※本記事は、丸一鋼管株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸一鋼管ってどんな会社?
同社は各種鋼管および表面処理鋼板の製造・販売を主力とし、グローバルに事業を展開する独立系専業メーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に丸一鋼管製作所として設立され、1960年に現在の丸一鋼管へ商号変更しました。1964年に東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部へ上場し、現在はプライム市場に所属しています。米国、ベトナム、インド、メキシコなどに製造・販売拠点を設立してグローバル展開を進めるとともに、近年ではステンレス鋼管分野の事業拡大に向けた企業買収や拠点新設などの積極的な投資を行っています。
従業員数は連結で2,599名、単体で586名です。大株主の状況としては、筆頭株主が信託業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位がヨシムラホールディングス、第3位が三井住友銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.93% |
| ヨシムラホールディングス | 6.36% |
| 三井住友銀行 | 4.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役会長兼CEOは鈴木博之氏、代表取締役社長兼COOは吉村貴典氏が務めています。社外取締役比率は61.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 博之 | 代表取締役会長兼CEO会長執行役員 | 1980年同社入社。アメリカ事務所長、取締役、常務、専務、副社長を経て、2003年より代表取締役社長に就任。2013年より現職。 |
| 吉村 貴典 | 代表取締役社長兼COO社長執行役員 | 1981年同社入社。取締役、執行役員特品事業部長、常務執行役員、専務執行役員、副社長執行役員を経て、2013年より現職。 |
| 森田 渉 | 取締役副社長執行役員 | 2011年同社入社。MAC社社長、MOST社社長、経営企画室長などを経て、2023年より現職。 |
| マリア・モンセラット・アンダーソン | 取締役 | 1994年MAC社入社。同社人事総務部マネージャー等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、中野健二郎(元三井住友銀行副会長)、牛野健一郎(元伊藤忠丸紅鉄鋼社長)、藤岡由佳(藤岡金属社長)、辻幸一(元EY新日本有限責任監査法人理事長)、山平恵子(元サンヨーホームズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「北米」および「アジア」の報告セグメントを展開しています。
■(1) 日本
国内市場向けに構造用・建築用・配管用の各種溶接鋼管やステンレス鋼管、表面処理鋼板、照明柱などの製造・販売を行っています。店舗や工場などの中低層建築物から自動車部品向けまで、幅広い顧客に製品を供給しています。
主に製品の販売代金から収益を得ています。事業の運営は同社のほか、北海道丸一鋼管、九州丸一鋼管、四国丸一鋼管、丸一ステンレス鋼管、東洋特殊鋼業などの各子会社が担い、丸一鋼販を通じた販売体制も構築しています。
■(2) 北米
米国およびメキシコ市場において、現地の需要に応じた構造用・建築用・配管用の各種溶接鋼管、およびステンレス鋼管などの製造・販売を行っています。主に自動車メーカーや半導体工場、オイル&ガス市場などを顧客としています。
製品の販売代金から収益を得ています。運営は、マルイチ・アメリカン・コーポレーション、マルイチ・レビット・パイプ・アンド・チューブLLC、マルイチ・オレゴン・スチール・チューブLLCなどの米国拠点およびメキシコのマルイチメックスが中心となって行っています。
■(3) アジア
ベトナム、インド、フィリピンの各市場において、鋼管および表面処理鋼板の製造・販売を展開しています。主に現地の建築向け需要や、二輪・四輪車などの自動車関連市場向けの大径排気管などを提供しています。
現地での鋼管および鋼板製品の販売代金から収益を得ています。運営は、ベトナムのマルイチ・サン・スチール・ジョイント・ストック・カンパニー、インドのマルイチ・クマ・スチール・チューブ・プライベート・リミテッド、フィリピンのマルイチ・フィリピン・スチール・チューブ・インクなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は原材料市況や販売数量の変動により増減が見られます。利益面では、販売価格と仕入価格の値差(スプレッド)の状況により変動していますが、全期間を通じて10%以上の経常利益率を確保しており、安定した収益力を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,242億円 | 2,734億円 | 2,713億円 | 2,616億円 | 2,438億円 |
| 経常利益 | 385億円 | 344億円 | 384億円 | 266億円 | 342億円 |
| 利益率(%) | 17.2% | 12.6% | 14.1% | 10.2% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 278億円 | 242億円 | 261億円 | 270億円 | 267億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は国内やアジアでの販売数量減少により減収となりました。一方、北米セグメント等でのスプレッド改善が寄与して売上総利益は増加し、売上総利益率および営業利益率ともに前年から改善し、大幅な増益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,616億円 | 2,438億円 |
