレスカンパニーは減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
鋼(ハガネ)カンパニー 1474億円 1464億円 54億円 82億円 5.6%
ステンレスカンパニー 441億円 389億円 23億円 4億円 1.0%
鍛(キタエル)カンパニー 1255億円 1348億円 25億円 66億円 4.9%
スマートカンパニー 206億円 221億円 8億円 14億円 6.3%
その他事業 160億円 175億円 9億円 10億円 5.7%
調整額 △543億円 △553億円 1億円 △2億円 -
連結(合計) 2993億円 3043億円 120億円 174億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業活動で得た資金を用いて設備投資を行いつつ、借入金の返済等を順調に進めている優良な状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 254億円 650億円
投資CF △179億円 △173億円
財務CF △177億円 △516億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「国際的な視野に立ち、活力に溢れ、信頼される企業体質をもとに、魅力ある商品を提供することによって社会に貢献する」ことを経営理念に掲げています。研究と創意に努め、相互の信頼と理解のもとに一致協力し、責任ある判断と行動で常に最善を尽くすことを基本方針とし、世界中で選ばれる会社を目指しています。

(2) 企業文化


2030年ビジョンの実現に向け、「環境に一番やさしい鉄屋」として資源循環型のモノづくりに磨きをかけています。全員がチームの一員として本当の問題が解決するまでやり抜く姿勢を重んじ、失敗を恐れず果敢にチャレンジする「プロ集団」として新たな価値創造に取り組む文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年までのできる限り早い段階でのROE8%実現を目指し、2030年度の経営数値目標を設定しています。また、中期経営計画の最終年度である2026年度に向けた目標も掲げています。

* 2026年度目標:売上収益3400億円、営業利益150億円、ROE4%以上
* 2030年度目標:売上収益4000億円、営業利益280億円

(4) 成長戦略と重点施策


マルチパスウェイへの貢献として、次世代製鋼プロセスの構築や鍛造設備の最適化を通じた良品廉価なモノづくりとカーボンニュートラル貢献を推進しています。また、グローバルサウス(インド等)への事業展開や、電子部品、磁石、センサ領域などでの新技術投入を通じた社会課題へのソリューション提供に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員の幸せと会社の発展」を経営指針に掲げ、社員が幸せを感じられる「価値ある会社人生」を追求することが会社の成長につながるという考えのもと「人を大切にする経営」を実践しています。ダイバーシティ&インクルージョンの推進や、社員の健康・安全の確保、自律的なキャリア形成に向けた人材育成に重点的に投資しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.6歳 17.7年 8,019,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 64.5%
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規) 70.5%
男女賃金差異(非正規) 67.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、重大災害件数(0件)、全災害度数率(0.94%)、年次有給休暇取得日数(16.5日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車業界の動向による影響

主力製品である鋼材および鍛造品の主要な需要先は自動車業界です。関税政策の影響や世界のBEVシフトの鈍化、中国メーカーの台頭など自動車業界における競争激化や経済状況の変動により製品需要が大幅に変動した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料およびエネルギー価格の変動

主要原材料である鉄スクラップや合金鉄の価格は国際商品市況の影響を受けます。また、生産活動において大量の電力やLNGなどのエネルギーを消費するため、これらの調達価格の上昇分を販売価格へ十分に転嫁できない場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) グローバル事業展開に伴うリスク

多様な国々で生産および販売を行っているため、不利な政治的・経済的要因、予期せぬ法律や規制の変更、社会的混乱等によって生産・出荷活動が遅延または停止するリスクがあります。これらの混乱が長期間にわたる場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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