丸一鋼管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸一鋼管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、各種鋼管及び表面処理鋼板の製造・販売を主要事業としています。直近の業績は、売上高は減少しましたが、当期純利益は増加しました。海外展開を加速させており、北米やアジア市場での事業拡大に取り組んでいます。


※本記事は、丸一鋼管株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸一鋼管ってどんな会社?


各種鋼管および表面処理鋼板の製造・販売を行う独立系の鋼管トップメーカーです。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1962年に大阪・東京証券取引所市場第二部へ上場、1964年には同第一部へ指定替えしました。1960年に現社名へ変更し、1978年には米国に現地法人を設立して海外展開を開始しました。2006年にはベトナム企業の持分を取得するなどアジアへも進出し、2020年にはコベルコ鋼管(現・丸一ステンレス鋼管)を完全子会社化するなど、事業拡大を続けています。

従業員数は連結2,596名、単体582名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位はヨシムラホールディングス、第3位は日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.48%
株式会社ヨシムラホールディングス 6.06%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長兼CEOは鈴木博之氏、代表取締役社長兼COOは吉村貴典氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 博之 代表取締役会長兼CEO会長執行役員 1980年入社。取締役、常務、専務、副社長を経て2003年社長就任。2013年より会長兼CEO。丸一鋼販社長、SUNSCO社会長等を兼任。
吉村 貴典 代表取締役社長兼COO社長執行役員 1981年入社。執行役員特品事業部長、常務、専務、副社長を経て2013年より現職。四国丸一鋼管社長を兼任。
森田 渉 取締役副社長執行役員 2011年入社。MAC社社長、MOST社社長、執行役員経営企画室長、常務を経て2023年より現職。営業・購買・企画・IR・秘書部門を管掌。


社外取締役は、中野健二郎(元京阪神ビルディング社長)、牛野健一郎(元伊藤忠丸紅鉄鋼社長)、藤岡由佳(藤岡金属社長)、辻幸一(元新日本有限責任監査法人理事長)、山平恵子(元サンヨーホームズ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「北米」および「アジア」事業を展開しています。

(1) 日本


国内市場において、各種鋼管および表面処理鋼板の製造・販売を行っています。主な製品は構造用鋼管、配管用鋼管、ステンレス鋼管などであり、建築資材や自動車部品、プラント配管などに使用されています。

収益は主に製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社のほか、子会社の北海道丸一鋼管、九州丸一鋼管、四国丸一鋼管、丸一ステンレス鋼管、東洋特殊鋼業が製造を、丸一鋼販などが販売を担っています。また、アルファメタルは自動車部品等の加工・販売を行っています。

(2) 北米


北米市場において、鋼管およびステンレス鋼管の製造・販売を行っています。米国およびメキシコに拠点を持ち、現地の自動車産業や建築需要に対応した製品を供給しています。

収益は製品の販売対価です。運営は、米国のMAC社、Leavitt社、MOST社、MNT社、MST-X社、およびメキシコのMaruichimex社が行っています。

(3) アジア


アジア市場において、鋼管および表面処理鋼板の製造・販売を行っています。ベトナム、インド、フィリピンに拠点を展開し、インフラ需要や二輪車・四輪車向け需要に対応しています。

収益は製品の販売対価です。運営は、ベトナムのSUNSCO社およびSUNSCO(HNI)社、インドのKUMA社、フィリピンのMPST社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,000億円台後半で推移していますが、当期は前期比で減少しました。経常利益は300億円台から200億円台後半へと変動しています。当期利益は前期から増加しており、利益率は10%前後を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,611億円 2,242億円 2,734億円 2,713億円 2,616億円
経常利益 206億円 385億円 344億円 384億円 266億円
利益率 12.8% 17.2% 12.6% 14.1% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 124億円 153億円 186億円 203億円 255億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高および売上総利益ともに減少しています。売上総利益率は19.7%から16.7%へ低下しました。営業利益も減少しており、営業利益率は12.8%から8.8%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,713億円 2,616億円
売上総利益 535億円 438億円
売上総利益率(%) 19.7% 16.7%
営業利益 348億円 229億円
営業利益率(%) 12.8% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、発送費が86億円(構成比41%)、給与手当が36億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上・利益ともに最大の規模ですが、前期比で減収減益となりました。北米セグメントは減収となり、営業赤字を計上しています。一方、アジアセグメントは増収となりましたが、利益は微減となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 1,628億円 1,551億円 247億円 196億円 12.6%
北米 589億円 517億円 49億円 -15億円 -2.9%
アジア 496億円 548億円 47億円 45億円 8.1%
連結(合計) 2,713億円 2,616億円 348億円 229億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

丸一鋼管の当連結会計年度末における資金残高は、前連結会計年度末より増加し、潤沢な水準となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主な収入や支出の変動により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、政策保有株式の削減や土地取得に伴う収入があった一方で、固定資産への投資により支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いにより減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 357億円 281億円
投資CF -210億円 137億円
財務CF -131億円 -263億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「顧客の信頼に応えることにより社会に貢献し、人間尊重を基本としてすべての人々を大切にする」という経営理念を掲げています。この理念のもと、すべてのステークホルダーに配慮した事業活動を行うことで、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「人間尊重」を基本理念とし、「すべての人を大切にする」会社としてのあり方を追求しています。「少数が精鋭を作る」という考えのもと、一人が複数の業務をこなす「多能工」の育成を重視しています。また、変化の大きい社会において、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、多様な社員が活躍できる環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けての長期ビジョン「MARUICHI 2030 VISION」および第7次中期経営計画(2024-2026年度)を策定しています。

* 2030年度目標:売上高4,000億円、営業利益500億円、ROE10%、連結配当性向50%
* 2026年度目標:売上高3,000億円、営業利益400億円、ROE8.0%、連結配当性向43%

(4) 成長戦略と重点施策


「国内コア事業」「海外コア事業」「成長事業」の3つを柱として戦略を推進しています。国内では収益性を重視し、M&Aも活用しながら安定的な利益確保を目指します。海外では需要拡大地域での設備投資や収益基盤の整備を進めます。成長事業では、半導体関連や脱炭素社会に向けた新規需要に対応するための積極投資や研究開発を行います。

* 国内コア事業:営業利益210億円を目指す
* 海外コア事業:営業利益25%増を目指す
* 成長事業:営業利益65億円を目指す

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重」の理念のもと、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しています。女性、外国人、高齢者などの多様な人材が活躍できる環境を整備し、少子高齢化やグローバル化に対応します。また、マルチスキル人材(多能工)の育成を継続しつつ、年功序列にとらわれない人事制度への見直しや、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 18.8年 7,009,699円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 3.2%
男性労働者の育児休業取得率 80.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 76.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 83.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 33.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性監督職比率(10.8%)、産後パパ育休取得率(80.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 当社製品の需要動向に伴う経営成績への影響について


同社グループの製品は建築資材や輸送機器向けなどが主たる用途であるため、中低層の建築投資、輸送用機器の生産量、企業の設備投資や公共投資の動向によって経営成績が影響を受ける可能性があります。

(2) 原材料市況の変動等について


主要原材料である熱延コイルの市況は世界の需給動向等により変動します。原材料価格が上昇し、販売価格への転嫁が十分に図れない場合、経営成績に悪影響が出る可能性があります。

(3) 製品クレームによるリスク


各種規格や品質管理基準に従って生産していますが、製品に欠陥が生じた場合、製造物賠償責任等に伴う費用が発生する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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