| 売上総利益 | 438億円 | 521億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 21.4% |
| 営業利益 | 229億円 | 320億円 |
| 営業利益率(%) | 8.8% | 13.1% |
販売費及び一般管理費のうち、発送費が76億円(構成比38%)、給与手当が38億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内およびアジアは販売数量の減少や市況の下落等により減収となりました。一方、北米は米国HRC価格の上昇による販売単価の改善などがあり、大幅な増益を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,551億円 | 1,441億円 | 196億円 | 219億円 | 15.2% |
| 北米 | 517億円 | 548億円 | -15億円 | 55億円 | 10.0% |
| アジア | 548億円 | 448億円 | 45億円 | 42億円 | 9.3% |
| 連結(合計) | 2,616億円 | 2,438億円 | 229億円 | 320億円 | 13.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益と資産売却等によって借入返済を進める改善局面となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 281億円 | 204億円 |
| 投資CF | 137億円 | 11億円 |
| 財務CF | -263億円 | -279億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「優れた製品を供給し顧客の信頼に応えることにより、社会に貢献することを使命とする」という理念を掲げています。株主、顧客、従業員、取引先、地域社会とともに発展を続けることにより、持続的な企業価値の向上を図ることを目指しています。
■(2) 企業文化
「人間尊重」の理念のもと、「すべての人を大切にする」会社としてのあり方を追求しています。「少数が精鋭を作る」との考えから、一人が複数の業務をこなす多能工の育成を重視する文化があります。また、イノベーティブな企業文化を醸成するため、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを積極的に推進しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「MARUICHI 2030 VISION」および、そのファーストステージとなる第7次中期経営計画を策定しています。2030年度の財務目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:4,000億円
* 営業利益:500億円
* ROE:10%
* 連結配当性向:50%
■(4) 成長戦略と重点施策
半導体・脱炭素産業を成長の軸と位置づけ、ステンレス鋼管事業の拡大に重点的に投資しています。国内コア事業では収益性重視の戦略を取り、海外コア事業では需要拡大地域での設備投資を進めています。また、次世代造管機の導入などによるDX推進や、脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
一人一人が複数の技術・知識を身につけ、幅広い業務に対応するマルチスキル人材の育成に注力しています。年齢に関わらず優秀な社員が早期にキャリアアップできる人事制度を導入するとともに、株式報酬制度や各種研修の充実により、従業員エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.9歳 | 19.4年 | 7,216,151円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 64.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 86.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 35.0% |
また、同社は「従業員の状況等」などのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性監督職比率(10.9%)、女性採用比率(15.4%)、有給取得率(60.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品需要動向に伴う影響
同社グループの鋼管やメッキ鋼板は建築資材や自動車向けなど幅広い用途で使用されます。そのため、中低層の建築投資や企業の設備投資、輸送用機器の生産動向等により、経営成績が直接的な影響を受けるリスクがあります。
■(2) 原材料市況の変動による収益圧迫
主要原材料である熱延コイルの市況は、世界の鉄鋼原料や製品の需給動向等によって変動します。原材料の仕入価格が上昇し、販売価格への転嫁が十分に図れない場合には、収益が圧迫される可能性があります。
■(3) 地政学・カントリーリスク
同社グループは北米やアジアなどグローバルに事業を展開しています。事業活動を行う国や地域における紛争、テロ、政情不安や通貨危機などが発生した場合、サプライチェーンや現地の生産・販売活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。



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